ご立腹 （塚×不二） 2007/01/15 (Mon)

コメディタッチの塚不二です。
塚様ご乱心（笑）

ご立腹 　（塚×不二）

「手塚っ！待った待った…っ！」
僕は思わず大声を上げる。
「どうしたの手塚？？？」
何でTシャツの裾から手塚の手が？手がーっ！？
「どうもしないが」
どうもしない訳がない！
手塚ともあろう人が、着替え中の僕のTシャツの裾から手を滑り込ませて、わき腹を撫で回すなんてっ！
「不二は気にせず、着替えを続けてくれ」
「続けられますか！！」
背後からすっぽり僕を抱きしめたまま、手塚は手を休めない。
手塚ってば何をしれっと「着替えを続けてくれ」なんて言っているのだろう！
ああ、急に興奮して大声出したから頭フラフラしてきた…。
「大丈夫。部員は全員帰った」
「…そういう問題じゃなくて」
あまりの唐突さに眩暈さえしてくる…。
「じゃあ何か？不二は、何故俺が不二のカラダに触れるのか？と、そう聞きたいのか？」
何だ、分かってるじゃあないか！
僕は何度も首を縦に振る。
「ほう…お前がそう言うか…」
あれ…？
なんだか手塚部長ってば、ご立腹…？
「全然分かりませんって顔だな。不二…」
こ・怖い。
何だろ？何かしたかな僕？
今日は急に抱きついて熱いキスを贈ったり、大声でラブコールを贈ったりもしなかったはずっ！
いつも怒られるような事は慎んだつもりなんだけど…。
後ろから覗き込まれる視線が痛い。
「…乾とは随分仲良しのようで…？」
手塚が地を這う様な低い声で呟く。
『随分』のところにやたら力が入っている。
なるほど！珍しく乾と長話していたのが、そんなにお気に召しませんでしたか…。
確かにネ。
手塚がいつも僕の愛をちーっとも受け取ってくれないから、拗ねて乾に纏わり付いてみましたよ？
でもね、でもね。
いつもの手塚なら気にもしなかったじゃない！
ちょっとしたジョークのつもりだったんだけど。
手塚には、通じてないね…。
「あそこまでされて、俺が妬かないと思ったのか？」
手塚はムスッと呟くと、僕のことをギュ－って抱きしめる。
妬く…？
手塚が僕と乾が仲良くしているのを見て『妬く』？
「…ええっ！？手塚って僕のこと好きだったのっ？」
手塚が背後で、がっくりと首をたれる。
「お～ま～え～は～！今まで俺との関係を何だと思ってたんだ！」
「え…。クールな部長とそんな部長にラブラブ片想い中な僕、みたいな？」
「！！！…そうか、成る程な。不二の言い分はよ～く分かった」
そう言って僕の体を離してくれるかと思いきや！
手塚は僕の首元に唇を寄せ、耳朶をペロって舐めた！
「…アんっ！」
ばか！
びっくりしてヘンな声出ちゃったじゃないか！
「なあ、不二。俺だって人並みに好きな人と触れ合いたい願望もある」
ねえ、耳元で囁かないで。
…声が据わってるよ、手塚。
空恐ろしくてただ相槌を打つ。
「だが、俺たちは中学3年生の大事な時期だ。分かるな？」
そ、そうだね。
でも手塚はとても中学生に見えないけどね。
「この大事な時期に大石や菊丸の様にいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃ…、恋愛にのぼせている訳にはいかないのだ」
そんなに「いちゃいちゃ」言わなくても…。実は羨ましいのかな…？
「だから俺は気を使って、不二との関係を中学生らしい清らかな関係でいようと心に決めていたのだ！」
そうですか…。
ただの鈍感野郎だと思っていたよ。ごめんなさい。
「だが、もう我慢の限界だ！自業自得と思って覚悟を決めてくれ。乾と一緒になって俺を煽ったお前が悪い」
そう言い、手塚が僕の体をくるっと向き合わせたかと思うと…！
「んンっ！」
覆い被さるように、僕は手塚に口付けられた。
「…ンっ」
手塚が角度を変えては続けざまに唇を奪うから、僕は息が苦しくなって少し唇を開いた。
そしたら…そしたらっ！！
舌をチュッて吸われてしまった！
びっくりして手塚の体を押し返す。
「僕！ファーストキスなのにっ！」
「奇遇だな。俺もだ」
「ファーストキスって！青林檎みたいなっ、檸檬みたいなっ、甘酸っぱくて爽やかなものでしょ！？」
あんなエロいの、ファーストキスでしないよ～。
「そうなのか。それは始めて知った」
すっごく嬉しいけど、恥ずかしくて。
僕は手塚の胸をポカポカと叩く。
「すまん、すまん。それはさて置き。早く着替えを済ませて我が家へ行こう」
？？？
さて置かれた事も納得いかないが。
それより。
「我が家へって、何で？」
？マークで首を傾げる僕をじっと見つめたかと思うと、手塚は僕の荷物を引っ手繰るようにかき集め、そして僕の腕を引いて部室を出ようとする。
「手塚！まだ着替えてないよ！」
「大丈夫。Tシャツでも風邪を引く季節ではない」
「どこ行くのさっ！」
「だから俺の家だ」
「なんで！？」
「………」
「？？？」
「思いが通じ合って、口付けも交わした。後は…なあ？」
後って？後って～！？
もしや、体も結ばれちゃいましょうって事？！
だって、ついさっきまでは僕の『切ない片想い』だった筈なのに！
そんな急に！
急じゃ…。
「僕は二十歳になるまでは綺麗な体でいようと決めてるんだ」
「そうか、残念だが諦めてくれ」
「！！！」
「自業自得だろう？お前が俺をその気にさせたんだ。責任とってくれるよな？」
そんなっ！
まだ子供だしっ、今日両想いになった（もしくは両想いであることを知った）ばかりだし！
責任とってくれるよな…なんて。
挑発的な手塚もちょっと怖いし…。
「ちょっと待って！ねえ手塚ってば！」
僕を引き摺ってずんずん歩く手塚は、全く聞く耳を持たないって感じ。
「手塚～」
あー。僕どうなっちゃうんだろ！？