忍者ブログ
★初めてお越しの方は、お手数ですが「はじめに」を必ずお読みください。★
[37]  [36]  [35]  [34]  [33]  [32]  [31]  [30]  [29]  [28]  [27
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

シリアス風味の塚不二。
3話で完結します。


言葉にして1 (塚不二+大菊)

大石が部室に入ると、そこには珍しく1年坊主ではなく日頃重役出勤の顔ぶれが並んでいる。
「手塚に乾、珍しく早いじゃないか」
手塚は走らせていたペンを止め「ああ…」と顔を上げる。
「今日は担任の都合でHRが無かったのでな」
日頃忙しい手塚はこんな少しの時間も無駄にせず、練習メニューの練り直しに励んでいる。
「しかし菊丸達がいないと、こんなにも静かなものかな…」
着替えを終えた乾は思わずそうつぶやく。
にぎやかな菊丸、聞き役の不二、横槍を入れる越前に桃城。青学テニス部は寡黙な部長を見習わず、いつだって大盛り上がりなのだ。最近は他と交わる事を知らなかった海堂までその雰囲気になじみつつある。
「大石、そういえば菊丸とケンカでもしたのか?最近一緒に行動してないじゃないか」
乾はラケットを弄びつつたずねる。黄金ペアはコートの外でも常に一緒だったのだが、最近その姿を見かけない。
「ああ、どうも英二、最近不二にべったりでね…」
ちょっと寂しい…と大石は苦笑いをする。
英二と不二は同じクラスで同じ部活だから共に行動することが多いだろうし、大石は副部長という立場柄どうしたって構ってやれない時もある。それを寂しがってふて腐れる英二を見るのも大石の密やかな楽しみだったのだが。
「そうだ手塚。手塚が不二の事構ってやらないから、不二は英二ばかり構うんじゃないかな」
「…」
思わぬ火の粉が降ってきて手塚はピクッと、肩を揺らす。
「俺のせいか…?」
手塚らしからぬ歯切れの悪さで大石を振り返る。
そう、実のところ手塚も薄々とは感じていたのだ。不二が自分に話し掛ける機会が減ったことを。
「おやおや、倦怠期ですか?」
乾がニヤニヤと二人をからかう。
何を隠そう、手塚と不二、大石と英二はテニス部公認のカップルなのだ。最近やっと海堂に振り向いてもらえたばかりの乾は上機嫌で二人を見やるが…。
「そういう乾は、付き合い始めたばかりのわりにラブラブとは程遠いようじゃないか」
そんな大石の切り返しに乾はうっ…と息を飲む。
そう、乾の愛しの薫ちゃんは愛の言葉を囁くどころか、必要以上に触れようものなら容赦ないアッパーが飛んでくるのである。
とほほ…と乾はベンチに腰をおろす。
「手塚は不二とケンカした訳じゃないんだろう?何だって急に英二にベッタリになったんだ?」
そんな大石の言葉に手塚も腕を組み、うーんと唸る。
「元々俺は人前で恋人同士らしく振舞うのが苦手だし、不二はそれに不満を持っていた感じではあるな。それでもニコニコ鬱陶しいくらい俺の周りにいたから、あまり気にも掛けていなかったのだがな」
「…鬱陶しいって、それ本人に言ってないだろうな」
「…特に言ってはいないが」
言ってはいないが、非常に困った表情をするであろう手塚が想像できる。
「臍曲げた不二が、手塚への当てつけに菊丸ばかり構っている確率95%…」
「ええっ!?それじゃ俺はいいとばっちりじゃないか!」
まいったなと大石は天井を仰ぐ。
「菊丸が不二の案に便乗し、大石にヤキモチを妬かせようと企んでいる確率85%…」
「…」
「…」
なるほど!と感心しかけた大石だが、ふと気付く。
「…何でそこまで人の恋愛について冷静に分析できるくせに、自分の恋愛に反映できないのさ」
呆れたような声に、又しても乾が言葉につまる。
「…ごもっともです」

