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トラブル・バレンタイン続編。

前回あまりに跡部の出番がなかったので、今回は二人でしっとりとv
バレンタインネタはもう1話だけ続きます。
明日か明後日にはUPできるかと。


トラブル・バレンタイン2 (跡×宍)
~猫宍シリーズ24~

ヘリコプターって、こんな所に勝手に降りていいのか、とか。
何で海堂は、越前を引っ張ってわざわざ電車で帰ったのか、とか。
言いたいことも聞きたいことも沢山あったけど、それどころでは無かった。
揺れる機体とは、こんなに怖いものなのか。俺は、一っ言も口を聞けなかった。
迎えに来た海堂の顔色が悪かったのは、やっぱり気のせいではなかったようだ。時間が掛ってでも電車で帰りたい気持ちが分からないでもない。
そして、俺が何も言えなかった理由はもう一つ。
跡部が全く口を開かない。
でも、謝ることすら叶わないそんな恐怖の中、俺たちは屋敷に戻った。

「…」
跡部はいつものように丁寧に、俺の荷物を下ろして帽子を取った。
「…」
そして、コートを脱がせて背中を優しく押す。
風呂に入って来いって合図だ。
この家の風呂が気に入っている俺は部屋作りつけのシャワーだけでは飽き足らず、跡部が滅多に使わない跡部専用の風呂を独り占めしている。
一言も口を利かないながらも優しい手つきの跡部に、俺は小さく頷いて部屋を後にした。

大好きな入浴時間だ。いつもならジャグジーをセットして軽く眼を瞑ってしまうのだが、今日は目が冴えてしまってそんな気分になれなかった。
ハーフミラー越しに、ライトアップされた庭の景色をぼーっと眺めながら、俺は跡部の事ばかり考える。
跡部は、一言も口を利かなかった。
怒っていないのは分かる。跡部は意外と正直だから、怒っていれば雰囲気で分かるようになったし、何より態度で示してくる。
だから、怒ってはいない。ただ、少し寂しそうだった。そして疲れてるみたいだ。
何も言わずに家を空けて、連絡しても通じなくて。
立場が逆だったら、俺もきっと…。いや、もっと取り乱すだろう。
もうすぐバレンタインだからって張り切って驚かせようとしたけど、その所為で跡部を悲しませて疲れさせてたんじゃ何の意味も無い。
俺、何やってるんだろう。
みんなが手伝ってくれたのは嬉しかったし、あまり会う機会のないメンバーと騒げたのは楽しかったけど。
「…」
今の気分みたいに、体がずるずるとお湯に沈んでいく。
口から吐き出された気泡が、眼の前で音もなく割れた。
何だか、後悔に押しつぶされそうだ。

「宍戸、大丈夫か?」
「跡部?」
あまりに長湯で心配したのだろうか。跡部が顔を覗かせる。
その姿は部屋着に着替えられていて、パンツの裾が折ってあるから、一緒に入るつもりではないんだろう。
きっと、迎えにきてくれたんだ。
「今出る」
俺は急いで湯船から出ると、出口へと向かった。
背中で扉を閉めれば、すぐ目の前には大きなバスタオルを広げた跡部が待ち受けている。
「早く来い。湯冷めする」
「…大袈裟だよ」
本当は嬉しいのに、素直に言えない。
そんな俺を気にするでもなく、跡部は俺の頭からバスタオルを被せて優しく拭き出した。
もう昔みたいに長くない髪も、跡部は相変わらず丁寧に拭いてくれる。
体も、ごしごし擦るんじゃなくて、そっと抑えるようにして水滴を拭う。
自分の体は適当に拭くくせに、俺にだけこんなに慎重になるんだ。別に壊れ物でもないし、か弱い女性でもないのに。
― お前が大事だから。
跡部は以前、そう真顔で言ってのけた。
当然だろう?という様に、何つまらない事を聞いてるんだと言う様に。
「…宍戸?」
跡部がタオルを持つ手を止める。
「宍戸、どうした?何かあったのか?」
跡部は、拭き終えたタオルを籠に放り込み、俺の頬を挟んで上を向かせる。
「どうした。言ってみろ」
「っ、」
涙が、溢れて止まらなかった。
どうしてこんなに大事にしてくれるんだろう。
どうして、そんな跡部に心配かけちゃったんだろう。
俺は自分の思いつきに夢中で、自分の行動で跡部が何を思うのか、想像することが出来なかった。
「…、ごめん。心配掛けて」
「…宍戸」
跡部が困ったように俺の体を抱きしめた。
「俺、夢中になっちゃって、ちゃんと連絡しなくて」
「…分かってる。だから泣くな」
「ご、めっ」
「いいんだ、俺も悪かった。お前に悪気が無いのは分かってるのに。…少し、拗ねてみただけだ」
「…ごめん」
「こんな風に泣かせるつもりじゃなかった。俺こそ悪かった」
跡部は苦笑いして、もう一度ギュッと強く抱きしめた。

「…電気消すぞ?」
「ん」
跡部はナイトテーブルに手を伸ばすと、ベッドランプの紐を引いた。アンティークのランプは、温かな明かりを瞼の裏に残して優しく消えた。
ベッドの中、いつものように差し出される腕を枕に、俺は跡部の胸にすり寄る。
触れるのは、シルクのパジャマよりもっと上質な、跡部の素肌。
大きく肌蹴られた胸元に、そっと唇を寄せる。
「…煽るな。今日は疲れてるだろ?ゆっくり休め」
「そうだけど、でも…」
「…したいのか?」
「…ん」
俺から誘うことなんて殆ど無い。
でも、今日はどうしても。
「頼むから」
「宍戸」
跡部が、少し乱暴に俺の頭を抱きこんだ。より密着した肌に、今度はチュッと吸いついて。
…跡が、残ってしまえばいい。
「宍戸、宍戸…」
「…あとべ?」
「あまり…」
「…あまり?」
少し考えてから、跡部は押し殺した声で言った。
「あまり、俺から離れるな」
「ん」
噛みつかれるようなキスを、すごく幸せに思う。

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