忍者ブログ
★初めてお越しの方は、お手数ですが「はじめに」を必ずお読みください。★
[109]  [108]  [107]  [106]  [105]  [104]  [103]  [102]  [101]  [100]  [99
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

カテゴリー、「監禁シリーズ」の1話から順にお読み下さい。

restrain-束縛-(④3CP編)
~監禁シリーズ7~

跡部は珍しく焦っていた。
車止めから吹き抜けの玄関ホールを抜けて、リビングへと続く廊下を足早に進む。
そして、その勢いのまま乱暴に開け放った扉の向こうには、あの日のメンバーが初めて一同に会していた。
「…跡部」
そんな跡部を、宍戸は複雑な眼差しで振り返る。
ソファに腰掛けている神尾に海堂、そして千石と越前の視線も一斉に跡部に集中する。
その光景に、跡部はようやく詰めていた息を吐いた。
自分が想像したほどの修羅場にはなっていないようだ。

― なんか、マズイ事になりそう。
それしか打たれて来なかった千石からのメールに、何事かと焦って帰ってきた跡部だったが、向かい合って座るメンバーの表情を見て、思った程の深刻な話ではないことに気づく。
「…で?一体何の会議をしようってんだ?」
跡部がそう切り出せば、宍戸は困ったような顔をする。
「別にそんなんじゃねーよ。神尾と海堂と会う約束してたのに、何だか千石と越前まで付いてきて…」
「そうだよ。尾行するなんて、千石さん最低ー」
「だって!神尾くん、俺に嘘付いてまで出かけるから、何かなと思って…」
「俺だって1人になりたい時くらいあるの!」
「1人じゃないじゃん!」
もう何度目か分からない言い合いを始める二人に、宍戸は溜息をつく。
「こいつらずっとこの調子」
「ったく…」
神尾の隣に腰掛けた海堂も呆れたような表情だ。
越前は、口を挟めば面倒に巻き込まれると思うのか、ひと事のようにそっぽを向いている。
これではちっとも状況が分からない。
「何がどうなってるんだ。順を追って話せ」
イラついた跡部が言い合う二人を遮れば、神尾は待ってましたとばかりに手を上げる。
「はーい。俺が、千石さんの今までしてきた悪行を知りたくて、宍戸さんと海堂に話しを聞くためにここに来ましたー」
嫌味ったらしい、わざとらしく間延びした言い方に、跡部は千石のメールの意味を理解した。
「…それで?目的は達したのか?」
「はーい。達しました」
「え!?いつの間に?」
神尾の返事に、千石が焦ったように腰を上げる。
詰め寄るようにして近づく千石から、神尾はぷいっと横を向いて視線を逸らす。
「千石さんが玄関の外で入るか入るまいか悩んでる間に、ぜーんぶ聞いちゃったもんね!」
「!?」
「今までたくさんの人を家に連れ込んで、俺たちにしたみたいな事いっぱいしてきたんでしょ?ねえ、跡部さん?越前?」
急に飛んできた火の粉に、跡部と越前は眉を上げる。そして、二人は同時に互いの恋人の表情を伺った。
「…先輩?」
見上げる越前の視線に、海堂は困ったように溜息をつく。
「…」
無表情に投げられた跡部の視線を、宍戸はおどけるように苦笑して受け止めた。
「跡部さんたち、自分のしてきたことは一切話してなかったみたいだね?俺二人から千石さんの話し聞くお礼に、知ってる事全部話しておいたから」
神尾が勝ち誇ったように、ツンとあごを上げると、越前は唸るように隣の千石を睨んだ。
「…あんた、何ベラベラ話してるんだよ」
「あー、いや。でも嘘は言ってないしー」
バツが悪そうに小さく消える語尾。
「ふん。自分の事は棚上げして、俺たちのことはべらべら話したって訳か?」
跡部も面白くなさそうに鼻で嗤った。
「でもさ!神尾くんが俺の話を聞いたって事は、君たちも自分以外の事は恋人に話したって事でしょ!?」
「…う」
千石の切り替えしに、越前は黙り込む。
「…」
跡部は無言のまま、腰掛けた脚を組み替えた。
結局が、お互い様って事である。

