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前回、前々回アップ済み「Imprison-監禁-①千神編」「Imprison-監禁-②リョ海編」の続きです。R-18ですので苦手な方はご注意ください。
~監禁シリーズ3~
宍戸は床にペタリと腰を下ろすと、後手に拘束された両手で身体を支え、鎖の繋がれていない左足を蹴りだす。
ドンっ。
扉の横の壁を力いっぱい蹴飛ばす。
ドンっ。
もう一度。
踵が痛むが、躊躇している場合ではない。この壁1枚隔てた部屋で跡部が笑っていると思ったら、もう大人しくなんてしてられない。
「出しやがれ!跡部!」
もう一度壁を蹴飛ばす。
聞こえてくるのは何やら楽しそうに話す跡部と誰かの会話。
自分はこんな格好で、こんな風に閉じ込められているのに!宍戸は自分の状態を見て、ますます怒りがこみ上げる。
太い鎖に拘束された右足に後手に手錠を掛けられた腕。そして全裸のこの状態。
「あんのヤロー…!」
あの時の、実に愉しそうな跡部の顔を思い出す。
誰かを引きずり込もうとしていた車に駆け寄った時に見た跡部の表情。
まさか自分が出くわした誘拐の犯人が跡部だなんてと驚く宍戸をよそに、玩具を見つけた子供のように笑って見せたあの瞳。
「ここから出しやがれ!」
まさか、そのまま自分まで誘拐されるとは思いもよらなかった。ただ、見てしまった現実に身体が自然と動いて駆け寄ってしまっただけなのに。
「…あの時誘拐されたヤツはどうなったんだ?」
あの時は暗くて顔も確認できなかった被害者。あの人も自分と同じ目に遭っているのだろうか?
跡部の酷い仕打ちに、怖さよりも怒りが先に立ち宍戸はもう一度激しく壁を蹴飛ばした。
「…待たせたな宍戸」
咥えタバコで部屋に入ってきた跡部は、扉の脇でペタリと座り込む宍戸の顔に向けてフーっと煙を吐き出す。
「て、めェっ!」
ゴホゴホと顔を背けて咳をする宍戸の表情に、跡部は満足気に嗤うと床を這う鎖を引っ張り上げる。
「おいっ!」
急に浮いた右足にバランスを崩して、宍戸は倒れ込んだ。
「お前っ、何すんだよ!」
床に倒れたまま跡部を睨み上げる瞳はいつも以上に吊り上り、怒りのあまり血走っている。
「何って、鎖が邪魔だからよけただけだ」
わざと見当違いの返事をしたら、案の定宍戸は食ってかかる。
「違げーよ。誘拐してこんな風に繋いでどういうつもりだって聞いてる!」
「…さぁ?なんだろうな?」
おどけたように言い、天井を仰いでもう一度煙を吐き出す跡部。
「…タバコなんて」
宍戸にとって信じられない事ばかりの連続だ。
誘拐に出くわして、自分まで誘拐され、その犯人が部活の仲間で。
裸にされて繋がれて、それを見て跡部が笑い、しかもタバコまで吸ってる。跡部ほどのテニスプレーヤーが。
手元を見つめる視線に気づいた跡部は、短くなったそれをテーブルに置かれた灰皿で消すと宍戸に向かって一歩ずつ近づく。
「手前とは鍛え方が違うからな。こんなタバコの1本や2本でお前に負けるようなヘマはしないぜ?」
「っ手前!」
跡部の挑発に勢い良く立ち上がる宍戸だが、鎖を力強く引かれてしまえば全裸の胸から跡部に抱きとめられるしか出来なかった。
「どういうつもりか、なんて野暮なこと聞くなよな?こんな格好にされて本当は分かってんだろ?」
跡部は逃げようとする宍戸の身体を強く抱きしめて、その項に舌を這わす。
「っ!」
生暖かいその感触に、宍戸はゾクリと鳥肌を立てて固まった。
「たっぷり可愛がってやるから」
