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R-18です。苦手な方はご注意ください。
  


Imprison-監禁- (①千神編)
~監禁シリーズ1~


夕闇の分かれ道。
「じゃ、また来週」
他愛も無い世間話を終え、神尾がそう言って手を上げれば、深司も「うん。またね」と頷いた。
いつもと同じ帰り道。
橘の引退後、不動峰の練習は新入部員獲得のために益々気合が入り、今日のように真っ暗になるまで続けられることも珍しくない。二人とも疲れきった表情で背を向けるとそれぞれの帰宅路へ曲がっていく。
「あー風呂入って早く寝たいなぁ」
食欲よりも睡眠を欲する神尾の足元は、大きなテニスバックに振り回されるように何だか心許ない。
明日は土曜日。少し寝坊も良いかもしれない…などと考えていると、たった今通り過ぎたいつもは人気の無い空き地から、勢い良く飛び出す人の足音が聞こえる。
「…!?」
シン…と静まりかえった中に突如響いた数人の足音。神尾は反射的に身体を向ける。
「えっ!?」
その人影を確かめる前に、神尾の目は真っ暗に覆われる。
「なにっ…!」
そして鼻先に嗅ぎなれない刺激臭を感じると、それ以上声も上げられずに意識が遠のいていった。

神尾が目を覚ますと、一番最初に見たことも無い天井が目に入る。そのまま視線をずらせば壁一面のガラス窓。繊細なレースのカーテンの向こうには日本ではないような広大な庭園が見下ろせた。
「…あれ?」
自分の置かれた状況が分からず、神尾は焦って身を起こす。
(えっと、練習終わって深司と分かれて…?)
行動を順に辿っていく。
そして、自分はあの足音のヤツらに捕まったらしいことを認識する。
(そうだ、何か変な臭いがして…!)
気づくと見知らぬ場所だった。
変な物を嗅がされたが特に気分も悪くなく、神尾は軽く頭を振ってみるがクラリともしない。けれど随分な時間眠っていたらしく、外の日差しに夜が明けている事に気づく。一体どれくらいの時間が経ったのか。腕時計を確認しようとした神尾は何気なく見下ろした自分の上半身にギョッとする。
「えっ!?」
…服を着ていない。咄嗟に掛けられていた布団を捲くると、案の定何も身につけていなかった。
「おいおい、どーゆー事だよ!?」
部屋を見回すが人の気配は感じない。それどころか少しの生活感も感じられなかった。
「誘拐…?」
自分の身に起きた事を反芻すればその言葉が一番ぴったりとくるのだが、一人おかれたこの部屋にはそんな緊迫した雰囲気は感じられなかった。何てったって外の景色が一望できるのだ。こんなのん気な誘拐犯もないだろう。
「一体誰が…?」
猿轡をされているわけでもなければ、目隠しもされていない。これを誘拐と呼べるのだろうか。
「まさか、知ってる奴のイタズラ…?なんて訳ないか」
こんな豪華な部屋を持つ友達は知らない。
見回せば、大きな窓から太陽光がたっぷり射し込み、オフホワイトの壁が余計に部屋を明るく見せている。秋とは思えない南国のような眩しさだ。
そして、どう少なく見積もっても神尾の部屋が5つは入ってしまいそうな広さ。寝かされてるベッドだってテレビで見るリゾートホテルのものみたいだ。仲良く3、4人は横になれそうな大きさで、いっそ天蓋が付いてた方が自然なんじゃないかと思えてくる。
少し離れたところには豪華なソファセットが並び、テーブルにはカラフルな果物が積まれた籠が置かれている。
ミニシアターのような巨大な液晶テレビ。モデルルームのような何から何までが自分の生活からかけ離れたものばかりだ。
「取りあえず、着るもの探すか…?」
一通り確認してからやっとそう思い当たる。出口を探すのはそれからだ。
神尾は軽やかな布団を持ち上げてそこから出ようとする。
「な…!?」
そして初めて気がついた。
「鎖…?」
自分が足枷によって繋がれていることを。
「え?ちょっとマジかよ…」
テレビドラマなんかで見る手錠何かより明らかに頑丈そうな物。足首を拘束する環自体に相当の厚みがあり、両手で引っ張ったり捩ったりしてみてもビクともしない。
「う、そ…。逃げらんないっ」
足首を捕まえた部分が無理ならこの鎖の繋がれた先を探ってみようと、鈍い光を放つそれをジャラリ…と持ち上げる。
「重…」
見た目以上の重量感だ。悪戯の度を越した、本当に逃がすつもりがないのだという意思表示にも感じる。こんなもの市販で手に入るのだろうか…?
それでも繋がれた先を探ろうと、全裸のまま床へ下り鎖の先を追っていく。毛足の長い絨毯の上を重い鎖が音も無く付いてくる様は、ゆらりと動きの緩慢な蛇に追われているようにも見え、ただでも現実味のない状況をより物語の中の出来事のように感じさせる。
自然と繋がれた右足を引きずるように先を辿っていくと、その長さはソファの横を過ぎその奥の半開きの扉へと飲み込まれて行った。
「…誰か、いる?」
微かに届くシャワーの音。
恐る恐る隙間から覗き込めば、真っ白に輝く洗面台の鏡に映り込むバスルーム。全面ガラス張りのその中では、立ち込める湯気の中誰かがシャワーを浴びている。
それは切れ切れに見える背中だけでも分かる、明らかに男性の姿。
「…っ!」
自分よりも逞しい裸の脚に、思わず一歩退く。
男の自分をここまで運んだのだ。他の人間を使わなければそれは当然男性の仕業だと考えるのが自然だろうと、神尾は頭では理解していた。
でも、その男が自分が繋がれている部屋でシャワーを浴びているとしたら?「誘拐」という言葉に急にセクシャルな臭いが絡み始める。
全裸の自分にシャワーを浴びる男。
どんなに鈍くたって、やっぱり自分がこれからされるかもしれない、常識では考えにくいことを思わずにいられない。
もう一歩、後ずさる。
…ガチャ。
ベッドからここまで来るのに一度も鳴らなかった鎖が、よりによってこんな時に。神尾の目覚めを知らせるかのように擦れて啼いた。
「…ああ神尾くん。目、覚めた?」
ほんの小さな金属音をも聞き逃さなかった男は、キュッとシャワーを止めガラスの扉を押し開ける。一気に広がる白い湯気と一緒に神尾の前に姿を現した彼は、無造作に洗面台に放ってあったバスローブを手に取る。
見覚えのある明るい髪に、無邪気な笑顔。慣れた手つきでローブの紐を結わく彼は…。
「…千石さん…?」
全国大会以来に見る、千石清純の姿だった。

