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珍しくシリアス寄りのお話で、長めです。

跡部の浮気を疑う宍戸は、自分が恋人である跡部から「好き」と言葉にされていない事が気になって…。みたいな。

ちゃんとハッピーエンドですよ。


春の嵐 (跡×宍)

学校へと続く道を走る。
緩い上り坂のうえ、向かい来る風に邪魔されてなかなかスピードが出ない。
「やべぇー、遅刻するっ」
春休み中とは言っても、全国優勝を目指すテニス部に休みはない。
よりによって自分たちが最上級生となった初めての部活に早速遅刻するなんて!
「跡部に怒られる~」
俺は舞い散る桜を吹き飛ばす勢いで部室に向かった。

「ちーっす!」
勢いよく扉を開けると、見慣れたメンバーが部室に置かれた机を囲むようにして何かを覗きこんでいる。
「何してんだ?お前ら」
「あっ宍戸!」
振り返った岳人が焦ったように俺の名を呼び、残りのメンバーは慌てて机に広がった何かを隠す。
「お、お早うさん。宍戸」
「今日は遅かったね、宍戸!」
どもる忍足に、朝からはっきり目覚めているジロー。何か怪しい…。
「お前ら何隠したんだよ」
大股に近づき岳人を押しのけ覗き込むが、モノはどこかに仕舞われたようだ。
「何だよ俺には見せられないものかよ?」
ムッとして言うと、滝が慌てて弁解する。
「や、違うんだよ。くだらないものだから、ホント気にしないで宍戸」
「そ、そうや、宍戸」
「全然気にするなよ宍戸」
力任せに押しのけられた事に文句も言わず、岳人は俺の背をポンと叩き言葉を続ける。
「別に跡部は…」
そこまで言って、岳人はしまったとばかりに手で口を塞いだ。
「…跡部?」
俺は思わずその言葉を繰り返す。
「がっくん!!」
慌てた忍足は、立ち尽くす岳人のジャージのすそを引っ張るとそのままラケットをつかみ部室を後にする。
「ほんま気にせんといて」
去り際の忍足の一言が、何かがあったと言う事を証明しているようなものだ。
「俺たちも先行ってるC!」
その後をジローと滝も追いかける。
「…何があったんだ?」
いかにも何かを隠している態度。
しかも、岳人が零した「跡部は」という台詞。
跡部の恋人である自分に見せられないモノといったら…?まあ、限られてくるだろう。
否定したいと思いつつも「浮気」という言葉が頭をチラつく。
「昼飯の時にでも、ジローに聞いてみるか」
跡部の事となったら、やっぱり幼馴染のジローだろう。
宍戸はすっきりとしないまま、とりあえず着替え始めた。