「…なっ!?」
跡部は宍戸を勢いよくベッドに押し倒した。
ベッドに置かれたクッションを背もたれに、宍戸は大きく脚を開かされる。その間に入り込んだ跡部は、縮みあがった宍戸のペニスに手を伸ばした。
「跡部っ!」
焦って身を捩るのを押さえ込むと、跡部はまだ軟らかいそれをゆっくり扱き始める。
「やめろよっ!」
叫ぶ声が裏返ると、跡部は殊更愉しそうに微笑む。
驚きと恐怖と、そして羞恥にまみれた宍戸の表情。
跡部はじっくりとそれを観察してから口を開く。
「気持ちよくしてやるから、しっかり見てろよ?」
わざと見せ付けるように舌を出し、まずはねっとりと震える先端を舐め上げた。
「この、ばかっ!」
全身をビクンと震わせると、宍戸の中心は少しずつ硬さを増す。
その変化を楽しむように跡部は握った手を上下に動かし、手のひらから溢れた先の部分を舌で突いたり時に咥えたりする。
「っく、あ…」
同性同士のポイントを押さえたその責め方に、宍戸は呆気なく昂ぶっていく。
「イク時はちゃんとそう言えよ?」
跡部は手を離すと、舌先を硬く尖らし真っ赤にいきり立ったその裏筋にゆっくり這わす。
「ああ…っ」
我慢出来ずに揺らめいた腰を見て、跡部は更に追い討ちをかけるように、片方の珠をやんわりと握り込む。そして揉みたてる。
「あ、とべっ!」
宍戸はいつしか素直に快感を追い、両脚をピンっと伸ばしてその太股に力が入る。
跡部はそんな姿に音も無く嗤い、今度はずっぽりと宍戸の幹を口に含む。
「イ、イ…」
実は初めての経験に、宍戸はもう我慢が出来なかった。
ずぽっ、ずぽっと淫らな音を立て何度か吸い上げられられると、益々身体を硬直させて歯を食いしばる。
「も、イクっ!」
小さく言い終わらないうちに、宍戸は跡部の口に勢い良く放っていた。
ハアハア…と、真っ赤な頬で荒い息を吐く宍戸。
そんな宍戸の顔の前で、跡部はわざと音を鳴らして宍戸の放ったモノを飲み干してみせる。ニィっと嗤えば、宍戸は悪魔でも見たように視線を反らした。
期待通りの表情は跡部を喜ばせるばかりで、日ごろは隠しているサディスティックな部分が除除に顔を出し始める。
「さあ、宍戸。見本を見せてやったんだ。次は手前の番だぜ?」
「…っ」
やっぱり、と反らした瞳をギュッと硬く閉じる宍戸。
「自分ばっかりが気持ちいい目に合うなんて都合のいいこと無いよなぁ?」
嘲笑うかのように言い、俯く宍戸の顔の前に膝立ちになった跡部はベルトの音を響かせてゆっくりと前をくつろげた。
ファスナーを下ろしつかみ出した跡部自身は、既に固く勃起している。
「ほらよ」
筋の浮いたソレで宍戸の頬を叩けば、ぎょっとしたように仰け反る宍戸。その拍子に目の当たりにした跡部のモノに、宍戸は頬を引き攣らせて目を剥いた。
「…あ、」
あまりの大きさ。あまりの禍々しさ。
赤黒くテカったそれは、どう見ても自分と同じ性器とは思えない。
「あ?そんな驚くほどデカイか?お前より使い込んでるのは確かだろうけどな」
からかうようなセリフにも、反応できない。
「…ム、リ」
乾ききった唇から漏れた言葉に、跡部は優しく宍戸の頬を撫でる。仕方ないヤツだ、とでも言うように細められる瞳。
「無理じゃねえ。…やるんだよ!」
強く顎をつかんで口を開かせると、跡部は容赦なく脈打つ凶器を突っ込んだ。
「歯立てたらぶん殴るからな」
潰れたクッションの上でほとんど仰向けとなった宍戸に跨るようにして、跡部はその昂ぶりを怯えて震える口にぶち込む。
「グぅっ!」
その長大さに喉を突かれた宍戸が呻けば、跡部はなおも同じ動きを繰り返す。