「どうして?千石さん…?」
その事実にショックを受けながらも、神尾はあわてて扉の影に隠れてしゃがみこむ。全裸だった事を思い出したのだ。
そうやって膝を抱えながらも、神尾の頭にはぐるぐると疑問が廻る。
ここは何処なのか、自分が何故ここにいるのか、どうして繋がれているのか、裸なのか。何で千石さんがいるのか、シャワーを浴びているのか。
そして、何でそんなに無邪気に微笑むことが出来るのか、こんな状況で…。
見知らぬ人間ならここまで考えないかもしれない。見知っている人だからこそ不思議で仕様がない。だってこんなことをされる理由が思い浮かばないのだ。
「色々と聞きたいことがあるとは思うけど」
洗面所の扉から出てきた千石は、ドアの前で無意味にしゃがみ込む神尾の姿に微笑んだ。そんなことは知らない神尾は、ただ感情を露わに叫ぶ。
「当然だ!」
「…そう怒らないで?でも、俺がとやかく言わなくても、君の考えていることはほぼ間違えてないと思うよ?」
見上げると、千石は濡れた髪をタオルでぐしゃぐしゃと拭きながら何でもないことのように言う。
「…千石さんが俺を、誘拐したってこと?」
「ま、そうだね」
そんな核心にさえ、穏やかに答える。
「そうだねって!」
「ちなみに言えば、その目的も神尾君が思っている通りだと思うよ?」
ふとタオルを持つ手を止め、意味ありげな視線を送る千石。神尾は膝を抱える身体を益々小さくする。
脱がしたのが千石なら、今更隠しても仕方がないのじゃないか?などとは考えが巡らない。今はただ、不気味な状況から身を守りたい一心だ。
「…目的、聞きたい?」
細い身体を震わせる神尾。その姿に嗜虐心を煽られるのか、千石はわざと怯えさせる物言いをする。
「…くっ」
零れそうな恐怖の声を、必死に飲み込む神尾。
「…目的はね、神尾くん。君を抱くためだよ?」
ゆっくりと、そして静かに通る千石の声。
「…やめろっ!」
恐れていた答えを遮るように、神尾の悲痛な声が部屋中に響き亘った。

