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!注意!
R-18です
・長いです

2008.11発行(完売) いちごさんとの合同誌「恋情すぱいらる」より。

こちらもほぼ手直しなし。PC入れ替えを機にデータの保存も兼ねてUPします。
いちごさん、UPをお許しいただきどうもありがとう!

不動峰 嵐の恋情フェスティバル(ベカミ)


廊下の向こうの方で、ざわめきが大きくなった。
今日は不動峰の文化祭で、いつもとは違う盛り上がりを見せてるのは事実だけど、ちょっとそれだけじゃない雰囲気だ。
「…ほら、来た」
深司が嫌そうな顔をして振り向く。
「そんな事言ったって…」
だって、俺呼んでないし。それに、アイツの学校みたいにチケット制じゃないから、誰だって入って来られるんだよ。
だから、これからとんでもない騒ぎになったって、それは俺の所為じゃないぜ?
「神尾アキラはいるか?」
女子の歓声の中、良く通る声が尋ねる。
氷帝学園3年、跡部景吾の声だ。
「あ、神尾くん?それなら、そこに…」
隣のクラスの女子が、こちらを振り向こうとする。
「っやべ!深司!」
俺は、咄嗟に深司の手を取った。
「おい、」
深司は迷惑そうな声で、それでも取りあえず俺と一緒に駆け出した。
こんなんで、逃げられるとは思わない。でも、昼過ぎの出番までは会う訳にいかないし、出番を知られる訳にもいかないんだ。
「そんなのすぐにバレるよ、きっと」
「分かってるよ…!」
深司の言葉に、俺は舌打ちする。
でも、パンフレットに生徒の名前は一々書いてないし、俺が何組か知らない跡部に、そんな事調べられるはずはないんだ。
そう信じでもしなきゃ、怖くって…!
走り去る背中は丸見えだったろうけど、俺は一度も振り返らなかった。

走り帰った教室では、これまた怖い奴らが待っていた。
「神尾、遅い!」
「ご、ごめん…」
クラスメートの女子は、異様に盛り上がっている。片や男子は皆して冴えない表情だ。
「ほら!衣裳合わせて無いの神尾だけなんだから急いで!」
「お、おう」
そう。俺は午後にやるクラスの出し物のために、ここへ戻って来た。
本当はすっごく、すーっごく逃げ出したかったんだけど、みんなやってるし、裏切れないよな。
裏方担当の男子も、一様に同情の表情だ。
「はい、まずこれね!」
「…あァ」
手渡されたのはあまり大きくもない布切れ。ストライプの模様が入った四角いそれは、スカートだ。いわゆるミニスカートみたいな?
これが、今日の俺の衣装。
そう、俺のクラスは午後一発目に、体育館で「ファッションショー」をする。
俺は、そのショーにスカートを穿いて出演するんだ。

事の始まりを、男子は一人として知らなかった。
女子の家庭科の授業中、スカートを作るという課題が出た時に、不意に誰かが思いついたらしい。
課題の提出時期と文化祭の時期が近いから、いっそのことそれを使って出し物をしてしまえという一石二鳥だ。俺たちにとってはいい迷惑だけど。
女子がさ、自分の作ったスカートで自分がファッションショーに出れば問題無いんだよな。なのに、それじゃ面白くないからって。何だか先生に事情を話してOKをもらったらしい。
またさ、家庭科の先生が大学出たての若い先生でさ。面白がって協力してくれちゃったらしいんだよな。
俺達はまだ文化祭の事なんて考え出す前から、いきなり採寸されて、挙句絶対太るな!なんて無茶言われたんだ。
まあ、ここ2か月でそんなに体型が変わらなかったから、怒られはしなかったけど。でもなァ…。
「やっぱり、俺出るの?」
「神尾~、しつこい!」
「だってさ。もっと可愛い奴とかいるじゃん?佐藤とか、品川とかさ」
俺の言葉に、女子は呆れたように溜息を吐いて、俺の背中を思い切り叩いた。
「もうあんたのサイズで作っちゃったんだから!ほら、穿いてみて」
「…分かったよ」
渋々返事をしたら、女子は満足げに頷いた。そして教室を出て行く。
残されたのは、出演する奴や裏方など、男子のみだ。
「神尾、諦めようぜ」
同じくスカートを手渡されたクラスメートが項垂れて言った。手にしたスカートはひらひらの花柄ロングスカートで、俺はまだシンプルでボーイッシュなスカートだから良かったなって思ってしまう。ミニだけど。
「ああ、もう一生の恥だ。絶対卒業アルバムとかに載っちゃうんだぜ」
泣きごとを言うクラスメートに、もらい泣きしそうになっちまう。
「せめてなァ…」
跡部にだけは見られなきゃいいんだけど。

跡部とは、全国大会が終わってからやたらと会う様になった。いくら同じ東京地区といっても、区が違うから会う機会なんて今までなかったのに、何故だか最近やたらと俺の前に現れる。
しかも、すっげえ変な事を言うんだ。
「俺と付き合え」って。
オカシイだろ?おかしいよな?
思わず「何処へ?」と答えた俺に罪は無いよな?
平たく言えば「言い寄られてる」ってことなんだろうか。
でもさ、氷帝学園の跡部ともあろう人がだよ?こんなぽっと出の公立中学校の生徒に何で興味持ったんだろ?しかも、あんな出会い方だったのにな。
女子だったらなァ。こっちからお願いするのに、「つき合って下さい」って。なのに男じゃなぁ。
そんな跡部が文化祭って機会を逃すはずがないって言い出したのは深司だ。そして案の定彼は現れた。
「…跡部と、忍足さんもいたな」
二人の長身は際立っていた。
そんな事を呟く俺の前には大きな鏡。そしてスカートを穿いた俺の姿。
「…神尾。その足の細さは何だかすっごくムカつくわ」
確認に入って来た女子が顔を顰めて言う。
「…知るかよ」
男から見れば、女の子は多少肉付き良い方が可愛く感じるもんだけど、女子の感覚とは大分違うようだな。
「まあ精々盛り上げてもらわなきゃね!」
「ったく…」
勝手なこと言うよな、女子は。

