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キスより先を仕掛けて来ない跡部に、不安になっちゃう宍戸のお話。


誘惑レッスン (跡×宍)

付き合ってキスするまでに1ヶ月ってのは、まあいいよ。大事にされてるのかなって思えて嬉しかったし。
でもよ、その後3ヶ月キスより先に進まないってどうなんだ?俺はお付き合いってのが初めてだからよくわかんねーけど、中学生ならやっぱりそんなもの?
ちょっと不安なのは俺に魅力がないのか?ってことで。
「…やっぱり、男なんて抱けないか?」
「いや、宍戸なら全然イケるね。跡部が枯れてるんだよ」
「か、枯れてる!?」
ジローの言い切りに、教室なのも忘れて大きな声出しちまった。いくら放課後でも、誰が聞いてるか分からないのに。
「だって、俺なら付き合ってそんなに経つのに、手出さずになんていられないもん」
「うーん…」
でも、中学生で枯れないだろぉ?あいつがいくら中学生に見えない風貌だからって。なによりあいつ、俺と付き合う前は女をとっかえひっかえしてたぞ?まさか経験ないなんて事もないだろうし…。
「…やっぱり俺に魅力がないんだ」
ショック。だって跡部から告ってきたならまだしも、俺から告ってるんだぜ?付き合ったら「やっぱり男なんて有り得ねーよな」とか思われちゃってても不思議はないよな。
「宍戸ー。そんなに不安ならやってみる?」
「…何を?」
「跡部を誘惑するレッスン」
「レッスン?」

「で?なんでそんな訳分かんねー話に俺が呼ばれるのよ」
岳人がふて腐れたように机の横に立つ。
「俺に聞かれても…。ジロー何で?」
隣のジローに聞けば、ニコニコと笑って教室のドアを指差す。
「岳人は見張りお願い。誰か教室に入ってきたら宍戸が恥ずかしいだろ?」
「…てめェ、そんなふざけた理由で折角部活が休みの放課後を潰すなよ!」
それもそうだ。
でも、岳人は文句を言いながらも教室の後ろの席に座る。
「俺漫画読んでるから、1冊終わるまでなら付き合うぜ」
「わーい。サンキュー岳人!」
「あ、ありがと…」
俺も一応礼を言う。どうも俺が変な相談持ちかけたせいでこんな事になってるみたいだし。
でも…。
「ジロー。そんな見せられないような恥ずかしい事すんのか?」
「え?そんな凄い事しないけど、念のためだよ!」
「…そうか?」
何か良く分かんねーけど相談したのはこっちだし、ジローの言う事に従おうと思う。

