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注意!女体モノです。

苦手な方はご注意を。


プールサイド3(塚不二)
~女体シリーズ9~

「ねえ、手塚?泳ぎ教えてよ」
掛けられた声に振り向くと、太陽を背に不二が微笑んでいる。
眩しくて仕方が無いのは、もちろんギラギラと照りつける日差しの所為でもあるが、俺的には不二の水着姿が魅力的過ぎる方が大部分を占める。
「…ああ、構わないが」
何でいつもこんな素っ気無い言葉しか掛けてやれないのかと、言った後に酷く後悔するのだが、不二はそんな俺の言葉にも嬉しそうに微笑んで、つま先からそっとプールの中に入って来る。
「結構冷たいんだね」
さっきまでプールサイドで宍戸と話しこんでいた不二には、少々水が冷たく感じるようだ。
肩まで水に浸かり、自分の身体を抱きしめるようにして小さく身震いする。
「…すぐに慣れるだろう」
本当は「大丈夫か?」などと言って抱きしめてやりたいのだけれど、これだけ外野がいたのではとても出来そうも無い。二人きりだって、その肌に触れるには相当の覚悟が必要なのだから。
「そうだね。あ、早速慣れて来たよ」
しばらくじっとしていた不二は、そう言うと身体の力を抜いて、華奢な両腕を水の流れに任せながら一歩ずつ近づいてくる。
不二は、ここにいる誰よりも透き通るような白い肌をしている。淡いピンクの水着とその肌の色がプールの水を通してゆらゆらと揺れる様は、何だかこう、胸の奥をざわめかせる。
「どうかした?手塚」
「いや。何でもない」
小首を傾げるいつもの仕草さえ、俺は真っ直ぐ見ることができない。

「そう言えば、不二。泳ぎを教えろと言っても、十分泳げるじゃないか」
不二が声を掛けてきてくれた嬉しさに舞い上がってすっかり忘れていたが、確か体育の授業で泳いでいる姿を見たことがある。プールを半分に分け男女別れての授業中だったからあまりじっくり見つめる訳にもいかなかったが、さり気無さを装って盗み見た不二は、流れるような綺麗なクロールで泳いでいた。
「あ!もしかして手塚は知らないんだ!」
その時、俺たちの会話を聞いていた菊丸が、ザバザバと水をかき分けて話に入ってくる。
「…知らない?何をだ?」
菊丸は最近、不二を俺に取られたとでも感じているのか、俺の知らない不二の事を自慢気に話してくる。自分は大石という立派な恋人がいるのに、不二にとっての一番も自分であって欲しいなどとは何て我侭なヤツだ。
俺はどうも、外見から不二に対してあまり執着がないように思われているようだが、それは大きな間違いだ。
本当は不二を独り占めしたいと思っているし、誰にも見せないように閉じ込めてしまいたいくらいの執着を持っている。
けれど、そんな醜い自分を不二にだけは知られたくないから必死に隠しているのだ。
だから、何てこと無い素振りで菊丸に問い返した。
そんな俺に菊丸が口を開こうとするが、それを不二は照れたような拗ねたような顔をして止めようとする。
「バカだにゃ~、不二。どうせ分かっちゃうんだからいいじゃん。教えてもらうんだろ?」
「そうだけど…」
あまり見ることのない、頬を染めて言いよどむ不二の姿。
こんな不二を見せてくれたことは、菊丸に感謝しなければいけないかもしれない。
けれど折角のこんな機会に、菊丸に乱入されたのでは不二と碌な会話も出来なくなってしまう。そろそろ退場願わねば。
どうにかして二人きりになれないかと思案し始めると、今まで静かに微笑んで事の成り行きを見守っていた大石がさっと菊丸の腕を取った。
「英二、不二のことは手塚に任せよう。俺は英二と二人で過ごしたいな」
「…大石」
日ごろ尻に敷かれている男が強く出ると、効果は倍増だ。菊丸はぽーっとしたような瞳になって、大石の胸に抱き寄せられた。
「悪いね、手塚」
そう言って背を向ける大石は、去り際に軽く片目を閉じて見せた。
全く良く出来た副部長だ。

