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カテゴリー内、「猫宍シリーズ(跡宍)」の1話から順にお読み下さい。


青学と一緒① 跡×宍)
~猫宍シリーズ15~ 

どうしてもテニスが良いようだ。折角のクリスマスイブだってのに。
「…せめてウチのテニスコートにしとけ」
「え~。たまには外でやろうぜ?部活のメンバー意外の試合も久しぶりに見てーし」
「耳は?尻尾はどうする?」
最初の頃はどんなに宥めすかしても外に出ることを嫌がったくせに、慣れてきたらもうこれだ。
「…パーカーのフードで隠すし。尻尾も1日くらい窮屈なのは我慢するさ」
「知ってる他校生に会ったらどうする?さすがに縮んだのは隠せねーぞ?」
「まっさか、そうそう知ってるヤツになんて会わないだろ?平気だって!」
「ならいいけどな…」
何だか今日はひどく嫌な予感がするんだ。

「やっほー!宍戸、跡部♪」
「何や、試合すんの久しぶりやなァ」
「超楽しみ!跳びまくるぜ!」
「寒ーい。俺審判でいいよ」
ジロー、忍足、向日に滝。それぞれが口々に言いながらコートの入り口に集まってくる。
「こんな日につき合わせて悪いな。宍戸がどうしてもプレゼントはテニスが良いって言い張るもんだからな」
隣で今にも駆け出しそうな宍戸の頭をポンっと叩きながら俺が言うと、皆は何てことないように笑った。
「全然OKだよ!俺もテニスしたかったC」
「別に一緒に過ごす恋人もおらへんしな?」
「そうそう!俺なんて気合入れて準備運動も済ませてきたぜ!1試合目いっていいだろ!?」
「宍戸ー。私服も可愛いね?」
…どうも滝だけは別に興味があるようだが、寒い中集められたことには文句は無いらしい。
恋人として、クリスマスイブにねだられたプレゼントがコレとは情けないばかりだが、宍戸が望むならそれで良しとしよう。まだまだ1日は長いんだ。恋人同士の時間は夜に取っておけばいい。
「みんなサンキューな!俺久しぶりのテニスで激楽しみだぜ!」
こんなにテンションの高い宍戸は久しぶりに見る。身体が小さくなってからやたら目立つようになった大きな瞳を、さらにまん丸に輝かせて宍戸が笑えば、俺だけではなく全員がつい頬を緩めてしまう。最近遠慮なく宍戸に甘えるようになってきた日吉や、いっつも喧しい鳳は誘わないで正解だったな…。
「早く行こうぜ!」
待ち切れないで足踏みを始めた宍戸の手を取り、俺たちはコートへと続く階段を上り始めた。

