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幼稚舎時代の跡宍の馴れ初めを、ジローの語りで。
甘い、かな?


俺の幸せ (ジロー+跡宍)

「てめーっ、表に出やがれ!」
「あーん?うるせーよ」
いつもと同じ休み時間。
俺の前の席の跡部と、わざわざ自分のクラスからやってきた宍戸が、相変わらずの喧嘩をしてる。また、お互い覚えてないようなつまらない理由がきっかけなんだろーな。
うつ伏せてウトウトする俺の頭上で怒鳴り合う2人に、クラスメートはきっと呆れたり苦笑したり、ちょっと迷惑顔だったりしてるはず。でも俺は違う。
「上等だ!その喧嘩買ってやる」
そんな跡部の声に、俺は顔を上げる。
「外行っちゃだめだよ。俺の子守歌~」
「ハア?子守歌?」
俺の言葉に2人は不思議そうに首を傾げる。そして、言い争いに水を差された感じで、揃って椅子に腰掛け直した。
良かった。俺は今度こそ昼寝に入ろうと本格的にうつ伏せ直した。
また傍でブツブツ言い合い始めた声は、俺にとっては何年も前から聞き慣れた子守唄だ。安心して瞼を閉じる。
そうだ、今日はあの日の夢を見たいな。この2人が初めて想いを通じ合わせたあの日。俺の大切な、素敵なあの日の記憶…。

幼稚舎の教室。
俺たちはまだ10歳で今よりだいぶ身体は小さかったけど、跡部はその頃から堂々としていて、いっそふてぶてしいくらいの態度で席についていた。
この頃は今以上に外人に間違えられる容貌で、金髪に近い明るい色の髪に澄んだ青い瞳は、まるで西洋のお人形のようだった。誰もが見惚れるその姿。ましてやあの跡部家の一人息子だから、俺たちみたいな子供だって「めったな事は出来ないぞ」って親に言い含まれなくたって知ってたくらいだ。
そんな中、唯一跡部にちょっかいを出すのが宍戸だった。俺と同じくらい背も低くて小柄だったけど、いかにもなガキ大将だった宍戸。お坊ちゃん校には珍しい口の悪さでからかうのはいつもの事だった。
この日も宍戸は、席で文庫本を広げる跡部に、斜め後ろの席から消しゴムを千切っては投げ千切っては投げを繰り返してた。
跡部がそんな宍戸を相手にしないで、平気な顔をして本を読み続けるのもいつものこと。
「何イイ子ぶって休み時間まで本読んでんだよ、跡部~」
また宍戸が先に根負けした。
声をかけられて、初めて跡部はチラリと振り返ったけど、その表情は苛められてる子供がビクビク苛めっ子の顔色を伺うようなそんな可愛いものじゃない。完全に相手を見下した表情。伏せ目がちにの眼差しに、口の端に浮かぶ嘲笑うかのような笑み。
この顔で振り返られた宍戸が跡部に飛びかかって…というのがお決まりのパターンなんだけど、その日だけは違っていた。
いかにも1人では何もできなそうな跡部の金魚のフンたちが(跡部は全く彼らに興味無さそうだったけど…)珍しく声を上げたのだ。自分たちは跡部に一番近い信頼を受けている仲間なんだという、見当違いのアピールをしたかったのかもしれない。
けれど結果的に、彼らにしてはなかなか良い仕事をしたということになったんだけどね…。