そんな中、宍戸と海堂は困ったように視線を交わす。
神尾のたっての願いでこうして集まり、乞われるままに、互いの恋人から聞いた千石の悪行を話して聞かせたが、正直こんな大事になるとは思っていなかったのだ。まさか自分らの恋人まで駆けつけて、揃って顔を合わせる羽目になるとは。
…まいったな。
そう二人の目は語っていた。
宍戸は、跡部とこういう関係になる前から、跡部の悪い噂は耳にしていた。それまでの被害者は主に氷帝学園の生徒だったから、風の噂で聞こえてきた、その被害者本人を見かけることも何度かあった。
けれど、そんな事は百も承知で付き合い始めたのだ。
海堂も小さく息を吐く。
越前が自分にした事を思い出せば、それは昨日今日思いついた事ではなく、何度もそういった経験があっただろう事は、その慣れた態度からも分かっていた事だった。時々話して聞かせる千石や跡部の遊びの数々も、近くで見ていなければ話せないような内容で。そしてもちろん、越前もただ眺めていた訳じゃないだろうことは容易に想像がついて。当然ショックはショックなのだが…。
神尾だって、そんな事は気づいていただろうに、こうやって証拠を集めるようにして自分たちに話を聞きにきた理由がいまいち分からない。
このまま気まずい雰囲気でいても仕方ないので、宍戸は思い切って尋ねてみる。
「それで神尾。話を聞いてどうするつもりだ。今更だろ?過去が覆るわけでもねーし」
その言葉に、神尾はにっこりと笑う。
「そう。過去なんて知ったって仕方ないじゃん。別に俺だって、今まで千石さんがしてきた事を聞いて、許せないから別れる!とか、そんな事が言いたいんじゃないんだ」
「…じゃあ、何なんだ」
回りくどい言い方に、海堂が苛立つ。
「簡単さ。俺はこんな千石さんの悪行を知ったけれど、一切それを責めたりしないよ?だからね、千石さん。千石さんも俺の過去をいちいち調べないで!」
「…そーゆー事ね」
何てつまらない痴話喧嘩に巻き込まれたのかと、越前は呆れたように呟いた。
「あっ!越前今バカにしたろ!?言っとくけどな、こんな事もしたくなる位千石さんってば酷いんだから!」
顔を真っ赤にして喚き散らす神尾に、仕方無しに宍戸が合いの手を入れる。
「で?酷いって何が?」
神尾は涙目で宍戸を振り返ると、その一つ一つを列挙し始める。
「まず俺の過去のクラスメートに片っ端から当たって、俺が誰を好きだったかとか調べる!それに、部活仲間と遊ぶことも許してくれないし、千石さん以外の人と下校すると怒る!携帯は千石さんと家の番号しか登録させてくれないし、毎月明細でどこに電話したかチェックする…!ねえ?異常でしょ!?」
神尾の激情ぶりも凄いが、宍戸と海堂はその内容にぎょっとする。
「マジかよ?ありえねェ、そこまでするか?」
宍戸が俯く千石を見遣れば、海堂は同情したような目で、傍らに立ち大きく肩で息をする神尾を見つめる。
「…そりゃ、ちょっと。弱みでも握って交渉したくなる気持ちも分かるな」
「だろ!?」
同意を得られたことに気を良くして、神尾はふんっと胸を張る。
「宍戸さんも海堂も、ここいらで釘刺しといた方がいいんじゃない?この二人だって、裏で何してるか分かんないぜ?」
「…!?」
神尾にしてみれば、何の根拠もない軽口のつもりだったのだが…。
「…越前。今、明らかにビクっとしたな…?どういう事だ?」
不自然に横を向く越前に、海堂は低く据わった声で問いかける。
「…跡部も。今、目が泳いだぜ?何かしてるのか…?」
一瞬崩れた跡部のポーカーフェイスを、宍戸は見逃さない。
不穏な空気に包まれる中、俯いて神尾の攻撃を受けていた千石が、次第に小さく肩を震わせ始める。
声も無く揺れる身体に、神尾はドキリとする。
(もしかして、泣かせちゃった!?)
そう思って、急におろおろとする神尾は、前かがみに千石の顔を覗き込もうとする。
「…千石さん?」
けれど、ゆっくりと顔を起こした千石は、泣いてなどいなかった。
笑っていたのだ。
ククク…、と漏れる、実に愉しそうな笑い声。
「千石さん?」
状況が飲み込めずにきょとん…とする神尾の肩を、急に伸ばされた千石の手が掴んだ。
そして、テーブル越しに強く引き寄せる。
「わっ、え!?」
テーブルに片手を着いて倒れるのを堪えた神尾に千石は素早く近づくと、そのまま強く抱き寄せる。
「過去を調べるなんて当たり前じゃない。神尾くんが俺より先に好きになったヤツなんて生かしておけないもん。携帯の履歴調べるのだって当然だろ?だって、神尾くんは俺の恋人だよ?他のヤツが俺の知らない所で神尾くんと話してるなんて、許せるはずないじゃん」
「なっ!?」
千石は酷薄な笑みを張り付かせ、ごく当然のように言い切った。
「ねえ?跡部くん?」
千石がそう同意を求めれば、跡部も片方の眉を上げて、当然のようにニヤリと嗤う。
「…跡部?」
その表情に、宍戸が息を呑む。
「越前くんだって、そうでしょ?」
「…越前?」
まさか、という海堂の視線を真っ直ぐと見つめ返し、越前もその幼さに似合わない大人びた笑みを浮かべる。
「まあ、それも有り、かな?」
「…!?」
思ってもみなかった一面に、海堂は開いた口を閉じることも忘れる。
「ほーらね?これ常識だから」
「はあ!?」
神尾は呆れて、抱きしめる腕から抜け出そうとする。
けれど、千石は力を緩めない。
「神尾くん、俺のこと好きでしょ?それくらい許してよ?」
「好きだけど!それとコレとは別!」
しぶとく暴れる神尾の身体を、千石はとうとう横抱きに抱き上げる。
「ちょっ、ン…!」
そして、煩い口を噛みつくようなキスで黙らせた。
「…千石。東の端の部屋が使える」
二人の様子を愉しそうに見物していた跡部は、絶妙なタイミングでそう言うと、キャビネットから取り出した鍵を放り投げてやる。
「サーンキュー。跡部くん♪」
それを受け取ると、千石は暴れる神尾を抱き上げたまま、部屋を出て行った。