「あれあれあれー?氷帝じゃん!?」
…ほらな。俺の勘は当たるんだ。
階段を上ってみれば、そこには見慣れたメンバーが顔を揃えていた。青学のレギュラーメンバーだ。
「わっ。よりによって青学かよ…」
向日が苦虫を潰したような顔をすると、滝も困ったように繋いだ宍戸の手を引いて自分の背に隠した。俺の横に居たんじゃ目立って仕方ないだろうから、賢明な判断だろう。
「やほーっ!こんちわ!氷帝もみんなでテニスかにゃ?」
賑やかな菊丸が真っ先に駆け寄ってくる。
「おうよ!お前らもレギュラー勢ぞろいか?」
かつてダブルスで対戦したことのある向日が菊丸の相手をする。そこへ大石も加わり話が盛り上がり始めると、今度は桃城が俺の前までやってくる。
「あれ?跡部さんクリスマスイブだってのに、こんな所に居ていいんスか?パーティとかは?」
「…んなモンしねーよ」
曲者の目を誤魔化せればいいが…。俺が宍戸から目を逸らせるために相手をしようと一歩踏み出したら、それを遮るように忍足が桃城に近づく。
「久しぶりやな~?曲者くん」
「忍足さん。氷帝の天才は腕鈍ってないっスか?しばらくやってないんでしょ?テニス」
「何を言うとるんや。試してみるか?」
良し。忍足が上手いこと桃城を遠ざけた。
菊丸に桃城。賑やかな二人さえ遠ざければ、残りのメンバーはそう軽軽しく声をかけてくるタイプではない。
少し離れたベンチで手塚と不二、そして河村が軽く手を上げて挨拶するのに返しながら、視線をずらすと乾は相変わらずのデータ魔っぷりで何やらノートに書き込み始めている。ここで会ったのを幸いとばかりに、俺たちのデータをとるつもりなのだろう。
あと誰だ?
そうだ。越前だ。越前と海堂の姿が無い。
俺が慌てて辺りを見回すと、背後から間の抜けた声が聞こえる。
「あ。宍戸さんだ」
「!!!!!」
俺たちは固まった。
離れた所で敵の気を引いていた向日と忍足も固まったのが見える。
しかし、そんな雰囲気に気づくこともなく淡々と越前の声は続く。
「宍戸さん、小さくなりましたね?」
「…ま、まあな」
ああ…。その宍戸の言葉で、俺たちの苦労は台無しとなった。
しかし、目の前であれだけ確信的に聞かれては宍戸も他に答えようがないだろう。
こうなったら、せめて耳と尻尾がバレないうちに撤退か?
俺たちメンバーが目配せを始めたところで、今度は海堂の低い呟きが聞こえる。
「あ、猫?の耳?」
ああああ…。そんな、メンバーたちのため息が聞こえてきそうだ。
極度の緊張からか、宍戸の耳がフードの下でピクピクと動いてしまったのだ。
「海堂先輩猫大好きだもんね。良かったね?」
「……」
何が良かったなのか、流石の海堂も返答に困っているが、宍戸はもっと困っている。前に立った越前と海堂の興味津々の目。特に海堂の目は宍戸がフードを脱ぐことを強く切望している。妙な気迫が漲っている。
「跡部…」
今にも泣き出しそうな表情で宍戸が俺を見つめる。
だからウチのコートにしとけって言っただろうが…などと、今更言っても始まらない。
まあ、相手は青学だ。何とかなるだろう。
俺は困り果てている宍戸の横へ立ち、その肩に手を回した。
「久しぶりだな。越前、海堂」
俺の言葉に2人は「ちーっス」と声を揃えて頭を下げる。
そしてもう一度俺を見る目は、やはり期待に満ち溢れていた。まあ、誤魔化せねーよな。仕方ない。
「お前たちを信用して打ち明けるが、他言はしないと約束してもらえないだろうか?」
俺の言葉に、何だか変なモノでも見るように驚きを隠さない2人。俺が下手に出るのがそんなに驚くような事か?失礼だなこいつら…。
遠くで傍観していた他のメンバーも集まってきて、とうとう俺たちを囲み込む。食い入るような皆の視線に、宍戸はこの姿で初めて登校した時のようにおどおどと肩を竦めた。
どうしよう…。そう宍戸の瞳が訴えるが、もうどうしようもないだろう。いつも冷静な手塚でさえ、口には出さずとも興味津々でこちらを注目する。
俺は小さく息を吐いてから、宍戸の頭からフードを脱がせた。
「…あっ!?」と青学メンバーが息を呑む。
驚きの視線の中、小さく震え始めた宍戸の肩を強く抱き寄せ、その頭を撫でてやる。
こんなに怯えなくたって、俺が何とかしてやるから。
