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ご注意!
女体ですよー。
忍足の報復(忍×岳)
~女体シリーズ14~
「なんじゃこりゃあっ!?」
別に某有名刑事ドラマの、某有名俳優の殉職場面の台詞ではない。
ドスのきいた叫び声を上げたのは、歴とした女子生徒の岳人だ。
部室のテーブルを叩くようにして立ち上がった岳人は、ぶるぶると両手を震わせて雑誌を握り締める。
余りに余りな怒声だったけれど「女の子なんだから…」と窘める者はいない。むしろ岳人に同情すらしていた。
「が、岳人。落ち着いて…」
いつもはそう言われる側の多い宍戸が、同情的な苦笑いを浮かべて立ち上がった岳人を見上げる。
「そ、うだね。ほらローズティでも飲んで落ち着こう?」
滝も自分のために淹れていた紅茶を、思わず差し出してしまう。
けれどそんな二人には見向きもせず、岳人は手にした雑誌をとうとう床に叩きつける。
そんな行儀の悪い岳人をいつもは叱り飛ばす跡部でさえ、今回ばかりは苦しそうに笑い出すのを堪えていた。
その部屋でただ日吉だけが、心底心配したように岳人の表情を伺う。
「向日さん、気にすることないですよ」
優しい後輩の慰めは時として逆効果となる事もあり。今が正にそうであった。
「くそーっ!そーだよ、そーですよ!俺はどうせガキくさいですよ!乳くさいですよ!」
「い、いや、何もそこまでは…」
最後にフォローを入れた鳳を一睨みして震え上がらせると、キーっとヒステリックな声を上げた岳人は、そのままテーブルに突っ伏してしまった。
「…」
まわりのメンバーは、顔を見合わせ声には出さず苦笑して肩をすくめた。
事の発端は先月の休みに原宿へ出かけたことだった。裏通りのお気に入りの古着屋を目指した岳人は、夏の終わりに付き合い始めたばかりの忍足と並んで、上機嫌に歩を進めていた。
最近買ったばかりのニットワンピにドット模様が可愛いレギンスを合わせ、ちょっと無理してヒールの高い靴を履いた岳人。ジャストサイズのピンクのパーカーはふわふわの生地でお気に入りだ。薄手のニット帽も大振りなコサージュ遣いが大胆で、良く似合ってると忍足も褒めてくれた。
だから、いつにもなく大胆に、忍足の腕に絡みつくように手を繋ぎながら道すがらのウィンドウショッピングを楽しんでいたのだ。
勿論忍足の表情も緩みっぱなしだった。少々女性らしさに欠け男気溢るる岳人が、こんなにも甘えてくることは本当に珍しかったから。
「がっくん、あと何が見たい?」
「えーとね、普段使いの鞄が見たいんだよな」
「んじゃ、どこ行こか?」
「あ、そこの脇道入ると…」
そう言って細い道を右に折れようとした所で、急に人が飛び出してくる。
「!?」
二人が驚いて仰け反るようにして足を止めると、行く道を塞いだ女性が興奮したようににじり寄って来る。
「君たちっ!ちょっと時間もらえないかな!?」
「はあ?」
不躾な質問に、二人は顔を見合わせる。
立ち塞がったのはカジュアルながらもセンスの良い服に身を包み、メイクもバッチリの20代半ばと思しき女性だ。その後ろからは大きなカメラをたすき掛けに2個も下げたもう少し年上に見える男性が駆け寄ってくる。
「私たち、こういう雑誌をつくっている者なんだけど」
そう言って差し出された名刺の肩書きに、先に反応したのは岳人だった。
「うそ!この雑誌毎月読んでます!」
それは岳人が好んで読んでいるファッション雑誌の名だった。
「ああ、いっつもチェック入れとるやつやな」
空を見上げてちょっと考えた末に、忍足は思い出して手を打った。忍足の部屋に遊びに来る時岳人がよく手にしていた雑誌だった。
「それなら話が早いわ!」
瞳を輝かせた女性に、岳人も彼女たちの目的に気がついた。
「もしかして、あの特集のモデルですか!?」
「そうなの!」
興奮に上ずった声を上げる岳人につられるように、女性も一段と大きな声を上げる。
「今日はホントいい子がいなくて参ってたんだよ。是非彼にモデルになってもらえないかな?」
落ち着いた声でお願いする男性に、忍足は「は?」と間抜けな声を上げる。忍足一人が事の次第を把握できていないのだ。
「侑士っ!この雑誌って毎月街で見かけたカッコいい男子のファッションチェックをする特集があって、人気あるんだよ!お前のこと撮りたいって!」
