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いつか穏やかなsquare 3
酔いも冷めるってもんだ。
忍足の奴、面白いどころか、とんでもないモノ押し付けて行きやがった。
泣く宍戸なんて。
想像できるか?あの、負けず嫌いの塊みたいな奴がだぜ?
レギュラー落ちした時だって、涙なんて見せなかったぞ。
俺は今初めて知った。
宍戸が、忍足を好きだったなんて。
そして、忍足の奴はそれに気づいていたのだろう。
あいつのやりそうな事だ。自分の目的を果たしつつ、問題も片付ける。
別に宍戸の事を嫌っている訳じゃないだろうが、己の目的の為なら多少の犠牲はいとわない奴だ。
宍戸の涙は、忍足の目的の犠牲となる。
でも、上っ面だけ優しくしたりしない、忍足のそういう所を俺は気に入っている。
特に宍戸は、そういうのにもずるずる縋りそうな気がするからな。
この涙を見て思った。
しかし、まいったな…。
それが正直なところだ。
軽い気持ちで、雰囲気が良くなりゃ寝てみるのも悪くない…なんて、そんな雰囲気ではなくなった。
宍戸は、目を開けたまま声も無く泣き続けている。
虚のような瞳は、痛々しい位だ。
「可愛相に」なんて言える間柄ではない。
「大丈夫か」なんて。自分の好きな人が、自分の親友に惚れてると知って大丈夫なはずがない。聞くだけ野暮だ。
「そう落ち込むな、俺がいるだろう」とか?
相手が女なら使わないでもない。でも相手は宍戸だ。残念ながら、積極的にどうこうなろうって気もないし、コイツだって御免だろう。
息苦しくて、震えるような溜息が洩れた。
「…跡部」
「あ、ああ?」
宍戸が、ゆっくりとその身を起こす。
「どうした?水でも飲むか?」
らしくもなく焦ってしまう。
けれど宍戸は、緩慢に首を振るとベッドの上から俺を見つめた。
一重瞼を縁取る睫毛は、涙でしっとりと濡れその色を強くする。昔ほどではないけれど、人並以上に長い髪が頬に張り付いている。
宍戸は、成長期が早かった。その後、思ったほど大きくならなかった身体は、華奢にさえ映る。骨が細いんだな。背は平均以上あるのに、そのせいか余計に儚く見えた。
いつもは、どう見ても男臭いのに。いや、自分の体格を知っているからこそ、わざと男らしさを強調するようにガサツに見せていたのかもしれない。
俺は、思わず唾を呑んだ。
バカだな、忍足。折角好いてくれてるんだから、こいつで手を打っときゃいいのに。
「跡部は知ってたのか?忍足の事」
「…知るか、んな事」
「そっか。じゃあ、岳人も知らなかったんだろうな」
「だろうな」
そんな事知ってれいば、あんな無防備に寝やしないだろう。
「…2人は?」
一瞬言葉に迷ったが、嘘を言っても仕方がない。そもそも同じ部屋にいるのだから分かり切っているだろう。
こいつは諦めるために聞きたいんだ、俺に確認をしている。
「まだ客間だろう。どうなったか分からねェが、まあ、岳人が飛び出して行った雰囲気はねえな」
「だな…」
もう一度、大きく息を吐く。
俺なんかより、余程こいつの方が落ち着いて見える。
涙と一緒に、全部流してしまったとでも言うのか?
「跡部」
「ああ」
「バカなことを、言ってもいいか?」
「何だよ」
日頃バカだクズだ言い合っている仲だから、改まった口調が気持ち悪い。
「あ、のさ」
「ああ」
「あの、」
「何だよ?お前らしくねえな」
苦笑したら、宍戸も「そうだな」って微笑んだ。
「俺を、抱いてくれないか?」
「!?」
言葉を失くした俺を、誰が責められる?
恥じらうでもなく、取り乱す訳でもない。ただ淡々と宍戸は告げる。
「意味、分かってるのか?」
「そりゃ、子供じゃねえし。これでもずっと男を好きだったんだぜ?それなりの知識くらいあるさ」
「…そうか」
そういう雰囲気になれば、寝てみるのも悪くない。そう思ってたくらいだから、俺は別に構わない。
でも宍戸は。
「…お前、初めてじゃねえの?」
俺の言葉に、宍戸はくしゃっと、子供みたいな笑顔を見せた。
「分かる?初めて」
「バカ、笑う所かよ…」
諦めるための儀式なのだとしたら、それは乱暴すぎる。
「せめて髪切るくらいにしておけ」
「古風だな、今どき髪かよ」
「どっちが古風だよ」
想いが届かないなら、もう全て要らないと?