喧しい菊丸が遠ざかり、氷帝メンバーも多少外しているのかプールは先ほどより広々としている。
「とりあえず、泳いでみるか?」
横で立ったままの不二に目をやれば、不二は小さく頷いた。
「…あのね、笑わないでよ?」
プールの端まで下がった不二は、俺の表情をうかがうように、こっそりと見上げて恥ずかしそうに言う。
「笑うものか。それを直すために俺が教えるのだろう?頑張ろう」
「うん」
不二は覚悟を決めたように頷くと、ゆっくりと水に浸かり、そして大きく壁を蹴って泳ぎだした。

予想以上に美しいフォームだった。何の無駄も無いクロール。
早く泳ぎたいが為に我武者羅にバタ足をするわけでもないのに、その身体は滑るようにして前へと進んでいく。静かな水しぶきにゆったりとしたスクロール。それなのにすーっと前へと伸びる姿は、そう、まるで人魚のようだ。ここがまるでひっそりと静まり返った無人の海か湖か、そんな錯覚さえ覚えそうだ。
そうやって、何度か水をかきプールも半ばに差し掛かった時。
「…!?」
今まで水と一体となったようにのびのびと泳いでいた不二が、急にバチャバチャと乱れた水しぶきを上げて沈んだ。
「不二!」
このプールはあくまでトレーニング用なのか、跡部の身長に合わせたせいなのか、かなり深くなっている。恐らくあの場所で止まったら不二は足が届かないだろう。
「大丈夫か、不二!?」
俺は急いで傍に寄り、沈みかけた不二の身体を抱き上げる。
「だ、大丈夫」
ゴホゴホとむせながら俺に抱きつく不二はとても苦しそうだ。
俺は片腕で不二の身体を支えながら、もう片手で、濡れた前髪を掻き分けてやった。
「いつもの、ことだから」
少し水を飲んでしまったのだろう。咳の止まらなくなった不二を俺はプールサイドまで引き上げる。
そのままペタリと座り込んでしまった不二。
咳は収まったが、その余韻で涙が滲み、目は赤くなっている。
先ほど菊丸が言おうとしたことがようやく分かった。
「成る程。泳げるが息継ぎが出来ないという訳だな?」
俺の言葉に、不二の眉が困ったように垂れ、恥ずかしさを隠すように俺の胸元に自分の額を押し付けた。
「もー、どうしても出来ないんだもん」
こんな拗ねた口振りで俺に話すのは初めてのことだ。
いつも賑やかな菊丸の隣で一歩引いて、微笑んでいる不二。
決して自分の意見を持っていない訳ではないが、前へ前へとアピールすることがない不二は、他の同級生に比べるとかなり大人びて見えていたのだが。
「大丈夫。練習すればすぐに出来るようになる」
何でも器用に人並み以上にこなせてしまう不二が、こんな表情も持っていたとは。
俺は、つい状況も忘れて座り込む不二を抱きしめてしまう。
「…手塚!?」
「とりあえず、一度休もう」
俺は、周りをきょろきょろと見回して頬を染める不二を、何も言わずに抱き上げてしまう。
「ええ!?」
慣れない横抱きに不二が慌てて俺に抱きつけば、プールの中から下世話な口笛が鳴った。
「やるにゃ~お二人さん!」
菊丸だ。そして、少し遠い場所からも歓声が沸く。
「何なに!?手塚と不二も付き合ってるの!?」
後輩の鳳と日吉を踏みつけるように水面ではしゃぐ芥川が、楽しそうにこちらを指差した。
俺はちらりと視線を向けると、つい我慢が出来ずに口の端がにやけてしまう。
「わっ!手塚が自慢げに笑った!羨まC-」
芥川の賑やかさに氷帝メンバーもこちらに注目したので、不二はいよいよ真っ赤になる。
「どうして、こんな」
不二は照れくさいのもあるが、酷く戸惑っているようだ。確かに俺は人前でこんな事をしたことがない。二人きりの時だって、そっと手を握って口付けるのが精一杯だ。
「不二が可愛いからいけない」
「…!?」
俺の言葉に、不二は何も言えなくなってしまう。
そんな不二の額にそっと口付けて、俺は誰の目も届かない場所を目指す。
もう、自分を止められそうもない。
俺はそれを、熱い日差しと眩しい不二の水着姿の所為にしてしまおうと思う。

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