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!!CP注意!!
不二受のパターン制覇を目論んでいる訳では無いのですが…。
リョ不二ですので、ご注意を

鈍感☆sweetheart(リョ×不二)

越前は唇の端に挑戦的な笑みを浮かべ、その瞳を魅力的に細めた。

「不二先輩、2年後には…覚悟しといて」

出会った頃は、猫のように大きくて印象的な目が愛らしく、仲間の誰もが間違いなく「可愛い後輩」と口を揃えた、越前リョーマという小柄な少年。
けれど目の前の彼は、いつの間にか不二が見上げるまでに大きく成長してしまった。

「…覚悟?」

謎解きのような言葉にきっと返事は返されないだろうことは、不二にも分かっていた。
何故なら、今彼と向かい合うのは空港のロビー。数十分後に越前は日本を飛び立つ予定なのだから。

「何の話だにゃ?」
不二の肩に腕を回して隣り合う菊丸も、すぐ後ろに立つ乾も大石も、何の事だか…と言った顔で首を傾げた。

「手塚部長、そういう事だから」
今度は、不二の後方で腕を組み皆の会話を見守っていた手塚に声を掛けると、越前は「あ、もう部長じゃないっすね」と、悪戯っ子よろしく舌を覗かせる。

「…何の事だかわからんが、まあ、身体には気をつけろ」

それが見送りの締めの言葉となり、越前は腕時計を覗いてから皆に背を向ける。そして、かったるそうに手を振った。

「じゃ、行ってきまーす」

あの夏共に戦ったメンバーは、口ぐちに見送りの言葉を掛け、手を振り、その広い背中を見送る。
「越前!頑張れよ!」
当時から一番仲が良く、共に過ごす時間が長かった桃城の涙ながらの大声に、越前はほんの少し振り向いて拳を高く揚げた。

そして、エスカレーターの後姿が階下へ消える間際、不二はほんの一瞬視線が合ったのを感じていた。
瞬間振り返る強い視線。それでいてどこか縋るような甘えを感じ、不二は落ち着かない気分でそっと胸を抑えたが、その意味に気付く事は無かった。

***

あの日見送った越前は、今やプロとして大活躍している。
そして彼が18歳になった今、当然不二は20歳を迎え、こうして酒を交わす事も出来る年齢になった。
不二は手にしたグラスを傾けて、目の前に座る菊丸の言葉に思わず動きを止める。
「え?」
「だから!おチビが帰国するって!」
「何で?」
「そんなの知らないよ!でも、アイツ頑張ったじゃん。少しは休んでもいいっしょ?」
「うん、そうだね」
越前がアメリカに発ってから、不二は越前と一切連絡を取っていない。というより、メンバーの誰もがそれを遠慮したのだ。
彼から連絡を寄こすまでは、こちらからは連絡をしない。
彼もそう望んだし、自分らもテニスプレイヤーの端くれとして、多少なりともプロの大変さは想像出来る。
そう、その後遅ればせながらドイツへ発った手塚も同じ事で、だからこそどうして菊丸がそんな情報を得たのかが単純に分からなかった。
そう尋ねれば、菊丸は何て事ないように答える。
「大石だよ」
「大石?」
「そ、手塚って昔大石の伯父さんに肘を診てもらった事あったろ?その関係で、手塚から越前の情報が伯父さんに入って、それを大石が聞いて…ってね」
「なるほどね」
頷く不二に、菊丸は銜えた焼き鳥の串を放ると、意外そうな顔をする。
「ね、不二って手塚とも連絡取ってないの?」
「手塚?」
アメリカに渡った越前、その1年後に日本を離れた手塚。
不二は、越前、手塚ともに同じようなスタンスを保ち、こちらからは連絡していない。
それくらいの事でバラバラになる仲間では無いし、今は自分たちのプロとしての生活に集中して欲しかった。
当然仲間も同じ考えだと思っていたし、現に菊丸が口にする今まで、二人の私生活については何も聞いたことが無かったのだが。
「俺達はいいとしてもさ、不二だけは連絡取ってるかな…って思ってたんだけどね」
頬杖をついた菊丸の上目づかいの視線に、どんな意図が込められているのか分からず、不二は困惑気味に水っぽくなったチューハイを一口含む。
「何で僕だけが連絡取るって思うの?」
「…本気で言ってんの?」
菊丸の声には戸惑いの色が交ざるが、不二からすれば全く何の事だか想像がつかず、余程戸惑いっぱなしだ。
「あ~、マジ!?じゃあ、ちょっと大変かもしれないけど」
「大変?」
小首を傾げる不二の仕草はあの頃と変わらず、菊丸はテーブルに突っ伏して頭を抱えた。
「俺の口からはこれ以上言えない!ごめんっ」
「英二…?」
誰よりも話好きな菊丸のそんな台詞は珍しく、不二は思わず感心してしまい、翌日自分の身に降りかかる事態など想像も出来なかった。

