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宍戸レギュラー復帰後のお話。


王様のエスコート (跡×宍)

「よう、調子よさそうじゃねーの」
そう言ってベンチの隣に腰を下ろす跡部は、たった今試合をしてきたとは思えないくらい涼しげな顔をしている。
「跡部こそ、調子いいんじゃねー?」
「当然だろ」
鼻で笑うその肩越しに、悔しげに汗を拭く日吉の姿が見える。
「あいつは手加減なんて望まねーからな」
そう言うとドリンクを一口含んだ。
200人の部員の誰一人として、天才と言われた忍足でさえ敵わないほどの絶対的王者、跡部。
口許に浮かぶ不遜な笑みが、当然に思えるほどの無敵の王者だ。
いつか必ずシングルスで勝ってやる。
そう常に追い続け、いつからか恋焦がれた存在が、今『恋人』となって隣に座っている。

レギュラー復帰を果たした昨日。
不揃いな短髪になった俺は、誰もいなくなった部室で跡部に抱きしめられた。
何も言わずに、ただ後ろから強く抱きしめた腕。
「好きだ」
甘く響く、たった一言。
「…俺も」
嬉しさよりも、信じられないという驚きに高鳴る鼓動。
一言応えるので精一杯だった。

「昨日は悪かったな、髪やってもらって…」
自分で切り落として不揃いだった髪は、昨夜の内に跡部家お抱えの美容師が駆けつけてカットしてくれた。
「気にするな。さすがにあの髪じゃ登校できねーだろ」
「…サンキュ」
「ああ」
ぎこちない空気に、いつものような軽口が叩けない。
あの後、俺の言葉を聞いた跡部は、ただもう一度強く抱きしめただけでいつもの跡部に戻ってしまった。
『好き』だからどうなのか。どうしたいのか。
何も言わないまま今に至るから、正直まだ『恋人』ではないのかもしれない。

まさか、あの『好き』は友情としての『好き』だったのか?
でも、普通友達を後ろから抱きしめたりはしねーよな?
…レギュラー復帰したから、特別サービス?
そんな事ねーか。
それなら…。

「宍戸。何一人で百面相してやがる」
隣に腰掛けた跡部が、膝に肘をつき軽く組んだ両手に顎をのせた状態で、視線だけを寄越す。
「…えっ!?」
俺そんな変な顔してたか?
意味もなく、自分の頬をぺたぺた触ってしまう。
もちろん…何も分からない。
「おもしれーヤツ」
フッと笑った表情は、いつもの高飛車な感じじゃなくて。
「お前はぐるぐる考えてねーで、俺に任せときゃいいんだよ」
「あとべ?」
頬に両手を添えたまま固まる俺は、相当間抜けに見えるのだろうか?
…見えるのだろう。
「ハハっ!そんな顔しなくたって、ちゃんと順序立ててエスコートしてやるぜ?」
珍しく声をあげて楽しそうに笑うから。
俺は体中火照ってしまう。

だって、すげーカッコいい!
きっと俺、顔が真っ赤だ。

「まあ、手始めに…」
跡部は俺の顔を覗き込んだかと思うと、その綺麗な両の掌で俺の手ごと頬を包み込む。
「これくらいは、いいだろう?」
そう悪戯に微笑んで。
「…!!」
…チュッと唇を啄ばむと、跡部の整った顔がゆっくり遠ざかって行く。
「…あ」
そっと、自分の唇に触れてみる。
今のは…キス、か?
「後ろから抱きしめただけで震えるようなお子様には、ゆっくりと…な」
「跡部!?」
練習中だぞ!皆見てるし!
驚いて上げようとした声は、コートから響く怒鳴り声にかき消される。
「こらー!跡部と宍戸!俺の試合中にイチャつくな!」
「…岳人」
仁王立ちでラケットを振り上げる姿が見える。
気付いてなかった部員たちも、一斉に俺たちを振り向いた。
「馬鹿岳人め…」
思わず顔をおおってしまう。
余計な事を言うから、事態が大きくなったじゃねーか。
「バーカ。俺様に指図してんじゃねーよ」
ただでもコートより高い位置にいるのに、これでもかと言わんばかりに腕を組み見下す跡部。何も立ち上がらなくたっていいだろうに…。
「跡部も、そんな喧嘩に乗るなよ…」
俺のボヤきなんて聞く気もないようで。
「俺様が自分のものに手を出して何が悪い。お前はせいぜいそこで飛んでろよ」
跡部は岳人に向かって、そうはっきりと言い放った。

―え…?
『自分のもの』って言った…。
俺が跡部のものって。
跡部の言葉に、俺の頬がまたカーっと熱を持つ。

「何だってー!?」
そう叫んで今にも怒鳴り込んできそうな岳人を必死に止める忍足。
向こうでボール籠を盛大にひっくり返し涙目で呆ける長太郎。
他にも、好奇心に溢れた視線がいくつも投げられるけど。

まあ、いっか。

腕を組み笑う跡部がすごく嬉しそうだから。
子供が手に入れた玩具を自慢するような感じ…に見えなくもないが。
「跡部。責任とれよな」
見上げて俺は言う。
「アーン?誰にものを言ってる。当然だ」
太陽光を背負った王様は、不敵に微笑んだ。

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