過去拍手 ３ 2007/06/14 (Thu)

３代目、拍手お礼ＳＳＳです。

氷帝３年オール１本、宍→跡＋忍→岳１本。

scene  5月第2日曜日（氷帝3年オール）

「はい、滝！いつもありがと！」
「いつも、サンキューな！」
日曜日の夕飯前、ようやく帰って来たジローと岳人は、食堂に入ってきたその足で真っ直ぐ滝の元へ駆け寄る。そして、「どうぞ」と、二人は一本ずつ可愛くラッピングされた花を差し出す。
「え…？あ、うん。ありがと…」
滝は包丁を持つ手を止めて、二輪の花を受け取った。
「ジロちゃん、それ、カーネーション？」
滝と一緒に夕飯の準備をしていた忍足が尋ねる。
「そう！ね、がっくん」
「そ。俺たちからの感謝の気持ち」
にっこりと笑う二人。
「…ま、確かに。お前ら二人は、滝には母親並に面倒見てもらってるもんな」
ダイニングテーブルで寛いでいた宍戸は、二人の日常を思い浮かべてうんうんと頷く。
朝の目覚めから、食事は勿論。身だしなみや、明日使う教科書の準備まで。エトセトラエトセトラ…。
「そっか、母の日か。…何だろう、納得いかないながらも、妙に嬉しいのは…」
そんな事を言いながらも、滝の表情は嬉しそうに緩む。
「まあ、良い心がけじゃねーの？ちゃんとお前に世話を掛けてるって分かってるんだ。素直に喜んどけよ」
宍戸の隣で新聞を読んでいた跡部は、顔を上げてそう言う。
「そうだよね。ジロー、岳人、ありがとう！」
「どういたしまして！」
滝の笑顔を見た二人は満足そうに頷くと、幼い兄弟のようにじゃれ合いながら二階の自室へ駆け上がっていく。
「ったく、二人揃うと益々ガキっぽいよな、あいつらは」
宍戸が苦笑いすれば、忍足も頷く。
「そうやな。でも、手貸したくなる滝の気持ちも分かるわ」
「つい、可愛くてね。程ほどにしとかなきゃとは分かってるんだけど」
滝は照れくさそうに呟いた。
「ま、バカな子ほど可愛いとは良く言ったもんだし…」
跡部はそう言って鼻で笑うと、読み途中の新聞に視線を戻して、傍らに置かれたコーヒーカップを差し出す。
「滝。コーヒーもう一杯くれ」
そんな横柄な態度に、宍戸と忍足の声がハモった。
「跡部が一番滝に感謝しろ！！」

母の日の夕方。下宿でのそんなワンシーン。

 

 

 

scene屋上（宍→跡＋忍→岳）

「がっくんの影に入るんは、頼もしいけど、不安にもなるんや…」
昼休みの屋上。他愛も無い口喧嘩をする岳人と跡部を眺めながら忍足は言う。
「…影に、入る？」
俺は意味が分からなくて聞き返す。
「テニスん時。岳人が高く跳ぶと、大きな鳥の影に入ったみたいに感じる時があるんや」
なるほど。
ラケットを握り高々と跳び上がる岳人の影は、角度によっては大きく翼を開いた鳥のように感じるのかもしれない。
いつも一緒にダブルスを組んでいる忍足ならではの言葉だ。
「…このままどっか、飛んでってしまうんやないか…てな。不安になる」
「そっか…。ちょっと分かる気がする」
俺は、いつも前を行く跡部の背を追いかけているから。
小さく消えていく背中の恐怖に、魘されて目覚めたことも少なくない。
「…宍戸も難儀な恋、しとるもんなぁ」
今更隠す必要もないだろう。
俺たちは瞳で笑い合うと、愛しくも騒がしい二人に目を向ける。
「忍足！こいつのバカ頭何とかしろ！」
怒鳴る跡部。
「宍戸！跡部の偉そうな態度、どうにかしろよ！」
涙目の岳人。
俺と忍足はとうとう声を上げて笑い合う。
何て、愛おしい。

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「5月第2日曜日」は、母の日の前日に突如思いついて慌てて書いた記憶が…。
下宿パラレルの予告と銘打っていたにもかかわらず、本編が一向に出来上がりません（汗。
数は少ないですが、とりあえず出来た分だけ６万打企画でＵＰしちゃう予定です。