「原因は不明なんだがな。宍戸の身体が縮んで猫耳と尻尾が生えてきたんだ」
本当に原因がわからないのだから、とりあえずはっきりしている真実だけを言ってみる。
目の前で宍戸の猫耳を目の当たりにした越前は、もちろん一瞬驚いたように表情を固まらせたが、真っ先に立ち直り、我慢できずに宍戸に手を伸ばす。
その指に怯えて、宍戸は益々俺に抱きつくが、越前は宍戸の怯えになど気づかないほどその姿に夢中になっていた。
「宍戸さん、触っていい?触らせて?」
「お、俺も!」
海堂も身を乗り出して訴える。
2人の顔は宍戸の姿をからかうとか、そんな雰囲気ではなかった。これはきっと、あれだ。中等部長と同じ人種だぜ、きっと。
「いいんじゃないか?なあ宍戸?」
俺が優しく背を撫でながら言えば、宍戸はやっと落ち着いたように身体の力を抜く。
そんな姿を後ろから見守っていた滝は、諦めたように苦笑して、もう片方の肩を撫でてやりながら宍戸に言う。
「尻尾きついだろ?もう出しちゃおうか?」
ただでも窮屈なのに、怯えて毛が逆立ったものだから、相当きつそうに見えたのだろう。耳が出てるんだ、もういいだろう。
俺は宍戸の背中を覗き込み、ウエストの隙間から尻尾を開放してやる。
「わあ…黒猫ちゃんだぁ。可愛いなー」
菊丸の嬉しそうな声。
それを合図に、青学のメンバーは挙って手を伸ばす。
「宍戸さん、怖くないよ?耳こんなに伏せちゃって…。驚かしてごめんね?」
越前はどうやら猫を飼ってるようだ。扱いに慣れている。耳の後ろを撫でられれば、宍戸は少しだけ緊張を解いて越前に微笑みかける。
「越前と同じくらいの背になっちまったよ」
「ホントっすね」
珍しく越前も嬉しそうに微笑む。
「…俺も、いいっすか?」
海堂は恐る恐る手を伸ばして、そっと猫耳に触れる。
「…柔らかい!」
試合の時は恐ろしい形相が、これでもかという程とろける。その表情を横で見ていた桃城は、宍戸の耳を見た事よりもよっぽど海堂の表情に驚いているようだ。なるほど、海堂も相当の猫好きのようだな。部活の仲間にも見せたことがないような顔を見せるくらいなのだから。
「海堂先輩、いっつも猫に逃げられますもんね。良かったっすね?」
後輩の越前にそんな言われ方をしても、海堂はうんうんと頷くだけだ。…本当に嬉しいんだなコイツ。
「…ねえ、跡部。是非データを」
…ゲッ。来やがった、乾。
「悪いな乾。それは勘弁してやってくれ。こいつもまだ混乱してるんだよ」
俺の言葉に、乾は残念そうに引き下がる。
「跡部…!」
次に切実な声で呼び掛けるのは不二だ。
「せめて写真くらいは…!」
不二の手には一眼レフの本格的なカメラが握られている。不二、この歳で写真が趣味なのか?
何にしても宍戸のこの姿が形に残るのは避けた方がいいだろうと首を振ろうとした所で、誰かが俺の袖を強く引く。
「…何だ」
って、おい。
犯人はウチのメンバーだ。
「跡部!俺も写真は撮っといた方がええと思う!」
…忍足の野郎!
「俺も!宍戸の写真欲しい!」
ジローまで…。
「別にコスプレ写真なんですー、で通せば平気じゃん?んなカリカリすんなよ」
向日までこの始末だ。
そういう小さな気の緩みから、秘密ってのはバレてくもんなんだよ…。俺の不安がわかるのか、滝も困ったように眉をひそめる。
「大丈夫、跡部。その辺はぬかり無く!一言でもバラしたり写真を流すヤツには、僕が制裁を加えるし!」
不二は腹の底が読めないアルカイックスマイルを浮かべ、皆を一瞥する。すると、青学メンバーには明らかに戦慄が走った。
…一体どんな目に合わされてきたんだ?こいつら。
しかし、これではっきりした。不二は青学テニス部メンバーの弱みを握っている影の支配者だ。手を組むなら元部長の手塚ではない。この不二だ。
「不二。好きなだけ撮影してもらって構わない。ただ、この話はここだけってことで…」
「…分かってる、跡部。勿論写真は全部確認してもらうし」
ふふふ。と目を細めて不二が微笑めば、誰も逆らうヤツは居ないようだ。苦笑いで皆頷いている。
そんな俺たちのやり取りに、全く興味なさそうな宍戸。自分の事だってのに、きょとんとした顔で俺と不二を交互に見つめている。
どんなポーズを要求されるかも分からないのに、宍戸はにっこりと微笑み掛ける不二に釣られて笑い返している。
