忍者ブログ
★初めてお越しの方は、お手数ですが「はじめに」を必ずお読みください。★
[86]  [85]  [84]  [83]  [82]  [81]  [80]  [79]  [78]  [77]  [76
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

4/1~4/10UP済み「猫宍奇想曲」→4/18~UP済み「猫宍夜想曲」の順にお読み下さい。


猫宍夜想曲④ (宍+忍)
~猫宍シリーズ13~


「ほんま、こないに小さなってもうて…」
横向きに腰掛け、忍足と向かい合うようになった俺は、ジローの寝息が聞こえなくなるくらいにドキドキしている。何だかさ、忍足のヤツいつもと違うから。
「…何、緊張してるん?」
少し伏せ気味になったんだろう俺の耳を優しく起こすようにして、忍足は毛の流れとは逆向きに耳を撫で付ける。
「…尻尾も」
忍足は愉しそうに呟いて、今度は上履きのつま先で俺の尻尾を軽く触れた。少しだけ、毛が逆立って太くなった尻尾。
右肘を机に付いて顎を支える忍足は、いつものへらへらとした笑顔は浮かべていない。甘く瞳を眇めて唇の端だけで微笑むその姿は、女子が騒ぐのもなるほど…と思えるような大人っぽい雰囲気だ。
日が傾きかけて教室が茜色に染まっていく。忍足の大人びた微笑も、同じ色に染め上げられていく。
そんな風景に、俺の頭を何かが過ぎった。

…あれ?この景色なんか知ってる。

俺が、ふと過ぎった記憶を思い出そうと視線を逸らしたら、ガタっ…と音を立て忍足が腰を上げた。
その音に驚いて、思わず俺は身を縮める。
「…俺が何かするって、思うた?」
ただ驚かすためだけだったのか、忍足は何も無かったようにもう一度深く腰掛ける。
「…忍足」
こいつ、俺で遊んでやがる。…むかつく奴!
何だからしくない緊張感に、教室中が不思議な雰囲気になる。
何だよ。俺相手に変な色気出してんなよなァ。気色悪いし。
なんて思いながらも、俺はさっき過ぎった何かが気になって仕方がない。
そんな俺に、忍足はす…っと指を伸ばす。
ひんやりとした指は、俺の頬を優しく撫でてそのまま首筋へと滑って行く。
…あー、もうすぐ思い出しそうなんだから、邪魔すんなよ。
大きく開いた指は想像以上の大胆さで、俺の項から後頭部へと上って行き、甘く、髪をわし掴まれる。
面倒でしたいようにさせて居たら、まるで何かに降参したかのように喉を晒してしまう。
「…跡部に独り占めさせとくのは、勿体ないな」
「…!?」
忍足の聞きなれない標準語に、俺はビクンと肩を揺らした。

思い出した。何でこんな事、すぐに思い出せなかったんだ!

