軽井沢の睦言（跡×宍） 2007/06/09 (Sat)

何話かは忘れましたが、アニプリ合宿試合（青学対氷帝）のその後。

軽井沢の睦言（跡×宍）

トントン…と、扉を叩く音がする。
「景吾坊ちゃま…」
続いて自分を呼ぶ声が。
ここで自分をそう呼ぶのは執事と使用人しかいないが、この声は…。
「宍戸、ふざけてないで入ってこい」
「あれ？バレた？」
「当たり前だ」
開かれたドアの隙間から顔をのぞかせた宍戸は、まるで悪戯をした子供のように楽しそうな目をしている。

俺の飲みかけの紅茶を奪い、目を細めて味わう宍戸。
カップを持つ手には、また新しい傷が増えたようだ。
今日は関東決勝を控えた青学と練習試合をしたのだが、どうやら対大石戦で拵えたものらしい。
「また随分と傷を作ったもんだな」
「ああ？これか」
今気づいたように、俺の視線を辿って自分の手の甲を見た宍戸は、何だか嬉しそうに微笑む。
「大石が意外と粘り強くてな。試合が終わった時にはお互い泥だらけだったよ」
「その割には嬉しそうな顔だな」
「そりゃ、そーさ。楽しかったしな。決勝楽しみだな」
俺の別荘での合宿中に急遽告げた青学との練習試合だったが、突然の話にも皆乗り気でウチにとっても良い実力試しになったようだ。
「そう言う跡部も、悪役を随分楽しそうに演じてたじゃねーか」
「…知ってたのか？」
「ま、なんとなくな。手塚の頼みなんだろ？」
「まーな」
決勝前の練習相手と、越前の潜在能力を引き出す役を買って出た俺だったが、越前の手首の限界ギリギリまで追い詰めてしまったために、青学メンバーからはだいぶ「最低」呼ばわりされていたようだ。まあ実際はこちらの方が追い詰められていたのかもしれないが…。何にしても決勝は面白くなるだろう。
「まったく跡部は、手塚絡みの事となるとマメだよな」
「なんだ？」
突然の宍戸の言葉には、少し拗ねたような響きが混ざる。
「お前気づいてないのか？いっつも手塚手塚…。王者立海の名前なんて一言も出ないもんな。お前の基準はいつも手塚だ」
「…まあライバルだからな」
そんなに手塚の事を口に出しているつもりはなかったが…。
俺の言葉に、宍戸はますます面白くなさそうに顔をしかめる。
気のせいか、その瞳はうっすらと潤んで見えて。
「何だ宍戸。妬いてるのか？」
「はあっ！？違げーよ！」
焦ってカップを取り落としそうになる姿は、図星以外の何ものでもないだろう。
「安心しろ。お前が一番だから」
「なっ！？俺は何も言ってねーよ」
「分かったから、そう喚くな」
「っく…」
叫んでみたり、赤くなってみたり、俯いてみたり。
不安で俺の部屋までやってきたのは見え見えなのに、まったく意地っ張りなヤツだ。
「こんな夜遅くに俺の部屋に来たんだ。そのつもりなんだろう？」
こういう天邪鬼とは言葉では事が進まない。
俺は強引に宍戸の腕を引くとバスローブの胸に抱き寄せる。
あわててカップを置いた宍戸は、案の定あっさりと腕の中に転がりこんできた。
「…いいだろう？」
俺の囁きに、宍戸は小さく頷く。
その唇から細く長く洩れた吐息が、やっと安心した宍戸の心を表しているようだ。
「本当にお前は不器用で…可愛いな」
「悪かったな…」
俺の言葉の「不器用」ってとこだけを拾って反応するあたり。
やっぱり可愛い。
「さあ、悪人呼ばわりされて傷心の俺を慰めてもらおうか」
そう言ってベッドにもつれ込めば、宍戸の腕が甘く俺の背を抱く。
「仕方ねーな。慰めてやるよ」
そんな強気な台詞とうらはらに、俺の胸に額を摺り寄せる仕草。
まったく…。
あまりの愛らしさに、今夜も手加減は出来そうもない。

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確か軽井沢でしたよね？違ってたらごめんなさい…。