          ***

「よう、ジロー。今日は珍しく起きてんだな」
いつもなら弁当を食べ終え午後の練習まで一眠りするジローだが、ベンチに寝転ぶその両目はしっかりと開かれていた。
「あ、宍戸だ~。来ると思った」
「そりゃーな。お前にしか聞けねえだろ」
体を起こしてベンチの隣を空けてくれるジロー。
「で?何があった訳よ」
逃げられないようにその肩に腕をまわすと、ズイッと顔を近づける。
「う~。聞かねー方がいいと思うけど?」
「あそこまでされて気にならない訳ねーだろーが」
「まーね…」
「で?」
まわす腕に力を込めても、ジローはまだ言い渋っていた。
「なあ、ジロー。跡部がらみの事で俺に言えないネタなんて内容限られてくるだろ?あいつ等にイタズラに引っかきまわされるよりはお前の口から聞きたいんだよ」
フェンスの向こうでじゃれ合う岳人たちに視線をやりながら、宍戸はため息をつく。
「うーん。確かに」
忍足と岳人は根っからのゴシップ好きで、小さなネタを大きくしてしまう事に関しては右に出るものはいないのだ。
「うー。分かったよ。でも、いきなり跡部に殴りこみすんなよ?」
そう言って校舎の2階に目をやった。
春休み中は運動部ばかりでなく、生徒会も大忙しで日々登校している。
生徒会長を務める跡部は、数日後に控えた入学式の段取りのため生徒会室に詰めっぱなしのようだ。
「…殴りこまれる様な事をした訳ね、跡部は」
「…」
ジローはまるで自分が叱られたような顔して見上げるから、つい笑ってしまう。
「お前がそんな顔しなくたってイイだろ?ま、いつかは何かあるんじゃねーかとは思ってたしな」
そう言って柔らかなくせ毛を撫でてやると、ジローは小さく息を漏らす。
「宍戸がそーやって甘やかすから、跡部がつけ上がるんだ」
「そうか?」
「そうだよ」
「そうかよ…」
殴りこむなよ…なんて言いながらも、怒りを表さない俺にジローは焦れたように口を尖らす。
でも正直、今まで跡部が浮気ひとつしなかったことが不思議なくらいなのだ。
成り行きで付き合うようになってから1年近く経つけど、俺と付き合うまでの跡部の女性遍歴と言ったら、もういちいち覚えていられない程の数なのだ。
俺は昔っから跡部のことをテニスプレーヤーとしても、恋愛対象としても意識してたし、こうして付き合えるようになったことも、ほとんど奇跡だと思ってる。
跡部はと言うと、ほかの同級生と違う反応を見せる俺が物珍しくて試しに付き合ってみてるんじゃないかって、当の本人の俺ですら思ってしまう。
テニス部レギュラーは別としても、それでもやっぱり、これだけ跡部に食い下がったり喧嘩吹っかけたりするのは俺だけだし…。
今まで出逢った事のないタイプだから新鮮だったんだろうな。
俺は好きな相手だって気に入らない事言われたら腹立つし、顔色伺って媚びるようなことはしたくない。いつだって対等でいたいから。
ま、あの天才跡部に対してここまで言い切るのは俺くらいだろうから、ホント物珍しさなんだろうな。
そんなことを少なからず思っていたから、今日始めて浮気騒動(はっきりとは言わないけど、きっとそうなんだろう)を耳にしても「アイツ許せねー!」ってより「あ、やっぱりね」って気持ちのほうが大きいのだ。
「宍戸はこのまま跡部のこと許しちゃうの?」
不満そうな口ぶりのジロー。
「…放っときゃしねーよ。ちゃんと本人の口から言わせるよ」
「ごめんなさいって言わせるの?」
「うーん。ごめんなさいってより、とりあえず事実を本人の口から聞かなきゃな」
たとえ跡部が認めたとしても、ごめんなさいって言う姿は想像できねーな。
超俺様な態度で「文句あるか?俺様が手前みたいので満足できると思ったか?あーん?」
くらいは言いそうだ。
実は俺、あえて気にしないようにしてたけど、跡部からはっきりと言葉にして「好きだ」って言われた事がない。
付き合い始めたのだって、あんまりに跡部を意識していた俺を、仲間たちが「宍戸、跡部の事好きなんじゃねーの?」とからかっていた所に偶然跡部が出くわして、いつものあの唇の端を上げたニヤリって感じの表情で「じゃー俺と付き合うか?宍戸」と言われたのが切っ掛け。
いや。これは良く考えてみなくても「好き」という意思表示じゃないよな?
やっぱり物珍しさに付き合ってはみたけれど、そろそろ飽きてきたってのが本当の所だろうか。
「…あいつが俺なんかを相手にしてたってのが不思議なくらいだもんな」
本当はこんな言い方嫌いなんだけど、跡部とは常に対等でいたいって思ってるけど、実際心の奥ではそう思う気持ちがあったことを否定できない。ただ、気づかない振りをしていただけで。
「天下の跡部様だもんなぁー」
「…珍しいね。宍戸がそんな事言うなんて」
上目がちにチラリと視線を投げられると、まるで叱られてる気分になる。
ジローはいつもまっすぐ俺の目を見て楽しそうに話すから、こんな風に横目で流し見られると、弱気な自分に呆れられたんじゃないかってドキっとする。
でも、俺だって弱気になることはあるさ。テニスに関してなら別だけど、恋愛だろ?いっつも周りから「怖そう」とか「とっつきにくい」なんて言われてれば、自身満々の方がおかしいだろ?
「テニスだったら負けないぜ、俺。でも恋愛って別だろう?弱気にもなるさ…」
「そう?」
「そうさ。別に跡部や忍足みたいに顔が良くて頭も良い訳じゃないし。見た目怖いし、ガラ悪いし、怒りっぽいし…あれ?俺イイ所無しだなぁ。ハハっ」
言いながら「しまった」と思って笑って誤魔化す。こんな卑屈で愚痴っぽい自分曝け出したら、ジローがドン引きしちゃうよな?
チラッとその横顔を窺うと、ジローは引くってよりも何だか顔が真っ赤で…怒ってるみたいだ。
「…ジロー?」
やっぱり変な話しちゃって気悪くしたかな?
「宍戸」
「ん?」
俺を呼ぶ声がやっぱりいつもより尖ってる。何だか目を合わせるのが怖くて、目蓋を伏せた。
「宍戸、こっち見て」
「ジロー?」
顔を上げると、思ったより近くにジローの顔がある。ジローは頬を赤くして真剣な表情だけど、怒っているわけではなさそうだ。安心した。
「宍戸は自分が分かってないよ!知らない奴は色々言うかもしれないけど、俺たちは…俺は!宍戸のイイ所いっぱい知ってるから。そんな悲しい事言わないで?」
「ジロー…」
俺の頬を両手で包んで、一生懸命話してくれるジロー。いつもは見ることのない真剣な表情に、俺はジーンときてしまう。
「サンキュー、ジロー。らしくない事言って心配させちまったな。俺にはこんなに良い友達がいる。すげー心強い」
今までしたこともないような会話で照れくさいけど、ちゃんとこの気持ちは伝えておきたい。
ヘヘッと笑うと、ジローもヘヘッと笑ってくれる。
「宍戸が笑ってくれると、俺も嬉しい!」
そう言って、ジローはぎゅっと俺に抱きついた。
「ジロー苦しいよ」
そう言いながら、俺もぎゅーっとジローを抱きしめ返す。
そうだよな、恋愛ひとつでクヨクヨしてるなんて俺らしくない。跡部が浮気したならば、土下座して謝らせるくらいの気持ちでいなきゃ。
「ジロー。サンキューな」
結果的にジローの口から事実は聞けなかったけど、俺の考えで間違いはないのだろう。
でも俺はジローに勇気をもらったから、今日の練習後には決着をつけるぜ。
今はとりあえず練習だ。
「ジロー、午後の練習始まるぜ」
抱き合った腕を放そうとすると、ジローはその腕に力をこめる。
「え?ジロー」
俺の肩に埋められたその表情は全く見えない。
「ねえ、宍戸。何も男は跡部だけじゃないんだ」
「…ジロ?」
その柔らかな髪がフワっと踊ると、俺の右頬にジローの唇が優しく触れた。
「!?」
「跡部なんてやめて、俺にしときなよ、宍戸」
「え…?」
驚いて声を上げた時には、ジローはクルリと背をむけコートへ走り去って行った。
「宍戸ー!早く来いよ!」
大きく手を振るジローは、さっきの熱っぽさが嘘のような幼い表情で…。
「おいおい…。悩みを増やしてくれるなよ」

