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前日アップ済み「夢より優しい 前編」の続きとなっております。
夢より優しい 後編 (跡×宍)
「亮…」
頭の上から、優しい声が聞こえる。
さっき暗闇の中で、遠くへ行ってしまった景吾。
手を伸ばしても届かなかったあの姿。
景吾が戻ってきた…?
景吾がまた、俺のことを優しく呼んでくれている?
うっすら明るさを取り戻した視界の向こうに、自分を覗き込む影を感じる。
景吾なのか?
「亮。お前が好きなんだ…」
なんて都合のいい夢。
景吾が自分を好きだなんて言ってくれるはずがないのに。
もう少し眠っていられたら、この甘い夢の続きを見られるのだろうか。
せっかく幸せな気分なのに…。
現実に引き戻される…。
「亮。目が覚めたか?」
目覚めると、何も変わらない現実にがっかりするのが俺の日常なのに。
「亮」
景吾がいる。そして俺を呼んでる。
しかも名前で。
「…な、んで?」
「大丈夫か?お前うたた寝しながら泣いてたぞ」
こんな優しく微笑む景吾は知らない。
3年前のあの時から、景吾はいつも怒ったように俺を見ていた。
こんな景吾は、知らない。
「夢…?」
そうとしか思えない。景吾が俺に微笑むなんて。
あの日校庭で腕を払われた時から、俺に微笑む景吾なんて見たことないのだから。
「夢じゃねーよ」
笑って俺の頬をタオルで拭ってくれる景吾。
そんなの知らない。
こんな事ありえない。
だって。ずっと…。ずっと…!
「俺のこと嫌いなんだろ!?こんなことするな!!」
なんて悲しい。何て虚しい。
どこまでが夢だろう。
「亮…」
今度は優しく髪を梳いてくれる。
いつも夢の中の景吾は優しかったけど、目覚めた後で悲しくなる。
はやく目覚めなきゃ。
嬉しければ嬉しいほど、目覚めた後の悲しみは大きい。
「こんなの夢なんだよ!景吾が俺の事好きだなんて言うはずないんだ!早く目覚ませよ!!」
優しい腕を払うように手を振り上げる。
きっと儚い幻想は霧のように散ってしまうから。
「え…!?」
それなのに、手首が強い力で掴まれる。
「亮、俺の眼を見ろ!夢じゃない。分かるか?」
片手で軽々と俺の両手首を掴むと、横になったままの俺にゆっくりと覆い被さってくる。
「景、吾?」
額に触れる温かさ。
瞼に触れる温かさ。
夢じゃ…ない。
だって、毎晩夢に見た優しいキスは、いつだって温度がなかったから。
***
呆然と俺を見上げる亮に、俺は何から話せばいいのだろう。
俺が名を呼ぶのを夢だと言って聞かなかった亮。
俺が自分のことなど好きなはずはないと言って、悲しそうに顔を歪める亮。
こんなにも溢れる俺への想い。
今更「俺の事好きか?」なんて聞くまでもなく。
とりあえず、何より伝えなければならないことは…。
「あの時は酷いこと言って悪かった。お前が好きなんだ。許してくれないか?」
3年もかかってしまった。
***
「景吾…。景吾!景吾っ!」
俺は景吾の名前をたくさん呼んで、その頭を抱きしめた。
あの時から、口にすることを禁じられてしまった名前。
どれだけ一人ぼっちの部屋で泣きながら呼んだ事だろう。
「…景吾、寂しかった」
もう、あんな風に手を払われることは無いんだな。
「悪かった」
抱き寄せる腕がいつの間にか逞しくなってる。
あの頃は俺の方が少し背が高かったのに。
いつの間にか追い越されたな。
「景吾…」
「亮…」
「長かったよ…。バカ」
「…悪かったな、亮」
景吾が両手で挟むように、ゆっくり頬を撫でてくれる。
「相変わらず小さな顔だ」
「そうか?」
今度はそっと瞼に触れる。
「相変わらす大きな瞳だ」
「…でも目つきは悪いんだろ?」
最近の口喧嘩で景吾によく言われてた台詞だ。
景吾がクッと喉の奥で笑う。
「ケンカなのに、大きくて綺麗な瞳だ、なんて言えねーだろ?」
「…そりゃそーだ」
景吾の言葉一つ一つに体中が幸せで満ち溢れる。
夢で見たよりずっと。
景吾は優しい。カッコいい。そして…イヤラシイ。
だって何の前置きもなく、俺は唇を奪われた。
「ジローと忍足に礼を言わなきゃな」
ソファーの隣に腰掛けて、俺の髪を弄びながら景吾が呟く。
ジローはきっと全てに気付いて見守っていてくれたから、ちゃんと報告しなければとは思っていた。
でも、なぜ忍足?
「今、部室を立ち入り禁止にしてくれているのも、練習の指示を出してくれているのも、多分忍足だからな」
「忍足がなんで?」
「居合わせたからさ。お前がここで泣いていたところにな」
「……」
まさか部室で居眠りしている時まで、景吾の夢を見るなんて思わなかったから油断した。
しまった、と口を閉ざす俺に景吾は事も無げに言った。
「構わないだろう。明日には全部員に公表するつもりだし」
「…公表?」
いまいち話が掴めない俺は景吾の表情を窺う。
すると、楽しそうに微笑んで俺の耳元に顔を寄せる。
「お前は俺のものだって、公表するからな」
「!?馬鹿なっ」
「ジローをはじめ、お前を狙ってるヤツは多いからな。釘をさすいい機会だ」
「!?」
その不敵な笑みに、俺は文句を言おうと開いた口を噤んだ。
こういう時の景吾は、絶対に人の意見を聞かない。
長年見つめてきたからよく分かる。
それに。
やっと手に入れた幸せを、ちょっと見せびらかすのも良いかな、なんて。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
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