「…お前ら何してやがる」
俺が忍足の手を押しのけてガタンと立ち上がるのと同時に、教室に響き渡る跡部の声
「…跡部」
顔を向ければさっき忍足が入ってきたのとは逆の入り口に、やっぱりドアに寄りかかるみたいに立つその姿。
長い脚を投げ出すようにして寄りかかる跡部は、たった今やって来たってよりは…。
「…なんや。我慢のきかないやっちゃなァ。もう少し見学してればええのに」
くそっ。やっぱり跡部のヤツ見てたんだ。
「忍足は黙ってろ」
俺と跡部の声がハモる。
わー…。跡部のヤツ、絶対何か勘違いしてる。
鋭い視線で見据えるその表情は、明らかに怒っている。
「跡部?変な勘違いすんなよ?」
「あんな風に忍足に触らせといて、どんな理由があるんだ?」
跡部がこれでもかって笑顔で歩み寄ってくる。うわァ、マジでキレてる。
「あのな、跡部。俺ちょっと考えごとしてて…」
「ほう?考え事してれば、お前は何でもさせるわけか?」
「違うって!」
まいったなァ。確かに忍足の手を直ぐに払わなかったのは俺が悪いけど…。
「ふん。どうせお前は、あの日の事を重ね合わせてボーっとしてたんだろ?」
…何だ。分かってんじゃないか。
そう。俺が思い出した事ってのは、跡部に初めて告白されて、初めて抱かれたあの日の事。恥ずかしながら、俺たちの初めての場所って、夕方の教室だったんだよなァ。あの時は二人ともテンパってたし、TPOを考える余裕も無かったもんで…。
その時がやっぱり、こんな風に教室中が茜色に染まってて。跡部がいつもと違ったオトナっぽい表情で声で、俺を口説いたんだ。「宍戸を独り占めしたい」ってさ…。
シチュエーションがその時と少しかぶって、ついボーっとしちゃったんだ。それだけなんだよ…。
「分かってるなら、そんなに怒るなよ」
「…俺との記憶を、忍足と重ねられた事が屈辱だ」
あ、それを言われてしまうと…。
「ひどいわァ、跡部」
俺たちのやり取りを面白そうに眺めていた忍足だったが、跡部の言葉に流石に口を挟んでくる。
「黙れ」
跡部は容赦なく切り捨てる。けれど、忍足もメゲなかった。
「跡部が宍戸の事独り占めするから、ちょっとからかっただけやん。なあ?ジロー?」
えっ!?ジロー起きてるのか?
忍足の声に、ジローはむくりと顔を上げた。
「…そーだよ跡部。宍戸を独り占めするからいけないんだ」
「…ジロー!?」
はっきりした声は、今まで寝た振りしてた事を証明していた。
「…なるほど。それで、この置手紙か?」
「…え?」
跡部がつまみ上げた紙切れを覗き込めば、見慣れたジローの文字で「宍戸を返して欲しくば俺のクラスに来い!ジロー」と書かれている。
…何だよ。俺もまんまとノセられたのか。
「跡部、これで分かったろ?忍足だってふざけてただけなんだしさ」
これで跡部の怒りは忍足にだけ向いて、俺は許してもらえるかなーと思って言ったんだけど…。
「お前が忍足に触らせたことは事実だ」
…げっ。意外と冷静だった。まいったなァ。
「俺が忍足の事どうとか…なんて。ありえないって分かってるだろ?ぼーっとしてただけなんだって!」
「…お前は簡単に触らせすぎだ。忍足もそうだが、日吉や鳳も、なあ?」
「……」
…テニスコートでの事も見てたのか?会議してたんじゃねーのかよ。
俺の心のぼやきにまで、跡部は返事を返してくる。
「生徒会室の俺の席からはテニスコートが良く見えるんだ。知らなかったか?」
…知りません。そんな事。
「帰ったら、お仕置きだ」
そう言うと、跡部は胸元から携帯を取り出しどこかへ連絡する。きっと帰りの車を急がせているんだろう。
そんな跡部の行動に、ジローと忍足はどこか可笑しそうに苦笑した。
「宍戸、堪忍な?」
忍足が言う。
「明日足腰立たなくなったら、俺たちのこと恨んでくれていいからさ」
ジローもそう言って苦笑いだ。
「よし、帰るぞ」
「…!?」
電話を切り振り向いた跡部の目は、今まで見たことがないくらいに据わっている。
うわァ…。どんなお仕置きされるんだ…!?

PR
この記事にコメントする
color
name
subject
mail
url
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
はじめに
ようこそお越し下さいました!「ハコニワ‘07」はテニスの王子様、跡宍メインのテキストサイトです。妄想力に任せて好き勝手書き散らしている自己満足サイトですので、下記の点にご注意くださいませ。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
これらに関する苦情の拍手コメントはスルーさせて頂きますのでご了承ください。
■連絡事項などがありましたら拍手ボタンからお願い致します。
■当サイト文書の無断転載はご遠慮ください。
■当サイトはリンク・アンリンクフリーです。管理人PC音痴の為バナーのご用意はございませんので、貴方様に全てを委ねます(面目ない…)。        
   
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
通販申込
現在、通販は行っておりません。申し訳ございません

・その頬は桜色に染まる(跡宍)400円
・社会科準備室(跡宍)500円


※詳しい内容は「カテゴリー」の「発行物」からご確認ください。

◆通販フォームはこちら◆
拍手ボタン
カウンター
お世話様です!サーチ様
ブログ内検索
プロフィール
HN:
戸坂名きゆ実
性別:
女性
自己紹介:
私、戸坂名は大のパソコン音痴でございます。こ洒落た事が出来ない代わりに、ひたすら作品数を増やそうと精進する日々です。宜しくお付き合いください。
忍者ブログ [PR]

photo byAnghel. 
◎ Template by hanamaru.