          ***

夕方5時。
俺は校舎二階の生徒会室の前に立っている。

不安そうな顔で先に帰宅したメンバーは、きっと俺がここへ乗り込むことが分かっていたのだろう。
なかなか部室を出て行かないので、最後は全員蹴り出してしまった。
それから少し、一人で考えた。跡部に何て切り出そうかなって…。
跡部は、俺が跡部の浮気を知ったということに、気づいているのだろうか?忍足あたりが告げに行ってたとしても、おかしくはない。
「跡部、浮気したって本当かよ?」って聞くか?
「ああ。だから何だ?」とか言われそうだな。
じゃあ「お前浮気したんだって!?ふざけるな!」って言うか?
「ああ。じゃあ別れるか?」とか言われそう…。
言われたら?
俺、どうしよう。どうしたいんだろう…。

結局、成り行きにまかせようと、答えの出ないままここに立っている。
「ぼーっと突っ立ってても、しょーがねーもんな」
俺は意を決してドアをたたく。
「どうぞ」
中から跡部の声が聞こえた。
俺は心臓が飛び出しそうな勢いでドキドキいうのを、大きく深呼吸して落ち着かせる。こんなに緊張することなんて滅多に無い。試合の前だってこんなには緊張しない。
「あん?宍戸じゃねーか」
ゆっくりドアを開けて中へ入ると、跡部が一人窓の前の大きな机で書き物をしていた。
他の生徒がいないということは、俺が来るのが分かってて皆を先に帰らせたのだろうか?
「ちょっと、いいか?」
わざと冷静な振りをして、いつもより低い声で話す。
ゆっくり言葉にしないと、今のぐちゃぐちゃした感情が飛び出してしまいそうで。
上ずった情けない声だけは出したくなかった。
「どうした?練習は終わったんだろ?」
跡部は何も知らないのだろうか?
自分から浮気の話を振ってこないってことは、やっぱり俺から切り出すしかないんだよな。
「ちょっと、聞きたい事があるんだ」
「あ?何だよ改まって」
こんなにバッグを持つ手が震えているのに、跡部には見えていないんだろうか?
俺の質問に間も無く返される返事には、これから真剣な話になるんだっていう緊張感はみられない。
このまま「やっぱ何でも無い」って言ってしまいたい。
いつも通りテニスの話して、ちょっと跡部の家に寄って、少しキスとかして…。そんないつも通りの放課後にしてしまいたい気分だ。
でも、それじゃ何の解決にもならないのは分かってるから。
だから聞かなきゃ。

「…跡部、お前浮気したの…?」

心臓がバクバクしてる。
昨日までは何の問題もない穏やかな毎日だったのに、何でこんな事になっちまったんだ?
怖くて、怖くて、跡部の顔が見られない。
何バカな事言ってるんだ…って笑い飛ばして欲しい。
跡部…!