強く突いてみたら今度はグラインドさせ、気持ち良く成る事が目的というよりも、当然初めての経験に逃げ腰になる宍戸を怯えさせるのが目的のように、じっくりと時間をかけて口腔を犯していく。
「ほら、舌を這わせろよ…って、無理か」
口に含むだけで精一杯の宍戸は、薄く開いた目に涙を浮かべ苦しそうに鼻を鳴らす。
それでも構わず腰を前後させる跡部。
ただでも大きい勃起は、宍戸の苦しそうな姿にまたその角度を増した。
うう…と声にならない声を漏らす宍戸の表情を愉しむように、跡部はその頭をがっちりと押さえ込む。
宍戸の口に含みきれない根元は、出し入れする度に溢れ出た唾液でドロドロになっている。
「…下手くそだけど、この顔は今までで最高だぜ?」
「…ヴ、ヴ」
何か文句を言ったのかもしれない宍戸の言葉は、刺激的な振動となって跡部を悦ばすだけだ。
「いつも突っかかってくるお前が、俺のモノを咥えてるなんてなぁ。部活のメンバーが知ったらどう思うかな。なあ、宍戸?」
「…っ!」
腰を揺らしながら跡部が言った言葉に、宍戸の瞳からとうとう大粒の涙が零れ落ちる。
喉を突かれたための生理的な涙とは違うその雫に、跡部は低く呻いた。
「…っと。お前は俺を煽るのが上手いな。危うくイっちまう所だったぜ」
快感の波をやり過ごすために一瞬動きを止めた跡部だったが、すぐにまた嬲り始める。
グチャ、グチャ…と零れる唾液の鳴る音。
「…宍戸。苦しいか?」
尋ねれば、涙を浮かべたまま睨み上げるその瞳。
突き上げる角度によって時折宍戸が鼻を鳴らせば、その幼さが跡部の快感のツボとなる。
「いつもはもっと長い時間しゃぶらせるんだけどな。お前のそのイイ顔に免じてそろそろ許してやるよ」
宍戸の媚態に、跡部の息も上がってきている。
ギリギリまで愉しもうと、宍戸の頭を股間に押し付けるようにして抱き込みながら、跡部は激しく腰を使う。
「…宍戸、お前最高だぜっ…」
「ヴっ!ヴ…」
その激しさに宍戸はうめき声を漏らす。
荒々しい出し入れに、含んだ部分からグチュッと音が鳴る。
「…イクぜ?」
そして一際激しく突き入れた跡部は、その腰を大きく振るわせた。
「…顔で我慢してやるよっ!」
そう言って勢い良く抜け出ると、ドビュ、ドビュっと、熱い精液が宍戸の顔面に発射される。
「…あぁっ!」
急に抜かれてしびれた口を閉じられない宍戸の顔を、大量の粘液がねっとりと流れる。
…くくっと満足そうに嗤った跡部は、まだ滴る先端でその迸りを宍戸の顔中に塗り広げていく。
「イイ顔じゃねーか」
精液と唾液と涙とでぐちゃぐちゃに濡れた宍戸の表情は、今までどれだけ遊んでも振り切れることの無かった跡部の理性を完全に取っ払ってしまった。
「キツイな…」
繋がれた両手をベッドの枕元に固定し、仰向かせた宍戸を押さえ込んだ跡部は、簡単にオイルを馴染ませただけの窄まりを何の準備もなく貫いた。
「ぐ、…あ!」
跡部が少しでも動けば、潰れた声をあげ苦しむ宍戸。
声を上げた振動が宍戸の身体を伝わって、その内部をも震わせる。
跡部は今までの経験とは全く比べ物にならない快感に瞳を細めた。
「すげェ、いい…」
力の抜き方なんて知らない宍戸に、いつものように甘い言葉を囁くことなど少しもせず、跡部はただ欲望のままに腰を前後させる。
ますます頑なに閉じようとする入り口を無理やりに開き続けるうちに、その動きは少しスムーズになっていく。
「…も、やめて、くれっ」
宍戸が快感を覚え始めた訳ではない。無理な挿入に出血したのだ。
