ハナミズキ （忍×岳） 2007/04/29 (Sun)

忍岳。
これでもかって位のバカップルです（笑）

ハナミズキ　（忍×岳）

春の長雨とようやくサヨナラして、今朝は久しぶりに綺麗に晴れ渡っている。
「やっと練習できるなあ」
朝練に向かう途中に出くわした侑士が、隣で大きく空を仰いだ。
いくら水捌けが良いコートでも、雨が降りしきる中では当然練習できなくて、最近は筋トレばっかりの日々だった。
体力付けなきゃいけない俺にとっては、もってこいの期間だったんだろうけど、やっぱり外で飛び跳ねてたいよなぁ。
「なあ、がっくん。見てみ。ハナミズキが咲いてきたで？」
「ハナミズキ？」
ハナミズキって言ったら、数年前にヒットした曲でしか聞いた事がないんだけど。
「この辺に咲いてるのか？」
「この辺も何も、この通り沿いに植わってるの、みんな『ハナミズキ』や」
「え？そうなの？」
侑士が指差すのに合わせて、俺は街路樹を向こうまで見渡す。
「へえ、樹なんだな。小さな花だとばかり思ってた」
なんか名前の響きが可愛いらしいから勝手に勘違いしてたけど、傍らに植えられた樹はすごく立派に育ってて、開き始めた花は見上げなければいけないくらいだ。
「花っちゅーか、正しくは『ガク』らしいんやけどな。可愛いやろ？ひらひらしとって」
「そうだな」
さわやかな初夏を予感させる風に吹かれて、花びらはチョウチョの羽みたいに長閑に揺れている。
「桜ももちろんエエけどな。俺は桜が散った後に咲き始めるハナミズキが大好きなんや。桜は何や儚い感じがするけど、ハナミズキが咲く頃って真青な空が気持ち良くて。暖かくなるぞーって気するやろ？」
「大会の季節がくるぞーってか？」
「それも有りやな」
確かに侑士の言う通りかもしれない。今朝の空は本当に綺麗で、テンション上がるんだ！ハナミズキの葉っぱの先で、夕べの雨粒がキラキラ光ってる。
「あー！何か飛び跳ねたくなるっ！」
すっごく気持ち良くて、楽しい季節が来るぞってワクワクする。
俺が助走をつけてジャンプし葉っぱの先を突付いたら、光の粒がパアって飛び散った。
「冷てっ」
まだ朝の気温は低いから、頬に降った雫は冷たく感じた。
そんな俺の後ろから、侑士の笑い声が聞こえる。
「がっくんは『ハナミズキ』によう似とる」
「ええ？俺？どこが？」
小動物とかに例えられる事は多いけど、こんな背の高い樹に例えられるのは初めてで、俺は聞き返す。
振り向いたら、侑士はすごく優しい顔して笑ってた。
いつも俺を見守ってくれてる、すげー安心する笑顔で。
「ハナミズキの花ってみーんな上向いて、お日様目指して咲いてるやろ？」
言われて見れば、確かにひらひらと揺られながらも、どの花も上を向いている。
「気持ち良さそうに空見上げて、楽しそうにゆらゆら揺れて。そんな可愛ええ所ががっくんに似てるかな」
「…恥ずかしいヤツ」
可愛いとか、男の俺に向かって堂々と言うヤツって侑士くらいだ。
「花びらの先の薄紅色もな、がっくんを思い出させる」
追いついてきた侑士は、そう言って俺の髪を一房すくい、そっと頬擦りした。
「…綺麗な色や」
「バカっ」
超ーっ！恥ずかしいヤツ！
俺の頬まで薄紅色に染まりそうだから、慌てその指先から逃れて走り出す。
「わっ！？がっくん待って！置いてかんといてー！」
意表を突かれた侑士は、驚いたような声を上げて俺の後を追ってくる。
でも俺は、わざとスピードを上げてやった。
「俺がハナミズキなら、侑士がお日様だなっ！」
俺は大きな声で空に叫ぶ。
俺はいつだって侑士を追いかけてるから。こんな風に前を走ってても、心はいつも侑士を追いかけてるから。
「岳人っ！」
珍しく真剣な侑士の声。
本気を出した侑士は、本当は凄く速いから。
俺が捕まるまで、５・４・３・２…
「捕まえたっ！」
やっぱり、俺はすぐに侑士の腕の中。
「もー、朝からあんまり可愛ええこと言わんといて」
そう言って侑士は、ギュッて俺を抱きしめた。
でもさ、ほら。
「恋の季節だしね」
そうおどけて笑ったら、今度は頬にキスされる。
やっぱり恥ずかしいヤツ！
侑士に抱きついて空を見上げたら、青をバックに薄紅の花びらが楽しそうに踊ってた。

「…ジローお前先に行けよ」
「えー。亮ちゃんが行きなよ。俺あのバカップルと知り合いだと思われたくないCー、」
「同感」
いつもの事ながら、2人のあまりの甘々っぷりに、後ろから見守る仲間も空を仰いだ。

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あまりのバカップルっぷりに居たたまれなかったので、ジローと宍戸にオトして頂きました。