[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
山吹と一緒② (跡×宍)
~猫宍シリーズ19~
俺が目を覚ましたら、明らかに部屋の様子は一変していた。
向こうに見えていたはずの麻雀メンバーは揃ってテーブルに臥せっている。時々千石がケラケラ笑って身を起こすのが不気味だ。
テレビは消され、駅伝中継を見ていたメンバーはグラスを片手におつまみを摘まんでいる。そして滝は、こまめに行ったり来たり、料理をしたり片付けたり。オヤジと化した忍足、南、東方の相手をする。
甲斐甲斐しい滝が気に入ったらしく、南と東方はご満悦だ。
「どうした?ぼけーっとして」
背中かから亜久津の声が聞こえる。俺が寝ている間ずーっとそうしていたらしく、大きな手のひらは俺の頭を撫で続ける。
「今日は寝ぼけなかったらしいな?」
「…跡部」
隣には、さっきまで麻雀をしていたはずの跡部が座っている。
そしてテーブルには、ワイングラスに殆ど空となったボトル。
「え?もしかしてみんな?」
「ああ、飲んでる」
「…なるほど」
千石の不気味な笑いは酔いの為らしい。
テレビ組が、いやにおっさん臭く見えるのもその為だろう。
「…滝、飲み屋の女将みたい」
「確かに向いてるかもな」
俺の言葉に亜久津は楽しそうに嗤った。
ようやく状況に納得して自分の周りを見回すと、俺が寝ている間に吸ったのか、テーブルの端には灰皿が置かれている。そして何本もの吸殻。
そうそう。さっきは自分の事で手一杯だったけど、亜久津に一度言ってやりたいって思ってたんだ。この煙草!亜久津は普通の学生とはちょっと違うし、興味本位で手を出してるって感じじゃなくて吸い方にも年季を感じるけど、だからこそ言ってやりたい。
「亜久津、吸いすぎ」
「…あ?」
急に怒り出した俺に、何を言われたのか分からなかったらしい亜久津が間抜けな声で聞き返す。
「だから、煙草吸いすぎ!止めろとは言わないけど、本数減らせよ?この調子じゃ1日2箱は吸ってんだろ?」
「…あー、3箱か?」
「3箱!?」
信じられない!コイツってば、あんな凄いテニスが出来るのにあっさりやめるし、しかもこんな不健康な事して。
俺が腹を立てる横で、跡部はこそこそと背を向けて立ち上がる。
…え?まさか!?
「跡部!お前も吸ってるのか!?」
「あー、今だけな」
バツが悪そうな顔で振り返った跡部は、まいったな…と呟いて手にした煙草をもみ消す。
何だかその手つきも手馴れていて…。
「あれ?宍戸に言ってなかったの?」
食器を下げる途中の滝が、意外そうな顔で会話に入ってくる。
「跡部、宍戸が煙草嫌いなの知って、慌てて止めたんだよね?」
「…滝。べらべら煩い」
「おお怖っ」
茶化すように言って、滝はキッチンへと消えて行く。
「フーン。知らなかった」
俺がジトーっと睨んだら、跡部は困ったように自分の顔を手で覆う。
「お前と付き合う前の話だって。クサクサしてた時期にちょっとな」
「クサクサ?」
跡部はいつだって自信たっぷりで、何の問題も無さそうに見えたけどな?
「お前の事だっての。俺の事なんて全く興味なさそうに、あっちこっちに愛想振りまいてただろ!?」
「はあ?知らねーよ」
俺はいつだってテニス一直線で、他の事なんて興味なかったし、ましてや愛想なんて欠片も無かっただろうよ。
「跡部も苦労すんな?」
俺たちのやり取りに、背中で亜久津が笑う。
そして、また新しい煙草に伸ばされた手を、俺はぺチンと叩いてやった。
「もう駄目だ」
そして俺は、取り上げた煙草をポケットに仕舞ってしまう。
「本数減らせ!」
身体を捻り亜久津の目を真っ直ぐ見つめて言ったら、亜久津のヤツ、ポカンと口開けて固まってしまった。
「…跡部、こいつ可愛いな。くれ」
はあ!?俺は煙草の話してるのに、何ふざけた事言ってるんだコイツは!
