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眼鏡シリーズ、おまけの跡宍です。

おまけのくせに一番話が長いし、眼鏡をはずすんだか掛けるんだか…ってな具合で、だいぶテーマから外れてます。
でもいいんです。跡宍が書ければ何でも(笑)
どうしても、久しぶりに跡宍が書きたい気分だったんです。

眼鏡をはずす夜(跡×宍バージョン)

「なあ、宍戸。たかだか学園祭ごときで、どうしてこんなにも問題が起きるかな」
跡部にしては珍しいボヤキだった。
眼鏡を少し押し上げて、跡部は目頭をつまむようにして目を瞑る。
そんなサラリーマンのような仕草を横目に、宍戸は「…さあねェ」と呟いた。
それは、お前が無駄に生徒たちを焚きつけた所為では?と思ったが、宍戸はあえて口にしない。
本番は明日。実行委員としての仕事に忙殺されてもう一週間。答えるのも面倒というのが正直なところだ。
人気投票トップ団体には、跡部家の別荘に2泊3日ご招待だなんて、くだらない商品を付けたのがそもそもの原因なのだ。
それなりに裕福な家庭の子供が集まる学園とは言え、やはり跡部家となれば全く別格。是非とも招待されたいと思うのは仕方のない事だろう。ましてや、跡部まで同行した日には、同じ屋根の下跡部様と過ごせる…っ!というのが学園中の異様な興奮状態の原因だ。
「備品が足りない、業者の手配ミスったなら分かる。何だかわけ分からねえ女どもの小競り合いなんぞ、俺様の知った事か」
…いや、それこそ原因は跡部だろうと。つっこみそうになる言葉を宍戸はやっとの思いで呑みこんだ。
「それにしてもさ、お前身体平気なのか?俺は適当に休める時は休んでっけど、お前ほとんど寝てねェだろ?」
跡部の徹底ぶりはいつもの事だが、今回は本当にあっちこっちへと引っ張りだこだ。
完璧主義の跡部は、結局いつだって他の生徒に任せきる事が出来ずに自分で仕事をこなしてしまう。
「人を遣う事を覚えなきゃ、トップには立てねえんじゃねえの?跡部様よ」
小馬鹿にしたような宍戸の言葉を、跡部はそれこそ鼻で笑い飛ばす。
「ああ?こんな出来の悪い奴らに任せなきゃ回せないほど、俺は落ちぶれてないぜ?」
「…はいはい」
その出来の悪い奴らに宍戸自身が含まれている事は百も承知で。
いつも通りの不遜な態度に怒る気にもなれず、宍戸は手にしたシャーペンを放り投げた。
「体育館の照明装置、バスケ部の演劇と、3年有志のダンスを入れ替えれば何とか回りそうだぜ。お前から伝えろよ、俺が言うより話が早いし」
その言葉に跡部は小さく頷く。
「仕方ねえな。つーかよ、そんなの細々使いまわさなくたって買えばいいだろうが」
「…お前さ、何でも金で解決しようとすんの悪い癖だぜ?」
宍戸の呆れ顔に、跡部は面白く無さそうに口をつぐんだ。
そして跡部はデスクを立つと、強張った肩をほぐすように回しながら窓の外を見遣る。
夜間照明の元、まだ多くの生徒が準備に慌ただしい。

氷帝の学園祭は近隣の学校のどこよりも賑やかだ。生徒のみならず教師までこの日を待ち望む程、毎年活気に溢れたものとなる。
行き交う皆の表情は、疲れを覗かせながらもそれぞれ楽しそうに輝いている。
それを眺めて満足そうな跡部の横に立ち、宍戸も満更でも無い表情でその風景を見下ろした。
「今年で最後だもんな」
呟くような宍戸の言葉に跡部は答えない。
それでも、跡部が海外の大学に進むのはもう皆の知る所で、中等部入学時から生徒会長を務めた跡部が仕切る学園祭も、これで最後だ。だからこその盛り上がりなのかもしれない。
「何だかんだ言っても、お前のいた学園生活は楽しかったよ」
こんな素直な気持ちを口に出来るのも、学園祭前の興奮の為だろうか。隣の跡部を見もせず、宍戸は照れたように頭を掻いた。
「テニスは勿論だけどさ、こういうイベント事は、お前が仕切るとすげェワクワクするんだよな。今度は何を仕出かすんだってな」
「仕出かすって…。俺は悪戯小僧か」
そう言い捨てる跡部の瞳も、何処か楽しそうに細められる。

跡部と宍戸。
跡部の中等部入学当時は犬猿の仲とまで言われた二人がこうして肩を並べるのも、いつからか当たり前になっていた。
いつも本音でぶつかってくる宍戸に、跡継ぎとして大切に大切に育てられてきた跡部が興味を示すのは、自然の成り行きだったのかもしれない。
そして、実は誰よりも直向きにテニスに向き合い、仲間を大切に思う跡部の本質を知ってしまえば、宍戸が心を許すのも必然的だった。
相変わらずの口の悪さだから誰も気づいていないかもしれないが、跡部も宍戸も、この無言で並ぶ空気感を大切に思っていたし、お互いの傍を心地よいと感じていた。
こうして過ごせるのも、あと数カ月…。