「…浮気?だったら、どうなんだよ?」

跡部の声が、頭の中で鳴り響く。

否定、してくれなかった…。
やっぱり…って思うのに、物凄く苦しい。
跡部の言葉が頭の中を飛び回って、がんがん壁にぶつかってるみたいに揺れて、すごく頭が痛い。
胸が押しつぶされそうだ。
体はちゃんと立ってるのに、大きな何かに上から潰されてるみたいな圧迫感を感じる。俺という器だけ立っていて、心だけがぐにゃって折れてしまったみたいだ。
「おい、宍戸?」
少し不安そうな跡部の声が、とても遠くから聞こえる感じがする。
どうしよう、どうしよう。
何か言わなきゃいけねーのに…。苦しくて言葉が出ない。
このままここで、泣き崩れたりとかしたくねえ。
でも、もう問いただしたり、怒鳴り飛ばしたりできる状態じゃなくて…。

惨めに倒れてしまう前に、せめて。
せめて潔く。

俺は、無理やり伏せた顔を起こす。
折れてしまった心みたいになかなか思い通りに動かない首を、振り回すぐらいの勢いで引き上げる。
それでも少し前を向いただけの顔で、跡部に歩み寄る。
なあ、跡部。
お前は今どんな顔をしているんだろ?
人間あまりにショックなことが起きると、目も見えなくなるのかな?
シルエットは映すのに、お前の表情だけがぼやけて見えないんだ。
呆れた顔をしてる?
打ちひしがれた俺を見て、みっともねーって笑うかな?
ああ。
どうやって怒鳴り飛ばしてやろうって昼までは思ってたのに、そんなのとっても無理だった。
ジローがせっかく励ましてくれたのに、やっぱり跡部が俺なんかを相手にしてた事がおかしかったんだって思ってしまう。

だったら、せめて潔く。
俺らしく終わらせよう。

俺は表情の見えない頬に手を伸ばす。
昨日まではあんなに優しく微笑んでいた瞳が、今は全く見えないんだ。
だからこそ言えるよ、跡部。
俺はそっとその頬に口付けた。
これくらい許してくれ。
これで最後だから。

「さよならだ。跡部」

自分の言葉に、自分で震えた。
途端、俺の視界がクリアになる。
驚いたような跡部の表情がはっきり見える。
そっか、俺はさっきからずっと泣いていたのか。自分の涙の雫でお前の顔が見えなかったんだな。
ああ、結局。みっともない所を見せちまった。
激ダサ…だな。

俺は背を向け生徒会室を後にする。
後ろ手にドアを閉めた途端、自然と足が走りだした。
早く、速く!
この場所から立ち去りたい!
もう何にも考えたくない。
急に生徒会室の中が慌しくなったけど、俺はただ真っ直ぐ廊下を走った。
自分の足がちゃんと動くことが不思議なくらい、俺の心臓は大きなショックに押しつぶされそうだ。
跡部と一緒に過ごした事の無い、遠いどこかへ行ってしまいたい。

          ***

「結局、ここなんだよな…」
俺は縺れるような足取りで、ようやくここへ辿り着いた。
俺の家と、跡部の家の間にある公園。
一言も「好き」と言ってくれなかった跡部が、初めてキスしてくれた場所。
喧嘩したり、跡部が海外に行ってて寂しい時なんかに、よく一人で来る場所。
本当は、跡部と一緒に過ごした事のないところへ行ってしまいたかった。
でも、いくら走ったってそんな場所は一箇所も思いつかなかった。