まるで自分の事のようにはしゃぐ岳人に、忍足は「ええ…?」と渋い顔をする。
「ダメかしら?」
お願い!と両手を合わせる女性に、忍足は何とも情け無い顔になる。
「そーゆーの興味ないしなぁ」
むしろこれ以上目立つことをしたくないのが本音である。ただそれを言ってしまっては嫌味な男になってしまうので、やんわりと断りたいのだが…。
「やれよ侑士!こんな機会なかなかないぜ!?」
「がっくん…」
分かっているのか分かってないのか。
地元だけでも押しかける女性の対処に困っているのに、これが首都圏地域にまで広がったらどんな騒ぎになってしまうのか。そう思って忍足は溜息をつく。
今はこんな事を言ってる岳人だけれど、押し寄せる女性に囲まれた侑士を見て誰よりも不機嫌になるのはきっと岳人本人なのだ。ようやく手に入れた岳人とそんなつまらない事で諍いを起こしたくないのに…。
忍足のそんな心配に岳人は全く気づいていないようだ。
見上げる瞳は期待にキラキラと輝いて、もうとっても断れる空気ではない。
カメラマンは撮影の準備を始めてしまった。
「…わかった。やりましょ」
「やった!」
忍足の諦めたような返事に、岳人と雑誌記者の女性は揃って歓声を上げる。
「でも、一つ条件があるんや」
「何かしら?」
尋ねる女性に、忍足はにっこりと笑って答える。
「がっくんと一緒に写るんだったらエエよ?」
「はあ?」
ぐいっと引き寄せられて、ポスンと忍足の胸に抱きとめられた岳人は、何とも間抜けな声で聞き返す。
「侑士、その特集って男一人で写るんだよ、だから…」
それは無理だと言い切ろうとした岳人を、女性は軽く手を上げて制した。
「OK!こちらも無理にお願いしてるんだから、それくらいの条件は飲むわ」
かくして、二人は仲良く1枚の写真に収まり、大人気のティーン雑誌に載ることとなったのだ。
そして数週間後。出来上がった雑誌が郵送されて来たのは良かったのだが…。
「あれ?みんなお揃いで、何やっとんの?」
かなり場違いな暢気な声で扉を開けたのは忍足だ。
委員会で遅れた忍足は、当然みんな練習を始めていると思っていたのに、そこには主要メンバーがひしめき合っていた。
「…な、なんやの?」
しかも、なんとも穏やかならざる雰囲気である。
一斉に振り返る視線の全てが、とても同情的な色を秘めている。
その中央で一人、忍足を振り返らないのは岳人だけだ。
とっても嫌な予感が忍足の背筋をざわざわとさせる。
けれど、ちょっと考えてみても何を仕出かしたのか思い出せない。だいたいが沸点の低い岳人だから、有り得ない理屈で切れられるのは日常茶飯事だが…。
「もう、侑士とは出掛けない…」
耳がキーンとしそうな沈黙の中、ようやく声を発したのは岳人だった。そしてそれは、聞き捨てならない言葉だ。
「はい?」
忍足は自分の耳を疑って、聞き返す。
すると、ふるふると肩を震わせた岳人は、くるりと忍足を振り返るとびしっと指さした。
「お前とはもう出掛けないって言ったの!くっそー!いい恥さらしじゃねえか!」
そして、先ほど投げ捨てた雑誌を憎憎しげに踏み付けた岳人は、ユニフォームに着替えもせず、足音も荒く忍足の横を歩き過ぎる。
「え!?がっくん部活は!?」
「うるさい!!」
返って来たのは、怒りに震える怒鳴り声と、叩きつけるように閉められた扉の音だった。
「一体何やの…?」
鼻先で閉ざされた扉に、忍足は呆然と呟く。
そのまま岳人を追いかけたいのは山々だが、事の真相も知らずに追いかけたのでは何の解決にもならない。
溜息を落とし残されたメンバーを振り返れば、「ん」と宍戸が手にした雑誌を差し出す。
「…ああ、あの時の雑誌やないか。これが…?」
「とにかく見てみなって」
答えを求めるような忍足に、滝は丁寧に例のページを開いてやる。
そこには1ページを丸々使って、忍足と岳人の写真が載せられている。
「…成る程。うまい事やられたわ」
忍足は自分の考えの甘さに、大きく溜息をついた。
あの日、写真を撮りたがる記者と喜ぶ岳人を断りきれず、忍足が出した妥協案「岳人と二人なら」というのは、忍足なりの苦肉の策だったのだ。
岳人をがっかりさせたくない。そして、後々の面倒も避けて通りたい。
それならば、「恋人」である岳人と写ってしまえばいい。
