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ある日の「かわむらすし」2 リョ×不二
「やあ、越前。この前は大丈夫だった?」
暖簾をくぐり店に入った越前を、店主より先に出迎えたのは不二の穏やかな声だった。
久しぶりの集まりで、ビール日本酒とちゃんぽんした挙げ句に、不二の膝枕で寝入ってしまったのは、つい一昨日の事だ。
奥から「いらっしゃい」と声を掛けてくれた親父さんと河村に「…どもッス」と挨拶をして、越前は当たり前のように不二の隣に腰掛ける。
カウンター席には数の減ったわさびずしが並び、越前は相変わらずだなァと改めて思う。
「不二先輩、最近ここに通いづめって本当なんスね」
「まあね。しばらく母が不在にしててね。自炊ってのも大変だし、どうせ外で食べるならってさ」
「優雅な大学生ッスね」
そんな越前の言葉に軽く微笑み返し、不二は先日同様日本酒を傾ける。
「で、越前は?久しぶりの帰国だし、親御さん喜んで手料理奮ってくれるんじゃない?」
越前は顔をしかめて大きく首を振る。
「最初のうちは有難いッスけどね。さすがに毎日毎日は…。一人暮らしに慣れちゃうと、そんなもんスよ」
「そういうものなんだ」
「そういうものなんです」
そう言ってお茶をすすって暫くすれば、河村のお任せ握りが出来上がる。
「越前の苦手そうなものは抜いてあるから。追加あったら遠慮なく声掛けてね」
「どもッス」
勢い良くがっつく越前を横目に、不二はゆっくりと食事を進める。
見慣れたような見慣れない様な、そんな光景。河村は不思議な空間にこっそりと笑みを堪える。
こうしてカウンターに入るようになって早数年。
客から見ればそこに在って然るべき握り手の存在は、時に景色と化す事もあるのだろう。
客本人が思う以上に、その素顔を垣間見る瞬間がある。そんな人間模様を感じるようになったのも、慣れてきた証拠なのだろうか。
河村から見て、今の越前は妙に浮ついて見えた。
「不二先輩のお袋さん、いつまで出かけてるんスか?」
あらかた食べ終わった頃、越前は唐突に尋ねた。
「ん?年明けまでだよ。父の所に行ってるんだ。うちは父が海外勤務なんだけど、今年は仕事の影響で帰国できなくてさ、それで」
「へェ、じゃあ、しばらく夕飯はここの世話になる感じですね」
「ふふ…。資金が続けば、何てね。実のところめったに外食しないからバイト代は十分残ってるし、こんな時くらいしか使い道ないんだよ」
「え?不二先輩、バイトしてるんスか?」
「そりゃ、人並には。でも、土日と長期休暇の時くらいだよ。これでもテニススクールのコーチなんだ」
「…なんか、怖そうっス」
「失礼だな、君は」
来店してから1時間以上経つ不二はもうとっくに満腹なはずなのに、まるで越前に付き合うように、談笑しながら酒を傾け続ける。らしくない舐めるような飲み方も、河村からすれば微笑ましいに尽きるのだ。
決して、嬉しさにまかせて大声でおしゃべりはしない。けれど、二人ともこの時間をいつまでも楽しみたいと感じているのは明らかだった。
これから暫くの間、こんな微笑ましい風景が楽しめるかと思うと、河村の楽しみも増えるというものだ。
「こんばんは」
9時も回った頃、大きな体を折り曲げるようにして暖簾をくぐり入ってきたのは乾だ。
そして、その後ろからは海堂が。
「ちっス」
律儀に頭を下げる後輩に手を上げ、河村は微笑みで二人を出迎えた。
「惜しいな。さっきまで不二と越前もいたんだよ」
「えっ?もう帰ってしまったのか?」
乾の「しまった」というような声に、海堂が静かに睨みつける。
どうやら、二人も居るだろうからと乾に強引につれて来られたのだろう。
「でもまあ、俺の読みも当たったってことか」
乾の言葉に、河村は茶を出しながら頷き返す。
「俺の勘だと、あの二人は暫く通ってくれるんじゃないかな。そう、少なくともクリスマスまでは」
「…成るほど。タカさんの目にもそう映ったか」
「ハハ、俺のはただの勘だけどね。で?何からいく?」
「ああ、いつものお任せで」
乾は慣れたように頼むと、海堂を振り返る。
「お前は少なめにしとくか?夕飯済ませちゃった後だろ?」
「…はあ、まあ、適当に頼ンまス」
「了解」
いつものように手際良く作業を始める河村と、逆光する眼鏡の奥の表情が読めない乾。
海堂は、先程の会話について尋ねる切っ掛けを失って、まァいいかと、程良い熱さの茶を啜った。
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