「やだっ!離せっ」
暴れる神尾を千石は軽々と抱き上げる。改めて手にするその華奢な身体に千石は「あぁ…」と声を漏らした。
服を脱がせる時にも感じたこの興奮。けれど、眠ったまま、まるで人形のような神尾を抱きしめた時とは、その悦びは比べ物にならない。
「どうする気だよ!?」
理解はしていても、こういう状況に置かれた人間は咄嗟に言ってしまうものなのか。そんな言葉にも千石は意地悪く答える。
「だから、これから君を抱くんだ」
「…ふざけるな!!」
信じられない、いや信じたくないこの状況。バタバタと力の限り暴れる神尾を千石はベッドに下ろす。
そして素早く適度な長さを測った千石は、鎖の一箇所をベッドの脚近くの床に作られたフックに引っ掛けてしまう。ガチャっと鳴る鍵がしまったような金属音。
「なにっ!?」
あわてて右足を振り上げる神尾だが、その足は一定の高さまでしか上がらない。より短く繋ぎとめられたのだ。
「外せよ!」
ベッドの傍らでさっき着たばかりのバスローブを脱ぎ落とす千石。神尾の声には微笑むだけで、ギシ…とベッドを軋ませて神尾の横へと滑り寄る。
殴りかかろうと振り上げた神尾の腕を捕らえると、千石はその手首に優しく唇を寄せた。
「あまり暴れると手錠もかけなきゃならない。大事な手首、傷つけたくないだろう?」
暗にテニスが出来ない身体になりたくはないだろう?と微笑む千石。
「…汚ねェ」
神尾はその脅しにこみ上げる怒りを感じながらも、やっぱり力を抜かずにはいられなかった。大事な手首を傷つける訳にはいかないから…。
「そう、いい子だ」

髪を撫で頬を撫で、飽きもせずにキスを繰り返す千石。始めは顔を背けてその唇を拒んだ神尾も、千石の口付けへの執着に諦めたように口腔を許した。
「…あ、ハ」
息継ぎに仰ぐ様が、物慣れなさを語って千石を喜ばせる。
「神尾くん、初めてなんだね?」
ぷちゅっと水音をさせて離れたわずかな隙間から、囁かれる声。
「あ、んン…」
答える間も与えられずに、また犯される唇。
粘膜を翻弄する熱に、神尾の頭は靄が掛かったようにボーっとしていく。
もちろん初めての口付け。
ましてや千石のその手管に、こういう意味ではまだまだ子供の神尾が敵うわけがない。
「気持ちイイ?」
うっとりと細められた眦に煌めく涙の雫を舌先ですくうと、千石は蕩けるような微笑みで神尾の瞼にもキスを落とす。
「…せんご、く…さん」
拙い言葉で呼びかける表情は、もう自分の状況なんて忘れ去ってしまったかのように甘さを含んでいる。
「監禁されてるってのに、君って子は。快感に弱すぎるね」
苦笑いで今度は裸の胸に指先を滑らせる千石。
この様ではいつか自分ではない男に求められても、快感に負けて簡単に唇を許してしまうかもしれない。そんな不安も感じて、千石はようやく次の段階へと進む。
快感に弱いならばそれで結構。
インプリンティング…いわゆる刷り込み。その言葉が千石の頭を過ぎった。
「いいかい?ちゃんと覚えて帰るんだ。これからずっと、君の快感は全て俺が作り出す。分かったね?」
そう言い含めれば、神尾は赤ん坊のような瞳でただ千石を見上げていた。