「じゃあ、まず髪ほどいて」
「髪?ああ」
俺は後ろで束ねた髪を解く。
「それを、右の方でまとめて胸の前に垂らして?」
「ああ…」
中学上がってからずっと伸ばしてるから、髪の長さはみぞおちに届くくらいだ。俺はそうでもないけど、他の男はやっぱりさらさらロングヘアーが好きなのかなぁなんて。女々しい考えで切れなかった髪だけど、本当に役に立つのか?
「ふーん。雰囲気変わるもんだな?」
岳人も開いた漫画は机に伏せて、俺たちの成り行きを楽しそうに見守ってる。コイツ面白いことには頼まなくても口出すタイプだし、意外と乗り気みたいだ。
「次はシャツのボタンをもう二つ外して?」
「え…?」
俺は常に一番上のボタンを外してるから、もう二つとなるとほとんど胸全開なんですけど…。
「いいからー♪」
ジローのヤツ分かってて言ってるみたいだ。こんなんで誘えるもんか?
「それで、乳首見えちゃうくらいにシャツを肌蹴てみて?」
「ち、乳首?」
男の胸なんて、見たらガッカリするだけの気がすんだけどなぁ。ジローがそうしろって言うんだから何か効果はあるのか?
「えっと、…こんなもん?」
少し肩をずらしてみる。でも、そんな上手いところで止めるなんて…。
「わっ!」
ほら、左肩全部ずり落ちた!
部活で着替える時とかはちっとも気にならないけど、マジマジと見られる中で一人ってのは恥ずかしいんだよ!だからつい、慌てて前を託し寄せちまった。
「わあー!それ可愛い!本気で恥らってるのってイイよねェ」
「ははっ、宍戸女みてー!」
「岳人、笑うな!」
ったく。こっちは本気で相談したってのに、何だか遊ばれてねーか、俺?
「宍戸、そのまま俺の前まで来て?」
「…ジロー、本気で考えてくれてんのか?」
俺は何歩か歩み寄って、ジローが腰掛ける前に立つ。
「本気、本気。俺に任せとけば問題ないよ!」
「本当かよ…」
「へーきだって!じゃあ、俺の前にしゃがんで」
「……」
「あ、宍戸今変なこと考えたでしょ?別にフェラしろとか言うんじゃねーし」
よ、良かった。一瞬ビビったぜ。
「これでいいか?」
ジローの前に膝立ちになって、目線の高くなったジローを仰ぎ見る。いつもは小さくてフワフワしてて可愛らしく見えるジローだけど、こうして見上げると結構男らしく見えるもんだな。
「うん。次は俺の胸にしな垂れかかってみて?こう俺の胸に縋るみたいにさ」
ジローがシャツの前を押さえたままの俺の両手を引っ張って、自分の胸へと引き寄せる。俺は膝立ちでバランスが悪いままだから、されるがままにその胸に倒れこんでしまう。
…ど、どうなの?これってちゃんとレッスンになってんのか?
かなり不安になって岳人を振り返るけど、ニヤニヤ笑って頷いてる。
…うーん。ただ遊ばれてる気がすんだけど。
「はい、次は俺の首に腕を回して…」
「…え?」
二の腕を掴んで引かれたら、ジローの顔がより近くなる。
「俺を見つめて?」
「ジロー?」
椅子に腰掛けるジローの脚に挟まれる形で、俺はジローの首に抱きついていることになる。ジローの目を見たら凄く愉しそうに細められていて、ちょっと怖い。
俺の背中を抱き寄せるようにジローの腕が回されたら、そんなつもりないのにドキドキしてきてしまった。
「も、もう平気。分かったから!ジローありがとな?」
恥ずかしくなってその腕から逃げ出そうとするけれど、ジローの力は結構強くて出られない。俺はこんな体勢だし、ジローは上から覆いかぶさるみたいに抑え込むし…。
「何言ってるの宍戸。これからが仕上げだよ?」
「ま、まだあんのか!?」
「そ、最後の一つ!」
「な、何?」
これで最後なら…と覚悟を決めてジローに尋ねる。
「『ジロー、抱いて』って、言ってごらん?」
「だっ…!?」
「そうだよ?この乱れた姿で縋られてそう言われたら、もう速攻押し倒されるよ?」
ええ~?そこまでしないとダメかぁ?俺的にはもっとさり気無い感じにいきたかったんだけどなぁ。
「枯れ切ってるあの跡部を誘うんだよ?これぐらい積極的にいかなきゃ!」
「…ホントかよ?」
もー。どこまで信じていいんやら。
取りあえず、この一言で終わるならいいか。
うー。恥ずかしいけど仕方ねェ。
今の相手はジローだから、名前はジローでいいよな?
「ジロー、だ、抱いて…?」
「わーい!もちろんだよ、宍戸♪」
「ええっ!?」
何だ何だ何だ!?
ジローがギューって抱きしめる!
「可愛いよ~宍戸!」
「わー!!」
覆いかぶさられた勢いで教室の床に押し倒される。
何!?レッスンじゃなかったのか?何なんだこれは!?
「宍戸ー♪」
「やめろ~!」
ジローの唇が目の前に迫ってくる。
そうだ、岳人!
「が、岳人っ」
助けを求めようとして教室の後ろを見たら…。
ゲラゲラ笑ってやがる!
「バっカだなぁ、宍戸!」
机をバンバン叩いて、涙まで流して爆笑してやがる!
「てめェー!」
「ジローの狙いなんて分かりそうなもんじゃん。鈍いなぁ宍戸は!」
くっそー!そんなの知らねーよ!
ってゆーか、ジローのヤツこんな時ばっかり力が強くて!一生懸命押し返してるのに、このままじゃキスされちまう。
困る!そんなの困るんだっ!
「俺が好きなのは跡部なんだってば…!」
もうダメだって思って固く目を瞑ったら、教室のドアが「バンっ!」て大きな音を立てて開かれた。
岳人が座ってる後ろ側じゃなくて前の扉だ。「そっちから来たか」なんて暢気な岳人の声も聞こえる。
「ジロー!何してやがるっ!」
ギクッと動きを止めるジローの向こう側には…。
「…跡部っ!助けて!」
良かった!跡部が来てくれた。助かる!
大股で歩み寄った跡部は、俺の上に乗ったジローをベリッとはがして放り投げると俺の手を引いて起こしてくれる。
「…ったく何やってんだお前は」
跡部は半分呆れて、半分怒ったような表情だけど。
俺は、その胸に抱きついた。
だって、危うくジローに押し倒されるところだった!ヤラれちゃうところだった!
「俺、跡部じゃなきゃ嫌なんだ!」
「…宍戸?」
話の経過を知らなくて不思議そうな顔をする跡部だけど、俺は構わずに言ってしまう。だって、またこんな目に合ったら後悔しきれねーし!
「跡部っ、抱いて?」
「宍戸!?」
凄く驚いて目を見開く跡部。
ど、どうしよう。やっぱり嫌かな…?
俺は不安になって、跡部の胸に顔を埋める。
そうしたら、跡部はギュって抱きしめてくれた。
「いいのか?宍戸」
「…ああ」
良いも悪いも。
その一言が欲しくてこんなバカな事しちゃったんだ…。

