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青学オールのドタバタ小話。

まだリョ不二色は殆どありません。
全5話の予定。

ある日の「かわむらすし」(青学オール)

久しぶりの「かわむらすし」では、相変わらず気前の良い親父さんと、今やもう一人前の寿司職人に成長したタカさんが、相好を崩して次々と鮨を握り続ける。
いつにも増して賑やかな店内は、それもその筈、懐かしい青学メンバーで貸し切られ、久しぶりの顔合わせなのだ。
ドイツに発って久しい手塚が所用で帰国したのに合わせて場を設ければ、珍しく全員が顔を揃える事となった。
前回全員揃ったのが手塚のプロデビュー前だった事を思えば、当然の盛り上がりなのかも知れない。

「それにしても、今日は皆が出席できて本当に良かった」
ビールを傾けながらしきりに頷く大石は、瓶ビール1本でもうほろ酔い状態だ。先程から何度も同じ事を言い懐かしそうに眼を細める。
「本当だにゃ~!おチビも偶然日本に戻ってたし」
懐かしさに興奮気味なのは皆同じ。菊丸も相変わらずの口調で隣り合う越前の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
トレードマークだった帽子が無くなっても、長めの前髪の間から睨みあげる視線は変わらず鋭い。
「…痛いっす」
邪魔くさそうに菊丸の手を弾き、それでも席を立たない横顔が、本当はご機嫌だなんて仲間たちはみんなお見通しだ。
あの頃より背は伸びても、「おチビ」は「おチビ」。可愛い弟分なのは変わらない。
「そうだ、越前。君、拠点を日本に移すって?」
タカさんが特別に握ってくれたわさび鮨を受け取りながら、不二は思い出したように尋ねた。
「…俺もこの前雑誌で読んだ。大丈夫なのか?」
無愛想ながらも心配そうに海堂が口をはさむ。
「…ああ、それっすか」
越前は、じゃれつく菊丸を適当にあしらいながら言葉を返す。
「完全にこっちってのは勿論無理っすけど、今までよりは。最近は日本の環境も整ってきたッスから」
越前の言葉に手塚も小さく頷く。
「そっか!じゃあよう、こんな風に会える機会も増えるな」
桃城の豪快な笑顔も相変わらずだ。
「そうっスね」
越前は口角を上げて小さく頷いた。
そして越前は、急に居ずまいを正したかと思うと、改めて斜め前に座る不二へと向き直った。
「…ところで不二先輩」
神妙な声に、不二は箸を置く。
「何だい?」
「俺達まだあの勝負の続き、終わってないっスよね?」
「…ん?」
越前の言葉に、不二は小さく首を傾げる。
急に静まった空気。
皆の視線の中、不二は気に掛けた風でも無く、鮨を咀嚼し、鼻に抜けるわさびの刺激を味わい、それから日本酒を少々含んで極上の辛味を愉しむ。
そうして暫く考えた末。

「何だっけ?」

「ええー!?」
散々間を取ってその回答だ。流石の越前も声を上げる。手塚でさえ、頬杖ついた顎をずり落とした。他のメンバーも思わず突っ込む。
「ちょ、何スか、その間!」
桃城が爆笑すれば、菊丸がその頭を叩く。
「突っ込みどころが違うっしょ、桃ちん!」
「そうだよ!あの雨の中の試合、忘れたのか!?」
大石が、まるで自分の事のように残念そうに眉を下げる。
そこにきて漸く不二は手を叩いた。
「ああ、あんな昔の事」
「…ちょ、昔って」
越前がむっとしたように呟いて、ゆらりと腰を上げる。
「え、越前?」
心配そうに声をかけるのは、カウンター内からうかがっていたタカさんだ。
立ち上がった越前は、そのままふらふらと向かいの不二へと近づいて行く。
思わずと言った風に桃城が席を譲れば、越前はどかっと不二の隣に座り込んだ。
「俺は、ずーっと気になってたんスけど!あの続き」
「それは悪かったけど…。でも、今更だろ?」
不二の言葉も尤もで、メンバーも困ったように顔を見合わせる。
片やプロテニスプレーヤー、片や只の大学生だ。
いくらテニスを続けているといっても、全く次元は違ってくる。
「そうだぞ、越前。不二先輩を困らせるなって」
桃城の合いの手に、越前は子供のように口を尖らせた。
「だって、約束したッス」
「越前~」
王子様は相変わらず王子様だ。
皆がががくりと肩を落とす中、今まで冷静にその場を眺めていた乾が、淡々とした良く通る声で指摘する。
「越前が酔っている可能性84%」
「ええ!?」
先程まで顔色一つ変えていなかったはず、とその手元を見れば。
「あっ、こいつ、ちゃんぽんしてやがる!」
桃城は、中身の減ったグラスを奪い取った。
「…そして、越前がまだ未成年の可能性。…100%」
「わー!!乾っ、もっと早く言え」
慌てた大石が、水を取りに立ち上がろうとすると、千鳥足よろしく菊丸の足に蹴躓く。
「わわっ!大石ごめんっ」
菊丸が手を伸ばせば、洋服の裾が空の瓶を引っ掛けて盛大な音を立て倒れる。
「おっと…」
海堂が呟き瓶を直せば、手塚が小さくため息をついて立ち上がる。そしてカウンターまで歩み寄ると頭を下げた。
「騒がしくて申し訳ない」
「いやいや。こっちも懐かしくて、楽しませてもらってるよ」
親父さんが笑い飛ばして、息子に声を掛ける。
「隆!越前君と大石君にお冷持ってってやんな!」
「わかってるよ」
タカさんも楽しそうに、賑やかな和に加わって行った。

「そっか、越前ってクリスマスイブが誕生日だったね。あと1週間で成人なんだ」
いつもの微笑みで不二が言えば。
「そう言う事だ」
と、乾が頷く。
「…お前らはもう少し慌てろ」
周りの慌ただしさとのギャップに、手塚は大きく肩を落とした。
そして、当の本人の越前は、不二の膝枕で深い眠りに落ちていた。

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