過去拍手 １ 2007/05/16 (Wed)

初代、拍手お礼SSSです。

跡宍１本。跡宍前提のジロ＋跡部１本。

scene　階段 （跡宍）

「跡部っ、行くな！」
届いた叫びに振り返れば、今来た下駄箱から続く階段を宍戸が駆け下りてくる。
その足元は踏み潰された上履きのままだ。
「…宍戸」
それを見たら、たったそれだけの事に。
何だってこの胸は…。

俺は腕に絡まる白く繊細な指を、そっと押しやる。
「跡部君って意外と不器用なのね、がっかり…」
そう微笑むと、彼女は少しも躊躇わずに傍を離れた。
「…お前はイイ女だったよ」
名前も知らない、聞こうとも思わなかった女だけど。
引き際を心得た女は格好がいい。
「ありがとう」
風になびいた長い黒髪をそっと耳に掛けると、彼女はそう一言残して校門を去っていく。

「跡部っ！」
足を縺れさせるようにこちらへ駆けてくる宍戸。
「宍戸…」
小さく呼べば転がり込んでくるその身体。
「ごめん。俺、素直じゃなくてごめん…」
腕の中での震える謝罪は、きっと半分は俺に、もう半分は彼女に向けられたものだった。
「大丈夫。あいつはイイ女だ。全部分かってるさ」
俺が言えば、ホッとしたような、少し拗ねたような複雑な顔をした。

そんな顔をするくらいなら…。
「もう、俺から離れるな」
汗ばんだ項に口付けて、強く、その背を抱いた。

scene　背中 （跡宍前提のジロ＋跡部）

「跡部はずるいよ…」
ジローはそう言って合わせた背中に体重をかけてくる。俺は膝を抱えるような姿勢になりながらも、その伝わる振動をただ感じている。
「…宍戸のテニスも、友達も」
指折るように挙げていくジロー。
「宍戸の大好きも、大嫌いも…」
息を継ぐように、大きく肩が上下する。
「宍戸の過去も、未来も…」
「…ジロー」
その声が、涙を堪えるように震えたから。
「跡部は、宍戸の全部を独り占めするんだ…」
「…ジロー」
それしか言えないじゃねーか。
何言われたって、俺は宍戸のたった一かけらだってやるつもりはないんだ。
「…泣かせたら、許さないんだから」
「言われるまでもねーよ…」
大切な幼馴染みに、そう誓う。

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この2本は、拍手を取り入れる以前に書き上げた物でした。
ＵＰするには短かすぎるし、でもこういう超短文を書くのは大好きで、始末に困っていた物でした。（笑
使い道が出来て良かったです。