「で?越前。テメエはどうなんだ」
二人が去った部屋で、海堂が問いかける。
「俺?俺は何もしてないよ」
越前は困ったような顔をして笑う。
「本当だな?」
「本当だって」
本当に本当だ。「今は」何もしていない。
海堂のプライベートは、そのストイックさ故調べるまでもなかったのだ。
女の影も無い。当然男の影も無い。
携帯の履歴に至っては、明細を取り寄せるまでもない。無造作に放り投げてある実物をちょっと覗き見ればいいことだった。当然のように暗証番号など設定されていないので、履歴から登録されている人間まで一覧できた。
そして、予想通りそこに並ぶのは越前の名、家族、部活のメンバー。以上。
心配する余地もなかったのだ。
「まあ、どうでもいいけどな」
珍しく投げやりな海堂の物言いに、越前は眉を顰める。
「…先輩、もしかして怒ってる?」
「…怒ってない」
ぶっきら棒な中に、感情的な色が見えるのが怒っている証拠だ。いや…。
「もしかして、拗ねてる?」
「…!?」
海堂はサっと頬を染めて、言葉を無くした。
「そっか。俺の聞きたくない過去を聞いちゃって、拗ねてたんだね?」
「…うるさい」
海堂は吐き捨てるように言う。
「俺が、今まで色んな人抱いてきたって知って、嫉妬しちゃった?」
「うるさい!」
図星だった。
分かっていた事でも、人の口から伝えられるのはやはりショックだ。
海堂は、震える唇を隠したくて、強くかみ締める。
「ああ、ダメだよ。そんなにしたら血出ちゃうから」
歩み寄った越前がそう言って海堂の唇を舐め上げれば、海堂は跡部たちの視線を気にしながらも、そっとその胸に縋りついた。
「…ごめんね、先輩。もう馬鹿な事しないから」
海堂の頭をギュっと抱きしめて越前が言えば、海堂も控えめにその背中に腕を回す。
「…帰ろうか?」
そして、俯く海堂を支えるようにして、越前は立ち上がった。
その時、跡部が声を掛ける。
「越前、西の奥が開いてる。使え」
「どーも」
千石と同様に、投げられた鍵をキャッチした越前は、ニヤっと笑って礼を言った。

