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猫宍&立海完結。
いよいよ彼らの登場です。

トラブル・バレンタイン3(跡×宍)
~猫宍シリーズ25~

「跡部。…はい」
俺はチョコレートを差し出した。
ようやく迎えたバレンタイン当日の午後。俺たちはやっと二人きりになれた。
さすがに学校で渡すわけにはいかないし、何より落ち着かないしさ。
朝渡しても良かったんだけど、ほら、そうするとそのままなだれ込むみたいに、…しちゃいそうだったから。
「ありがとうな、宍戸」
跡部は、慣れない手つきでリボンをかけた箱を大事そうに撫でる。
本当はもっと丁寧にするつもりだったんだ。でもさ、あの日は跡部が迎えに来るから焦ってたしな。
「開けていいか?」
「もちろん」
市販のに比べたら見た目は話にならないと思う。味だって、到底かなう訳もないんだけどさ。でもさ、愛情だけはたっぷり詰まってるって、それだけは言い切れるぜ?激恥ずかしいけど。
「へえ、立派なモンじゃねえか」
跡部がそう言って目を細めた。
小さなトリュフが6つ。白と黒交互に並んでいる。
まん丸とは行かなかったけど、練習のに比べれば随分大きさも整ってて、初めてにしては上出来かなって。
跡部の言葉が嬉しくて、思わず頬が緩んだ。
「いっぺんに食うのが勿体ないな」
そんな跡部らしからぬ言葉も、すごくくすぐったくて、嬉しい。
「また、作るから。一気に行っちゃえよ」
「…そうか、また作ってくれるんだな」
「ああ、勿論。来年だって、再来年だって、ずっと…」
「宍戸…」
跡部の声が吐息に擦れて、俺の頬を温かな手のひらが覆う。
ゆっくりと近づく跡部の影。俺は静かに瞼を閉じた。
こんな、素敵な日を迎えられたんだ。
あの日手伝ってくれた立海のメンバーにも感謝しなくちゃな。ふと、あいつらの笑顔が過ぎった。けれどすぐ、意識は引き戻される。

跡部のキスは、次第に深くなっていく。
「あっ」
気づけば、ソファに押し倒されていた。
「…先に、こっちから頂くかな?」
「…ばか。わざわざ言わなくていいよ。恥ずかしい」
俺の言葉に、跡部がくつくつと笑う。
「お前は、いつまでたっても慣れないな?」
「…お前の言い方が、いちいちエロいんだよ」
「そういう事にしといてやる」
改めて、跡部の唇に吐息を奪われる。
「ん…」
「可愛いぜ、宍戸」
「あとべ、」
その背に縋ろうと、手を伸ばした時だった。

ガンガンガン!

階下で大きな音がする。
「…何だ?」
跡部が動きを止めた。
「玄関っぽくないか?」
俺も体を起こす。
「客ったって…。普通インターホン鳴らすだろ?」
跡部は不審顔だ。
「そうだよなぁ」

ガンガンガン!

もう一度、同じような音がする。
けれど、いつもはすぐに駆けつける執事が、対応に出た雰囲気もない。
「仕方ねえな」
跡部は渋々立ち上がる。
「お前はここで待ってろ」
「ああ」
そうは言いつつも、俺は跡部の後ろから付いていく。
だって、跡部に何かあったら心配だし。こんな体だけど、少しは役に立つと思うんだ。

ガンガンガン!

「しつこい!」
おさまらない音に、跡部はイラついた声を上げて玄関ホールに下りた。
すると、人の気配を察知したのか、扉の向こうから大きな声が聞こえる。

「頼もう!」

…おい、いつの時代の人間だよ。その文句。
しかも、あれ?何か聞き覚えあるぞ?

「誰かいないのか?頼もう!」
「おのれ、何奴!?」
跡部が釣られて返事する。
…跡部。お前って意外とノリがいいのな。
時代錯誤の言葉のお陰で、表の人物の正体が分かった。
立海大付属中学テニス部副部長、真田弦一郎だ。

