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2007年にUPした「セフレ」作成時のボツ原稿を手直ししてみました。
確か、あまりにシリアスで長くなりそうだったので没にした気が…。
気が向いたら続きを書こうかと思いUPせずにいたのですが、結局終わり方は「セフレ」とかぶりそうなのでやめておきます。

しくじる(跡×宍)

しくじったなと、忍足が抑揚もなく言った。
跡部は、機嫌悪そうに顔を歪める。
宍戸と慈郎そして岳人は、何だか遠い国の出来事みたいに二人の会話を聞いていた。
「まあ、妊娠したなんてハッタリやと思うで。ただな、あいつはアカン」
「…わかってる。まさかあそこの娘とは思わなかったんだ。あんな品がない女」
「アホか。だから『しくじったな』っちゅーとるんや。見かけで判断すんなや、跡部らしゅうないで?」
舌を打つ跡部に、溜息をつく忍足。
「…ぜんぜん話が見えないんだけど」
ようやく口を挟めた岳人に、跡部と忍足は振り向く。
「あ?ああ、大した事じゃねえんだが」
そう、思い出したように話始めた跡部の話は、どう考えても大した事のある内容だった。

最低限の選り分けはするものの、来るもの拒まずな女関係は跡部と忍足に共通することだった。
今は部活を引退し、エスカレーター式の氷帝に在籍する3年の誰もが、一番気の抜ける時期だ。帝王跡部に天才忍足も類に違わなかったらしく、それなりにダラけた生活を送っていたツケが、この結果だった。
要するに、関係した女性のうち一人が「跡部の子供を妊娠した」と騒ぎだしたのだ。
「言い触らす辺りに頭の悪さを感じるよな」
事の次第を聞いた岳人が呆れて言う。
「確かに」
慈郎も馬鹿にしたように言い捨てる。
「でもよ、どうするのさ?」
宍戸の言葉に跡部は腕を組んで、かったるそうに天井を仰いだ。
「どうもこうも、まずあり得ない話だからな。そんなヘマはしねーし。にしたってほとぼりが冷めるまでは大人しくしとくしかねえか」
「はは、久々の女断ちか。大丈夫なんか?」
「別にただの暇つぶしだからな。女なら外にいくらでもいるし」
「じゃあ、何で最初から外で見つけなかったのさ」
岳人の疑問は当然だろう。
「あ?面倒だからだよ」
「…うーん、最低だ」
慈郎が思わず唸る。
「自業自得ってこっちゃな。まあせいぜい卒業まで大人しくしてろや。俺は満喫するけどな~」
忍足はニシシ、とマンガのように笑うと席を立ちあがった。
「ほな、お先に。彼女待たせとるし」
「彼女~?よく言うぜ。毎日違う女だろ?あ、俺も一緒に帰る」
付いてくる岳人に嫌な顔もせず、忍足は教室を出て行った。
「さてと、俺も帰ろ。宍戸は?」
慈郎は振り向きがてら窺うが、宍戸は小さく首を振るだけだ。
「俺は、もう少し…」
「そ?じゃ、お先。跡部も頑張ってね~♪」
「…頑張ってってなァ」
跡部のぼやきを聞き終えることなく、慈郎の姿も教室から消える。
「で?手前は?」
跡部は腕時計を覗き込みながら宍戸に尋ねた。もう10分もしたら校門に迎えの車がくるだろう。
「…跡部、お前どうするんだ?」
「あ?迎えが来るが?」
「ちげーよ。そうじゃなくて女の事」
「あ?ああ、そっちか。焦っても仕方ないだろう。向こうの出方を待つ」
「そうか」
宍戸は、そう言ったきり黙りこむ。
「何なんだよお前は。てっきりお前も俺のこと笑い飛ばすと思ったけどな?」
いつも誰よりつっかかってくるのは宍戸だ。今回だって誰より跡部のしくじりを馬鹿にすると思っていたのに。
「なあ、跡部。取りあえずは大人しくするようだろ?」
「あ?まあな」
別に女を抱くのが生き甲斐みたいな生活をしている訳でもない。暇つぶしに丁度良かったまでなのだ。少し静かな生活を送るのも悪くはないだろうと跡部は考えていた。
「…俺、相手しようか?」
「は?」
思わぬ言葉に、跡部は顔を上げる。
宍戸は、顔色一つ変えずに跡部を真っ直ぐ見詰める。
「だから、SEXの相手さ。お前が男でも抱けるならの話だけどな」
「お前、何言ってるんだ?」
あまりに笑えないジョークだが、宍戸も冗談なんかで言っているようでは無かった。つまらなそうにも見える静かな宍戸の瞳に、跡部はそれ以上何を言えば良いのか分からなかった。

それからもう2カ月が過ぎた。
例の女の下手な嘘はすぐにバレて、気づけば学園から姿を消していた。跡部が手を出すまでもなく、跡部ファンたちの制裁を受けたのだ。跡部を困らせる者はこの学園には必要が無いと。こういう時の女性の団結力には本当に驚かされる。いつもは跡部を巡って戦々恐々しているのが嘘のようだった。
そして、それでもまだ、跡部の隣には宍戸が裸で横になっている。