「ジロー覚えとけよ」
跡部は俺の腰に手を添えて歩きながら、通りすがりにジローを睨みつける。
「よく言うよ。こんな切っ掛けでも無きゃ手出せなかったくせに。感謝してよね!」
跡部に向かってべーっと舌を出すジロー。
最後はちょっと怖かったけど、ジローのおかげで俺は跡部に「抱いて」って言えたんだよな…。それなのに、ジローが怒られたままなんて申し訳ない。
「…ジロー?ありがとな」
珍しくふて腐れたような表情をするジローに、俺は声を掛ける。
そうしたらいつもみたいにニッコリ笑ってくれた。
「宍戸は気にしなくていいんだよ?」
やっぱりイイ奴じゃん。相談して良かった。
「今度ムースポッキー奢るからな?」
「わーい!待ってるね」
ジローが両手をあげて喜んでくれる。
「また相談あったら俺のところにおいでね?宍戸」
「ああ、ありがと」
俺がそう返事をしたら、後ろで事態を見守っていた岳人がまたゲラゲラ笑い出した。
「何だ?岳人のやつ…」
不思議に思って言ったら、隣の跡部が眉間に皺を寄せて俺を抱き寄せる。
「お前がそんなだから、あいつらに遊ばれるんだよ」
「…?」
跡部の言葉の意味は良く分からないけど、俺の悩みは無事解決されたみたいだ。

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跡宍
最高ッッッッでした。夜中に読んでましたよ、学校あるのに(もう完全腐女子だ…)。今、中3です。受験にむけての勉強もせずにサイト巡りの毎日…今一番のお気に入りサイトがここです燃え、嫌、萌えます(笑)
次の話も楽しみにしています頑張って下さい
麻倉蓮 2007/05/11(Fri)23:45:54 edit
ハコニワより
麻倉蓮様ありがとうございます!
中3でいらっしゃるのですね!こんなうら若きお嬢様に、こんな腐った文章をお見せしちゃって。いけないオバサンですね(汗)
でも、また遊びに来てください(笑)
受験勉強の気分転換に、少しでもお役に立てたら嬉しいですv
ちなみに私も、受験前は絶好調で腐女子でした…。
ハコニワより 2007/05/14(Mon)22:02:49 edit
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