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カテゴリー、「監禁シリーズ」の1話から順にお読み下さい。


ファミレス会議(3CP)
~監禁シリーズ10~

「俺オムライス」
「おいおい神尾、お子様だな。俺は和風おろしハンバーグ定食で」
「ええ!?宍戸さんだってハンバーグじゃん」
「…冬の味覚御膳で」
「「海堂渋い!」」
「…そうっすか?」

ここは青学に程近いファミリーレストラン。
学校帰りの面々は、跡部の家で会って以来初めて、今度こそ三人きりで顔を合わせる。
「宍戸さん、遠いのにこんな所まですんません」
注文し終えたメニューをテーブルの端に片しながら、海堂が謝る。
「あ?全然平気。俺もう引退してて暇だし、下級生の邪魔になるからコートも使えないしな」
「へえ。人数が多いのも大変なんだ」
グラスの氷を頬張りながら、神尾は驚いたような声で言う。
「そう言う神尾はどうなんだ?練習大丈夫なのか?」
海堂が練習を終えた時すでに青学に到着していた神尾は、随分早くに練習を切り上げたことになる。
「ああ。うち昨日の雨でコート使えないから練習中止なんですよ。水捌け悪いんですよねぇ」
「…公立って色々大変なんだな」
宍戸は、今まで好きなようにコートを使えるのが当たり前の状況にいたから、思ってもみない返事に驚いたように相槌を打つ。
「そう考えると、青学が一番理想的かもしれねえ」
海堂の小さな呟きに、「そうかも」と二人は頷いた。

「ところで神尾、今日はどうした?」
前回集まる切っ掛けをつくったのも神尾だったが、今回も同様に神尾の発案だった。
「あ、そうそう!相談があって」
神尾はスプーンを持つ手を止めて、顔を上げる。
「宍戸さんたち、クリスマスって何かプレゼントします?」
勿論言うまでもなく「恋人に」だ。
「クリスマスかぁ」
神尾の言葉に、宍戸は行儀悪く箸を銜えたまま、腕を組んで天井を仰ぐ。
「クリスマス…」
海堂も箸を持つ手を止め、深刻な表情で繰り返す。
「俺、千石さんの誕生日にリストバンドあげたんですけど、そのお返しにって、例の携帯を貰った…ってゆーか押し付けられたんですよねぇ、実は。本体自体が高価かどうかは知らないけど、その後の使用料のこととか考えると、やっぱりそれなりの物を俺もあげなきゃいけないのかなって思って」
でも中学生だし、お小遣いも少ないしね~と、神尾は困ったように眉を下げる。
「まあ、携帯は千石がお返しに託けて無理やりお前に持たせたかっただけだろうし、気にしなくていいんじゃねーの?」
むしろ携帯を受け取ってあげた事こそが、何よりのプレゼントだったんじゃないか、と。思ってはいても、宍戸はあえて口にしない。
「海堂は?」
黙ったままの海堂に話を振れば、こちらは神尾よりよっぽど深刻そうに顔を上げる。
「クリスマスもそうなんすけど、越前のヤツ、クリスマスイブが誕生日なんすよ」
「ええ!?そうなんだ」
「…じゃあ、それなりのプレゼントって思っちまうよな」
「…何あげたらいいのか」
海堂はそう言って「はあ…」と悩ましげな溜息を漏らす。
「越前なら、やっぱテニス関係じゃねーの?」
宍戸が言えば、
「越前って何が好きなの?」
と神尾も真剣に考える。
「好き…ファンタとか、猫とか…」
「ファンタねぇ。ジュースをケースでってのも素っ気無いしな」
宍戸は唸り、神尾も首を捻る。
「猫、猫…。ぬいぐるみって歳でもないしな。男だし」
「うーん」と三人は悩み込む。
考えに行き詰まって、今度は海堂が宍戸に尋ねた。
「宍戸さんは?跡部さんに何あげるんすか?」
「あー?そうなんだよなぁ。俺も悩んでるんだよな。だってあいつ欲しいものは何だって持ってるし、何やるにしたって金額がさ…」
「確かに」
海堂と神尾は納得して頷く。跡部家の別荘にも本宅にも行った事のある二人は、生活の一部を垣間見ただけでも、その豪華さに驚かされたのだ。
「むちゃくちゃ金持ちだもんな」
「だろ?」
正直、ハンカチ一枚だって買ってやれそうに無い。
「でも跡部さんのことだから、宍戸さんがちょっといつも以上に甘えてみせたら、それで十分喜ぶんじゃないスか?」
「ああ!?」
思わぬ海堂の台詞に、宍戸はボッと頬を染める。
「そうっすよ。跡部さん、宍戸さんにべた惚れじゃないっすか。ちょっと可愛い洋服とか着てあげたり…。跡部さん、そういうの好きそうじゃねえ?」
神尾が海堂に同意を求めれば、海堂も遠慮がちに頷く。
「多分、それが一番喜ぶと思う」
「おいおいおい」
ますます顔を赤くして、宍戸はそっぽを向いた。
そしてそのまま視線だけ寄越して、二人に言い返すのだ。
「お前らだって、それが一番なんじゃねーの?特に千石!」
「ええ!?無理無理っ」
まさかの切り返しに、顔の前で両手を振る神尾。その頬も真っ赤に染まった。
そんな中、一人真剣な顔で考え込むのが海堂だ。
「そうか…」
「海堂…?」
宍戸が覗き込めば、海堂は照れるどころか納得したような表情で二、三度頷く。
「え?何?」
神尾も何事かと真顔に戻れば、海堂はもう一度小さく頷いて顔を上げる。
「越前がそれが良いって言うなら、それもありかな、と」
「ええ!?マジ?」
一番嫌がりそうに思えた海堂の決断に、神尾は大げさに仰け反る。
「お前、男前だな…」
宍戸もそう言って、目を丸くする。

