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鈍感宍戸。跡部がケナゲです。
鎖(跡×宍)
3時限目終了のチャイムが鳴り終えると直ぐに、跡部のクラスの扉が開かれる。数学の教師が前のドアから出るのとほぼ同時に、後ろから教室に飛び込んできたのは隣のクラスの宍戸だった。
「跡部っ!次体育なんだっ」
そう言って窓際の席に駆け寄ると、ぐいっと自分の袖を捲くり左手を差し出す。
「ああ、分かってる」
跡部も慣れた手つきで自分のポケットから何やら取り出すと、宍戸の手首に巻かれたブレスレットに手を伸ばす。
カチャっと軽い音を立てると、そのブレスレットが外れて跡部の手のひらがそれを受け止めた。
「サンキュー!」
受け止めたものが跡部のポケットに落ちるのを見届ける前に、宍戸は踵を返して自分のクラスへ帰ろうとする。
「宍戸、授業終わったらすぐ来いよ!」
「わーってる!」
背中に投げられた声に、宍戸は叫ぶように返事をした。
跡部はジャケットの胸に収められた、鎖をモチーフにしたブレスレットとそれ用の小さな鍵を、無意識に上から押さえた。
「…宍戸ってバカだよね」
その二人のやり取りを見ていた岳人は、呆れたようにつぶやく。
「ほーんと。いつのまにか跡部の思い通りなのに全然気づいてないC…」
机に頬杖ついたジローも、欠伸をしながらそう言う。
「ま、それが宍戸の可愛いとこなんやろ?」
忍足がそう笑えば、跡部は片眉を上げておどけたように微笑んで見せた。
まだ暑さが残る9月の初め。
部室でファッション雑誌を覗き込んでいた時、特集されていたブレスレットに興味を示した宍戸。それはまるで鎖のようなデザインで、厳つい作りが男らしく、日ごろアクセサリー類を好まない宍戸が珍しくページを捲る手を止めたのだった。
「宍戸こーゆーの好きなの?」
岳人が尋ねると、宍戸は小さく頷いた。
「ああ。カッコ良くねえ?」
「うーん。俺はあんまりゴツイの似合わないしなぁ」
岳人は自分が身に付けるのとはタイプの違うデザインをじっくり見ると、宍戸の顔と見比べてうんうんと頷く。
「確かに似合うかも。髪短くなったから特に。跡部もそう思わねえ?」
少し離れた場所で制服に着替えていた跡部に話しを振れば、珍しく乗ってきて指差すページを覗き込んだ。
「…ああ、良いんじゃねえ?」
決してお世辞を言わない跡部のその言葉に、宍戸も気を良くしてそのブランド名を確認する。
「うわっ、絶対買えねー!」
アルファベットで記載されたブランドは見慣れないものだったが、その金額は中学生が手を出すにはかなり高すぎた。
「どれ?うわっ、本当だ」
ジローもその桁数の違いに驚いた声を上げる。
「ホンマや。ほとんど10万や」
忍足も溜息をつく。
「こんな若者向けの雑誌に、手出ないような金額の商品載せるなよなー。期待して損した」
そう言って大きく息をつく宍戸。
「ま、似たようなの探せばいいじゃん」
慰めるように岳人が言えば「そうだな」と、宍戸は次のページを捲る。
そうして皆がスニーカーの写真に釘付けになり盛り上がる頃、跡部一人は何か考え込むように動きを止めていた。
そして、宍戸の誕生日。
放課後の部室でレギュラーメンバーがお菓子や雑誌、リストバンドなどをプレゼントして祝う中、跡部は宍戸に向かって無造作に小さな箱を放り投げた。
「やりーっ!跡部もくれるのか?サンキュー」
宍戸は椅子に腰掛けたまま振り向き礼を言う。
「…開けてみろよ」
「おう!」
言われるままに巻かれたリボンを解く。そしてゆっくりと蓋を上げれば、そこにはあの日に雑誌で見た鎖のブレスレットが入っている。
「…え?」
驚きに手を止める宍戸に、周りのメンバーが好奇心たっぷりに覗き込む。
「ええー!跡部、これって雑誌にのってたやつ!?」
宍戸の代わりに岳人が驚いた声を上げる。
「嘘っ。ムチャクチャ高かったよ?」
ジローもマジマジと覗き込むと、ある事に気づいた。
「似てるけど、ちょっと違うよ?」
留め金部分に小さな穴が見えるのだ。
「よく気づいたなジロー。それは特別に作らせたものだ」
ニヤっと笑った跡部は、呆然とする宍戸の手からブレスレットを取り上げると、その左手首に回してやる。カチっと音を立てて輪になる鎖。
「値の張るもんじゃねーから安心して受け取れよ、宍戸」
「…あ、ああ。ありがとう」
どんなに憧れていた物でも、10万もしたらとても受け取れない。もちろん返そうと思った宍戸の先回りをするように、跡部はそう言って宍戸を安心させた。
まさか手に出来るとは思っていなかったブレスレット。アクセサリーにしてはずっしりとした重みを手首に感じると、宍戸は素直に微笑んだ。
「すげー。カッコイイ!」
