誕生日は危険な香り～EMERGENCY～（千神） 2015/08/25 (Tue)

お久しぶりです。
何と2年半ぶりとか…。びっくりです。ご無沙汰してました。

久しぶりなのに、メインCPでない千神ってどうよ。
でも間にあって嬉しいです。
神尾、誕生日おめでとう！

誕生日は危険な香り～EMERGENCY～（千神）

右頬の派手な擦り傷。
まだ鮮やかな赤が滲むそこへ圧しつけるように貼られた絆創膏に、千石さんは眉をしかめた。
…乱暴だなァ、とその目は語るけど言葉にはしない。
その代わりに、今の雰囲気には似つかわしくないポップなメロディを口ずさむ。

―　絡まれ　やすいのは　顔のデザインのせい
　　またかよ？やる気かよ？待てよ今　ジャケ脱ぐから　―

「知ってる？この、…っ！」

この曲知ってるかって？
言い掛けた唇の端を、俺は無造作に脱脂綿で拭った。
大量に含ませた消毒液の苦さに閉口して、千石さんの言葉は尻切れトンボだ。

知ってるよ。
最近千石さんが良く聴くアーティストのアルバム。
透明感のあるハイトーンヴォイスが、千石さんの歌声と重なって印象に残ってたんだ。

「絡まれやすいのは、顔のデザインってより、その髪と制服の色の所為なんじゃないの？」

何で、夏休み中にわざわざ制服着て来たの、とか。
どこ通って来たらこんな傷作るような喧嘩売られるの、とか。
聞きたい事は沢山あるけどさ。
とりあえず。

「…よかった。見た目ほど酷い怪我じゃなくて」
俺の言葉に、千石さんは「…ん」と小さく頷いた。

「ごめんね、神尾くん。せっかくの誕生日なのに」
俯きがちに見上げるその目が、飼い主に叱られた犬みたいでさ。

「…いいよ」
会いに来てくれただけで嬉しい、って。
言えないのが俺のダメな所なんだ、きっと。
だけど、千石さんはにっこりと微笑んで俺の背を抱き寄せる。

包み込むのは、埃っぽい制服と消毒の匂い。
…何だか、ちょっと危険な香り。
でも、幸せなんだよね。

さかい○う「EMERGENCY」より