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大学生跡宍。

跡部様だって、普通の若者です。
でも、やっぱり最後は跡部様…。みたいな短編。
 


ときめき襲来(跡×宍)

バッタリ出くわした。
5年ぶりの再会だった。

「まさか、日本に帰ってるなんてな」
昼下がりのカフェでコーヒーをちびちびと飲みながら、宍戸は溜め息をつくように言った。
「もう結構経つぜ?手前だけ連絡付かなかったって忍足がボヤいてた」
「あー。もしかして去年か?俺全国ふらふらしてたからなぁ」
「…いい歳して何やってるんだか」
「何爺くさい事言ってるんだよ。まだ20歳そこそこで」
大学を休学し1年かけて全国を旅していた宍戸は、しばらく誰とも連絡を取っていなかった。もちろん跡部が帰ってきたという情報も届くはずが無い。
「で?何だってそんな無鉄砲なことしてた?」
「全国行脚か?別に意味なんてなァ。今のうちにしかできない事しときたくて?」
「…何だそりゃ」
「まあまあ。それよりお前は?ずっとあっちかと思ってたぜ?」
宍戸の質問に、跡部は顔を顰める。
「んな訳あるか。ジジイの気が済むまで付き合ったんだ。もう勘弁してくれ」
「ああ、何?向こうに行ったのって爺さんの希望?」
「まあな。自分なりの帝王学なるものを叩きこみたかったんだろ?要は体のイイ暇つぶし相手さ」
イギリスに祖父が住んでいるのは、随分子供のころに聞いた事があった気がする。ただ、それが跡部本人に聞いた事なのか人伝に聞いた事なのか、宍戸は思い出せなかった。それほどに、あの頃の自分たちは会話らしい会話もしていなかったのだ。
そんな二人が、跡部がイギリスに発って以来初めて顔を合わせて、こうして向いあっている。
「で?今何してるんだよ」
宍戸の質問に、跡部は楽しそうに喉でわらった。
「手前が休学してる大学に編入したよ」
「え、マジ!?氷帝に戻ったのかよ?お前なら選り取り見取りだろうに…」
氷帝は決してレベルの低い学校ではないが、跡部ともなればどこまででも高みを目指せそうな気がした。
「どこに行けるか、じゃなくて、どこに行きたいかだろ?」
「へえ、意外だ。跡部って最終目標のために最善の手段選ぶんだと思った」
「あ?最終目標ってなんだよ。別に総理大臣になりたいわけじゃねえぜ?今を楽しく過ごす方がよっぽど有意義だ」
「…意外だ。俺と大して変わらねえじゃん」
「当たり前だ。俺を何だと思ってる」
「跡部様」
「…そりゃ『跡部』には違いねえが…」
複雑な顔をして、跡部はジャケットのポケットに手を触れる。そして、思い出したように確認した。
「悪ィ、煙草平気か?」
「あ?ああ、平気だけど」
宍戸の言葉に、跡部は煙草を一本取り出す。そしてそれを銜え、もう一度小さく「悪いな」と言うと、小気味よくジッポを鳴らした。流れる手つきでカチンと蓋を閉めたその動きに、宍戸は見惚れてしまう。
そんな宍戸を余所に、跡部は美味しそうに吸い込むと、これまた満足げに煙を吐き出した。
「…意外」
両肘をついて組んだ拳に顎を乗せ、宍戸はじいっと跡部を見つめる。
「手前はそればっかりだな」
跡部は煙草を銜えたまま、唇の端で苦笑する。
「お前、そういう何の得にもならなそうな事しないと思った」
「あ?煙草か?」
「そう」
「損とか得じゃねえだろ、これは。ただの癖だ。お前は?やらねえのか」
「前にな、岳人とかと試した事あったけど全然。不味いし咽るしで」
「フン。それこそ意外だな」
「そうか?じゃあ、意外ついでに。あの頃のメンバーで一番のヘビィスモーカーはジローだぜ」
「それは意外だな。でも、この前集まった時は吸ってなかったぜ?」
首を傾げる跡部に、宍戸は何度も頷く。
「そうか。もしかして忍足もいたんじゃねえ?あいつ煙草大嫌いだからな、文句言われるの嫌で我慢してたんだよ」
「…あー、確かに。忍足の奴煩かったな。あいつこそ絶対こういうのに手を出すと思ったがなァ」
「それは、俺達も思った。でもまあ、医者の家系だし?百害あって一利なしは嫌ってほど分かってるんじゃねえの?」
「そんなものか」
跡部はおどけるように眉を上げた。そして軽く灰を落とした煙草を、もう一度唇に運ぶ。
宍戸は、今度は黙ったままその動きを目で追った。
「…俺が煙草を吸うのがそんなに楽しいか?」
決して不愉快そうな口ぶりではないが、何故だか分らないといったその声に、宍戸自身も首を傾げてしまう。
「楽しいっていうか、うーん」
正直言えば『跡部ってこんなにカッコ良かったっけ?』って感じなのだ。
少し長めの前髪を煩そうにかきあげ、その間から覗く色素の薄い瞳が宍戸を見つめる。昔よりも間接の骨ばった長い指が、挟んだ煙草を小さく叩いて灰を落とす。
「…跡部って、色白いのな」
「ああ、あの頃はテニスやってたからそれなりに焼けてたけどな。血筋だろ」
「そっか」
手の甲の筋張った感じとか、尖った顎先とか。それらは跡部を神経質そうに見せる反面、酷く男臭く感じさせる。
「あの頃は『王子様』みたいな風情だったのになぁ」
「…いつの話してんだよ」
珍しく照れたように視線を落とすと、跡部は短くなった煙草を揉み消した。
「手前だって、ずいぶん取っつき易くなっちまって」
「俺?」
宍戸は驚いたように瞬くと、思わず自分を指差した。
「そうさ。あの頃はストイックっつーか、只のテニス馬鹿ってか。鬼気迫るモノがあっただろ?まあ、人の事は言えないが…」
「あー、まーな」
同じ頂点を目指したメンバーの中でも、宍戸が特にそういった雰囲気だったのは、自分でも分かっていた。
「レギュラー落ちしたからな。どうしたって必死になるさ」
「正直、女どもからは怖がられてただろ?」
「あーそうそう。怖くて声掛けられなかったって良く言われたよ」
「だろうな」
思い出すように瞼を閉じると、宍戸は小さく微笑む。
その目もとは、最後に別れた頃よりも随分穏やかになった気がする。角が取れたというにはまだ若い年齢かもしれないが、その表現が一番ピンとくる。
跡部は、緩やかに弧を描くその唇から目が離せない。
「…何?」
ゆっくり眼を開けた宍戸は、真っ直ぐぶつかった視線に驚いたように呟く。
「…いや」
跡部は視線をそらさないまま返事をし、そして「そう…」と言葉をつなぐ。
「よく有りがちな、同窓会が切っ掛けで付き合うっていうの、何か分かる気がするな」
「…このタイミングでそれってどうよ」
「まあ、そういう事だ」
「…はあ」
肝心なところで視線を逸らさない跡部は、やはり跡部だな…などと、宍戸は納得してしまう。