重厚な扉を開けば、そこには案の定真田が仁王立ちしていた。
「…よう、真田。手前の時代にはインターホンは存在しねえのか?」
「何?インターホンぐらいあるわ」
「…そうかよ。それなら是非とも押して頂きたかったぜ」
「むむ。それは失礼した。ところで、どれだ?」
「これだ」
ムスっとしながら指さす跡部。
はは。じつは真田の言葉も分からないではないんだ。だって、跡部の家のインターホンって、玄関周りに彫られた天使の絵の中に、飾りのように填められてるんだもん。実は俺も最初は戸惑ったくちなんだよな。
「ちなみに外の門柱には普通のインターホンが付いてたけどね」
「ああ、そうだったな」
さらりと言ってのけるのは部長の幸村と、先日世話になったばかりの柳。
「…そういうのは先に教えてやってくれ。ったく、道場破りじゃあるまいし」
跡部は深々と溜息をついた。
「まーまー跡部さん。勘弁してやってくださいよ。この人現代人じゃないっすから!」
「それは酷いのう、赤也。これでも一応中学生じゃき。ガラスの十代じゃ」
「仁王君。そのネタは今時の若者には通じませんよ」
…じゃあ、お前は今時の中学生ではないというのか。
呆れたように見守るジャッカルの顔には、柳生への突っ込みがありありと浮かんでいた。
「どうでもいいけどさぁ、何か食いもんねえ?俺、腹減ったよ」
「…丸井」
跡部は呆れて、がくりと首を垂れた。
「もう、なんでも良いから中に入れ。全員まとめて相手してやる」
よっしゃ!と、切原と丸井が駆け込んでくる。
他のメンバーも、遠慮するでもなく後に続いた。唯一ジャッカルだけが、不安げな表情で俺達に頭を下げる。
「わりいな。俺だけじゃこいつら止められなくて」
「…気にするな。お前の所為じゃない」
跡部の言葉に、俺も大きく頷く。
ジャッカルは、立海唯一の良心だった。

「で?何の用だ?」
レギュラー勢ぞろいでやって来た立海を小ホールに案内して、跡部は中央のソファに腰掛ける。
向いには真田、幸村、柳が座り、他のメンバーは好きなようにホールを歩きまわっている。
…あーあ。飾ってある壺に首突っ込んで、切原の奴、抜けなくなったらどうするんだ?
おいおい仁王、そのアンティークのテーブルは跡部のお気に入りだぜ?猫足蹴っ飛ばして傷つけるなよな。
ちょっ…、丸井の奴!メイドが持ってきたトレイひったくってお菓子奪い取ったよ。
全く、王者立海の名が泣くぜ?
すると、背中に目でもあるみたいに、柳が涼しい声で言い放つ。
「大人しくしろ」
「…はーい」
…凄い、柳。見ないでも分かるのか?っつーか、こいつらいつもこんな感じなのかな。動物じゃあるまいし。
「で?俺に何の用だ?」
騒がしい外野を気にも留めず跡部は切り出す。
「あ、そうそう」
幸村は、優雅に足を組み替えて答えた。
「用事は跡部じゃなくて、宍戸にあってね」
その言葉に、跡部が身構えたのがわかる。少し離れた所に立つ俺の方に意識が傾いた。
「まあまあそんなに気色ばむなよ。何も宍戸の秘密をネタに脅そうってわけじゃあ無いんだ」
微笑む幸村に、跡部が舌打ちする。
そりゃ、そうだよな。柳以下、先日のメンバー全員が知っている秘密が、部長の幸村と副部長の真田にバレないわけがないんだ。
「しかも先日宍戸を迎えに来たのが跡部だと聞いたからね。宍戸に会うには跡部の家に来た方が早いと思ったんだけど、的中だったね」
「…」
ま、きっと、全てお見通しの柳が助言したんだろうな。
「それで、俺に何の用だよ。立海のTOP3が顔揃えてさ?」
俺はそう言って跡部の隣に腰掛けた。ケンカ売られるにしろ脅されるにしろ、ターゲットは俺のようだ。
「あ、別に俺は用はないんだ。ただね、ウチの副部長が…」
「真田…?」
向いに座った真田に視線をやると、真田はその頬をぱあっと染めた。
うーん、こんなガタイの奴に頬染められても、イイ気はしねえなぁ。
「先日ウチの連中と作ったというチョコレートを先程頂いた。ぜひ、礼をしたいと思ってな」
「あー、それでわざわざ?」
あれだけ大量に作ったんだ、部員で分けでもしなきゃ食べ切れないとは思ったが、まさか真田が食べるとはな。甘い物なんて苦手そうなイメージなのに、意外だ。
なるほどと納得してみれば、横から視線が突き刺さる。
「…宍戸?」
俺を見つめる跡部の目は完全に据わってる。
「跡部…」
言いたいことは分かる!
仮にも恋人ってヤツが他の男にも手作りチョコをあげてたら、そりゃ面白くないよな。
でもさ、いくらなんでも、真田が食べたのは跡部にあげる為の試作品でしたなんて言えないだろ!
「いや、宍戸。はっきり言ってくれて構わない。でないと、コイツが変な期待をしてしまう」
「柳…」
どこまで俺の考えを読んでるんだ?一言も口に出してないのに。
「宍戸は表情が豊かだから、すぐに分かるのさ。そんな驚く事じゃない」
幸村にまで、くすくす笑われちまった。俺ってそんなに顔に出るか?
まあ、いいけど…。
「跡部、そういうことだから。ちゃんと作れるようになるまでには、かなり練習したんだよ」
「そうか、それならいい」
跡部ってば、照れもせず満足そうに頷いた。
俺達の関係隠す気もないみたいだ。どうせ、ここへ訪ねて来られたってことはバレてるんだろうしな。
「勿論、そんな事は百も承知だ。ただ、どうしても会って礼がしたかったのだ」
真田は生真面目な顔をズイっと近づける。
「お、おう。わざわざ丁寧にありがとな。でも、あれは越前も一緒に作ったから、あいつにも言ってやってくれ」
「…機会があればな」
「あ、そう」
変なの。そんな有り難く思ってるなら、越前にだって当然礼を尽くしそうなのにな?
「宍戸は鈍いな。お礼だなんて口実だよ」
そう言った幸村は今にも笑い出しそうだ。
「は?」
「つまり、真田は宍戸に逢いたかっただけ、という事だ」
「…柳」
二人の言葉に、真田はますます顔を赤くする。俺は戸惑って跡部を見上げた。
これってきっと。…そういう事だよなぁ?
「…何だ。真田も猫好きか?」
「ま、そういう事」
呆れたような跡部の質問に、立海の面々は大きく頷く。