「ああ、あ…ン」
胸の突起を舌で擽ると、神尾の唇から零れるあえかな声。神尾は胸元に伏せられた千石の髪に指を絡めると、引っ張るでもなく押し返すわけでもなく、ただその存在を確かめるかのように弄る。
「君は本当に可愛いよ…」
試合で対戦した時のあの負けん気の強さ。そんな子を力でねじ伏せたらどんな表情をするだろうと、千石は暗い欲望を秘め続けていた。
けれど、いざ蓋を開けてみればこんなにも従順な神尾の姿。
「やっぱり好きな子に拒まれるのは悲しいからね…」
思わぬ展開だが、千石は素直に感謝した。
神尾がこうも簡単に快感に身を委ねるのは、その恐怖から逃れるための自衛本能かもしれない。けれど理由なんてどうだって良い。
「俺から離れられないようにしてあげるよ」
そう言って、今度は強く尖りを吸い上げる。
「あんっ…」
零れる吐息は拒んでなんかいない。そのままもう片方も指先で押しつぶすようにすれば、反発するようにツン…と起ち上がる。
「乳首起ってるよ?神尾くん…」
苛めるように耳元で囁く声に、神尾は感じて身を捩る。
「いやぁ…、言わないで」
「ダメ。君のイイ顔見たいからもっと言うよ?」
「…ばか」
交わされるのは、もう甘いだけの睦言だ。
千石は躊躇うことなく神尾の下腹部に手を伸ばす。
敏感な箇所に触れられ反射的に身体を震わせると、足首を繋ぐ鎖が鈍い音をたててシーツを滑る。
まだ明るい日差しの中で響く繋がれた鎖の音。何て倒錯的なシチュエーション。
「ハぁ…」
神尾の中心がその音に反応し、唇から快感の声が零れれば、さすがの千石もまいったというように苦笑いする。
「君は素直で流されやすくて、快感に弱くて。それでいて、とてもタフだ」
やっぱり自衛本能なんかじゃない。こんな状況すら楽しんでしまえるタフさと好奇心旺盛さ。本人すら気づいていないだろう神尾の本質に、千石はより一層魅了された。

くちゃ…と先走りを揉み込むように亀頭を包む千石の手のひら。神尾は心も身体もすべて千石に委ねて唯与えられる快感を貪り続ける。
「気持ちイイって、言ってごらん?」
そう千石が言えば、素直に口を開く神尾。
「…きもち、イイ」
「本当にいい子だ…」
そう呟いて見つめる千石の眼差しは、もう溢れ出しそうな欲望で滾っている。
「君の中に入っていい?」
握った手のひらをゆっくり滑らせて、怯えさせないようにそっと指先が後口へたどり着く。ここに入るんだよ?と教えるようにその窄まりに触れるけれど、神尾は分かっているのか分かっていないのか、快感に身を任せてクスン…と鼻で啼くだけだ。
「辛かったらちゃんと言うんだよ?」
「あ、ン…」
答えというよりは甘い喘ぎ。
千石はナイトテーブルの引き出しから潤滑剤を取り出すと、手早く自分のものに塗りたくる。快感に身を任せて身体の力が抜けている間に神尾と繋がってしまおうと、その入り口にも冷たいオイルを塗りこんでみるが、変に力む事無く指先を飲み込んでいく。
「君は男に抱かれるために生まれてきたみたいだ…」
程よい締め付けに、含まれた指から快感が走る。
少し動かしてみても、痛がる素振りもなくじれったそうに腰を揺らす仕草。
「大丈夫そうだね…」
指を抜き、仰向けで瞼を伏せる神尾の頬にもう一度キスをする。そうするとするりと首に絡まる神尾の細い腕。
「大好きだよ…」
そう囁いて千石は自分の昂ぶりを、何も知らない窄まりに押し当てる。
怯えを見せない神尾を確認すると、そのまま一突きに貫いた。
「ああっ!」
その衝撃に、神尾の唇から鋭い叫びが突いて出る。痛みというよりは驚きのために瞳を大きく見開く。
「神尾くんっ!」
抱きつかれた背中に爪が立てられると、千石はますます止まれなくなる。
出て行けと身体を押し返されなかった。驚きながらも神尾が受け入れてくれたのを感じて、その熱はグンと力を増す。
「ダメェ…!」
大きくなった昂ぶりに、たまらず神尾は頭を振る。
けれどその内壁は貪欲に千石を締め付ける。きつく吸い上げ奥へ奥へと誘うかのように。
「す、ごいな…」
あまりの締め付けに千石が快感の声を漏らせば、神尾も素直に声を上げる。
「だめっ、大き、いっ!」
激しく前後に動く腰に細い左脚を絡めると、神尾は密着するように千石の背をかき抱く。枷によって動かない右足にぐずるように涙を浮かべて、快感のままに甘えてくる神尾。
千石の腹に触れた神尾の中心も、やはり熱く勃ち上がっている。
愛らしい仕草に、千石はもう我慢の限界だった。
「…神尾くん、一緒にイこうっ」
二人の身体に挟まれた神尾の昂ぶりに手を伸ばす。もうぐちゃぐちゃに濡れたそれは今にも弾けそうだ。
「アアあっ、千石さん!!」
きゅっと握ると、たったそれだけの刺激で神尾は大きく背を反り昇りつめた。
「神尾くんっ!」
神尾の最後の締め付けに、千石もその名を呼び最奥を突き上げて熱い精を迸らせた。

