もう少しだけ (リョ×海） 2007/01/15 (Mon)

リョ海というより、リョ→海。
片想いなリョーマ様の独白。

もう少しだけ　(リョ×海）

ジュースとお菓子を手に部屋に戻ると、ベッドの上で海堂先輩が気持ちよさそうな寝息をたてている。
壁に向かい横になっているその胸元にはカルピンが丸くなり、先輩の右手には猫じゃらしが軽く握られている。
カルピンと遊んでいるうちに眠ってしまったようだ。

海堂先輩が部活後や休日に俺の家に遊びにくるようになって、そろそろ2ヶ月が経つ。
最初は緊張して居心地悪そうにしていたが、次第に慣れてきた今では部屋の主である俺がいなくたって、カルピンさえいれば楽しそうだ。
ちょっと寂しいけど、そんなリラックスした姿を晒すのは俺の前だけだと知っているから、カルピンには感謝だ。
きっとカルピンがいなかったら海堂先輩がウチに遊びに来ることもなかったかもしれない。

「先輩…？」
テレビの上にお菓子とジュースの入ったグラスを置くと、そっと近づき先輩の顔を覗き込む。
ベッドの上を膝立ちになって近づくが、全く起きる気配は無い。
とてもあどけない寝顔。
瞳が閉じられているからいつものような迫力はなく、軽く開いた唇がぽってりと柔らかそうだ。
艶やかな髪に触れると、くすぐったそうに身じろぎするが目は覚めない。
「先輩…、誘ってるの？」
返事はないと分かっていても声をかけてしまう。

初めて会った瞬間から、その瞳に釘付けだった。
なんだか分からないけど、気になる存在。
必要以上に突っかかって、先輩に俺を見て欲しくて…。
恋だと気付くのに、そんなに時間はかからなかった。
でも、まだ伝えてはいない。
らしくないって言われそうだけど、告白することで先輩が離れて行ってしまうのが怖いから…。
少しずつ少しずつ、その距離を縮めていく。

先輩を起さないよう静かに隣に横たわる。
そして、その背中からそっと腕を回す。
その姿は抱きしめるというよりも、子供が大人に抱きついているといった感じになってしまう。
「…先輩」
気付いてよ、俺の気持ちに。
こんなに大好きなんだ。
年上だろう？言い出せない健気な後輩に気付いてよ。
苦しいんだ、このままじゃ…。
涙が溢れそうになり鼻の奥がツンとするのを、唇を噛んでやり過ごす。

ふと窓の外を見ると、カーテンの隙間からでも雨が降っているのがわかる。
先輩、雨じゃロードワークに出られないね。
だから、もう少しゆっくりしてってよ。
もう少しだけ、こうしていたいんだ。