ギリギリまで抜けば跡部のモノに絡まる粘液が薄くピンクに染まっている。
「…痛いか?」
「あ、たりまえ…」
宍戸は固く目を閉じ、歯を食いしばる。
その表情すら跡部を高揚させ、動きは激しくなるばかりだ。
「わりーなっ。やめらんねェ」
その腰を抱えると少し浮かせるようにして、もう一度深く侵入し直す。
「ぐ、ああっ!」
パンパンと肉を打ち、尚も快感を貪る跡部。
その眼は色に溺れた只の牡に成り果てて、宍戸の知るいつも高飛車に自分を見下す跡部の姿はなかった。
「…宍戸っ!」
きつい絞まりと苦しげな宍戸の息遣いに、跡部はもうすぐにでもイってしまいそうなのを、その動きを止めて我慢する。
それに気づいた宍戸は、懇願するように声を絞り出した。
「は、やく、イっち、まえよっ!」
「…嫌だね。勿体ねェっ」
「あああっ!」
そして、汗に塗れた宍戸の腰を抱え直すと、また激しく揺さぶり始める。
「…っく」
長い時間引き伸ばし、ようやく小さく声を上げ跡部が絶頂を迎えたころには、宍戸はもう意識が無かった。
随分前に宍戸の顔に放った跡部の精はすっかり乾き、頬を伝う涙の跡だけが濡れて部屋の明かりに光っていた。
ハアハア…と呼吸を整えながら、跡部はそんな宍戸の顔を覗き込みそっと頬に触れてみる。
先ほどまで深く刻まれていた眉間の皺はなく、場違いな程にあどけなく瞳を閉じているその表情。
「…宍戸」
暖かな頬は、跡部の指先に無意識にピクンと動いた。
「…宍戸」
どうしたものか。跡部はイってしまった後も宍戸の中から出たく無かった。
グチャグチャになった宍戸の顔を、自分が脱ぎ捨てたシャツで拭いながら、無性にキスがしたくなる。
「あぁ、宍戸…」
掴んだシャツを放して、小さく開いた口にそっと唇を寄せる。
重ねれば感じる微かな寝息。散々この身体を暴いたくせに、感じる吐息に一番「近づいた」と思った。
乾いた唇を舐めてやれば、つられるようにして覗いた宍戸の舌先。
跡部は咄嗟に捕まえて、自分の舌をゆっくり絡める。
「…ん、ン」
小さく声を漏らした宍戸は、それでも目覚めずにまた深い眠りに落ちていく。少しがっかりして跡部は唇を離した。
犯罪紛いのことをしている自覚はある。でも、宍戸が目覚めたら自分はどれだけの事を言われるだろうと、跡部はそう考えて微笑んだ。
いつもの遊びなら、何を言われても何も感じなかった。全てバラすと言われれば「跡部」の名を使えばどうとでもなった。何より、大体の人間は文句も言えないくらいに感じるから、バラす事は自分の恥まで晒さねばならない事になり有耶無耶にされた。さらなる関係を望んでくるものも多いくらいだった。そんな今までのどんな言葉も跡部は興味もなかったし覚えてもいなかったけれど。
宍戸が目覚めたらどんな罵声を浴びせるだろうかと想像すれば、自然と口の端が上がってしまう。どんな眼で自分に向かってくるだろう。
今までこうやって抱いた奴らの事など、一度も考えた事はなかったのに。
宍戸という人間にしたって、昨日連れてきてさっき押し倒すまで、その反抗的な態度が面白いだけで、こういう奴を堕としたらどれだけ楽しいだろうかとゲーム感覚に思っていただけだった。
今はこんなに、宍戸が自分に感情を向けてくる事を想像するだけで嬉しいだなんて。
跡部は今まで知ることもなかった胸の締め付けを感じる。
楽しいような嬉しいような、でも苦しいような。
「俺も、人の子って事か…?」
跡部は分かっている。それが一般的に何て呼ばれるかなんて。
「惚れた、だなんて。今更言っても信じちゃくんねーよな…」