そしてa confidential talk。密談…。
その屋敷内でも一際大きく立派な扉を、千石は乱暴にノックする。
「開いてる」
素っ気無く返ってきた返事に、千石は「お邪魔ー」と声を掛けてから扉を開いた。
「ああ、千石か。早かったな」
ゆったりとしたロッキングチェアに咥えタバコで出迎えたのは、氷帝学園の跡部景吾。
そう、この屋敷の持ち主だ。
「跡部くーん。この椅子はやめようよ。爺さんじゃないんだから」
タバコには目もくれず、その椅子に突っ込む千石。
「うるせェ。考え事にはこれが一番なんだよ」
ゆらゆらと前後に揺られながら愉しそうに口角を上げる跡部。けれど、その考え事については口にせず、タバコを勧めながら千石に尋ねた。
「で?どうよ守備の方は?」
タバコの勧めを手を上げて断ると、千石はニヤニヤ笑いながらソファに腰を下ろし、飲み掛けらしいワイングラスをぐいっと煽る。
「ぬるいけど美味い。さすがいいもの飲んでるねー跡部くん」
「ったく、勿体つけてねーでさっさと言えよ」
跡部もニヤっと笑って先を促す。
「いやー最高ですよ。神様、仏様、跡部様ってね!ほんと素敵な場所を提供してくれてありがとうって感じ」
「何だ、蹴散らされずに済んだのか?」
「ねー。俺も覚悟はしてたんだけど、全然」
もう一杯手酌でワインを注ぎ、千石は一気に飲み干した。
「ボコボコに反抗されて、イジケてこの部屋に来るのを楽しみにしてたのにな」
跡部もソファに移動すると、千石に注いでもらいワインを煽る。
「意外な発見。神尾くんはね相当快楽に弱いよ。あんな従順だなんて意外だったなぁ」
目じりの垂れたニヤケ面に、跡部は苦笑する。
「まあ、連れてくる時もそれらしい反抗しなかったしな?相当鈍いのか、流されやすいのかって感じだな」
運転手を残して、千石と二人で車に連れ込んだ時を思えば、確かに簡単に行きすぎた感じはある。
「ま、俺としてはラッキーだし?1週間で俺に夢中にさせてみせるよ。いや、明日明後日で落ちるかもなぁ」
「何だ、えらい自信だな?」
鼻で笑う跡部に、千石はフンっと顎を上げて微笑み返す。
「言ったろ?俺今回はマジだから。今までみたいな遊びはもう卒業」
「全く。越前も同じこと言ってやがったぜ?」
「あれ、そういえば越前くんはどう?」
自分の後に、跡部と二人で意中の人を迎えに、もとい攫いに行った越前の姿は無く、千石は不思議そうに尋ねる。
「あいつは大変だぜェ、あの海堂だからな」
「確かに…」
越前の本命があの海堂だと聞いた時は、正直二人とも今回は無理じゃないかと諭したのだ。何てったってあの体格差に体力差。そしてあの性格。
監禁した位で挫けるとは思えないタフさ加減だ。
「一度この部屋来て薬持ってったぜ」
「ええー!?あれ?」
滅多なことがなければ使わない媚薬。跡部が裏のルートで手に入れたそれは、使ったこっちがビビる程の効き目だった。
「俺、あんなの怖くて好きな子に使えないよ~」
「それほど切羽つまってんだろーよ」
「確かにねェ。海堂くんだもんね…」
越前の不在に納得すると、今度は跡部の先ほどの笑いが気になる。
「さっき何か面白そうな考え事してたみたいじゃない、跡部くん?」
「あ?まあな」
「今回は傍観に徹するんじゃなかった?」
好奇心たっぷりの千石の目に、跡部は勿体つけるように言いよどむ。
「まあ、俺もイイ拾い物したって所かな」
「はあ?はっきり言ってよ!」
イライラしたように、もう一杯ワインを煽る千石。
「越前と二人で海堂攫いに行った時、人に見られてな」
暢気に大問題を口にする跡部。千石はあわてて腰を上げる。
「はあ!?マズイじゃん!」
「まあ、聞けって」
そう言って焦る千石を落ち着かせると、跡部は脚を組み直して奥の扉を指差す。
「…聞こえねえ?」
「何が?」
「よく聞けって」
言われるままに口をつぐんで耳を澄ますと、なるほど壁を叩くような音がする。誰かが外へ出せと要求するように。
「え、まさか?」
「そう、そのまさか。見られたそいつも拉致ってきた」
くつくつと喉で笑う跡部に、千石は呆れたような声をあげる。