「ふん。お前らにしちゃあ、いい結論じゃねえの」
突然振ってわいたような人影に顔を上げれば、そこには愉しそうに笑う跡部の姿が。
「げっ!何やってんだよ跡部」
宍戸は驚いて腰を上げる。
「神尾くん。俺もそのプレゼントがいいな♪」
「千石さん!何で!?」
跡部の後ろからひょいと顔を覗かせた千石に神尾は慌てるが、千石はくすくすと笑って跡部を指差す。
「跡部くんがね、情報くれたの。神尾くん、どこで集まるか教えてくれないんだもん」
「…こうやって押しかけてくるのが分ってるから、教えなかったんじゃん…!」
神尾は膨れっ面で、抱き締める千石の腕をつねり上げる。
「千石さん、相変わらず信用ないんスね。…海堂先輩、待ってるから一緒に帰ろう?」
バカにしたように千石に一瞥をくれてから、越前はにっこりと海堂に微笑みかける。
「ちゃんと自主練したのか?」
当然のように行き先と会うメンバーを伝えていた海堂は、最近プラスした筋力トレーニングを終えて駆けつけた越前を褒めるように、その頭をポンっと叩いた。
「俺、お前に何も言ってないんだけど…」
跡部の登場にびっくりして、中途半端に腰を浮かせたままの宍戸。
跡部はクク…と笑って、宍戸の左手を優しく包み込む。
「何のための指輪だ?」
「…あ、そっか」
宍戸は真っ赤になって俯いた。
使われることがないから、つい忘れていた機能。宍戸は跡部に言われてはじめて思い出したのだ。
「あ!それか~。発信機つきの指輪」
話では聞いていたが初めてみる本物に、千石は興奮して大きな声を出す。
「ちょっ…!」
宍戸が焦ってその口を抑えようとするが、一歩遅かった。
穏やかでないその言葉に、周りの客がちらちらとこちらを盗み見る。
発信機つきの指輪なんて、自分たちは只者じゃないですと言っているようなものだ。
「ったく、テメエは馬鹿か」
跡部は呆れたように千石に吐き捨てると、テーブルに置かれた伝票をすばやく掴んで会計へと歩き出す。
「おい、跡部!」
まだ食べ途中だった宍戸まで、強引に引き摺られていく。
「おーい、ごめんってば跡部くん」
全く誠意の感じられない千石の声に、跡部は振り返って言い捨てた。
「海堂と神尾の分は払っておくから、後は適当にやれ」
「ええ!?俺は!?」
そう言って足を縺れさせた宍戸を抱え上げ、カードで支払いを済ませた跡部は、足早に待たせておいた車に乗り込む。
「お前は、家でゆっくり夕食だ」
「…!」
その言葉が「ゆっくり食事をし直しましょう」という意味だけで無いのには、宍戸もすぐに気づく。
その後、跡部においしく頂かれてしまうのは、宍戸自身なのだ。
それっきり黙って、どこかへ忙しなく電話をする跡部に、宍戸は恐る恐る声を掛ける。
「…怒ったのか?」
何も言わずに出かけた所為かと不安になって宍戸が尋ねれば、跡部はとんでもないと首を振り、呼び出し音の間にすばやく口付けた。
「クリスマスプレゼントの予行練習がしたくなってな」
「!?」
プレゼントなのに予行練習って何!?
それではプレゼントの意味は無いのでは!?
そんな疑問符が頭を飛び交って文句を言おうとするけれど、跡部はもう電話相手と会話中だ。
それに何を言ったって、常識的な質問が聞き入れられないのは経験上分っているから、宍戸は諦めて身体の力を抜く。
そして、コトンと跡部の肩に頭を預けた。
どうせこのまま馴染みのブランド店にでも行って、宍戸が着れるドレスなんかを探すつもりだろう。
「もう、好きにして」
愉しそうに会話する跡部に、宍戸は小さく呟いた。

