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注意!女体モノです。
苦手な方はご注意を。

日吉語り風。

プールサイド6(青学&氷帝オール)
~女体シリーズ12~

日が沈むと、昼間の暑さが嘘のように、そよぐ風が涼しく感じる。
跡部邸の中庭では、主の帰りも待たないまま、日吉と樺地が鉄板の上に切った野菜や肉を並べ始める。
「宍戸さん遅いなぁ…」
男子厨房に入らずを実践する鳳家の長男は、慣れない手つきで、鉄板の品を焦げないようにひっくり返しつつ呟く。
「…じき戻ってくるだろう」
戻ってこない理由が分かっている日吉は、その理由に気づかない鳳に同情しつつも、そんな素振りはチラリとも見せずに素っ気無く言い放った。
着々とバーベキューの用意をする2年生の横では、準備とは名ばかりに、先輩達が花火を広げて楽しそうな声を上げる。
「わっ、すげー!この花火建物3階分の高さまで火花が上がるって!」
想い人の楽しそうな声に、日吉はその表情を穏やかに緩めた。
そんな日吉の表情を見逃さなかった樺地は、少し悲しそうな瞳を向ける。
「…大丈夫だ。心配するな」
日吉は苦笑いで、誰より繊細な男の、誰より逞しい肩をポンっと一つ叩いた。
「…ウス」
樺地はそうとは分からないくらい小さく微笑んで、その視線を手元に戻す。そして、慣れた手つきで野菜を切り続ける。
日吉は親友の遠慮がちな優しさに目を細めて、胸の中でそっと感謝する。
けれど実際、日吉は樺地が心配するほどには落ち込んでいない。
そう短くない期間片想いしていた先輩は、とうとう胡散臭い眼鏡の先輩と結ばれてしまった。けれど想い人が彼の隣で笑っている姿は、胸を締め付けるどころか日吉の心をふんわりと優しい気持ちにさせる。
宍戸の帰りを待ち続ける彼も、いつかその時が来たら自分のように穏やかな気持ちでいられればいいのだけれど、と。鳳の一途な瞳に、つい要らぬ心配をしてしまう。
そうしてしばらく交わす会話もなく自分の仕事を進めていると、後ろから賑やかな声が近づいてくる。
「わーおいしそう!いい匂い~」
今日はお客様だからと、手伝うと言ってくれた青学メンバーには屋敷内で寛いでいてもらっていたのだが、肉の焼けるいい匂いに誘われて皆ぞろぞろと庭まで出てきたようだ。
「そろそろ声をかけようと思っていたところです。いい感じに焼けてきたんで、是非召し上がってください」
そう言って微笑みながら、鳳は素早く取り皿を配る。
「やったー!おっちびー、おいしそうだにゃ」
「そうっすね」
待ってましたとばかりに、菊丸と越前が丁度よく焼けた肉に箸を伸ばす。
「英二、ちゃんといただきます言って!」
まるでお母さんのように注意しながら、大石は休まず準備を続ける日吉たちに軽く会釈する。
「じゃ、遠慮なくいただきます」
「ええ、どんどん食べてください。跡部さん、これでもかってくらい食材用意ちゃったんで。残すのも何だし」
日吉が微笑めば、手塚がそう言えば…と辺りを見回す。
「肝心の跡部がまだのようだが、待たなくていいのか?」
試合会場で何度も見せられたあのパフォーマンスを思えば、当然派手な挨拶の一つでも披露しそうなものだが…と。眼鏡の奥の瞳が語る。
「跡部だって少しは休憩させてあげなきゃ。今日1日中動き回ってくれてたしね」
そこにすかさずフォローを入れるのは不二だ。
こちらを伺っていた滝、そして忍足の視線に気づくと、不二はにっこりと微笑んだ。
二人の不在の意味に気づいている滝と忍足も、いたずらな瞳で微笑み合う。
「鬼の居ぬ間に何とやらや。今のうちに寛いどきましょ」
忍足の言葉にどっと笑いがおこり、花火を準備していたメンバーもその手を休めて取り皿を手に集まった。