恋人がいる事をアピールすると共に、折角の機会だからこっそり岳人を狙っている男も牽制してしまおうと思ったのだ。
「てめぇはいつも詰めが甘いんだよ」
苦虫を潰したような表情の忍足に、跡部は呆れたように言う。
そう、二人の載ったページには、まるで忍足と岳人が仲の良い兄妹か親戚のような煽り文句が添えられているのだ。
確かにあの時、わざわざ恋人同士だと書き添えるようにお願いはしなかったが…。
「どう見たって、兄妹には見えへんやろ?何だってこんな…」
「だから詰めが甘いんだよ。お前の考えなんてお見通しだったんだろ?その記者はよ」
「…くそ」
これでは岳人も怒る訳である。
ましてやあの日は、岳人的にはちょっと背伸びをしてヒールの高い靴を履いたり、戸惑いながらも自分から腕を絡めてきたり、本当に珍しく恋人らしい時間を過ごしていたのだ。
不幸なことに忍足の異常なまでの大人っぽさがアダとなった。
「忍足が怒って乗り込んだところで、正直『本当に兄妹かと思ったの、ごめんなさいね』って言われたら責められないくらい老けてるもんなお前…」
「…老けてるいうなや」
宍戸の容赦ない言葉に忍足はがくりと肩を落とす。
跡部の言うとおりだ。詰めが甘かった。
忍足は手にした雑誌を静かにテーブルに置くと、すっかり冷め切った紅茶に目をやる。
岳人は一口もくちをつけずに飛び出してしまった。そして、窓の外のテニスコートにももうその姿は無い。きょうは部活を休む気だろう。
こういう時は闇雲に追いかけて捕まえても逆効果だ。3年近い付き合いでそれはもう知り尽くしている。
最近ようやくそれらしい雰囲気になって、見せ付けるように手をつないでも殴られることが無くなったのに、折角の苦労が水の泡だ。岳人のこと、一度臍を曲げたらいつ機嫌が直るのか知れない。
「…跡部、頼まれてくれへん?」
大きく溜息をついてからそう切り出した忍足は、ソファに腰掛ける跡部をゆっくりと振り返る。
「…」
跡部はそんな忍足を面倒臭そうに見据える。
「もちろん礼はさせてもらうしな」
「…フン。まあ、テメエに恩を売っとくのも悪い手じゃねえな」
そう言って鼻で笑い合う二人を、他のメンバーは不思議そうに見守っていた。
そして、翌月。
「あれ?今日が発売日のはずなのに…」
岳人はコンビニの雑誌コーナーを何度も見回しては首を傾げる。
先月のゴタゴタなどすっかり忘れ、例の雑誌を探しているのである。
「…滝」
「うん…」
岳人に付き合って雑誌を探しに来た二人は、外で自分たちを待つ忍足と跡部に目を向けた。
すると跡部は呆れたように肩を竦め、忍足は唇の前に人差し指を立てて「しー」とジェスチャーする。
「そこまでするか?普通」
「ま、あの二人だし…」
やり過ぎの報復に、宍戸と滝は馬鹿馬鹿しくなって顔を見合わせる。
「あれー?何で無いんだ?」
諦めきれずに何度も同じ棚を探す岳人。
「そうだ、岳人。あの雑誌廃刊になったってテレビでやってたぜ?」
「嘘!?」
「そうそう。そういえば言ってた」
驚いて振り返る岳人に、宍戸と滝は頬を引き攣らせながらわざとらしい演技をする。
「えー…。人気あったのに何でかなぁ」
がっかりしたような岳人は、それでは仕方が無いと唇を尖らす。
「…きっとどこかの実力者の機嫌を損ねちまったんだろ」
「そうなのか?」
宍戸の言葉に、良く分からず首を傾げる岳人。滝はそんな岳人の手を取ると、さっさと外へ連れ出してしまう。
「まあまあ、気にしないで。他に楽しい雑誌は沢山あるから!」
「え?あ、うん」
外に出た滝は、岳人の背中を勢い良く押し出す。そしてその身体は、待っていた忍足の胸に勢い良く飛び込んだ。そのままぎゅっと抱きしめられる。
「え?何?どうしたの?」
さすがに皆がいる前でここまですることは珍しい。岳人は一瞬焦って抜け出そうとしたけれど、力強い腕に阻まれてしまう。
「がっくん、帰ろうか?」
「…あ、ああ」
そして満足そうに微笑んで手を取る忍足に、岳人は首を傾げながらも頷いた。
「…何か、今日皆変じゃねえ?」
岳人の言葉に、忍足以外のメンバーは苦笑いを浮かべる。
忍足だけは、上機嫌で細い肩を抱き寄せるのだった。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
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