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じれったい視線 続編。
じれったい視線2(跡×宍)
「まったく…」
二人をコートから追い出した忍足は、これ見よがしに大きく溜息をついて見せる。
「あーあ。あいつら何なんだよ…この後のフォローが大変だぜ?」
「そやなぁ。取りあえず…」
忍足はぐるりを見まわし、決して大きくはないが良く通る声で指示を出す。
「騒がせてすまんかったな。練習続けてくれや。2年Aチーム、終わったら1年のフォローに入ったってや」
こんな騒ぎの中、それでもちゃんと練習の状況を把握している忍足に、岳人は関心してしまう。
「侑士、周りの状況までよく見てたな?俺、パニくってそれどころじゃなかったよ」
「…まあ、こんな事になるんやないかて思っとったし」
「そうなの!?跡部の奴、急にじゃなかったの?」
「じりじり来とったよ、跡部の奴。それに、宍戸の視線も相当やったしね」
「はあ!?」
忍足は苦虫を潰したような表情になる。
「無意識なんやろな、宍戸の視線は。あながち跡部の自意識過剰だけじゃあないで」
「…そんな」
振り返った先に、二人の背中はもう見えない。
「離せよ!」
連れ込まれた部室で跡部の手を払う。そのまま後ずされば、冷たいロッカーに逃げ道を阻まれた。
「…言えよ」
「は!?」
「俺の事見てただろ?」
「…見てねえよ」
「見てた」
「見てねえ!」
「…認めさせてやる」
まだ赤味の残る宍戸の唇を、吸い込まれるように見つめる。
「跡部!」
ガシャン!と、ロッカーに押し付けた体を固定して下唇を舐め上げる。
「っ!?」
宍戸の頬が真赤に火照る。
無意識に体が強張れば、ここぞとばかりに跡部はつけこんだ。
「さっきだって、サーブ打つ前に俺の事確認してただろ…」
反らす顎先を甘噛みすればビクリと体を震わせて、けれど力まかせに逃げだそうとはしない。
「ランニングから戻った時も、呼吸整えながら俺を捜しただろう?」
「…あ、」
首筋に唇を這わせて隙間から囁くような声に、宍戸は苦しそうに眉根を寄せた。
「宍戸…」
緊張に唾を飲み上下する喉仏に、口づける。
「…跡部」
宍戸のきつく瞑った瞼が細かく震えた。
「廊下を通る度、俺の教室盗み見るじゃねえか?俺のクラスに仲良い奴なんていないだろう?」
「違…」
「認めろよ」
「知らねェ、よ」
「往生際が悪いな…」
跡部は溜め息をつくと、拘束する両手を離して宍戸の緊張する背中に滑らせる。
そのまま、強く抱きしめた。
「おいっ!」
宍戸が慌てたように、腕の中で身じろぐ。
「俺の試合見るの好きだろう?」
「それはっ、」
「分かってる。部員全員が、いや、テニス界全てが俺のプレイに魅了されてるぜ?でもな、お前の視線だけは違うんだ。ぜんぜん違うんだ」
さらに強く抱きしめてその肩に顎を預ければ、宍戸はほんの少し強張りを解いた。
「気づけよ。認めろよ」
「そんなの知らねェっつってる…」
「バカだな、怖がってるんじゃねえよ。…何で俺がお前の視線に気づいたと思う?」
「跡部…?」
連れ込まれて初めて真っ直ぐ見詰めるその視線は、跡部の言葉に不安定に揺らぎ、その隙間にほんの少し垣間見える戸惑いを跡部は逃がさない。
「全部言わせる気か?…分かるだろう。だから、お前も認めろ」
背に回る跡部の手が、思った以上に熱く感じるのは。
「…そう思っていいのか?」
極度の緊張に喉が乾き掠れるような宍戸の声に、跡部は不遜な笑みを浮かべる。
「まあ、きっとそう言うことだ」
その言葉を合図に、宍戸は心の中に最後まで残っていた壁がガラガラと崩れるような気がした。
大きく深呼吸する。
抱き合った跡部の耳許からは、もう残り香でも跡部の物だと分かるようになったフレグランスと汗が香り、宍戸の胸の奥を甘く握りつぶすようだ。
「…お前を見る気なんて全然ないんだぜ?お前に言われたって、まだ分からないんだよ本当に」
「…」
「でも、たまに気づくとお前が視界に入ってることがあって。そんな回数が増えて来て。ホント、全然そんな気なんてないのに…」
「だから、無意識ってのが何よりの証拠だろ」
「…ちっ」
何故だか悔しそうな宍戸の表情に、跡部の頬が緩んだ。
「宍戸、もう認めるよな?」
「でも…」
「認めるよな?」
「…」
「認めろ」
どこまでも傲慢な命令口調に、結局宍戸は呆れたように頷いた。
「ああ、…認めてやる」
待ちわびたように重なる跡部の唇。
今度は宍戸から舌を絡めた。
乾いた喉を潤すように、跡部の唾液を吸い上げる。
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