「なあ、跡部。あの別荘ご招待ってのさ、俺たちテニス部が優勝してもありな訳?」
「ああ?」
突然の問い掛けに、跡部は少し考える。
「それは構わないが、今さらじゃねえか?忍足の奴とか、面倒がって来ないだろう」
「そうか?俺は行きたいけどな。合宿とかじゃなくただ遊ぶなんて無かっただろ?」
「言われてみりゃそうだな」
まあ、行った所でテニスをするのは目に見えているが、宍戸がそれを楽しみだと言うのなら、叶えてやるのも良いだろうと跡部は思う。
「精々頑張るんだな。バンドだって?恥かかないようにな」
「分かってるって!」
生徒会長の跡部は、毎年部活の出し物には不参加だ。そうでなくたって露出は多いのだから、身体はいくつあっても足りないくらいだ。

「なあ、宍戸」
相変わらず校庭を見下ろしていた跡部が不意に呼ぶ。
「あ?」
宍戸は、忙しなく動く人々をぼんやりと眺めながら答えた。
「ちょっとこっち向けよ」
「…あ?」
言われるがまま振り向けば、思ったより近くに跡部の顔が迫り。
チュッ…と。
そのまま静かに口付けた。
「…へ?」
可愛い口付け。
触れるだけのバードキスに、宍戸の目は豆鉄砲でも食らったかのように見開かれ、方や跡部は眼鏡の奥の瞳をそっと細めた。
「何だかお前、これで最後みたいな言い方するからよ。どうだ?これなら気になって俺の事忘れられないだろ?」
「ばっ、馬鹿じゃねえ!?」
宍戸は仰け反って、跡部の頭を軽く叩いた。
こんな事しなくたって忘れやしないし、跡部程強烈な個性の人間を忘れることなどありやしない。記憶喪失にでもならなきゃ絶対無理な話だ。
「痛ェな」
弾みでずれた眼鏡に、跡部が顔を顰める。
「お前がくだらない事するからだろ!」
顔を真っ赤にして怒鳴る宍戸。
あまりの慌てぶりに、跡部はとうとう苦笑した。
「お前の感傷がうつっちまったんだよ。責任とれよ」
今度は不意打ちではなく、そっと宍戸の頬を撫でてから顔を傾ける。
跡部が伏せ目がちに眼鏡を外せば、影を落とすほど長い睫毛に、宍戸は思わず見とれてしまう。
そして、流れる仕草で眼鏡を胸ポケットに仕舞った時には。二人の唇は再び重なり合う。
温かく優しいキス。
ゆっくりと、跡部の想いが唇から伝わるようで、宍戸の胸の奥がツン…と甘く痛んだ。
どんな言い訳をされようと、大切に思われている事が分かる、そんな丁寧な口付け。
「宍戸…」
「…跡部」
そっと抱き寄せられて、耳元で囁かれて、とてもいつものように怒鳴り飛ばすなど出来なかった。
何より、宍戸自身が跡部の想いを真摯に受け止めたいと思えた。

「急に、驚いたか?」
跡部の手は、宍戸の背をゆるやかに滑り、何だか心地よくて眠たくなってくる。
「そりゃ、驚くさ。でも…」
「…でも?」
宍戸も、気持を伝えるように制服の背中に手を回す。
「お前が、俺のこと大切に思ってくれてたんだなっ…てのが分かるから」
「…少し違う」
「少し?」
そう聞き返し、逸らすことなく見つめる宍戸の瞳。
跡部は、その瞼を擽るように囁いた。
「過去形じゃない。大切に思っていた、じゃなくて、今までも、これからも大切に思っていくって事だ」
「そっか」
「お前は?」
「…どうだと思う?」
少しの沈黙の後、宍戸はにやりと笑って答える。
跡部は嬉しそうに声を上げた。
「ったく、やっぱりお前はイイな」
「言ってろよ」
宍戸は抱きしめる腕からすり抜けると、素早く跡部の胸ポケットから眼鏡を抜き取る。
そして、その整った顔に眼鏡を掛けてやった。
「何だよ?」
跡部が尋ねれば、宍戸は不格好に片目を閉じて見せる。
「さっさと学園祭成功させちまって、これからの俺たちについて話し合おうぜ、生徒会長様?」
宍戸の下手くそなウインクに噴き出しながらも、跡部は幸せそうに目を細めた。
「だな」

その言葉だけで十分だった。
宍戸の想いは、その唇から、抱きしめた腕から十分に伝わった。
切っ掛けは学園祭前の高揚した雰囲気だったとしても、その想いは長い事胸に抱き続けた確かなもの。

跡部も宍戸も、大きく伸びをすると窓際を離れて再び机の書類に手を伸ばす。
「じゃあ俺、そろそろ校舎見回って残ってる奴ら帰らせるぜ」
「ああ、頼む。俺は今日中にバスケ部に話をつけよう」
「よろしく」

そして、二人は生徒会室を後にする。
愛おしそうに指を絡ませてから。

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