「ばーか。誰がやるかよ」
跡部も、驚きもせず当然のように言い返す。
そう言ってニヤリと笑い合う2人の間に、さっきまでのピリピリした空気は感じられない。
まあ、確かに。思えばこの2人って似た所あるしな、口の悪さとか…。切っ掛けさえあれば上手くやれるタイプなのかもしれない。
でも、煙草はダメだ、煙草は。
「酒は大目に見る。でも、俺の前で煙草は吸えると思うなよ!」
そう言って腕を叩いても、亜久津ってばクククって嗤うだけだ。
「跡部も!」
手を伸ばして、隣に腰掛ける跡部の膝を引っ叩いても、やっぱり喉の奥で笑うだけだ。
…こいつら、感じ悪いところも良く似てるよ。
俺はふて腐れて、力いっぱい亜久津に寄りかかってやった。
勢いをつけたから、流石の亜久津も驚いたみたいで変な呻き声を漏らす。
フン、ざまーみろ。俺の事笑うからだよ!
冬の日が沈むのは早くて、もう外はすっかり暗くなってしまった。
「そろそろ帰るぞ、千石」
そう言って東方が立ち上がっても、千石は何だか名残惜しそうで、すっかり仲良くなったジローと岳人の間で駄々をこねている。
「もう少しー」
まだ酔いが残ってるのか、口調は相変わらずのんびりだ。
「千石。神尾が田舎行っちゃって寂しいのは分かるけど、あんまり遅くなったら迷惑だから」
南も困ったような顔をする。
そっか。こいつらが今日千石に付き合ってやったのは、何仕出かすか分からないのもあるけど、恋人(なんだろう、多分)の神尾がいないくて千石が拗ねてるから、構ってやってたんだな。
「明日になりゃ帰ってくんだろ?情けねえな」
亜久津はにべも無く吐き捨てる。
「そうだけどさぁ。あっくんだって、宍戸君とさよならするの寂しいんじゃない?」
亜久津はまだ同じ姿勢で俺の尻尾を弄んでる。
こいつってば、本当に1日中これで過ごしたぞ…。
「ふん。また来ればいいだけの話しだろ?」
「…てめーな」
当然のように言ってのける亜久津に、呆れたように口を挟むのは跡部だ。
確かに、今日1日だって約束だったもんな。俺だって毎回じーっと座ったままだなんて疲れちまう。
「今度はテニスしようぜ?それならいいだろ、跡部?」
「しょーがねーな」
俺の提案に、跡部はやっぱり呆れたように笑う。きっと俺がそう言い出すの分かってたんだろうな。
でもよ、せっかくこんなメンバーが集まったのに、テニスしなかったのは勿体なかったって思う訳よ、俺としては。
すっかりテニスからは離れた生活をしているらしい亜久津は、面倒臭そうに舌打ちするけど、きっと相手してくれると思うぜ。こいつって見かけによらず優しい所あるから。
「いいだろ?亜久津」
そう言って腕を揺すったら、亜久津のヤツ満更でもない顔して「…わかった」って呟いた。
よし!これで青学のメンバーに続いて山吹のメンバーとも、この姿でテニスできるぜ!
「よし、決まり♪じゃあ、次はテニスだね!」
急に機嫌を直した千石は、そう言って元気に立ち上がった。少しふらついてるけど…。
明らかに名残惜しそうな千石と、ちょっと見には分からないけどやっぱり名残惜しそうな目をした亜久津は、今度こそ南と東方の言葉に従って帰って行った。
デカイ奴等が帰ってしまうと、後に残された部屋の惨状が余計に酷く感じる。
忍足はしつこく1人で飲み続けてテレビの前を陣取ってるし、ジローと岳人は明らかな飲みすぎで、千石たちを見送った途端、またテーブルにうつ伏せて寝息を立て始める。
「…ったく。こいつ等はいつまで居る気だ?散々散らかしやがって」
まるで家族のように当たり前に寛ぐ面々に、俺までつい、こいつらが客だって事を忘れ去っていた。山吹の奴等ばっかりを客と見てたから、こいつらも遊びに来てたって事が頭から抜け落ちてた。
どんなに滝が片付けて回ってくれたって、何人ものメンバーに端から散らかされたんじゃ手におえなくて、テーブルから床から、物が散らかりまくっている。
いつもの跡部ならそんな事許さないんだけど、今回ばっかりは後回しらしい。
跡部はソファに腰掛け、俺を膝の上に抱き上げる。
向かい合って俺の頬を両手で包み込んだら、跡部は大きく息を吐いた。
「いくら交換条件だからって、俺も良く耐えたもんだ」
そして、自画自賛だ。
まあ確かに、今日の跡部はすっげー大人だった。
最初のうちは、亜久津に殴りかかるんじゃねーかって心配だったんだけど。
「亜久津は小さいモノが好きなだけなんだよ。分かってんだろ?」
「まあな。じゃなきゃ許さねーよ」
どんなに俺の事を構っても、それは所謂恋愛感情じゃないんだ、亜久津の場合。きっと小さいモノとか可愛いモノとかが好きなだけだと思う。だから檀の事も、煩そうにしながらも放っておけないんだろうな。
「俺だって慣れない奴の膝で、結構頑張ったと思うぜ?」
まあ俺の場合、秘密をバラしちゃったのが自分なんだから偉そうな事は言えないけどな。
「よく言うぜ。あんな風におねだりしたり、お前だって満更でもねーんじゃねーの?」
「おねだり?」
「テニスだよ」
…ああ。次はテニスしようって約束した事ね。
「あんなの只の約束だろ?『おねだり』なんて嫌らしい言い方すんなよ」
「傍から見たら十分イヤらしいんだよ」
ちぇ。跡部の奴けっこうイジケてやがる。
「もう帰ったんだから、あんまり拗ねるなよ」
「あーん?誰が拗ねてるって?」
素直に認めればいいのに。捻くれた奴!