不二が真面目に1限から出席したのは入学した年だけだった。
けれどそれは別段特別な事でも無く、不二は問題なく単位を取得し、優秀な大学生として日々を過ごしている。
そんな普通の大学生活を送る平日の朝。
「周助!お客様っ」
ノックもせずに激しく部屋の扉が開き、不二は眠たそうに目をこすった。
「…お客?」
枕元の時計を手に取れば、まだ8時。いつもならもう30分は眠っている所だ。
けれど、寝起きの良い不二はどうもいつもと事態が違う事をすぐに感じ取る。
まず不二家でノックなしに扉を開ける人間はまずいない。そして何より、姉の焦った声というのも珍しいものだ。
不二同様どこか飄々とした所のある彼女は、まず大抵のことには動じないし、むしろ騒がしい周りを眺めて楽しむくらいの、少々趣味の悪い所があるのだ。
その姉が、声を荒らげた。
そして、ゆっくりと階段を上って来る聞き慣れない足音に、不二は慌てて身体を起こす。

「そ、お客様。久しぶりだね不二先輩」
ひょいと覗いたのは、久しぶりに見る、生意気な笑顔。

「えっ、越前!?」
不二の慌てた大声も、また珍しいものだった。

「どういう事かな?越前」
顔を洗い歯を磨き、慌てて玄関を飛び出せば、越前はゆっくりと振り返った。
初夏の陽が眩しくて、思わず目を細める。
そんな不二に、越前は優しく微笑んだように見えた。
「すンません。時間、早すぎるとは思ったんだけど」
「…それは構わないけど」
再会は2年振りだ。
今や時の人となった越前の来訪に姉が狂喜乱舞し、家ではゆっくり話しもできないと、こうして二人あても無く出かける羽目になってしまった。
前を行く越前の背中は、あの日見送った時よりもさらに大きくなったようだ。
当時は身長ばかりが伸び始め、多少華奢な感じがしていたが、世界で揉まれたその背は広く逞しくなった。
「何だか、越前じゃないみたいだな」
そう言って目を瞑れば、中学当時の背中が蘇る。
小さくて細くて、でも皆の期待を背負って頼もしかった背中。
不二の目線程しか無かった背は、今や180センチを優に超えている。
「ま、ね。身体は大きくなったけど、俺は俺っス」
サッカーボールを蹴るように道端の石を蹴飛ばす足も、随分と大きい。
「でも、小柄な割に手足は大きかったもんね。越前は」
「そっすね。良く知ってるじゃん」
「まあね。同じ小柄同士、いつ追い越されるかヒヤヒヤしたものだよ」
「嘘ばっか」
不二の軽口に越前が一頻り笑って、そして、振り返った。

「ねえ、先輩。あの日の言葉、覚えてる」

ぶらぶら歩いて、気づけばそこは通学路途中の公園だった。
そう言えば、越前とも缶ジュース片手に寄り道したことを思い出す。
まだ幼く高かった声が、今は低く優しく響く。色気を含む、大人の男性の声。

「あの日…」

不二は、見送った空港を思い返す。
『不二先輩、2年後には…覚悟しといて』
確かそう言って、越前はアメリカへ発ったのだ。

「思い出した?」
気づけば、俯いた頭上から越前の声が降り注がれる。
ゆっくり顔を上げれば、越前の逞しい首元が目の前に迫る。
あんな少女のように細かった肩のラインが、まるで別人のようだ。
「うーん。菊丸先輩に苦労するぞって言われてたけど。想像以上だね」
「え?」
不二のきょとんとした瞳に、越前は大きくため息をつく。
「…やっぱり」
「やっぱりって…?」
不二は呆れ顔の越前に聞き返し、そしていつものように小さく首を傾けた。
「あ~っ、もう!」
不二のそんな仕草に、越前は天を仰ぎ大きく頭を振ると「ごめん!」と吐き捨てた。
そして。

「えっ?」

強く、抱きしめられる躰。
不二の背を引き寄せ、日焼けした腕がその背を拘束し、もう片手は不二の髪を絡め取るように小さな頭を固定した。
そのまま、見下ろす越前の表情が迫り、不二は反射的に目を閉じてしまう。

触れたのは熱い唇。
突然、ミントの香りのキスに包まれて、不二の鼓動が跳ね上がる。
ドクンドクンドクン…。
段々と早くなる胸の高鳴り。

たった数秒間の、重なるだけの優しい口付け。
仰け反る態勢になった不二の背を易々と支え、越前はゆっくりと唇を離した。

不二がそっと瞳を開けば、越前は悪戯っ子のように笑う。
「ガム噛んでたの忘れてた」

そして今度は耳元で囁く。
「だから、ディープキスはお預け」
「…バカなこと」

何時の間に身につけたのか、吐息混じりの甘い声は、不二の背を上へ下へと電流のように走り抜ける。
じんわり広がるこの痺れを、何と呼んだらいいのだろう。
喘ぐように呼吸をし、不二は自分の両腕を恐る恐る越前の背に回す。