あの写真とは違うものかもしれないが、それでも負けず劣らず…いや、それ以上の出来に宍戸は手首を掲げてみせる。
「似合う?」
そう尋ねれば、皆口々に「似合うよ」と笑った。
跡部も小さく頷く。それから、ゆっくりと切り出した。
「宍戸、実は俺ももうすぐ誕生日だ」
「あ?ああ、そうだな」
月が替わればすぐに跡部の誕生日がやってくる。当然覚えている宍戸はすぐに頷く。
「何か欲しいものあるのか?こんなすげーモノはやれないけど」
首を傾げてそう言えば、跡部は待ってましたとばかりに口を開いた。
「ブレスレットと一緒に入ってる、それを俺にくれないか?」
「あ?何か入ってるのか?」
跡部の言葉にもう一度小箱を覗けば、クッションと箱の隙間に挟まるようにして入っている小さな鍵。
「…何だこれ?」
「くれないか?」
跡部が手を伸ばすから、宍戸は無意識に跡部の手のひらにそれを乗せてしまった。
「くれないかって、これ元々跡部がくれたんじゃん」
不可解なやり取りに、宍戸は不思議そうに眉を寄せる。
「あーあ…」
その跡部の行動の意味に真っ先に気づいたのは忍足だ。満足気に微笑む跡部と、全く理解していない宍戸とに小さく溜息をつく。
「あ?何だよ忍足」
呆れたようなその声に宍戸が振り返れば、忍足は宍戸の手首を指差す。
「そのブレスレット、鍵掛かってるで?」
「はあ?」
アクセサリーに鍵なんてと笑いながら外そうとすれば、忍足の言うとおりに外れない。
「…跡部?」
不安そうな宍戸の声に、跡部はニヤリと笑って返した。
「そーゆー事だ。外すには俺の持つ鍵が必要だからな。外したい時は俺に言え」
「ふざけんな!鍵返せ!」
驚いて宍戸が手を伸ばすが、跡部は寸のところでかわすと、その小さな鍵を自分の胸ポケットに放り込んだ。
「この鍵はお前がくれた物じゃないか。返せなんてセコイ事言うなよ」
「何言ってやがるっ!コノヤローっ!」
跡部の仕掛けた手の込んだイタズラに、宍戸は顔を真っ赤にして怒り飛びかかるが、跡部は身軽に避けて、さっさと部室の扉を開けて外へ出る。
「じゃ、俺は先に帰るから部室はちゃんと閉めていけよ」
それだけ言い残すと、宍戸の鼻先でバタンと扉が閉まった。
「…おい。風呂とか体育の授業とか。俺どうすりゃいいんだよ…」
呆然とつぶやく宍戸に、残ったメンバーも溜息をついた。
「あーあ。やられたな宍戸」
「跡部、すげー楽しそうだったね」
岳人とジローが同情を浮かべて苦笑いをする。
「ま、金持ちのお遊びやろ?付き合ってやり、宍戸?」
忍足にポンと背中を叩かれれば、宍戸はがっくりと肩を落とす。
「あーあ。気前が良いと思ったんだよなぁ。嫌がらせにこんな手込んだ事すんなよ…。急に疲れた。俺帰る…」
宍戸はそう言って自分の鞄を背負うと、フラフラと部室を後にした。
「あれ、相当本気やろ?」
忍足は宍戸の足音が聞こえなくなったのを確認してから二人を振り返る。
「当然。宍戸があんまりに鈍いから、跡部強行手段に出たね」
ジローは無謀な跡部の行動と宍戸の鈍さに溜息をついて、テーブルにばったりと伏せた。
そんな二人の会話に、岳人はまさか…と口にする。
「…え?もしかして跡部って宍戸の事好き、とか?」
「好きも好き。あれはきっと愛しちゃってるC…」
「いくら繋ぎ止めたいからって、そのまんま過ぎやろぉ。宍戸がどう出るか…」
「おい、マジかよ…?」
岳人は予想もしていなかった状況に、おろおろと二人を見比べるばかりだった。
そして、現在。
メンバーが心配したような喧嘩には発展しなかったが、跡部が可哀想なくらい何も進展もしていなかった。
跡部に鍵を開けてもらわなければ外せないブレスレットでも、自分にプレゼントされた物には違いないと。持ち前の単純さで、宍戸はあの日の夜には納得していた。
事実過ごしてみれば、困るのは先生の目につく体育の授業くらいで、冬服の今では他には問題は見当たらない。テニスの邪魔にもならない。
だから、いつものように宍戸は跡部に鍵を開けてもらうとジャージに着替えて校庭へ飛び出した。
まだ教師の来ない教室の窓から、校庭に出てきた宍戸の後姿を眺める4人。
跡部の気持ちを知るメンバーは、この状況に同情して思わず慰めてしまう。
「ま、気長に待てや。嫌がってないんやからそのうち気づくて」
忍足はそう言って跡部の肩にそっと手を置く。
「宍戸はその点お子様だから、跡部は苦労するねェ」
ジローも忍足の真似をして、ポンと背中に手を置いた。
「…知ったからには、応援するし」
まだ複雑な気持ちながら、岳人もそうエールを送る。
そんな仲間たちに跡部は珍しく困ったような表情で笑うと、右手で自分の顔を覆った。
「手前らに同情されるとは、俺も堕ちたもんだ…」
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