忍者ブログ
★初めてお越しの方は、お手数ですが「はじめに」を必ずお読みください。★
[32]  [31]  [30]  [29]  [28]  [27]  [26]  [25]  [24]  [23]  [22
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

リョーマのおねだりに海堂ドキドキ。
リョ海です。海リョではない…はず。


おねだり (リョ×海)

「危ない!」
球拾いをしていた1年生の叫び声に、レギュラー陣は一斉にそちらを振り向く。
「海堂!!」
「乾!!」
皆が口々に声を上げる。
ボールを深追いしスピードを落とせなかった海堂が、隣のコートで球出しをしていた乾の背中に勢いよく突っ込んだのだ。
派手にひっくり返ったカゴから、何十ものボールが転がりだす。
「イテテ…。海堂大丈夫か?」
ラケットを放り出し海堂を抱きとめた乾は、押し倒される形でコートに尻餅をついていた。
「……ってぇ…。スンマセン!乾先輩大丈夫っすか!?」
広い胸に抱きとめられて、海堂は慌てて起き上がろうとする。
「先輩、血が!」
乾の唇から血が滲んでいる。
「ん?」
海堂の視線に、唇に指を触れた乾は「たいした事ないよ」微笑み、海堂の頭をポンっとたたく。
「そういう海堂こそ唇切っちゃったみたいだな」
自分の事はそっちのけで、海堂の顔を覗き込むと下唇にそっと触れる。
「たいした傷ではなさそうだけど」
そう言うと指先に付いた海堂の血をペロっと舐めてしまう。
「乾先輩!?」
びっくりして真っ赤になった海堂は乾から体を離す。
「二人とも、大丈夫かにゃ?」
二人の周りにレギュラー陣が寄ってくる。
心配そうに声をかける菊丸。
その後ろには河村や大石も心配顔で覗き込む。
そして、さらにその後ろからは、地を這う様な低い声が響いてくる。
「かーいーどーうー先輩!」
びくっとして、何だ何だと皆が振り返ると、ただでも大きく吊った目を益々吊り上げた越前が顔を真っ赤にして怒りに震えていた。
「どうしてそう無茶するんスか!?…よりによって乾先輩と!乾先輩とーっ!!」
握り拳を震わせ地団駄を踏まんばかりの越前に、海堂の表情はすっかり「?」マークだ。
恋人の越前に、転んで心配されこそすれ怒られるいわれはない。
きょとん…とする海堂に、ジャージの埃を払って立ち上がった乾はニヤッと笑う。
「ご馳走様。海堂」
そして越前には「不可抗力だよ」と人の悪い笑みを浮かべる。
「さあ1年。一緒にボールを集めてくれるか」
何事もなかったようにその場を離れて行く乾の背中を、越前はキーっと睨む。
「むーかーつーくー!!」
近くで傍観していた不二はフフ…と笑い、何も気付いていない海堂にそっと囁く。
「事故とはいえ乾とキスしちゃったね。君の王子様、当分機嫌直らないかもよ」
「!?」
海堂は自分の唇に触れ、やっと事態に気付く。
勢いよく乾に突っ込み互いの唇がぶつかった時、歯があたって傷が出来たのだ。
「海堂先輩。手当しますから部室行くっスよ」
越前は有無をも言わさぬ迫力で海堂の腕を引き立ち上がらせると、事態を見守っていた手塚に「いいっスね?」と宣言し、海堂を引き摺るようにコートを出ようとする。
「……」
何を言っても無駄だと思ったのか、腕を組んだまま頷いた手塚を、海堂が戸惑うように振り向く。
「こんな傷たいしたことないから、いいっスよ」
縋るような目の海堂に申し訳ないと思いつつ「行って来い」と指示する手塚。
王子様のご機嫌を直せるのが海堂しかいないのは周知の事実。
ここで引き止めて、怒り狂う王子様の相手をするのはまっぴら御免なのである。
「まったく乾も、いらぬ挑発をするから…」
隣に立つ大石も、はぁ~とため息をついた。