学校、部室、テニスコート。
駅前の喫茶店、ファーストフード、ファミレス。
通学路の歩道橋、ゲームセンター、この公園…。

どこ行ったって、跡部の姿を思い出す。

コーヒーカップを持つ、少し節だった細く長い指。
歩道橋に寄りかかる、制服の広い背中。
ブランコを漕ぎあげた、俺よりも大きい足。

こんないつもの場所にいたら、すぐ跡部に見つかっちまう…。
自然と浮かんだ考えに、俺は大きく頭を振る。
あの跡部が追ってくるはずないんだ。浮気した事を否定しなかった跡部が…。
俺からさよなら告げた事だって、きっと都合が良かったに違いない。殴り合いの喧嘩なんてせず、揉めずに別れられたんだから。

なんて、簡単に終わっちまうんだろう。
あんなに長い間片想いして、切っ掛けはどうであれ、やっと手に入れた大好きな人なのに。こんな簡単に。
しかも自分から別れを告げる事になるなんて、唯の一度だって想像したことがなかった。
跡部に煙たがられたって、本当は少しだって離れたくなかったんだ。

最後の最後まで、素直になれなかった…。
本当は、ポリシー曲げてだって手放しちゃいけなかったんだ。
「潔さ」なんかより、媚びて泣いて、縋ってしまえばよかったんだ。
俺を捨てないでって、言えたら良かった。
「馬鹿だな、俺…」

気づくと、辺りはもう暗くなっている。
時計を見ると、もう7時だ。2時間近くも、俺は走りまわっていたのか…。
「…帰ろう」
もういい。今日は何も考えずに寝てしまおう。
きっと大丈夫。
明日の朝晴れ渡る空を見たら、きっと前向きになれるから。
腰掛けたベンチから立ち上がると、軽く制服を掃う。いつもより重く感じるバックを担ぐと、公園の出口に足を向けた。

「宍戸!!」

一歩踏み出した途端、背中から聞こえる大きな声。

「!?」

跡部!?
聞き間違うはずが無い。
後ろから掛けられる、大好きな、大好きな跡部の声。
「宍戸!探したぜ…」
恐る恐る振り向くと、大きく肩で息をする跡部の姿。
「何で…?」
何で追ってくるんだよ?
お前、浮気したんだろ?
俺の事なんて追う必要ないじゃないか。
「宍戸っ。してねーから…」
走って来たのか、まだ苦しそうな息でも必死に搾り出される言葉。
「跡部…?」
「浮気なんて、してねーから!」
「!?」
どうして?さっきは否定しなかったじゃねーか!
何なんだよ。お前、わからねーよ!
「宍戸?」
「だって、さっきは否定しなかったじゃねーか…」
「それには、訳があって…」
「訳ってなんだよ?訳があって浮気したことを否定しないって何!?俺分からねーよ!まだ、出来心だったんだって言われた方がマシだった。そんな、無理な言い訳するなんて跡部らしくねーよ!」
「宍戸っ!」
もう話していられない。
やっと止まっていた涙がまた零れる前に、俺は背を向けて走り出す。
「!?」
けれど、俺の体はすぐに跡部の腕に捕まった。
「もう、逃がさねーよ」
「あとべ…」
我慢していた涙が、ころころと頬を伝っていく。

後ろから強く抱きしめる跡部の腕。
その温かさを感じたら、もう全てがどうでも良いと思えた。
否定しなかった事も、その理由も。
分からなくたっていい。
ただ、傍にいたいんだ。
愛されなくたっていい。
それでも、傍にいたいんだ。
泣いて、縋って…。
やっと素直になれる…。
「跡部と離れたくない…!」
「宍戸…!」
俺の体は跡部の方に向かされて、今度は正面から抱きしめられた。
息もできないくらい、きつく。

          ***

跡部の腕に腰を抱かれたまま、歩いて跡部の家に向かう。こんな状態じゃ家には帰れねーから。
ポケットから出した携帯で俺の家へ電話した跡部は、俺が跡部の家に泊まることを告げると、慌しく今度は他の誰かに電話している。
俺はと言うと、感情が高ぶって止まらなくなった涙を隠すため、タオルで顔を覆っていた。
跡部がどこの誰と話そうが、全然気にもならない。
だって、こんなに近くに跡部がいる。
今まで外で手をつないだこともなかった跡部が、優しく腰を抱き寄せてくれる。
その嬉しさにまたこみ上げる涙。
「忍足だ。皆、俺の家で待ってるそうだ」
「え?」
電話を切った跡部が言う。電話相手は忍足だったようだ。
でも、なぜみんなが跡部の家で待ってるんだ?
「首謀者の向日と忍足が、自分の口から謝りたいらしいから全ては言わないが…」
「?」
首謀者…って何の話だ?
「宍戸、今日は何月何日だ?」
「今日…?」
今日は3年になって初めての部活だったから…。
そうか、4月1日。
「…エイプリルフール、か」
「…そーゆー事だ」

