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「猫宍奇想曲①」は前日にアップ済みです。是非そちらからお読みください。

 


猫宍奇想曲② (跡×宍)
~猫宍シリーズ2~


「か、母さん。あのな…?」
平日の昼間、父さんが仕事で出かけている時間を見計らって自宅へ戻ると、出迎えてくれた母さんと祖母ちゃんが目を丸くして玄関口で固まってしまった。
それもそうだよな。数日振りに帰ってきた息子の身体が数年前に戻ったかのように小さくなって、しかも被っていたパーカーのフードを取ったら猫の耳が生えてました…なんて。
「あのー…」
俺だって何て言ったらいいか分からない。事実自分だってこの状況が理解できてないんだから。
一歩後ろで付き添ってくれる跡部を振り返る。一緒に学校をサボって付いてきてくれたんだけど、ホント付き合ってもらえて良かった。自分ひとりじゃどうしていいのか分からない。
「お母様…」
跡部も呆然とする母さんたちを刺激しないためか、穏やかな声で話しかける。
「…あ、とべ君。一体…」
オロオロと視線を跡部に移すと、母さんはようやく声を出した。
「理由はまだ判らないのですが、こんなことに…」
「そ、そう」
跡部の口から「判らない」と言われると余計に不安を感じるらしく、母さんは隣の祖母ちゃんと顔を見合す。
「でも、ご安心ください」
そんな二人を前に跡部ははっきりとそう告げる。
何が安心なんだ?急に自信に満ち溢れたような表情をする跡部に、俺まで不安になってしまう。全然元の姿に戻る兆候もなくて、明日からどうしようとお先が真っ暗な状態なのに。
「亮君は一生俺が責任を持って養います。幸せにしますので、亮君を頂けませんか?」
「はあっ!?」
バッカじゃねーの!?跡部のヤツ!
何血迷った事言ってるんだ!余計に事態を悪化させてどうする!?
でも、そんな俺の焦りもよそに、母さんと祖母ちゃんはその言葉でホッとしたように大きく息を吐いた。
「ああ…跡部君ありがとう」
母さんは深々と頭を下げる。
「良かったねェ、亮?」
「はいっ!?」
祖母ちゃんまで目に涙を溜めて俺に微笑む。
いや、何にも解決してねーし!耳と尻尾はえたまんまだし!
「こんな姿になって、跡部君に捨てられちゃったらお母さんどうしようかって、もうそれだけが心配で…」
それだけかよ!?
ああ、良かったと晴れやかに微笑む母さん。
あのー?俺が縮んだのと耳や尻尾が生えたのは心配じゃないんですか!?
「亮、幸せになるんだよ?跡部君、不束者ですが亮のことよろしくね?」
「ば、祖母ちゃん!?」
祖母ちゃんはその場で正座をすると、三つ指をついて跡部に向かって深く頭を下げる。
「お祖母様、ご安心ください。亮君のことは大切にいたします」
「おーい!!手前も何ノッてるんだよ!?」
さあ顔を上げてお祖母様、なんて肩に手かけてやってる場合じゃねーだろ!?
「何でこんな話になってんだよ!俺はこんな姿になっちゃったから学校とかこれからの事とかどうしようかって相談に帰ってきたの!」
俺が母さんたちと跡部の間に割って入って大声で叫んだら、母さんはあっけらかんと言い放つ。
「そんなの母さんだって知らないわよ」
「し、知らないって…。おいおい!息子の一大事に何言ってるんだよ!」
全く、さっきの不安そうな顔は何だったんだ?
「跡部君にわからないことが母さんたちに分かるはずないでしょ?そんな事より跡部君に迷惑かけないでちゃんと家事もやるのよ?もう、だからお料理教えてあげるって何度も言ったのに…」
母さんはまったく、と溜息を吐いて俺の頭に拳骨を落とす。
「いてーよ!」
それにしても、ここ数年やたら料理を教えたがったのってこんな意味だったのか?もしや、男の俺を嫁に出そうとずっと思ってたのか!?
「そうよ!嫁入り道具!どうしましょう…こんな急だと思ってなかったからねェ」
祖母ちゃんまで焦ったように立ち上がる。
「そうよね!ああ、跡部君まずは婚約かしら?跡部君まだ結婚できる歳じゃないものね?」
「母さん!」
何を見当違いな心配してんだか。それ以前に俺は男だし!今やただの人間でもなくなってる感じだし!
「そんな堅苦しい事はいいですよお母様」
「おーい、跡部!」
ハハハ、なんて笑ってる場合じゃねーんだよ!
「そう?跡部君のご両親はそれで納得してくださる?」
「ちょ、ちょっと。俺の話も聞けって!」
冗談じゃ済まなくなってきた雰囲気に俺が止めに入ると、母さんと祖母ちゃんにピシャっと言い切られる。
「結婚は本人たちだけの問題じゃないの!親御さんの意見も大切なのよ!」
「いや、母さん。論点ずれまくり…」
こんな事になるなら父さんのいる時間に来れば良かった。頭が固い父さんには刺激が強いかなって思って避けたのに…。もう兄貴でもいいや。誰か常識が通じるヤツはいないのか…?
「今後のことは追々話し合いましょう。今日は、まずはご挨拶をと思いまして…。急に息子さんをくださいなどと、無作法にお伺いして申し訳ありませんでした」
「あーとーべ!」
こいつやり過ぎ!母さんたちの目、本気だから!
「いいえーこちらこそよろしくお願いします。亮、たまには帰っていらっしゃいね?」
「ええっ!?」
跡部ににこやかに挨拶した後の母さんの言葉に、俺は叫んでしまう。
「俺、今外出から帰ったの!ここが家なの!」
「何言ってるの?もう跡部君の婚約者なのよ?跡部家で花嫁修業に決まってるじゃない?」
「な、何で?」
どうにもこうにも話が通じない!部活のメンバー以上に非常識な人間がこんな身近にいたなんて。
「そうそう、お父さんにも報告しなきゃ!喜ぶわよ、お父さん♪」
「あ、そう…」
父さんも喜んじゃうんだ…。もう兄貴に期待するのも止めよう。
スキップしながら、電話をしに奥へと消えていく母さん。祖母ちゃんも、代々伝わる嫁入り道具を用意しておくわね、とニコニコ笑って部屋へと戻った。
「あ、跡部。その、悪いな…」
跡部の悪乗りに腹を立てるよりも、家人の非常識さにもう頭も上がらない。
「何が悪い?親御さんの了解も得られた。これから出来るだけ早めに話を進めよう」
何だって!?
「冗談じゃねーの!?」
「冗談でこんな挨拶しに来るか?」
真面目腐った顔で俺の手を取った跡部は、もう一度俺の頭にフードを被せると外に待たせている車へと急ぐ。
「次は学校だ。中等部長に連絡を入れてあるから相談に行こう」
「あ、ハハ。そうっすか…」
もう、どうでもいいや。成るように成れ!



猫耳と尻尾のくせに、イヤに常識人な宍戸(笑)。
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