「そんな見ず知らずの人いいの?どんなに脅しても、いつかきっとゲロるよ」
今まで散々悪さをしてきたのは、跡部の名が活かせる氷帝の人間が主だった。だからこそ目端を利かせられたのだが。
「安心しろ。氷帝の人間だ」
千石の心配をよそに、跡部はさらりと言う。
「え?すごい偶然じゃん。制服で分かったの?」
「いや、違う。偶然知ってる奴だったんだ」
「え、嘘!?」
何という偶然か。千石も愉しくなって乗り出すようにして先を促す。
「誰?俺も知ってる?可愛い?」
「手前も知ってるよ。好みかどうかは知らねーが。越前はタイプらしいぜ?」
「ホント?じゃあ海堂みたいなツンとしたタイプか!えーと、えーと」
まるでなぞなぞを解くようにして、指を折り自分の知っている人間をピックアップする千石。そんな愉しそうな千石の邪魔をするように、跡部はあっさり答えを言った。
「ウチの部の宍戸だよ」
「ええっ!?宍戸くん!?」
散々焦らしておきながら最後にあっさりと答えを言った跡部にむっとしつつも、その答えの意外さに千石は驚きを隠せない。
「何だって、宍戸くんそんな所に居合わせちゃって…」
ご愁傷様とでも言いたげに手を合わせる千石。
「あいつもランニング中だったんだろ?海堂と同じコースを偶然走ってたんだ」
「…なるほど。それで人が車に引き込まれる現場を見かけて、正義感に溢れる宍戸くんは『ちょっと待てお前ら!』と…」
身振り手振りで話すのが可笑しくて跡部は声を上げて笑うが、実のところそれがぴったり正解だった。
「あいつも、見て見ぬ振りが出来ればよかったんだけどなぁ。ま、そういうわけだ」
「で?宍戸くんは、君のお気に召したと?」
今まで散々一緒に部活をやってきたのに何で今更?と千石の目が不思議がる。
「あの反抗的な宍戸を啼かせるってのは、かなりソソられるぜ?」
舌なめずりでもしそうなその横顔に、千石は分かりません、と両手をあげておどけて見せる。
「俺のかわいこチャンは従順な甘えん坊ですから。んじゃ、俺は部屋に戻って神尾くんに添い寝でもしたげるかな~」
神尾を拉致って来たときとは全く違う、幸せそうな表情。
「まったく。ダラシナイ面しやがって」
跡部にどんなに笑われても、想いを遂げた千石にとってはただの嫉みにしか聞こえない。
「まあ、精々頑張って宍戸くんを落として下さいな。あ、面白いことあったらちゃんと内線で呼んでよね!」
「わーってるよ!」
おどけて電話をかけるジェスチャーをする千石を、跡部はウザそうに手で払い部屋から追い出す。

そして、静かになって思うのは…。
2階の越前たちと、この部屋の奥に繋いだ宍戸のこと。
「面白いこと、か」
ニヤリと口の端を上げると、跡部はタバコに火をつけそのまま奥の部屋へと向かう。もちろん宍戸がタバコ嫌いだと知っていて…。


監禁連作1話目は千石神尾でした。マイナー路線突っ走ります(笑)。それにしても神尾は相当頭が弱そうな感じで、何故こんな子になっちゃったのか自分でも疑問…。 
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すごい
初めまして♪
私の好きなカプばかりで大変面白く読ませていただいております
ああああ 2008/03/16(Sun)17:59:36 edit
ハコニワより
相当にマニアックなCPばかりですが、気に入って頂けて良かったです。今後とも宜しくです♪
ハコニワ 2008/03/19(Wed)23:18:48 edit
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ようこそお越し下さいました!「ハコニワ‘07」はテニスの王子様、跡宍メインのテキストサイトです。妄想力に任せて好き勝手書き散らしている自己満足サイトですので、下記の点にご注意くださいませ。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
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