「いいじゃねえか。どうせ、そのつもりでここに連れて来たんだろ?」
「…気づいてたのか?」
「当たり前だろ?でもなきゃ、なんで寝室なんだよ」
「だな」
俺は、ようやく起き上ったばかりの宍戸を、もう一度ベッドに沈める。
「後悔するぜ?」
触れた頬は、まだ涙に濡れていた。
「後悔?するさ、きっとな」
何でこうまでして結論づけようというんだ。「all or nothing」、そこまで割り切れるものなのか?
「不器用だな」
「良く言われる」
覚悟は揺るがないようだ。
「優しくなんてしないぜ?俺は、俺のやりたいようにやる。手前の失恋なんて知ったことか」
「望むところだ」
「…喧嘩かよ」
挑発的な言い方に、俺は呆れてしまう。
それから、お互い自然と口を噤んだ。
ところどころ張り付いた髪をかき上げてやれば、久し振りに宍戸の顔をちゃんと見たなと気づいた。
中学の頃のように毎日顔を合わせるわけじゃないからな。ましてや、大学に進学してからは会うことが稀なんだから当然か。
派手か地味かと言われれば、もちろん地味な顔立ちだろう。
切れ長の目は昔と変わらないし、全てのパーツが全体的に小さいんだ。
「傷痕、消えたのな…」
「…いつの話してんだよ」
小さく笑うと、眼尻に皺が入って愛嬌が出る。
あの頃、鳳が必至に宍戸を追いかけ回してたのが不思議でならなかったが、今ではそれが理解できた。
色気があるんだ。
鳳の奴、アレでいて意外と見る目があったんだな。
笑って零れた犬歯が可愛くて、俺はまず、そこにキスした。
「っ…」
仕掛けたのは自分のくせに、たかだか触れるだけのキスで驚きやがる。
「そんな身体固くしてたら疲れるぜ?ほら、両手上げろ」
「あ?ああ…」
宍戸は素直に両手を翳す。俺は、それを自分の首に回させた。
そして、ゆっくりと覆いかぶさったら、程良い強さで抱きしめてやる。
「暖かいだろ」
「ん、」
出来るだけ身体を離さず、俺は宍戸の服を脱がせて行く。
「自分で脱ぐぜ?」
「バカだな。これが楽しみなんだから好きにさせろよ」
「あ、そ」
初めて、照れくさそうな顔を見せた。
本当に、忍足はバカだな。
こいつの、本当の表情をもう少し知ってからでも良かったんじゃねえの?
肌蹴た胸に、そっと頬を寄せる。
意外なほどに落ち着いた鼓動だった。
何だか、可哀相になってしまう。何もかも諦めてしまったような、そんな落ちつきに感じてならない。
せめて今だけでも、この現実を忘れてしまえればいいのに。
激しく、口づける。
そして、伸ばした手で宍戸の中心を探った。
「…あ、」
最初は何の兆しも見せなかったが、丁寧いに揉み込むうちに、次第に熱を持ち始める。
感じるのを堪えるように、宍戸が仰け反った。
「素直に感じればいいんだ。それが自然だ」
先端を指先で捏ねると、堪え切れずに先走りが濡れ始めた。
「あ、ゥ…」
ぴちゃ、と鳴る度に、部屋の温度が一度上がった気がする。
俺は、啄んでいた唇から離れると、ベッドに潜り込む。
俺の熱と宍戸の熱とで、まるで熱帯のような甘い暑さ。震える先に息を吹きかければ、宍戸の脚が無意識に跳ねた。
俺は、その昂りを口にする。
「あ、とべ!」
泣きそうな声だった。でもそれは、さっきのような虚無の涙ではない。
感情の籠った、戸惑うような啜り泣き。
初めての愛撫を、お前はどう胸に焼きつけるのか。
初めての男ってのは、やっぱり特別なんだろうか?
良く聞く言葉が頭を過る。
本当に参ったな、宍戸。
俺は妙に嬉しいんだ。
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