「宍戸!そうやって跡部君に嫌がらせをするのはやめろよ!」
1人の発言に、まわりのメンバーは大きく相づちを打つ。跡部家のブランド名に魅力を感じた親たちに「跡部くんと仲良くするのよ」と教えられ学校に来てるような奴らだったから、俺にはちょっと媚を売って株を上げようとしているようにしか見えなかった。
当然宍戸はそんな奴らを相手にしない。見え見えな奴らの考えをバカにしているのが周りに分かるくらい、わざとらしく鼻で笑ってみせた。
「金魚のフンは黙ってろって」
ちらりと視線を向けられるだけでシッシと手で払われた奴らは、すごくプライドを傷つけられたみたいだった。
俺を含む何人かのクラスメートは奴らの嫌らしい態度がすごく嫌いだったし、跡部がお金持ちだからって媚び諂わない宍戸の態度の方がよっぽど気に入ってたから、そんな気持ちを隠しもしないでニヤニヤ笑って眺めてた。
そんな俺たちの態度が、余計奴らの頭に血を上らせちゃったらしいんだよな。
「ふっ、フン!どうせ宍戸は跡部君に構って欲しくてちょっかい出してるだけなんだろ!?」
顔を真っ赤にして憤慨しながら、奴らの中の一人が叫んだ言葉。
黙って引き下がる訳にいかなくて咄嗟に口をついて出たセリフだったみたいなんだけど、これが意外な攻撃になったんだ。
「なっ!?」
真っ赤になって固まる宍戸。
最初は宍戸がどうしてこんなに驚いて顔を真っ赤にするのか良く分からなかったけど、すぐにそれは図星をさされたからだって気づいた。
口をパクパクさせる宍戸の姿に、図に乗った奴らはここぞとばかりに追い討ちをかける。
「宍戸、お前跡部君と一緒にいる俺たちが羨ましいんだろ?」
「だからそうやって、跡部君にちょっかい出して気を引こうとしてたのか?」
「ガキくさい奴だな!」
跡部からすれば、別に奴らと仲良く一緒にいるつもりはなかっただろうけど、実際宍戸は奴らの言うように感じてたのかもしれない。
何も言えずに唇をかみ締める宍戸の姿がいたたまれなくて、俺たち数人が止めようかって目で合図しあった時、調子に乗った1人がとうとう決定的な言葉を発した。
「お前、跡部くんが好きなんだろう!?」
「なっ!?違…」
確信を突かれた言葉にさすがの宍戸も黙っていられなくて、思わず否定しようと顔を上げた。
その時。
俺は、それにきっと宍戸も。見てしまったんだ。
宍戸が否定の言葉を言おうとした瞬間、傍観を決め込んでいた跡部の顔が泣きそうに歪んだのを。
今思えばガキくさいのは跡部だって一緒で、宍戸が自分を構ってくれるのが嬉しくて、毎回あんな挑発するような態度をとってたんだよね。
言いかけた否定の言葉を聞いて、一瞬ショックの表情を見せた跡部を見逃さなかった宍戸。次の瞬間、宍戸は跡部の横に歩み寄っていた。そして椅子に腰掛ける跡部の肩を抱き寄せると、大きな声で言ったんだ。
「あ、ああ。そうさ!俺は跡部が好きなんだ!手前らになんて跡部は渡さねーよ!」
すっごく、すっごくビックリした。
俺も奴らも、クラスメートも。跡部本人だって驚きのあまり席を半立ちになって宍戸を食い入るように見つめてたっけ。
すっごく男前だろ?宍戸ってそーゆーヤツなんだ。やることは子供っぽくても、大事なことは忘れない。
跡部に傷ついた顔させるくらいなら、こんなことを皆の前で言うのなんて何てことないんだ。
ただでも「好き」とか「嫌い」ってことに敏感になる年頃なのに、その後自分がどれだけからかわれるかなんて二の次だったんだよ。
もう金魚のフン達も言葉を失って、みんなして口をポカンと開けて事の成り行きを見守っていた。
それで、その後の跡部がまた良かったんだ!
ビスクドールの様なちょっと見人間味の薄いその表情が、文字通り薔薇色に綻んでいったんだ。はにかむ跡部は、もう世界中のどんな美少年美少女が束になってかかったって敵わないほど、綺麗で可愛くて。
「…俺も、宍戸が好きだ」
縋るように宍戸の袖を掴みそう言う姿は、宍戸でなくたってその場で抱きしめるよ、うん。
「ホントか!?」
そう聞き返しながらも、すでに跡部を強く抱きしめていた宍戸。
背は跡部より少し低かったけど、男らしい宍戸の行動に、きっと跡部のナイトになって、これからずっと仲良くしていくんだろうって。跡部のことをお姫様みたいに大切に守っていくんだろうって、俺はすごく幸せな気持ちになったんだ。

「おい、ジロー!休み時間終わるぜ?」
「…ん?」
呼ぶ声に俺は薄っすら目を開く。うつ伏せた身体を起こせば、俺を見つめる2人の瞳。
「俺、教室戻るから」
俺が起きたのを確認すると、宍戸は俺の頭を数回撫でてドアへ向かう。
「宍戸!次の休み時間も来てね」
「ああ?お前いっつも寝てるくせに。…ま、来るけどさ」
咄嗟に出た俺の言葉に、宍戸は不思議そうな顔をしながらも約束してくれた。
背中で手を振る宍戸の姿を、俺と跡部はいつものように見送る。
跡部はあの頃よりずっと逞しくなって、もう宍戸をすっぽりと抱きしめてしまえるけれど、見つめる瞳は変わらない。いつも喧嘩してたって、それは1つのコミュニケーションで相変わらず仲が良い証拠なんだ。
「ねえ、跡部。宍戸は今でも跡部のナイト?」
「あーん?」
俺の質問に、跡部は少し眉をしかめる。
「お前またあの時の夢見たのか?その夢見るといつもそう聞くよな」
「…そうだっけ?」
俺はいつも寝ぼけてるから、忘れてるのかもしれない。でも何度だって聞きたいんだよ。
どうしても言って欲しくてジーっと見つめる俺に、跡部は呆れたように笑い出す。
「お前は変なところで頑固だな」
俺が諦めないと悟ったのか、跡部は苦笑いで俺の頭を撫でる。
「そうだな。宍戸は今でも俺のナイトだよ。」
「男前な?」
「そう男前な」
そう言って俺たちは笑い合った。
俺の大切な宝物はちゃんと隣にある。分かってるけど、時々こうやって確認して幸せを噛み締めるんだ。2人と一緒に過ごせる幸せを。
「…でも実は、俺があいつを抱いてるから、俺がナイトかもしれないがな」
こそこそ…と耳元で囁かれる跡部の言葉。
「知ってるよ♪」
「そうなのか?」
「見てれば分かるCー」
「そんなもんか?」
「うん!」
そんなのどっちだっていいんだ。跡部と宍戸が一緒にテニスして、内緒話してはクスクス笑い合って、時には喧嘩して、そうやって仲良くしてくれてれば。
そんな2人の隣にいられることが、俺の一番の幸せなんだから。


 

ジロー誕生日オメデトウvお祝いのジロ宍書こうと思ったけどネタが浮かばなかったから(酷)、ジロ語りの跡宍でした。

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