誕生日オメデトウ9/29（跡×宍） 2007/09/29 (Sat)

宍戸さんの誕生日を祝して。

誕生日オメデトウ9/12（忍×岳）の続き。
オバカな短編です。

誕生日オメデトウ（跡×宍）

「宍戸！誕生日おめでとう」
部室の扉を開いて一歩踏み入れた途端、岳人の声が宍戸を迎え入れた。
「おーサンキュー！」
一瞬驚いたように動きを止める宍戸だったが、すぐに嬉しそうに目を細めた。
当然のように部室に居座る先輩たちに文句を言いかけた日吉も、誕生日となればさすがに文句を言いづらく、開いた口を渋々噤む。
「宍戸おめでとさん」
岳人の隣で忍足もにこやかにそう言うが、その言葉に宍戸は「おう」と小さく頷いただけで何だか腰が引けている。
「…ばかか。誰もお前なんかに熱いチッスなんてプレゼントせえへんわ」
「おー。そいつは安心した」
「…」
つい2週間前、岳人を襲った災難を思い出しつい身構えた宍戸だったが、忍足の言葉にようやく身体の強張りを解いた。
岳人は要らぬ事を思い出したとばかりに顔を顰める。
岳人の誕生日に居合わせなかった日吉は、何の事かと疑問に思いながらもさっさと着替えを進めていく。新部長として忙しいのもある。だがそれ以上に、お馴染みのメンバーがそろっていつものように騒がしくなる前に、この空間から抜け出そうという魂胆だ。日吉は何だかとても嫌な予感がしていた。
「ほらよ、プレゼント」
「マジ！？激嬉しい！おっ、俺が欲しかったＣＤじゃん！」
「そ。ちょっと奮発しちゃったぜ」
「さんきゅー！」
宍戸はぎゅぎゅっと岳人を抱きしめた。岳人も楽しそうに笑っている。
「俺からはこれや」
「何？あっ、ソックス！」
大好きな赤と紫のラインが入ったデザインに宍戸は嬉しそうに顔を上げる。その表情に忍足も微笑んだ。
「実用的過ぎたかなぁー思うたけど、宍戸靴下の消耗激しいしな。あって損はないやろ？」
練習好きの宍戸は、それに伴って消耗品の使用頻度も大変激しい。忍足らしい心遣いだった。
「損どころか、すっげー助かる！ありがとな忍足」
宍戸がホクホクの笑顔で頂いたプレゼントを鞄に収めていると、部室の外から聞き慣れた足音が聞こえてくる。
楽しげに盛り上がる先輩たちは気づかないが、いち早くその足音に気づいた日吉は、いよいよ準備をスピードアップだ。この音は恐らく跡部の足音。何か大変な騒ぎが起こる気がする。
「それじゃ、先輩方。俺練習行きますんで！」
珍しく慌てたような日吉の声に、3人は不思議そうに首を傾げる。
「お？おう。頑張れよ」
「何や、忙しいんか？手伝うか？」
忍足の心配そうな声に「大丈夫です」と早口で答えると、日吉は自分のラケットをつかんで部室の扉に手を伸ばした。
しかし。
「よう宍戸。今日はテメエの誕生日だってな？俺様が直々に祝ってやるぜ」
「！」
一歩間に合わなかった。
日吉が出ようとしたその先を、一足早く扉を開けた跡部が仁王立ちで塞いでしまう。
そして、制服姿の跡部の肩に担がれた巨大な薔薇の花束が、日吉が身を縮めて抜け出る隙間さえ奪ってしまうのだ。
「…あとべ」
宍戸たち3人は、呆れたような表情でそんな跡部を出迎えた。
「男にバラの花束って、どうなん？」
「よりによって宍戸だぜ？」
忍足と岳人が冷めた視線でそう言えば、宍戸は急にガタッと椅子から腰を上げた。
そして、見つめる跡部の瞳から視線を逸らせないまま、じりじりと部室の隅へと移動するのだ。そんな宍戸を、巨大な花束を持った跡部が一歩ずつ追い詰める。
日吉はもう部室から逃げ出せるにも関わらず、ついその成り行きを見守ってしまう。
そして、同じく見守っていた忍足と岳人は、その行動の意味に思い当たったように顔を見合わせるのだ。
「跡部のヤツ、お前と同じことしようとしてる！？」
「…そのようやな」
驚きつつもどこか楽しんでいるような二人の会話に、日吉は事の行方が見えてしまった。
だから、せめて宍戸を敬愛する鳳が入ってこられないように、開かれた扉をもう一度閉めるのだ。そして門番のようにその前に立ち尽くす。
「やめろ…！跡部」
「あーん？感謝しろよ。俺様から熱いベーゼのプレゼントだ」
「わーっ！！」
「……」
真紅の花弁が乱れて舞い散る。
手を取り合い見守る忍足と岳人。
その向こうでは。
壁際まで追い詰められた宍戸が、跡部の両腕に阻まれて逃げ道を無くし、熱く深く唇を奪われている。
「…もう嫌だ。こんな先輩」
日吉の呟きは、二人の歓声と宍戸の悲鳴によってかき消された。

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全然祝って無い！（笑）