「…おい、跡部」
二人きりになった部屋で、不安そうな表情で跡部を見つめる宍戸。
言いたいことは色々ある。けれども、やはり一番気になるのは…。
「お前も、俺の昔の事調べたりしたのか?」
そう不安気に問いかければ、目の前に座った跡部の口角がゆっくりと上がり、怖いぐらいの笑顔となる。
「調べて当然だろ?」
「!?」
「俺は優しいからな、先に教えておいてやる。お前が今まで付き合ったヤツらは調べがついている。お前に未練のありそうなヤツの処分は検討中だ。ちなみに携帯の通話履歴は全て分かるようにしてあるし、そのリングには発信機機能がついている」
「えっ!?」
驚いて自分の薬指を見つめる宍戸に、跡部はゆっくりと歩み寄っていく。
「外そうなんて馬鹿な真似はするなよ?」
「跡部…」
これは宍戸にとって、大切な宝物だ。勿論外すつもりはないが…。宍戸は複雑な気持ちで輝くプラチナを見つめる。
「どうした?変な顔して」
自分の行動に何の疑問も持たないのか、悠然と微笑む跡部の姿に、宍戸は戸惑う。
「何でそこまで?俺逃げないぜ?」
「何でだって?当たり前じゃねーか。大切な人を守るのは当然の事だろ?」
「…守る、か」
どこかピントのずれたその答えに、宍戸は小さく呟いた。
「俺が好きだろう?まさか、こんな事でガタガタ言わねーよな?お前は」
脅しとも取れる言葉。けれど、跡部の事だから本気でそう思っているのかもしれない。
強引に手を引き、強く抱きしめる腕に身を委ねて、宍戸は苦笑した。
「…ああ、何も言わねーよ。跡部の好きなようにしろよ?」
「いい子だ…」
跡部は大きく頷いて、宍戸の身体を抱き上げる。
「ゆっくり、可愛がってやる」
「…ばか」


初顔合わせです(笑。本当は受け子Sメインでいきたかったのですが、それだとシリアスからより遠のいてしまいそうだったので敢え無く挫折。
受け子Sは番外編的7話で、軽い感じで書きたいと思います。

PR
はじめに
ようこそお越し下さいました!「ハコニワ‘07」はテニスの王子様、跡宍メインのテキストサイトです。妄想力に任せて好き勝手書き散らしている自己満足サイトですので、下記の点にご注意くださいませ。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
これらに関する苦情の拍手コメントはスルーさせて頂きますのでご了承ください。
■連絡事項などがありましたら拍手ボタンからお願い致します。
■当サイト文書の無断転載はご遠慮ください。
■当サイトはリンク・アンリンクフリーです。管理人PC音痴の為バナーのご用意はございませんので、貴方様に全てを委ねます(面目ない…)。        
   
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
通販申込
現在、通販は行っておりません。申し訳ございません

・その頬は桜色に染まる(跡宍)400円
・社会科準備室(跡宍)500円


※詳しい内容は「カテゴリー」の「発行物」からご確認ください。

◆通販フォームはこちら◆
拍手ボタン
カウンター
お世話様です!サーチ様
ブログ内検索
プロフィール
HN:
戸坂名きゆ実
性別:
女性
自己紹介:
私、戸坂名は大のパソコン音痴でございます。こ洒落た事が出来ない代わりに、ひたすら作品数を増やそうと精進する日々です。宜しくお付き合いください。
忍者ブログ [PR]

photo byAnghel. 
◎ Template by hanamaru.