やっぱり頬を緩めて、汗に濡れた宍戸の髪を撫でる。
「目が覚めたら、俺を殴ればいい」
跡部は楽しそうに宍戸の両手を拘束した手錠を外すと、赤く擦れた手首に口付けてからその身体に布団を掛けてやる。
「蹴られても殴られても、俺はお前を手放さない。そう決めた」
そう言って宍戸の足首を拘束する鎖の先端を掴むと、跡部はベッドルームを後にした。
そしてa confidential talk。密談…。
鎖の先端を手に扉を開ければ、そこには千石と越前がニヤニヤと笑ってソファで寛いでいた。
「何だ、来てたのか」
テーブルに置かれていたワインボトルを掴みそのままラッパ飲みすると、跡部は思っていた以上に喉が渇いていることに気づいた。
宍戸が起きたらすぐに水を与えなければ…。跡部はそう思いながら、そんな自分を愉しそうに見上げる二人に視線を送る。
「…何だ?」
見下ろせば、千石は恭しく頭を下げた。
「長い時間お疲れ様でした」
先ほど部屋を覗いた時にはすやすやと眠っていた越前も、スッキリしたような顔で笑っている。
「跡部さん、何時間ヤッてたんすか?」
「ああ?」
そういえば、宍戸の中から出て行くのが惜しくて随分粘ってしまった気はする。
マントルピースに置かれた飾り時計を見れば、もう夜中の1時を回っていた。
越前の部屋を出て戻ったのが午後9時頃だったから…。宍戸も意識を失うわけである。
「ま、そんなことはいい。で、何か用か?」
軽く咳払いをすると、跡部もソファに腰掛ける。
「何ってことでもないけど、どうなったかなーと思って」
ニコニコと話を聞きたそうな二人の表情。
「…俺はどうでもいい。お前らはいいのか?相手を放っておいて」
跡部が尋ねれば、千石は残念そうに背もたれに寄りかかり伸びをする。
「神尾くんお子ちゃまだからねェ。12時になる前に完全に眠っちゃった」
「…物凄い緊張感の無さですね。頭悪すぎて監禁されてること忘れちゃったんじゃないんすか?」
失礼な越前の言葉に、千石は手を伸ばすと拳骨でその後頭部を殴り飛ばした。
「俺たちはもうラブラブだから鎖なんて外してるんです。監禁じゃないんです!」
「…マジでもう堕ちたのか?神尾は…」
夕方に千石が来た時は、明日明後日中には…と言っていたのにと跡部は首をひねる。
「あの後部屋に戻ったら、俺が消えたのが不安だったみたいで、神尾くんおろおろしててさー。もう、あまりの可愛らしさに『お付き合いしてください』って言っちゃったら『ハイ』だって!も~、可愛くって」
ハートマークが見えそうな千石の惚気っぷりに、やっぱり越前は生意気な言葉を返す。
「頭足りない人が相手で良かったっスね」
「えーちーぜーんー!」
また千石にゴリゴリと拳骨を押し付けられている越前に「お前はどうだ?」と跡部が尋ねる。
「あー、俺っスか?」
千石を跳ね除け居住いを正すと、越前は少し困ったように話し出す。
「海堂先輩も、もう寝てるんスけどね。うーんこれからどうしようかなって、ちょっと悩んでるっス」
「何を?」
二人が聞けば、頭をガリガリと掻いて越前は溜息をつく。
「俺あの薬使って酷いことしちゃったし、当然好かれるような要素って全く無い訳じゃないっスか。だから諦めるっていうんじゃないけど、今回はちゃんと謝って家に帰してあげようかなーって」
いつもなら土日を挟んで数日間好きなように遊ぶのが常だったが、本気で惚れている相手にこれ以上の非道を続けてはマイナスにしかならないと、越前はテーブルにうつ伏せる。