手塚も大石も、付き合い出したきっかけは相手からの告白だった。恋愛に奥手な大石は自分から打ち明けることなんて出来なかったし、手塚にいたっては自分の気持ちにすら気付いてなく、付き合い始めてから「ああ自分は不二が好きなんだ」と認識した始末である。相手から愛情を注がれるまま全くの受身でいた二人が、恋人に愛想を尽かされても文句は言えないのかもしれない。
特にその可能性に青ざめているのは手塚である。
「そういえば、俺は不二に自分の気持ちを言葉にしたことがない…」
そんなつぶやきに「ええーっ!」と二人は驚きの声を上げる。
「付き合って1年以上経つだろう?一度も?」
「…一度も…」
「そもそも、どうやって付き合い始めたのさ?」
「好きだから付き合ってくれと言われたから、じゃあ付き合おうかと」
「それって不二に失礼じゃないか?好きでもないけど、まあ取り合えず付き合ってみるか、みたいに聞こえるぞ?」
乾が腕を組み唸る。
「もちろん最初は断った。好きかも分からないのに付き合うのは失礼だと。しかし、いつか好きになってくれたらいいからと不二に押し切られて…」
矢継ぎ早の質問に手塚の声は段々小さくなっていく。
「まあ不二らしいかな~」
大石は苦笑する。
「これと決めたものは、どんな手段を使ってでも手に入れそう」
「ツバ付けといて他の人間には手出しさせず、ゆっくり自分のものにするって訳か。しかし、そういうタイプの人間が『もう、いいや』と見切りをつけたら、途端に冷たくなりそうだな」
乾は今にもパーセンテージをはじき出しそうな顔だ。
「確かに。不二って興味のないものにたいしては徹底的に冷たいよな…」
追い討ちをかけるような二人の言葉に手塚は益々焦りを感じていた。確かに押し切られるような始まりだったが、今は誰よりも好きだと断言できる。言葉にしていなかっただけで。
…ここは勝負時なのかもしれない。
しかし、テニスに関しては完璧を誇る手塚も、恋愛に関してはどう勝負すれば良いのか全く想像がつかない。
口には出さずとも「どうしよう」という表情の手塚に乾が助け舟を出す。
「その様子じゃ、ろくにデートしたことも無いだろう?たまには、いわゆるデートスポットって所に行ってみたらどうだ?丁度明日は休みで部活もない…」
人気デートコースのリサーチでもした事があるのか、手にしたノートをパラパラとめくる。
その時。
「そんな部長に素敵なプレゼントっ!!」
バンっ!と部室の扉が開くと、乾の言葉を遮って桃城がズカズカと手塚の前へやってくる。
「なっ、なんだ急に!」
道を開けた大石が驚いて仰け反った。
「じゃーん!」
どうだとばかりに桃城が頭上にかざしたものは…。
「遊園地の招待券、か…」
長身の乾が桃城の手にあるものを、ひょいと覗き込む。
「ああっ、乾先輩!俺が発表しようと思ったのに!…まあ、いいや。そういうことで、これをプレゼントしちゃいます!」
手塚の目の前にズイっとチケットが差し出される。
急な展開にしばらく呆けていた手塚だが、我にかえると「いや…」と首を振る。
「…貰う理由がない」
「ああ、それなら気にしないでください。親戚でここの社員やってる叔父がいるんですよ!いつも沢山もらうし、何より期限が切れそうだから誰かに使ってもらった方がありがたいんっすよね!」
手塚が「いや、しかし…」と再度断ろうとしたところで、大石が口をはさむ。
「手塚、せっかくだから頂いたら?無駄にしては勿体無いだろう」
「そうっすよ!俺は用事があって行けないから、是非楽しんできてください!チケット1枚につき2人入れるんで…」
1枚を手塚の手に押し込むと、桃城はくるっと大石を振り返る。
「はい、もう1枚は副部長に!楽しんできてくださいね」
自分にも押し付けられたチケットに大石は驚く
「えっ!俺はいいよ!」
しかし桃城はチっチっと人差し指を横に降り、ウインクを返す。
「副部長も英二先輩の事構ってあげないと、振られちゃいますよ」
「‥!」
一体、桃城はどこから自分たちの会話を聞いていたのだろう。
さすがは青学一の曲者である。
しかし正直願ってもない機会なので、桃城の厚意に甘えることとする。
「ありがとう、桃城」
「感謝する」
何と良い後輩を持ったことかと感激ひとしおの2人を横目に、乾は心の中で呟いた。
(全て不二の仕組んだシナリオである確率90%)

To be continued…

 


 

 長くなってしまったので全3回に分けてアップする予定です。

PR
この記事にコメントする
color
name
subject
mail
url
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
はじめに
ようこそお越し下さいました!「ハコニワ‘07」はテニスの王子様、跡宍メインのテキストサイトです。妄想力に任せて好き勝手書き散らしている自己満足サイトですので、下記の点にご注意くださいませ。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
これらに関する苦情の拍手コメントはスルーさせて頂きますのでご了承ください。
■連絡事項などがありましたら拍手ボタンからお願い致します。
■当サイト文書の無断転載はご遠慮ください。
■当サイトはリンク・アンリンクフリーです。管理人PC音痴の為バナーのご用意はございませんので、貴方様に全てを委ねます(面目ない…)。        
   
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
通販申込
現在、通販は行っておりません。申し訳ございません

・その頬は桜色に染まる(跡宍)400円
・社会科準備室(跡宍)500円


※詳しい内容は「カテゴリー」の「発行物」からご確認ください。

◆通販フォームはこちら◆
拍手ボタン
カウンター
お世話様です!サーチ様
ブログ内検索
プロフィール
HN:
戸坂名きゆ実
性別:
女性
自己紹介:
私、戸坂名は大のパソコン音痴でございます。こ洒落た事が出来ない代わりに、ひたすら作品数を増やそうと精進する日々です。宜しくお付き合いください。
忍者ブログ [PR]

photo byAnghel. 
◎ Template by hanamaru.