以前から宍戸は馬鹿だなぁと思っていたが、最近益々そう感じる。そこが可愛いんだけどな…。
呆れる俺をよそに、宍戸は青学メンバーに撫で回されながら俺を見上げる。
「なあ、跡部。テニスは?」
…ああ。宍戸の正体がバレた騒ぎで、そんな事はすっかり忘れていた。
「バレちゃったなら、もう遠慮なく出来るよな!」
「…そうだな」
こいつは心配性なのか楽天家なのかさっぱり分からない。ただ、テニスに関してだけは譲れないって所だろうか。
さっきまで怯えてすがり付いてきたヤツとは思えない、好奇心に輝く瞳。
ったく、しょーがねーヤツだ。でも、約束だもんな。今日は思い切りテニスに付き合うって。
小さな頭を抱き寄せ、サラサラ揺れる髪に口付ける。
「よし。やるか!青学メンバーもいることだしな」
「よっしゃ!」
宍戸がガッツポーズをする。
そんな宍戸の姿に、不安気に声を掛ける大石と河村。
「…宍戸くん、大丈夫?そんなに小さくなっちゃって」
「そうだね。体力的に平気なのかな?跡部」
心配してくれているのは理解できるが、途端に寂しそうな表情を見せる宍戸。
正直俺たち仲間も、最初この宍戸相手に全力でぶつかるには躊躇したくらいだから、他校の生徒が心配するのは当然だろう。この2人は特に気配りの利くタイプのようだしな。
そんな中、怒ったように割り込んできたのは越前だ。
「大石先輩、河村先輩!それって宍戸さんに失礼っすよ?俺にもね」
そう言って越前は宍戸の隣に並ぶ。
「俺と大して変わらない体格でしょ?チビはテニスが出来ないとでも?」
ニヤリと挑発的な笑みを浮かべる越前に、大石は焦ったように首を振る。
「ち、違うよ!誤解だよ。少し心配だっただけなんだ!」
「気を悪くしたかい?失礼な事言っちゃったな。ごめんよ宍戸」
河村も身を縮めて頭を下げる。
「い、いや!平気。頭上げてくれよ!…心配してくれてありがとな」
宍戸が言えば、2人はほっとしたように微笑んだ。
「じゃー、宍戸さん。行っちゃいます?俺たちでダブルス」
思いがけない越前の誘い。宍戸はパアっと嬉しさに頬を染めて大きく頷く。
「それ、いーな!こんな機会滅多に無いもんな」
良かった。せっかくのクリスマスイブだ、悲しい顔させたままじゃ終われねーよ。
「よし。じゃあ俺が相手するか」
俺が上着を脱いでそう言えば、宍戸はもちろん越前まで瞳を輝かせる。
「誰か、俺とダブルス組むヤツいねーか?」
「え?マジ?跡部がダブルス!?」
向日は嫌そうな顔で聞き返した。氷帝メンバーは総じて遠慮しますって顔してやがる。まあ、ヘマしたら俺は容赦しねえからな。嫌がるのも当然か。
「はーい!俺やるやる♪」
両手を挙げて駆け寄ってきたのは菊丸だ。
ふん。いいじゃねーの。ダブルスの名手が直々に立候補とは有難いな。
「よし!菊丸。俺の足引っ張んじゃねーぞ?」
「跡部こそ!」
菊丸はにやにや笑ってそう返す。
楽しくなって来たじゃねーの。
「よし!コートに入りやがれ」
「よし。行くぜ越前!」
「ちーっす!」
俺の掛け声で、宍戸と越前のミニコンビは気合たっぷりにラケットを握った。
「よーっし!大石見ててねー♪」
菊丸の声に大石は嬉しそうに手を振る。
さあ、久しぶりに俺様の美技を見せてやろう。
宍戸。お前にはこれが最高のクリスマスプレゼントだろう?


 

何故青学を選んだかと言えば、偏に猫宍とリョーマを並べたかったから(笑)
次回も青学の続きです。誰も期待はしていないとは思いますが一応宣言しておきます。テニスシーンは書きません。書けません…!ルールも良く分からないんで(汗)ごめんなさい★
しっかし、GW明けにクリスマス話って(泣)

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ようこそお越し下さいました!「ハコニワ‘07」はテニスの王子様、跡宍メインのテキストサイトです。妄想力に任せて好き勝手書き散らしている自己満足サイトですので、下記の点にご注意くださいませ。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
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