          ***

跡部に促されるままリビングの扉を開けると、ソファーに座っていた皆が一斉に腰を上げる。
「宍戸!」
今にも泣きだしそうな顔で真っ先に駆け寄ってきたのは岳人だ。
「宍戸、ごめんな!悪ふざけしすぎて…。ホントごめん!」
頭を下げる岳人に、忍足も並んで謝る。
「堪忍な、宍戸。悪ふざけが過ぎたわ。俺が悪いんや…」
「俺たちも、面白がって一緒に…」
滝とジローも申し訳なさそうに頭を下げる。
ついさっきまで、こんな泣きはらした顔を晒すのは恥ずかしいな…なんて、みんなに会うのを躊躇っていたが、やっぱり今日の内に会っておいて良かったと思う。
過ぎた悪戯に後悔しているみんなの顔は、俺ですら心配になる程真っ青だったから。

事の真相は、何てこと無いただの悪戯だった。
今日は4月1日。エイプリルフール。

そういえば昨年は、みんなして岳人に悪戯を仕掛けた。
他愛も無い悪戯で、すぐに気づいた岳人は騙された事に膨れつつも、来年は自分が仕掛ける側になってやると息巻いてたっけ。
去年、騙された岳人を誰よりも笑ったのは俺。もう、すっかり忘れていた。
だから今年のターゲットを俺に決めた岳人は、みんなにネタを持ちかけ仲間に引き入れたらしい。
そうでなくたってお祭り好きの面々だ。盛り上がりようは想像できる。
ただ誤算は、去年はまだ転校してきていなかった忍足の存在だったらしい。凝り性の忍足の演出が綿密すぎて、こんな事態になってしまった。
朝、皆でこそこそと話し込むシナリオ。
跡部の浮気現場の写真は、アイドル歌手と跡部の並んだ姿を合成する凝りようだった。俺が相談するなら、俺と跡部の幼馴染みであるジローであろうと予測し、昼休みにはわざとジローを一人きりして、生徒会室に跡部がいることを印象つけさせるような話をする事も忍足のシナリオだった。
それでもみんな、俺のことだから生徒会室の跡部のもとへ殴りこみ、いつもの痴話喧嘩になるだろうと想像していたそうだ。
だからこそ当の跡部も、渋々この話に加担することを承知したらしい。
俺が乗り込んで一騒動持ち上がったところで、みんなが隣の資料室から飛び出してネタばらしをするという結末。
全員がほんの洒落っ気で始めた事だった。
まさか俺が泣くなんて、別れを決意するなんて、思ってもいなかったみたいだ。

「岳人…泣くなよ」
真相を打ち明けながらとうとう泣き出してしまった岳人に、俺の方がおろおろしてしまう。隣に座った岳人は、ひっしと俺に抱きついて離れない。
「真に受けた俺も悪いんだし、そもそも去年の言いだしっぺは俺だったしな」
相当慌てて俺を探してくれたんだろう。いつもは綺麗に整えられている髪が、所々乱れていた。それをそっと梳かしてやると、ようやく岳人が顔を上げる。
「許してくれるのか?」
潤んだ目で見上げるその姿は、あれに似ている。
そうだ、チワワ!
プッと噴出す俺に、岳人は困った顔をした。
「許すも許さないも、ちょっとした悪戯だろ?お互い様だよ、気にすんな」
そう言うと、やっといつもの笑顔をみせてくれた。
「あと、跡部。無理やり巻き込んだのに、こんなことになってごめん…」
岳人は俺から体を離すと、今度は少し離れた所で腰掛ける跡部に向き直る。
さっきから一言も口をきかない跡部。
俺よりもよっぽど跡部の方が不機嫌なのは一目瞭然だ。
「…まったくだ。加担した俺も悪かったけど、とんでもない目に遭わされたぜ」
いつも以上に抑揚のない声に、岳人だけでなくみんなが下を向く。
「ま、取りあえず今日のところは無事解決して良かったって事で、お開きにするか」
思ったより後を引かなかった小言に、みんな一斉に詰めていた息を漏らす。
ホッとしたような表情の面々。
俺も、自分の所為でみんながギクシャクしたままなのは嫌だったし、跡部の言葉に緊張していた肩の力を抜いた。
「宍戸」
ホッと一息ついて、それぞれが冷めてしまった紅茶に手を伸ばした時、跡部が俺を呼んだ。
「ん?」
口に含んだ紅茶を飲みこむと、跡部を見る。
「跡部?」
その目はちっとも、いつもの表情に戻っていなかった。さっき岳人と話した時よりも、いっそ険しい目つきだ。
「俺たちは、じっくり話さなきゃいけないようだな…」
いつも俺をからかう時のような、馬鹿にしたような視線ではない。
今まで見たこともないくらい真剣な瞳に、俺はただ無言で頷いた。