その頃、ファミレスでは。
「あーあ。宍戸くん拉致られた」
千石の無責任な言葉を「千石さんのせいでしょ!?」と神尾が怒鳴り飛ばす。
「跡部さんに、ご馳走様ですと言い損ねた」
律儀な海堂は、箸を片手に困ったように越前を見上げる。
そんな海堂の隣に座り込むと、越前はメニューを開き自分の夕食を選び始める。
そして、海堂を安心させるように言うのだ。
「大丈夫。よっぽど跡部さんの方が、海堂先輩に感謝してると思うよ」
「何でだ?」
不思議そうに小首をかしげる海堂。
越前は、手を上げてウェイターを呼びながら、クスクスと笑って言った。
「『海堂には出来るのに、お前は出来ないのか?』とか言って、女装でもさせるつもりだよ、あの人」
「なるほど」
越前の言葉に納得して、海堂は食事の続きを始める。
けれどすぐ、違う問題点に気づいてしまう。
(そうしたら、今度は宍戸さんに謝らなければ…)
どこまでも律儀な海堂の悩みは尽きない。

そして結局。
クリスマスイブには、三人とも可愛らしい女の子に仕立て上げられてしまうのだ。
もちろんそれは、ファミレス会議が行われる以前からの、暴君たちの予定通りだったりするのである。



これにて5万打記念企画終了です。
本当は「束縛4話」の3CPで受け子視点の話を書きたかったんですが、何度考えても受け子達だけではシリアスになれそうもない…。という事で、あえて番外編的に受け子達の話を持ってきました。
そして、これにて「監禁シリーズ」も「完」としたいと思います。気まぐれに番外編とか書くかも知れませんが…。

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ようこそお越し下さいました!「ハコニワ‘07」はテニスの王子様、跡宍メインのテキストサイトです。妄想力に任せて好き勝手書き散らしている自己満足サイトですので、下記の点にご注意くださいませ。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
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