競うようにして肉にかぶり付く菊丸と越前に、大石と海堂は困ったように顔を見合わせる。
「いくら遠慮なくったって、なあ?」
「そうっすね…」
互いの恋人の姿に、二人は苦笑する。
けれど、準備した側からすればそれは嬉しい光景だ。氷帝2年メンバーは微笑ましい光景に笑みを零す。
「がっくん?野菜も食べなきゃあかんよ?」
「…わかってる」
大好きな肉ばかりに手が伸びるのに気づいた忍足は、恋人の皿に野菜を放り入れる。
「何でも食べなきゃ、大きくならへんよ?」
「今更か?まだ背伸びるかなぁ?」
「…いや。胸が」
「!?」
耳元で囁かれた忍足の言葉にボッと頬を染めた岳人だが、すかさずその尻を膝で蹴り上げる。
「余計なお世話だっつーの!」
「痛っ!女の子がそんなことしちゃあかんよ~」
落としそうになった皿を慌てて持ち直し、忍足は情け無い声を上げる。
その隣では、ジローが香ばしく焼けたフランクフルトを手に滝を振り返る。
「ねーねー滝!俺のね、これより一回り太いくらいだよ!」
「…!」
その言葉に滝が口にしたジュースを噴出しそうになって、ごほごほと咽込んだ。
「ジロー最低」
岳人は冷たい視線を投げながら、滝の背中をさすってやる。
「ほう、じろたん。なかなかエエもん持っとるな?」
忍足まで一緒になって、手にしたフランクフルトをマジマジと眺める。
「「だから下品だってば!!」」
滝と岳人は顔を真っ赤にして怒鳴り飛ばした。

賑やかな面々を眺めながら、日吉は珍しく自分の頬が緩んだままなのに気づく。樺地も鳳もそれは同じようだ。自分たちが準備したものをこれだけ喜んで楽しんで貰えればやった甲斐もあるというものだ。
後は、主が戻るのを待つだけ。

「よう、お前ら。楽しんでるか?」
パチンと指をならして注目を集めると、無駄にイイ声が響き渡る。
どうして態々指を鳴らす必要があるんだか…。彼から部長職を引き継いだ日吉には、とっても真似できそうもない。
「わーうまそう!」
跡部の隣に寄り添っていた宍戸が歩み寄ると、鳳は蕩けたような笑顔になって皿や飲み物を手渡す。
「宍戸さん、お肉好きですよね?俺取りますから!」
「おう。サンキュー」
宍戸が水着の上から羽織っている上着が跡部の物であるとか、今まで二人きりで何をしていたのかとか、大好きな宍戸が目の前で微笑めば他の諸々には考えが及ばないらしく、鳳は嬉しそうに宍戸の面倒を見る。
幸せなヤツ…。いや、不幸せなヤツ?
考えた末に日吉は「どっちでいいや」という結論に達して、手にした皿を跡部に手渡す。
「お先にいただいてます」
「ああ、色々面倒かけたな」
それが、準備をしてくれたことに対する言葉なのか、二人が何処で何をしていたのかを上手く誤魔化しておいたことに対してなのかは分からなかったが。

あれだけあった食材がこうも綺麗に片付くものかと。
小一時間も経てば、用意した肉や野菜は粗方なくなっていた。食べ盛りの中学生の胃袋も正確に読み切った跡部に日吉は感心してしまう。
何だってこうも完璧なんだか。
尊敬を通り越して殆ど呆れてしまう。たった一つしか年は離れていないのに、何をやらせても完璧な男だ。
けれどそんな完璧な跡部も、想い人の前ではただの男だ。
食事の片付けもそこそこに花火を広げ始めた宍戸の隣で、跡部の表情は笑ってしまうくらい緩みきっている。
「俺これやっていい?」
線香花火を片手に振り返る宍戸の腰に腕を回しながら「随分地味なのを選んだな」と、跡部は苦笑する。
「いいじゃねーか。ほら、あそこ!灯りが無いところの方が綺麗だから」
計算しているのか、いないのか。きっと後者だろう。まるで二人きりになりたいのだと誘っているような宍戸の台詞に、跡部はガラにもなく頬を染めた。
肩を寄せ合って微笑み合う跡部と宍戸。
少し離れたところでは、岳人を中心に打ち上げ花火を楽しむ面々。
「っバカ!花火こっち向けるなよ!」
次々に色を変える花火を片手に走り回っているのはジローだ。跡部は文句を言いつつ、宍戸を庇うように抱きしめた。
「何か、こういうの、いいな」
「ウス」
日吉の呟きに、樺地は大きく頷く。
そんな二人の頬を優しく撫でる風は、もう秋の香りを漂わせていた。


 

10万打感謝企画これにて終了です。企画ってわりにほのぼのオチですんません。かなり地味目な終わり方です(笑)

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