「じゃ、俺たちは失礼するね」
滝の声を切っ掛けに、それぞれが荷物を持ってリビングを出る。
俺は跡部と並んでみんなが靴を履くのを見ていたが、ふと或る事を思い出した。
夕方のゴタゴタで忘れてたけど、昼間にジローが言ったあの言葉。

―跡部なんてやめて、俺にしときなよ、宍戸―

全部が忍足のシナリオだったと言うなら、ジローが言っていたあの言葉も演出だったと思ってもいいんだろうか?正直その方が助かるんだけど…。
ついジローの後姿を見つめると、まるで背中に目があるかのようにくるりとジローが俺を振り返る。ニっと笑う悪戯っ子のような笑顔。
「宍戸。昼間の言葉は本気だから!俺諦めないから!」
全て見透かされてるようなその台詞。
俺が苦笑いすると、ジローは照れくさそうにへへっと笑って鼻の頭を指でこすった。
「…話し合う事が増えたようだな、宍戸?」
凍りつきそうな低い声に、俺はびっくりして跡部を見る。こっちはこっちで、全てを見透かすように眇められた瞳。
「は、い…」
やっぱり俺はただ頷くしかできなかった。

          ***

みんなを見送って扉が閉じた途端ものすごい力で跡部に腕を掴れた。そしてそのまま、跡部の部屋へ引きずって行かれる。
「ちゃんと歩けるから!」
そう言っても、全く聞く耳を持たない感じで。
乱暴にベッドへ放り投げられた俺は、呆然と俺を見下ろす跡部を見つめた。
跡部はすごく俺様で高飛車な奴だけど乱暴な事をする人間じゃない。だから驚いたのもあるけど、見上げたその瞳に俺は息を呑んだ。
馬鹿にした目ではない。そして怒ってるわけでもない。
とても、悲しそうで痛々しい瞳だった。
「跡部…?」
立ち尽くしたままだらりと下ろされた跡部の腕に触れる。すると、やっと現実に戻ってきたように跡部は口を開いた。
「宍戸、俺が浮気したって聞いて何で怒らなかった?」
すっかり終わったと思ってた話を持ち出され、俺は慌てる。
「え?何でって…」
もちろん腹が立たなかった訳ではない。でも、やっぱりな…っていう気持ちの方が大きかったのだ。
そのまま言葉にするのは躊躇われて、俺は口を噤む。
「俺は、お前が怒って乗り込んでくると思ってたよ。俺ならきっとそうするから」
言いながら俺の隣に座る跡部を、驚いて見つめる。
跡部の言葉は、とても意外だった。
「俺は、宍戸は俺のものだと思ってるし、俺は宍戸のものだと思ってる。だから浮気したら当然怒るだろう?お前は違うのか?俺たちの関係をどう思ってるんだ?」
向き合う跡部に左腕を強く掴まれ、答えを促すように揺さぶられる。
本当に意外だ。
「だって、跡部がそんな真剣に俺の事を考えてくれてたなんて…」
俺の言葉に跡部が舌打ちする。
「だって跡部は俺なんて相手にしなくたって、いくらでも相応しい人がいるじゃねーか。俺なんかガラ悪くてこんなだし…。それに、あんな始まりだったから!」
…からかわれるようにして始まった付き合いじゃないか。
「じゃあ何だ。お前は最初から俺の事を信用してなかったのか?俺が遊びでお前と付き合ってるとでも思ってたのか!?」
「そんな事思いたくなかったさ!でも跡部、何も言ってくれなかったじゃねーか!」
「ああ!?」
苛立った跡部は俺をベッドに押し倒し、腕を押さえつける。
怒った口調なのに、やっぱり悲しそうな跡部の瞳。
「跡部は一度だって、俺のこと『好きだ』って言ってくれなかったじゃねーか!俺だって不安だったんだよ!」
「言わなくたって、分かるだろーが!」
「分かんねーよ!跡部が俺なんかと付き合ってるってだけで不思議なのに、言われもしねーのに俺の事好きだなんて、そんな都合いい事思えねーよ!」
「自分の事『俺なんか』って言うんじゃねえっ!」
「…だって!」
ジローもそう言ってくれたけど、やっぱり自信が持てない。
付き合ってる相手にも、好きと言って貰えない俺なんか…!
「だってもクソもねえ!俺が惚れた奴なんだよ!お前自身にだって悪く言わせねえよ!」
「…跡部?」
今、跡部。
俺に惚れてるって…言った?
目を丸くする俺の瞼を、跡部はその長い指でそっと伏せさせる。
「…言わなかった俺も悪ぃけど、ちょっとは察しろよ」
「…俺バカだから」
初めてもらった言葉に胸がとくん…と高鳴る。
「惚れてる」って言ってくれた…。
たかが「言葉」じゃないかって跡部は思うかもしんねーけど、俺にとっては何にも代えがたいものなんだ。
今までの不安が、スーッと晴れて行く。
何回抱き合っても消えることがなかった心の靄が、今はもうすっかり消えていた。
「…俺も聞けば良かったんだよな。『俺のこと好きか?』って…」
「手前は、無駄にプライド高いからな」
「…跡部には言われたくねーよ」
俺は目を伏せたまま、跡部の口付けを感じる。
その唇の温かさに、俺は目を閉じていても分かった。
きっと、もう跡部の瞳から悲しい色は消えただろうって。