そんな姿を見て、跡部は少し考えた末に言わないでおこうと思っていたことを口にする。
「…俺は、海堂の奴も満更でもないような気するけどな?お前が『お願い』って頭下げたら、きっとここに残ると思うぜ?まあ、その先は越前の腕次第だけどな?」
「…そーっすかね?」
「ま、言わずに諦めるより言ってみれば?」
千石も「よしよし」と、落ち込む越前の頭を撫でて後押しする。
「跡部さんが良ければ、言ってみようかな…」
何てったってこの屋敷は跡部の持ち物だ。理由がなくなれば帰れと言われても文句は言えない。
「好きなだけ居ろよ。ま、学校に言い訳がつく日数くらいだけどな。俺もしばらくこっちにいるし」
「長引きそう?俺も居ていい?」
跡部の言葉に千石が食いつく。
「…ったく、ここは都合のいいラブホじゃねーんだから。上手くいったヤツは帰れって言いたいところだが…。ま、ケチ臭いことは言わねーよ。好きなだけ居ろ」
苦笑いする跡部に千石は「わーい!」とバンザイする。
「…跡部さん、機嫌いいっスね?」
そんなやり取りを見て、越前が恐る恐る口にする。こんな遊びを始めて半年近く経つから、お互いの性格や機嫌なども少しは分かるようになった。
いつも暇つぶしのゲーム感覚で参加していた跡部とは、少し違った表情に越前は気づく。
「そうだね?跡部くんいつもより楽しそう」
千石もそう言って頷く。
「…楽しそう、か」
跡部は千石の言葉を繰り返し、手にした鎖を強く握る。
急遽用意した鎖は二人にやった物よりは華奢なつくりだが、それでも一般的に使うものよりは頑丈で。跡部はその大事な者との繋がりを、会話の間一度も離さなかった。
「すごい偶然だったけど、宍戸くんとは上手くいきそう?」
千石は夕方聞いた話を思い出す。本当だったら連れて来られるはずのなかった宍戸。偶然通りかかってしまったために、ついでの様に誘拐されてしまった。
「どうだかな…。ただ俺は離す気はねーけど」
跡部はそう言ってもう一度鎖を握り直す。
「へえ、跡部さん本気なんだ。じゃ、もしかしたらあの時宍戸さんが居合わせたのも、必然だったのかもしれないね?」
「…必然ねェ」
意外とロマンチストなのかもしれない越前の発言に、跡部もそうかもしれないと苦笑した。
「じゃ、このお遊びもみんなで卒業か」
千石がパチンと片目を閉じてそう言う。
「そうっスね。みんな本命できたし」
俺も頑張ろう!と越前は言い、ソファから腰を上げる。
「ま、お互い独占欲強そうだからな。上手く行ったら行ったで束縛は酷そうだ」
そう言って跡部は苦笑する。
跡部は自分も含めて、どこか似たり寄ったりの自分たちの性格を分かっていた。才能に恵まれた自分らの、どこか歪に壊れた部分を。
「結局は、それぞれ『監禁』続けてたりしてねー」
冗談めかしの千石の言葉に、跡部と越前は動きを止める。
そして、発言した千石までもが笑みを固まらせていた。
「…俺、自分で言っておきながら、シャレになんねーとか思っちゃった」
「…俺も。けっこうそんな自信あります」
いらぬ自信を自覚する越前。
「…俺はとりあえず。あいつを帰してやれるのか自分でも分からねェ…」
跡部が最後にそう呟くと、それぞれが不安と裏腹な悦びを秘めて、想い人の待つ部屋へ戻っていった。
an addition…。
「…あーとーべー!全部聞いたぞ!」
跡部がベッドルームに戻れば、ドアの脇に座り込んだ宍戸が、きつい眼差しで睨み上げる。
「…宍戸」
どうせ話そうと思っていたことでもあるし…と大して驚きもしない跡部は、それよりも宍戸の体が気になる。
「そうだ。水飲め、水」