「先輩、座って」
部室へ入ると海堂をベンチに座らせ、越前はその前に屈みこむ。
「…別に手当するような傷じゃねーし、お前は練習に戻れ」
困ったように言う海堂に、越前はムッとして口を開く。
「先輩ちっとも反省してない!せっかく綺麗な唇に傷つけて…。しかも乾先輩とキスするだなんて!」
傷もそうだが、どうやら怒りがキスにあるのは明らかである。
「越前…」
いつもの強気な態度はどこへやら、海堂は困ったように俯く。
周りに気をつけず、先輩を巻き込み転んだのは自分のせいである。
しかも事故とはいえ先輩とキスをしてしまい、恋人である越前を怒らせてしまった。
越前の嫉妬深さには本当に驚くばかりで、今までも何度怒らせたか知れない。
あまり放っておくと厄介だな…と、小さく溜め息をつく。
「…悪かった越前。許してくれないか?」
滅多に自分から謝ったりしない海堂だが、いつも飄々としている越前のこの怒り様を見ると、ここは自分が折れた方が良いだろうと本能が告げる。
「…本当に反省してる?」
まだブスっとふくれた越前の目を、海堂は真っ直ぐ見つめる。
「ああ、反省してる」
瞳をそらさず、はっきりと口にした。
「じゃあ、俺のお願い聞いてくれる?」
越前は切り返す。
「……」
なぜ『自分が反省する、イコール越前のお願いを聞く』になるのか釈然としないが、どうもここで反論すると事が悪化しそうなのでしぶしぶ頷く。
「…何だ、言ってみろ」
ニヤッと笑った越前は、乾き始めた海堂の傷口をペロっと舐めると、その首に甘えるように腕を回しお願いを口にする。
「みんなの前で俺にキスして?」
上目遣いのおねだりポーズでとんでもない台詞を口にする越前に、海堂はさすがに目を吊り上げる。
「なんだと!?ふざけた事言ってんじゃねえ!」
絡みつく腕を払うと、付き合っていられないとばかりにベンチを立ち上がろうとする。
「ふーん、そんなこと言うの。さっきお願い聞いてくれるって言ったのに」
しつこく抱きついてくる腕に結局立ち上がれず、座り直した海堂は越前の膨れた頬を指で突付く。
「…聞くとは言ったが、叶えるとは言ってねえ。」
「…!?ずるいよ!!」
そんなの屁理屈だ!と反論し、「ずるい!ずるい!」と両の肩を揺さぶってくる越前。
子供っぽい態度に海堂は思わず笑みをもらす。
これでは弟と同レベルだ。
「もう、海堂先輩!笑い事じゃないっス!こっちは必死なのに先輩はちっとも俺の気持ち分かってくれない…」
ムッとしつつも少し寂しそうな表情をみせる越前に「まったく、しょうがない奴だな…」と海堂は苦笑し優しく呼びかける。
「越前…」
耳元を海堂の唇が掠めていく。
そして、首筋にひとつ。
おでこに、ひとつ。
最後に、膨れっ面の唇にひとつ。
軽く触れるだけの優しいキスが贈られる。
暖かくて柔らかな感触に、頬を染め一瞬動きを止める越前。
「今日のところは、これで勘弁しろ」
横を向いて、ぶっきらぼうに言う海堂。
その頬は越前と同じ様に紅く染まっている。
(自分からキスなんて絶対しない人なのに…!)
「先輩!」
さっきの膨れっ面は何処へやら、嬉しさのあまり抱きついて今度は越前からもっと大人のキスを仕掛ける。
傷口をいたわるように舌先で触れ、そしてふっくらと柔らかい唇を割って忍び込む。
「…んっ」
戸惑うように声を漏らし、少し震えながらも迎え入れてくれる。
そして、逃げる舌先を捕らえ、絡ませる。
「ん…ふっ…」
舌先が触れ合った途端、電流が走ったようにびくっと体を震わす海堂がいとおしい。
そのまま頬の内側を擽り、最後に下唇を軽く吸い上げる。
チュ…と音をたてて離れる唇。
熱に浮かされたような海堂。
その唇の端からは、含みきれなかった唾液が光っている。
それすらも味わうようにチュッと吸い上げて、越前は抱きしめた腕を放してやる。
「今日はこれで許してあげるね、先輩」
先ほどまでの大人な雰囲気がウソの様に、王子様は満足気に笑う。
「馬鹿やろう…」
海堂は照れ隠しのようにつぶやいた。
そして、自分はいつもこの年下の王子様に振り回されてばかりだな…と溜め息を零す。
そんな自分が嫌いではない事も事実なのだが。
(まったく、とんでもないヤツに惚れちまった)
そう苦笑しつつ目の前の小さな頭を引き寄せると、柔らかなくせ毛に口付けた。

「え~、そろそろ良いかなぁ?」
場違いなまでに間延びした声に、二人はバッと体を離し部室の入り口を振り返る。
そこには、かったるそうにドアに寄りかかり腕組みをした不二の姿が。
「不二先輩、いつのまに!?」
先に我に返った越前が驚いて尋ねると、不二はいつもの人をくった様な笑みを浮かべる。
「ちゃんとノックはしたよ?でも君たち世界に入りきっちゃってて気付いてくれなかったから、失礼させてもらったよ」
クスクス笑う不二に、海堂は真っ赤になったまま俯きいよいよ顔を上げられなくなってしまった。
「手塚がね、二人がなかなか戻ってこないから様子見て来いって。よかったねぇ、来たのが手塚だったら大変なことになってたよ」
もっともである。一体グラウンド何十週走らされたことか…。
「じゃあ、お二人さん早めに戻ってね。手塚には上手く言っておくから」
そう言って部室を出ようとした不二は、そうそう…と振り返る。
「二人とも貸し一つだからね♪」
嬉しそうにひと言言い残す。
「!?」
悪の化身のような不二に弱みを握られ行く末に不安を感じつつ、二人は呆然とその背中を見送った。

恥ずかしくてコートに戻れないと落ち込む海堂を、何とか引っ張って練習に戻れたのはそれから15分後のことである。

PR
この記事にコメントする
color
name
subject
mail
url
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
はじめに
ようこそお越し下さいました!「ハコニワ‘07」はテニスの王子様、跡宍メインのテキストサイトです。妄想力に任せて好き勝手書き散らしている自己満足サイトですので、下記の点にご注意くださいませ。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
これらに関する苦情の拍手コメントはスルーさせて頂きますのでご了承ください。
■連絡事項などがありましたら拍手ボタンからお願い致します。
■当サイト文書の無断転載はご遠慮ください。
■当サイトはリンク・アンリンクフリーです。管理人PC音痴の為バナーのご用意はございませんので、貴方様に全てを委ねます(面目ない…)。        
   
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
通販申込
現在、通販は行っておりません。申し訳ございません

・その頬は桜色に染まる(跡宍)400円
・社会科準備室(跡宍)500円


※詳しい内容は「カテゴリー」の「発行物」からご確認ください。

◆通販フォームはこちら◆
拍手ボタン
カウンター
お世話様です!サーチ様
ブログ内検索
プロフィール
HN:
戸坂名きゆ実
性別:
女性
自己紹介:
私、戸坂名は大のパソコン音痴でございます。こ洒落た事が出来ない代わりに、ひたすら作品数を増やそうと精進する日々です。宜しくお付き合いください。
忍者ブログ [PR]

photo byAnghel. 
◎ Template by hanamaru.