          ***

湿ったシーツに跡部の腕枕で眠ることが、こんなに幸せだと感じた事はなかった。
いつも、心のどこかで不安を抱えていたから。
「目、痛くねーか」
夕方に散々泣いて、ついさっきまでもベッドで泣かされ続けた俺の目は、一体どれだけ腫れてるんだろうか。
跡部が苦笑いで俺の瞼に触れる。
「痛くはねーけど、重い」
ただでも一重瞼なのに、これ以上腫れぼったくなったら見るに耐えないな、きっと。
そう思ってため息をつく俺の頬に、跡部は優しく口付ける。
「お前はいつだって可愛いよ。瞼腫れてたってな」
「はあっ!?」
砂吐くほど甘い台詞に耳を疑う。今まで聞いたことも無い台詞だ。跡部の口から出たなんて信じられない!
訝しげなおれの目に跡部は憮然と言い放つ。
「俺はこれから、思った事を全て言う事にした」
「は?」
「俺たちあんな始まりだったじゃねーか。何だかタイミング失って『好き』の一言も言えないでいたけど、今回みたいになるくらいなら思ったこと全部口にした方が余程マシだ」
「はあ…」
それでさっきの台詞?
跡部って、かなり恥ずかしい奴…?
「あれだけ大事にお前の事抱いてるつもりだったのに、全くお前には通じてなかったしな?」
呆れたような流し目をくれる跡部。
「…うう」
それは俺の所為じゃねーだろ。
だいたい、ベッドの中の台詞や態度ほど信用ならねーモノはないと思うんだけどな、俺。
「たった一言言わなかったがために、あんなに恐ろしい思いするなんざもう御免だからな」
「…跡部」
俺を責めてるわけじゃないって分かってるけど、やはりちょっと肩身が狭い思いだ。
そんな俺に気づいたのか、跡部はニヤニヤ笑って俺の頭を撫でる。
「ま、お前の実は謙虚なところは美徳だと思うぜ」
実は、の所にひっかかりは覚えるが、取りあえず誉められたと思っておこう。
「精々俺は、謙虚なお前が不安にならねーように、愛の言葉を囁き続けてやるから覚悟しておけ」
「か、覚悟?」
何でそんな大そうな話になってんだ?
「プライベートは勿論、学校でだって部活でだって遠慮する気はねーから」
むしろ堂々と。そんな決意が見て取れる。
「いやいや!学校はマズイだろ?」
「知らねーよ。俺は言いたい事を言いたい時に言う。…ジローみたいのもいることだしなあ?」
「…!?」
チラリと向けられた視線でようやくさっきのジローの言葉を思い出す。
面白くなさそうに舌打ちする跡部。
言わずとも跡部は…。昼間したジローとの会話の内容は察しているようだ。
「だから覚悟しとけ。お前を手放す気は全くないからな」
跡部はそう言って、シーツに広がる俺の髪に口付けた。



長い…長いです。最後まで読んで下さった方有り難うございました。ウチの忍足は都合よく設定変えられまくりで、今回は中1の途中で転校してきたことになってるらしいです(まるで人ごと)。あと気になったのはジローが宍戸に言った「男は跡部だけじゃない」って台詞。これじゃあ宍戸がまるで女のよう!書いてる時は全く意識してなかったんですが、読み直して自分で突っ込んでみたり…(汗)
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