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4/1アップ済み「猫宍奇想曲①」から順にお読みください。

 


猫宍奇想曲⑥ (跡×宍)
~猫宍シリーズ6~


学校へ通えるようになってから2週間。
ようやく他のクラスの生徒が物珍しく教室に見物にやってくることもなくなり、平穏な生活に戻ったって言えるかもしれない。
授業も心配したような遅れはなかったし(というより元から成績悪いし…)、一番影響がでそうな体育の授業だって身体が小さくなっただけならそんなに問題は無かった。今までより20センチ以上低い視界にも慣れた。
そんな感じで俺自身は以前と変わらない気持ちでいるんだけど、テニス部の仲間にしてみればそうもいかないらしくて、どうも俺に構い過ぎる感じがある。例えは変かもしれないけど「過保護」ってゆーか…。
確かに俺自身は、鏡にでも映らない限り猫耳や尻尾をビジュアルとして実感することはあまり無いんだけど、毎日傍にいるヤツらからすれば、どうしたって目に入るわけで。
絶対俺のことペットみたいに、まさに「猫可愛がり」してると思うんだよなぁ。
特に跡部。

4時間目の教科書を机の中に仕舞い込むと、いつものように後ろの席の岳人が背中を突く。
「学食行こうぜ!」
「おう」
立ち上がり、ドアに向かう途中の席の滝が加われば、いつもの立ち位置で廊下へ出る。
「…だからさぁ。何度も言うようだけど、俺子供じゃないから」
俺が溜息を吐いて言うと、岳人は「まー気にするなよ」と笑った。
俺を真ん中にして左に岳人が立ち俺の肩に腕を回す。まあ、これはいいよな。友達同士やったっておかしくないし、岳人からしてみれば自分より背の低い友達が出来て優位に立てるのが嬉しいのかもしれない。
でもさ、滝はおかしいだろ?
「滝、手繋がなくていいから」
右に立った滝は当然のように俺の右手を取り、学食へと向かうのだ。
あのさ、歩き始めたばかりのガキとは違うんだぜ?背縮んだだけで、別に転んだりしねーし。
そうやって俺が文句を言えば、滝は決まってこう答える。
「いいじゃない。どうせ学食までなんだから」
そう。学食に着いたら、もっと過保護なヤツが待ってるんだ。

途中で忍足とジローも合流し団体で学食へ行けば、陽のあたる窓際の席で待ち受ける跡部の姿が。
跡部の周りは他の席のように学生たちで溢れかえったりはしない。自然と出来た「跡部様特等席」なのだ。
女生徒(時には男子生徒も)が熱い視線で見守る中、跡部はそこだけ時が止まったかのように悠然と脚を組んで座り、横文字の表紙の文庫本を広げている。まさに帝王といった風情だが、これが俺が行くと大変な事になる。
「よ!跡部。愛しの宍戸をお連れしたぜ?」
岳人がからかうように言っても、跡部は怒ったりはしない。
「ご苦労」
ふざけたセリフにもおどけて返して、呆れる岳人の腕の中から俺を引き寄せる。
そして優しく俺を抱きしめると、必ずこう言うんだ。
「宍戸、困ったことは無かったか?」
「…ああ。大丈夫」
最初のうちはビックリして「離せ!」とか「ふざけるな!」とか言って暴れて、その腕から逃げ出そうとしたんだけど、もう最近は諦めつつある。
だって昼休みと放課後に毎回これだぜ?いい加減反抗するのにも疲れたって感じ。
「相変わらずやなぁ、跡部」
忍足を筆頭にメンバー全員が苦笑するが、跡部は全く気にもせず俺を自分の隣に座らせる。
「今日もスペシャルランチで良かったか?今2年に取りに行かせてる」
「…ああ。サンキュー」
栄養バランスの考えられた、街のレストランで食べたら5000円はするんじゃないかっていう日替わりのランチを、跡部は毎日奢ってくれる。最初の内は自分には手の出なかったランチにありつけて素直に喜んでたんだけど、それが何日も続けば申し訳なく思えてくる。
昨日「悪いからもう奢ってくれなくていいよ」って言ったら、跡部は不思議そうな顔をしてこう言った。
「自分の妻を養って何が悪い?当然のことだろう?」
あ、そーですか。やっぱり婚約は決定ですか。
もう、反論する気すら起きねェ。