いつか練習中にじゃれて抱きしめた背中は、驚くばかりに厚みを増した。
何時ぞやはすっぽり腕に収まった身体が、今は不二を抱きしめ、逆にすっぽりと包みこむ。
梅雨前の爽やかな風にのって、越前の香りが不二を取り巻く。
香水ではないその香りを、愛おしく感じてしまうのは新発見だ。

不二は、空港での視線の意味を、漸く理解する。
「こういう…事だったんだね?」
不二の声が擦れたのが、決して恐怖や嫌悪感からではないのは、越前も触れ合う肌から感じ取る。
「そう。でも、先輩は何の覚悟も決めてなかったみたいだね」
「…だって、あの時はちっとも分からなかった」
「きっと、他の人は気づいてたのにね」
「…嘘?」
慌てて見上げる表情に苦笑して、越前は覗いた形良い額に軽く口づける。
「少なくとも、菊丸先輩は気づいてたよ」
「…英二、何も言ってくれないから」
ほんの少し尖った唇を、越前の指先がからかうように上下から摘まんだ。
「他の男の話はおしまい。で?返事はOKでいいよね?」
覗きこむ視線に、不二は戸惑って視線を逸らした。
「返事って…。僕越前から何も言われてない」
「ちょっとアンタ…」
キスまでして何を今更と、越前は呆れ顔だ。
「…自分の気持ちもはっきり言葉に出来なくて、よくアメリカでやっていけるね?」
食い下がる不二の言葉に、越前は「にゃろう…」と小さく呟いて。

「不二先輩が好きだよ。俺と付き合って?」

何故だか悔しそうな越前に、不二はプッと噴き出した。
「どうして不貞腐れるのさ」
「…返事は?」
急かす越前の表情には、あの頃の幼さが滲み、不二は眩しそうに目を閉じた。

「僕も、越前のことが好きみたい」

「…みたいって何スか。みたいって」
呆れたような口調でも、その腕は待ち切れなかったかのように不二の躰を再び強く抱きしめる。
「…だって、急だったから」
「急じゃないって。2年も猶予あげたじゃないスか。先輩が鈍いからいけないの」
「わかった、わかった。そういうことにしておいてあげる」
「…ああ言えばこう言うし…」

うなだれるように、不二の肩に押し当てられた越前の額。
自分を包む越前のシャンプーと汗の香りに、もう胸が爆発しそう!なんて事は、暫く秘密にしておこうと不二は思う。
2年の月日が流れても当然のような顔をして迎えに来た王子様は、きっと図に乗ってしまうだろうから。

「…だから、今はこれだけ」
そう囁き、越前の髪先に口づけた不二を、越前は気づかない振りしてそっと微笑んだ。

***

後日談。
馴染みの居酒屋で、菊丸は不二を出迎えるなり「良かった~!」と両手を上げた。
「何?良かったって」
腰掛けながら、訝しげな表情で菊丸に問いかける。
「え?越前と上手く行ったんでしょ?」
「…まあ」
どう報告しようかと悩みに悩んだ事をあっさりと切り出され、不二は出鼻を挫かれた気分になる。
「ねえ、それより英二。越前の気持ち、気づいてたって本当?」
「当たり前じゃん」
菊丸は呆れたように頷く。
「何で?」
「何でって。空港での言葉って、完全に手塚に対する宣戦布告じゃん!あの言葉でみーんな気づいたよ」
「嘘っ!」
みーんなとは、きっと…。
「嘘じゃないし。大石も、乾も、タカさんも、桃も、海堂も!唯一、肝心の手塚だけが気づいてなさそうだったのが、何て言うか憐れと言うか…」
「…そんな、みんなって。僕恥ずかしくて報告出来ないじゃないか」
「今さらでしょ?不二が越前を特別可愛がってたのだって、みんな感じてたし」
「…そんなつもり無いけど」
「つもりはなくても、そうだったの!」
菊丸はジョッキを煽ってビールを飲み干すと、手の甲で唇を拭って大きく息を吐く。
「まあ、手塚には申し訳ない気持があるけどね。でも何も行動に移さなかったのは手塚自身の所為だし、越前の方が上手だったってことだよね」
うんうんと頷き一人納得する菊丸に、不二は益々眉尻を下げる。
「…え、何?意味分からないんだけど。手塚が何?」
「えっ?それも気づいてないの!?」
菊丸の驚きに、もはや不二は怒られている気分だ。
「手塚だってずっと不二の事意識してたよ、絶対!」
「…」
本当か嘘か、そんな事はもうどうでも良かった。
不二はこれ以上鈍感呼ばわりされるのは御免とばかりに、口をつぐんだ。
そしてせっせとチューハイのグラスを空ける。
結果、2時間後には…。

「もしもーし!おチビー?不二迎えに来てよ!そう、駅前の居酒屋。本っ当、不二ってば世話焼かせるんだから~」

考える事を放棄した不二は、菊丸に呆れられていることも知らずに、夢の世界へと旅立っていた。

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ようこそお越し下さいました!「ハコニワ‘07」はテニスの王子様、跡宍メインのテキストサイトです。妄想力に任せて好き勝手書き散らしている自己満足サイトですので、下記の点にご注意くださいませ。
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