知らなかった仕草にときめくのと懐かしい仕草にときめくのとでは、どちらがより恋に近いのだろう?なんて、どうでもイイこと考えてみたりして。
結局はどちらも「ときめき」に違いない。

宍戸は、呆れたように頬杖ついた。
「いっちゃいます?王道パターン」
「いいんじゃねえの?」
ニヤリと嗤う唇は、懐かしい仕草。吐かれる文句は、懐かしさに知らなかった艶っぽさをプラスして。
「宍戸、俺のモノになれよ」
引き寄せた指先に軽く口づける。
宍戸は驚いて廻りを見回すが、誰も自分たちに注目している風ではない。
「…お前なァ」
そして、染まった顔を隠す様にテーブルにうつ伏せた。
全く、ちっとも。
恋愛なんて想像もつかなかった跡部と、数年を隔てたことによってこんな事になろうなんて。
「…あの頃は、只のバカ殿くらいしか思ってなかったのによォ」
「…失礼な奴だな。俺だって、手前のことなんか要領の悪いテニス馬鹿としか思ってなかったよ」
不思議なものだ。
「なのによ。そんなイイ顔されたら、手放せねえじゃねえか」
「…何だよそれ」
宍戸の髪をかき交ぜる手は、こんな衝動に戸惑うように荒々しく。
けれど、不意に手に入れた愛おしさを逃がすまいと、跡部は艶やかな黒髪を一掬い、強く握り込んだ。

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