素直な指先（跡×宍） 2009/01/26 (Mon)

どうも、ご無沙汰しております。

私絶賛インフルエンザ休暇中です！！
昨日までの3日間ほんと辛かったっす。某お薬のんでも39度から熱下がらないし（泣）
でも、今朝になったらあっさりと下がったんで、溜まってた掃除洗濯やったらさすがに動悸息切れが…。
やりすぎた☆
しかし、合同誌の原稿早めにやっといて正解だったなァ。本気で落とす所でした。

さてさて、今回のお話は。
転んでもタダでは起きない私。
早速、インフルかかっちゃった宍戸と、心配で仕方ない跡部様の超短文。
跡部様まるで子供のよう…。

素直な指先（跡×宍）

「宍戸？」
「らしくない声出してんなよ。平気だから」
「でもよ、」
「ばーか。子供じゃねえんだ」
「…分かってる」
跡部は、ようやく俺の手を離した。
手洗いだ、うがいだって言ったって、これだけ病原菌に触りまくってちゃ感染してくださいって言ってるようなもんだ。
「跡部、マスク！あと、暫く俺の部屋は出入り禁止だ」
「宍戸！」
一瞬離しかけた手を、跡部は慌てて握り直す。
こういう所は子供の頃からちっとも変ってねえ。言葉より、表情より、何より先に手が出てしまう。どこよりも正直な指先だ。
バカだなァ。可愛いなぁ。
「跡部！俺の話聞いてたか？俺、インフルエンザだから。わかる？感染るから離れろ」
「…分かってる」
「分かって無い。良い歳して、もう少し聞き分けが良くないと、俺困るんだけど」
「…分かってるって」
「本当か？じゃあ、買ってきた食材適当に冷蔵庫つっこんどいてくれ。悪いけど暫く自分の食事は実家行くか、あいつらに食わせてもらうかしろ」
「あいつら？」
「ああ。忍足や滝あたりなら自炊してるだろ。俺の料理で食えてれば、あいつらのだってイケるさ」
「無理。お前の飯以外いらねえ」
「ああ？じゃあ何だ。餓死する気か？それとも、ふらふらの俺に料理を作れと？」
「違うって。…わかったよ」
「よーし。じゃあ、お前も気を付けて、できたら何日か実家戻ってた方がいいんだけどな」
「…気が向いたらな」
跡部は払い落す様に俺の手を離すと、素っ気なく背を向けた。
キッチンに向かった跡部は、きっと口をへの字に結んで、食材を冷蔵庫にしまい込んでいるだろう。
「ったく」
あいつは、甘やかすと際限がないからな。きっと傍を離れない。
でも、何より。
本当は俺が「傍にいて」と言ってしまいそうで焦ってたんだ。だから、少し乱暴な言い方しちまった。
ああ…、いよいよ熱が上がってきたな。

深夜2:18。
俺は、手にした携帯を放り投げた。
さすがインフルエンザ。一気に39度まで上がった熱は中々下がらない。
薬を飲めば明日の午前中には大分楽になりますよ、なんて、先生言ってたけど、本当か？最近薬の効かない耐性ウイルスもあるって聞いてるし、まさかなァ。
身体が痛い。
高熱で節々が痛くなるって聞くけど、もうさ、節々とか関係ないのな。ありとあらゆるところが痛い。
当然食欲なんか無くて、俺は専ら水分ばかりを摂っている。
跡部、夕飯ちゃんと食ったかな…。
それにしても。
「っ痛ェな…」
もう何度目か分からない寝返りを打つ。
はずみで布団から足が出てしまっても、いつものように寒いとは感じない。体が熱すぎてその冷気が気持ちいい位だ。
「だめだ。ちゃんと掛けろ」
「…え？」
そっと、跳ねた布団を直された。
「そんなんじゃ、治るもんも治んねェだろ」
「跡部！」
この、馬鹿！絶対入って来るなって言ったのに！
俺は咄嗟に起き上がろうとするけれど、倦怠感に敵わなかった。
「平気だ。マスクもしてるし、すぐに出ていく。ちょっと様子を見に来ただけだ」
「跡部」
跡部はベッドの足の方で座り込むと、布団の間にその手を忍ばせる。
そして、そっと俺の足首を掴んだ。
「熱いな」
「跡部…」
俺は追い出すのを諦めて、目を瞑る。
跡部の触れた足だけが、ひんやりとして気持ちが良い。
「これ以上近づかない。10分だ、10分で出て行くから」
跡部はそう言って、俺の足をゆっくりと撫でた。
まるで、早く治れと願うように。

お前に、こんな辛い思いさせたくないから近づくなって言ったのに。
でも、ごめんな。
本当は、すごく嬉しい。
少しでも触れていたいって、何度も撫でるお前の手が、こんなにも俺を安心させる。
あ、跡部。
俺、ようやく少し眠れそうだ…。