でも、全部俺の所為だもんな…。
「跡部、ごめんな?機嫌直せよ」
俺は跡部の首にギュってしがみ付いて、面白くなさそうに歪められた唇にチュってキスしてやった。
「…宍戸」
跡部、ちょっと驚いてる。
「機嫌直ったか?」
「…まだだな」
嘘つき。もう頬なんて緩んでて、すっかり許してくれてるくせに。
「じゃ、もう1回な」
今度は顔を傾けて、もう少し深く口付ける。
でも、跡部の腕が背中に回って強く抱きしめられたら、もう主導権は跡部に握られてしまう。
「もうちょっと大人なキスでもくれなきゃ、割に合わねーな」
「…ばか」
囁くように言った跡部は、俺から仕掛けたキスとは比べ物にならないくらい、激しく俺の唇を奪う。
「あっ、ん」
熱く絡まる舌に、俺の頭はボーっとなってくる。
見た目より切羽詰ってたのかな?跡部の奴なんだか強引で、ちょっとドキドキする。
焦って腕から逃げ出そうとしたら、先回りするみたいに、すぐに広い胸に抱きこまれた。
「1日我慢したんだ。もっと味あわせろよ」
「ン、ばか…ァ」
角度を変えて何度も貪られる。
気持ち良くて、目の前が霞がかって行く…。
「あー。失礼」
「!?」
くったりと跡部に身体を預けたら、頭上から酷く冷静な声が降ってきた。
「滝。邪魔すんな」
跡部は驚きもしないで、そう言い返す。
俺だけ逆上せ上がって周り見えなくなっちゃってて、激恥ずかしい!
「跡部は1日良く我慢したし、好きにさせてあげたい所だけど。このまま放っておいたら最後までヤルつもりでしょ?」
や、ヤルだなんて!滝がとんでもない事口にしてる!
「あたりめーだ」
当たり前かよ!?
「まあ俺はどうでもいいけどね。あいつ等には刺激が強そうだから一応声掛けてみたんだ」
その言葉に部屋を見渡すと、俺たちになんて見向きもしてなかった筈の3人が、興味津々な目でこちらを伺っていた。
「何や、エエとこやったのに…」
忍足のやつ…!
「ちぇっ!宍戸の可愛い声もっと聞きたかったCー!」
…ジローまで。
「面白いモン見れると思ったのにな」
岳人も!!
「ま、そんな訳だから。止めて正解でしょ?」
「ありがとうございます」
跡部は憮然とした顔してるけど、俺は心の底から感謝した。
「よーし、みんなシャキッとして!部屋片付けないと夕飯作らないからね!」
「わっ、それは困るわ」
思い出したように手を叩いて急かす滝に、忍足が自分の庭場を片付け始める。
「さっさとやっちまおうぜ!俺腹減った」
「えー?がっくんあんなに食べてたのに?」
岳人とジローもバタバタと働き始める。
そんな中でも、やっぱり面白く無さそうに口を噤んでる跡部。
ったく、仕方ないな。
「後で。ベッドでゆっくり、な?」
耳元でこそっと囁いたら、ようやく跡部は唇の端を上げて小さく笑ってくれる。
「覚悟しとけよ?」
ああ、分かってる。
俺は返事の代わりに、跡部の頬にそっと口付けた。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
これらに関する苦情の拍手コメントはスルーさせて頂きますのでご了承ください。
■連絡事項などがありましたら拍手ボタンからお願い致します。
■当サイト文書の無断転載はご遠慮ください。
■当サイトはリンク・アンリンクフリーです。管理人PC音痴の為バナーのご用意はございませんので、貴方様に全てを委ねます(面目ない…)。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
・その頬は桜色に染まる(跡宍)400円
・社会科準備室(跡宍)500円
※詳しい内容は「カテゴリー」の「発行物」からご確認ください。
◆通販フォームはこちら◆