「おい、時間いいのか?」
跡部の言葉に、宍戸は寝ぼけた眼を擦りながら伸びをする。
だだっ広いベッドの中にもう跡部の姿はなく、きちんと整えられた身なりでパソコンに向かっている。
「あ、やべえ、さすがに帰らねえと」
ナイトテーブルの置時計はもう11時を指している。さすがに二日連続の外泊は親に咎められそうだ。
宍戸は、ベッドの足もとに放られた服を掴むと袖を通し始める。そして、あっという着替え終えると、枕もとに置いてあった財布を尻のポケットに突っ込み、腕時計を嵌める。
「じゃあな。明日は?お前登校すんの?」
「…ああ。行く」
「へえ、久し振りだな?じゃあ、帰りにテニスしようぜ?」
「ああ、分かった。…それより、宍戸」
振り向いた時には、宍戸の姿は部屋から去ろうとしていた。
「あ?何か言ったか?」
「…いや。何でもない」
「そうか?じゃーな、また明日」
「ああ…」
女じゃないんだ、送ってもらう必要はないと。最初から一貫して宍戸は跡部家の車を拒んだ。
「体は、大丈夫か…なんて」
結局最初の夜から、一度だって言えずにいる。
今みたいに言いかけては、言葉を飲み込むばかり。
宍戸はいつだって去り際が鮮やかで、跡部が声をかける前に帰ってしまうのだ。

「おや?跡部。久し振りやな?」
「忍足か」
日吉から借りた鍵で部室を開けていた所に、陽気な関西弁で声を掛けられる。
「何や、随分久々の登校やろ?いくら自由登校ったって、もう少し出てくればええのに」
「フン。俺だって学校で呑気に過ごしてた方が楽だけどな。親がこれ幸いとばかりに仕事を押し付けやがって」
「は~、跡部家ともなると大変やな。もう帝王学かい」
「そんな所だ」
当然のように残されたままの自分のロッカーに、跡部は脱いだ制服を放り込んでいく。
忍足も同じようにユニフォームに着替えながら、跡部の表情を不躾に覗き込む。
「…何だ?」
「時に、跡部さん。宍戸とはその後どうよ?」
「何の話だ?」
不自然な程の素早い返しに、忍足はしてやったりと目を細める。
「またまたァ、そんなこと言って」
「…宍戸が言ったのか?」
二人の関係は、あの放課後から今日まで、誰にも話した事が無いはずなのに。
「別に言われへんでも雰囲気で分かるわ。まさか、お前が男抱けるとは思わなかったけどな?」
「…」
「宍戸もなァ、まさかこの跡部に抱かれるなんて。さんざん喧嘩しよった癖に、何なんだかな」
「…俺が知るか」
「ほう?ってことはこの関係、宍戸から言い出したってことかいな?」
「…だったら何なんだよ」
「そないに怖い顔せんでもええよ。別にどうしてやる気もないし?しいて言えば、抱き心地はどうなん?って」
「…お前は、男を抱いた事はあるか?」
「あるよ」
あまりにあっさりと返って来た答えに、跡部は驚いて振り向く。
「そんな驚くことか?まあ、まさか跡部もイケる口とは思わんかったけどな?」
「何で、そう思う?」
忍足はくくっと小さく笑う。
「だってなァ、跡部は意外と常識人やし?しっかし、それを誰より知ってる宍戸が、よくこの話持ちかけたな」
「理由を、お前は知ってるのか?」
「はあ?何で俺がそないなこと知っとるんよ。まあ、普通に考えれば『好きだから』だろうけど?どうもそんな感じじゃあなさそうやな?」
「…分からねえ」
「宍戸が何を考えてるのかが?」
「ああ」

それに、自分の気持ちでさえ、跡部は分からずにいる。
…いや、本当は嫌な予感を気取っていたのかもしれない。
毎夜、長めの髪をなびかせ、風のように跡部の部屋からすり抜けてしまう宍戸。
揺れる後ろ髪から覗く項は、驚くほどにほっそりとしていて、まるで甘い香りでも振り撒いているようだ。
抱くたびに強まるその芳醇さに吸い寄せられるように伸ばす跡部の指は、慌てて隠すまでもなく、一度も振り返らない宍戸に気づかれることもない。

着替えも忘れ、無言で指先を見つめる跡部の姿に、忍足は笑うのを堪えるように鼻を鳴らした。
それは、あまりに似つかわしくない帝王の姿だった。
惚れた腫れたなんて、誰よりも跡部が一番遠い場所にいたはずなのに。

「しくじったな」
あの日と同じ忍足の言葉は、確実に、あの日よりも情が込められている。
そう、同情。
何故って、相手が悪すぎる。
きっと、同年代の男女が繰り広げるような、煌めいて、儚くて、甘酸っぱい、お手軽なイミテーション恋愛を楽しむなんて出来やしない。
己の全てを揺さぶられるような激しい感情に呑みこまれる姿が、想像出来るようだ。
全てにおいて熱い宍戸の瞳は、そう、気楽に手を触れて良いものではなかったのだ。
共に戦っていた自分たちは、誰よりもそれを知っていたはずなのに。

「…そうだな、しくじったな」
跡部の零した笑みはどこか自嘲を含み、もう、戻れない事を痛いほどに感じていた。

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