先ほど思ったことを思い出し、部屋の隅に置かれた小さな冷蔵庫へと歩み寄る。たいていアルコールしか入っていないが、割るために置いた水が入っていた気がする。
「ああ、あった。ほら宍戸こっちだ」
跡部は座り込む宍戸を抱き上げると、先ほどまで激しく抱いて乱れたベッドに腰掛けさせる。
「バカかっ!てめーは!」
怒りに震えて拳を振り上げる宍戸の腕をがっしり受け止めると、何でも無いかのようにもう片方の手に持ったペットボトルを差し出す。
「とにかく飲め」
「…くそっ」
宍戸はそんな跡部に悪態をつきつつも、差し出されたペットボトルを口に含む。
盗み聞いた話で、自分が連れて来られてから1日以上経っていることに気づいた宍戸。それまで何も口にしていないことを思い出したら急に喉の渇きを感じた。
ゴクゴク…と音を立てて飲むのを眺めて、取りあえず一安心かと跡部は宍戸の隣に腰掛ける。
今まで誰かを連れ込んだ時は、食事なんかに気を配ったためしは無かった。要求されれば差し出したまでだった。宍戸がちゃんと身体を動かすのを見て安心する自分が、跡部はくすぐったくて仕方がない。
「跡部。もう何も文句言わねーから、取りあえず家に帰らせろ」
水を飲みきった宍戸は、そう言って大きく息を吐く。
跡部は何も言わずに、宍戸を見つめるだけだ。
「…大体は聞いたよ。あの時誘拐されたのだって海堂だったんだろ?もう一人神尾もいるみてーだけど、どうも問題なさそうだし。今なら友達同士の誘拐ごっこって事で納得してやれるから、もうやめようぜ?」
反応のない跡部の顔を見上げる宍戸。
けれど、跡部は迷う事無く口にする。
「許してくれなくたって構わねえ。どこにバラしたって文句は言えねえし、殴られたって当然だ。ただ、お前は帰さない。離す気はねえ」
跡部は、手放していた鎖をもう一度ベッドの脇に繋ぐ。カチンと鍵が閉まる音。
「跡部!?」
「お前は俺のものだ」
躊躇うこともなく跡部は言い切ると、そのまま宍戸を押し倒す。
シーツが剥れて汗で湿った滅茶苦茶な状態のベッド。宍戸の知る跡部はA型らしく几帳面でいつも綺麗な状態を好んでいたのに、そんなことは気にせず性急に押し倒してくる腕。
「…跡部」
淡々とした言葉と、らしくないその行動に、宍戸は初めて本当の跡部を感じた気がする。
「宍戸…」
まだシャワーも浴びていなくて、汗や自分らの精液にまみれた宍戸の身体を、跡部は口調とは裏腹の力強さで抱きしめた。
「…バカ野郎」
そんなつもりは無かったのに、結局宍戸はされるがまま跡部の口付けを受け入れる。
別に跡部なんて好きではないはずなのに…。
宍戸は自分の気持ちも分からないまま、跡部の熱い手にその身を委ねて目を閉じた。
監禁連作最終話は跡宍でした。同じ状況に置かれたカップルが、どれだけ違う反応・Hをするかという違いを書いてみたくて始めた連作でしたが如何でしたでしょうか。基本はハッピーエンドですけどね。
今回をもって1人祭りは終了ですが、実のところ最終週の特集をしたいがために始めた所があるので、本人としてはやり遂げられて大満足です。また企画ものやりたいな~などと目論む日々…。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
これらに関する苦情の拍手コメントはスルーさせて頂きますのでご了承ください。
■連絡事項などがありましたら拍手ボタンからお願い致します。
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