「あ、宍戸さん。こんにちは!」
樺地と日吉、そして長太郎の3人が俺と跡部のランチを持ってやってくる。樺地が以前から跡部の身の回りの世話をしているのには見慣れてるけど、最近は長太郎も一緒になって俺の分まで運んでくれる。
「…長太郎。跡部に言われたって、そんなことまでしなくていいんだよ」
こいつも従順すぎるっていうか、バカっていうか。
「良いんです。俺好きでやってますから。宍戸さんと一緒に食事ができるなら、こんなのお安い御用です!」
「…まったく」
どいつもこいつも、俺を何も出来ない子供と勘違いしてるみたいなんだ。
結局こうして9人の大所帯で食事が始まる。
俺の右隣が跡部で左隣が滝。これは何故か定位置。
そんな風景を見て、ジローはいつも「お父さんとお母さんと子供って感じ!」と笑うんだ。
「さあ、宍戸。今日は宍戸の好きなハンバーグだよ」
滝がそう言って、俺の前に置かれたハンバーグステーキを切り分け始める。
このハンバーグって超美味しいんだよ。ホイルの包み焼きみたいになってるんだけど、包みにナイフを入れた途端に、ドミグラスソースの香りがフワって広がる。ワインがきいていて甘すぎないのがいいんだ。
でも…。
「滝、俺自分で食べられるし…」
不機嫌そうな顔を装って文句を言ってみても、滝はクスクス笑って相手にしてくれない。
「そんな怒った顔したってダメだよ。尻尾を見れば宍戸の機嫌なんてすぐに分かるんだから」
「…うー」
そうなんだよ。いくら俺が言ってもみんなが過保護をやめないのはこの尻尾のせい。実はそんなに嫌がってないってすぐにバレちゃうんだよなぁ。この姿になっての一番のネックはそれ。
「宍戸。滝は好きでやってるんだ。やらせてやれ」
そう言いながら、跡部は俺の膝からずり落ちたナプキンを直してくれる。だから、こーゆーのもさぁ…。自分で出来るって言おうとしたら、今度は日吉に突っ込まれた。
「宍戸さん。跡部さんも好きでやってるんですよ」
「…あー、うー」
一緒に部活してた時には気難しい顔ばっかしてた日吉でさえ、俺がこの姿になったらこんなにも穏やかに微笑みかけてくるようになった。
嬉しいってよりは、何だか複雑。

そんな調子で昼食を終えれば、跡部は教室まで送ってくれる。
「放課後は生徒会の仕事があるから、一緒に生徒会室に行くぞ?迎えに来るから待ってろ」
岳人と滝が見守るなか、跡部は俺と目線を合わせるように屈むとそう言い聞かす。
「俺も一緒に生徒会室行ってもいいのか?」
「当然だ」
猫耳の後ろをゆっくりと撫でられると、気持ちが良くてついつい目を細めてしまう。
「ん。じゃー放課後待ってる」
俺が素直に答えたら、跡部は穏やかに微笑んだ。
「よし。じゃ、残りの授業寝ないで頑張れよ?」
頬に軽く口付けて跡部は廊下を戻って行く。
さすがに手は振らないがその姿を見送っていたら、岳人は呆れたように言った。
「跡部のヤツ、宍戸がこの姿になってからプライベートの顔丸出しだな?」
滝もクスっと笑って俺の手を取り、教室に入りながら言う。
「宍戸ももう文句を言わなくなったね?」
え?何か文句言うようなことされたか?俺。
焦って考え出したら、岳人は俺の肩に腕を回すとぐいっと引き寄せて小さく言った。
「キ・ス!今までの宍戸なら、学校であんなことされたら怒り狂ってただろ?」
「…あ!」
確かにそうだ…。
ヤバイ!俺ってばすっかり慣らされてる!?

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