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バレンタインなんて何の其の。

全く色気のない、手塚猫バージョンの続編です。


if(手塚バージョン2)

「ただいま!手塚どこ!?」
久しぶりの帰宅だというのに、裕太は扉を開けるや否や新しい家族を探し始める。
「ゆーた。荷物くらい片付けてからになさいよ」
姉の由美子は溜め息をついて、玄関先からリビングまで続く手荷物を一つずつ拾い上げる。
コートに帽子に夏物の衣服が入った紙袋。
「全く子供じゃないんだから」
文句を吐きつつ、末っ子の荷物を回収しながらリビングに入れば、当の裕太はソファの傍らに膝を揃えて座っている。
畳部屋の少ない不二家ではあまり目にする事がない、正座をする姿だ。
「何やってんの、裕太」
由美子が覗きこめば、裕太の目の前にはソファに座る手塚の姿がある。
いつもの場所で、いつものように背筋を伸ばして、まるで置物のように微動だにしない手塚の姿。
「猫、だよね?」
「そうね」
そう答えながらも、裕太の戸惑いもまあ当然かと由美子は苦笑した。
自分だって、慣れるまでは随分時間がかかったのだから。
日がなゴロゴロ寝るか、食べるか、散歩するか。それが猫という動物の生活だと思っていたのに、手塚はちょっと他の猫とは違うのだ。
今だって、涼しく余念のない視線で、初めて会う裕太を観察している。
真っ直ぐな眼差しに根負けして、先に視線を逸らしたのは裕太の方だった。
「変な猫。こんなにガン見しなくてもいいのに…」

そんな時、階段を下りる音がしたかと思うと、兄の周助がリビングに顔を出した。
「裕太おかえり」
「あ、ああ…」
周助は振り返って答える裕太に破顔すると、続いてその視線を手塚へと向ける。
そして「待たせたね」と、声をかけたのだ。
「何処か行くの?兄貴」
「あ、うん。すぐ戻るから、おやつは待っててね。僕も一緒に食べるから」
周助は「お願い」と、相変わらずの穏やかな笑顔を見せると、リビングに入ることなく玄関へ向かってしまう。
そして、当然のように手塚がその後を追っていくのだ。
「ん?あァ…、行ってらっしゃい」
裕太がそう言って見送ると、カチャン…と扉の閉まった音がして、その向こうからは周助が何やら楽しそうに話している声が聞こえてくる。
「姉貴、あれって…」
「そ。手塚くんと話してるの」
「手塚くんって…」
「今に分かるわよ。手塚くんはちゃんと私たちの話を理解してるんだから」
「はあ…」
確かに、さっきまで見つめ合っていた猫は、今まで見た事のあるどんな猫よりも頭が良さそうではあった。
と言うより、妙な威圧感さえ覚えて、裕太は思わず正座などしてしまったのだ。
「お休みの日の散歩は15分って決まってるから、裕太、手洗ったらお茶の準備手伝ってちょうだい」
「それは良いけど…」
裕太は、漸く立ち上がると、茶器を出す由美子と並んで準備を始める。
「姉貴、ああやっていつも一緒に散歩行くのか?兄貴のヤツ…」
「そうよ。手塚くんは、毎日決まった時間に決まったコースを入念にパトロールするの。何だか面白そうだって付いて行ったら、それから恒例になっちゃって」
「…変なの」
不思議顔の弟に、由美子はまた笑みをこぼす。
最近ではすっかり慣れてしまったが、確かに初めてその事実を知った時は、今の末っ子と同じように首を傾げたものだ。
「あっ、それなら…」
由美子は思い出したように小さく指を鳴らす。
「何?」
まだ何かあるのか?と訝しがる裕太に、由美子はクス…と小さく笑って目を細めた。
「一日一緒に過ごしたら、もっと驚くわよ。何たって、あの二人はまるで恋人同士みたいなんだから」
「あ、そ…」
自然に、あの『二人』と言う時点で、裕太は諦めたように頷いた。
確かに、あの視線は裕太が「手塚」に見定められていたのかもしれない。自分の恋人の弟はどのような人間であるのかを。
「何か、猫っぽくないんだよな、あの猫…」
裕太は、そう零した。

結果として、裕太が寮へ戻る頃には、手塚の事を『手塚さん』と呼ぶようになったのである。

「何もあんなに改まらなくたっていいのに。ねェ、手塚?」
寮に帰る裕太を見送った後、周助は苦笑いで手塚に声をかけた。
左手に自分のティーカップ。そして右手に水の入ったカップを手にしてソファに腰掛ければ、手塚は当たり前のように不二の横に座り、そのカップから水を飲む。
「今夜は星が綺麗そうだね、手塚。少し寒いけど後でベランダから星見てみようか」
窓越しに、陽が傾きかけた空を見上げて不二が言えば、手塚はゆっくりと瞬きを返した。
「それは楽しみだな」とでも言うように。

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