「ふむ。良い毛艶だ」
「はあ、そりゃどうも」
ちょっとビビる。
だって真田の奴、デカイ手をニュウッと伸ばして、何だか耳をわし掴まれそうなんだよ。
こりゃ、猫には嫌われるクチだな。
「まあ、イイ色だとは思うけど。俺は犬の方が好きだな」
「…」
詰まらなそうに尻尾を弄ぶ幸村は、なんだか怖い。嫌いなら、わざわざ来なけりゃイイのに。
「でも、宍戸の怯えた眼が可愛いから、良しとするかな」
…やっぱり怖ェよ、幸村!
「おい、あまりウチの宍戸を苛めないでもらおうか?」
「そんな威嚇しなくたって、君の大事な宍戸を奪ったりはしないさ」
「…っち」
跡部にも、苦手な人間っているんだな。幸村の扱いにはちょっと困ってるみたいだ。
確かにこいつって腹の中見えないってか、真っ黒ってか…。
「あ、そうだ真田副部長!確か、宍戸さんに土産持って来てたんじゃなかったっすか?」出されたケーキを頬張っていた切原が、思い出したように顔を上げる。
「おお、そうだった」
すると真田はいそいそと、足元に置いたカバンを漁り始めた。
「良ければこれを。似合うと思ってな」
「…」
うーん。こいつらにとっての俺のイメージって、どんなんだろ?
広げられた布の裾がひらりと揺れる。パステルカラーの花柄エプロン。
俺はさ、確かに小さくなっちまったし、猫耳も尻尾も生えてきたさ。でもよ、髪は昔みたいなロングじゃないし。女みたいになったってより、小学生の男子に戻ったっていうイメージだと思うんだよな。なのに何で女物?
「成程な。イイんじゃねーの?」
「何、跡部まで納得してんだよ」
全く、みんなどうかしちまってるぜ。

結局、真田はひたすら俺を撫で続け、幸村は例の口調で俺を怯えさせ(言うこと為すことなんか怖いんだよ!)、他の面々はお茶を楽しみ帰って行った。
唯一、最後に頭を下げてったジャッカルに、思わず同情してしまう。
「…何しに来たんだよ、あいつら」
「茶ァ飲みに来たんだろーよ」
王者立海大付属中テニス部。
恐ろしく纏まりのない、自由人の集まりだった。

「まあ、ようやく静かになったことだし、続きいいか?」
「続き…?」
「今日は何の日だったかな?」
跡部が困ったように苦笑した。
「あ、そうだ」
だから、今日はバレンタインなんだって!チョコあげて、これから二人でまったり…ってところにアイツらが乗り込んで来たんだった。
「思い出したか?」
「ああ」
何か、改まって再開!みたいなのって照れるな。
「ごちゃごちゃ考えるな、お前は」
「ん…」
跡部の指先が俺の頬をゆっくり滑る。
そのまま首の後に掌が潜って、強く引き寄せられた。抱き寄せられた胸は、熱くて、すごく昂ぶっている。
求められてるって感じが、嬉しいな。
俺は、思い切り甘えたい気分になって猫耳を擦り寄せる。
「…甘えん坊が」
「いいじゃん?たまには…」
跡部のくすくす声が、耳に優しく響いた。



ようやく猫宍&立海が終了。まだ書いてはいませんが、猫宍の次回作は&不動峰の予定です。
そういえば、幸村の一人称って「俺」でよかったのかな?「僕」だっけ?たしか「俺」だと思ったけど、間違ってたらどなたかこっそりと教えて下さい(笑)

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ようこそお越し下さいました!「ハコニワ‘07」はテニスの王子様、跡宍メインのテキストサイトです。妄想力に任せて好き勝手書き散らしている自己満足サイトですので、下記の点にご注意くださいませ。
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