昼食を終えると、すぐに体育館に集合だった。
ショーに出るのは6人で、昔のアイドルの懐メロに合わせて簡単な振り付けがあったり、唇には色つきのリップを塗られたりと、とんだ笑いものだ。
「あ。俺スネ毛剃ってねえや」
一人がぽつりと呟いて、俺たちの間に何とも言えない重苦しい空気が漂うけれど。
「さあ、始まるわよ!」
元気な女子の声とともに、舞台の幕が上がってしまった。

「うわ…」
回れ右して帰りたくなる。
だって、たいして大きな舞台じゃないし普通の体育館だからさ、照明なんて凝ったこと出来ないじゃん?スポットライトなんて当たって無いから、用意されたパイプ椅子に座って俺達を見てる人の顔が、意外とはっきり見えるんだ。
「…神尾!」
「わ、ごめ」
頭が真っ白になって、立ち位置間違えた。
本番になってもう諦めたのか、他のメンバーはちゃんと音楽に合わせて振りを付けてる。
俺だけやらない訳にはいかない。あー、何でこんな事。
渋々、女子が考えた振り付けを、特訓されたとおりに踊ってたら。
「神尾ー、可愛い!」
「っアイツ」
深司のヤツ滅多に大きな声出さない癖に、嫌がらせの為だったらデカイ声出すのな、最低だ!
「神尾くーん、素敵よ!」
「杏ちゃん…」
にこにこ笑って手を振る横では、橘さんも苦笑しながら見守っている。
うう…、最低だ。
俺が赤くなったり青くなったりしてる内に、音楽が変わった。
よ、良かった。一番苦痛だった昭和のアイドル風振り付けが終わった。
次は某有名映画音楽に乗って、一人ずつスカートの紹介だ。一度袖に引っ込んで、順番に舞台の端から端へと歩くんだ。その間にターンしたりポーズ決めたり、それぞれに合った(?)振り付けを女子が勝手に決めてくれた。
俺はまだマシな方かな。格好がボーイッシュだし、別に男がやっても可笑しくないポーズだ。まあ、それなりに恥ずかしいけど。
俺は4番目だから少しゆっくり出来る。でも、さっさと終わらせてしまいたいのが本音。
「わァ、小笠原のやつ、ノリノリじゃねえ?」
俺の次に歩く奴が、肩を突いて言う。
「本当だ。散々ボヤいてた癖に」
「でも確かに…」
最後を歩く奴も、俺の後から舞台を覗きこむ。
「どうせやるなら、恥ずかしがってるより堂々と、笑いを取るくらいがマシだよな」
「お前、男前だな…」
フリフリピンクのスカート穿いた奴に言われると、何だか勇気が出るぜ。
「おい、神尾次」
そうだよな。どうせやるなら堂々と!恥ずかしがってる方がかえって見っともないや。
「行ってくる!」
俺は、勢いよく飛び出した。

テンポの良い音楽は、ついつい歩調を速めてしまう。ゆっくり歩けって、女子に怒られたんだよな。
ゆっくり、ゆっくり…。
わざと大きく蛇行するように歩いて、手にしたカーディガンを弄ぶ。1回、2回とターンしてから、舞台中央で止まって…。
うん、やるよ、堂々とね。
でもさ、なんでこんな古臭いアイドル調から抜け出せないかな…。狙いか?狙いなのかな?!
俺はカーディガンを流れるような自然な動きで(って女子に叩きこまれた)肩に掛け、足を肩幅より少し狭めに開く。  
最初の練習でがばーっと大股開きしたら、中が丸見えだって引っ叩かれたんだよな。まあ、それはよくって。
で、組んだ両手を真っ直ぐ翳して指先で照準を定めて…。
そう、あれだよ。銃を打つマネ、あのポーズ。
小首をかしげてにっこり微笑み、バーン☆

…あ、あれ?何だか観客が騒々しい。
ん?ちょっと待て。見なれた姿が…。
げっ、嫌な奴見つけた!

俺が真っ直ぐ指を伸ばしたその先に、跡部が、長い脚を邪魔くさそうに組んで座っている。
ど、どどどどうしよう…。
俺は一瞬にして表情が固まった。
それに気づいたのか、舞台袖から女子が心配そうに見ている。
に、逃げる…はダメだよな。みんなに迷惑がかかる。
わっ!跡部が立ち上がった。
横に座ってる忍足さん、止めてよ!って、あれ?忍足さんってば、まるで俺に謝るみたいに両手を合わせた。
てことは、やっぱり?!
跡部の奴、ここまで来る気だ!
俺は、最後を早足で切り上げて舞台袖まで渡り切る。
「お疲れ、神尾くん。最後早足になっちゃったけど、良かったわよ」
「あ、ああ…」
返事をする声も上の空だ。
どうしよう。別に俺が逃げる必要はないんだろうけど、跡部の表情は明らかに不機嫌そうだ。
氷帝の制服ってだけで視線を集めるのに、跡部だと気づいた女子がもうざわざわとし始めている。知らない奴らだって、あの外見を見れば目で追ってしまうだろう。
ましてやエライ不機嫌で、早足だ。そして舞台に一直線。
体育館中の視線が、舞台ではなく跡部に集中する。そして、その跡部は一歩一歩、俺に向かってくる。…となれば。
「ごめん!俺抜ける!」
「え?!神尾くん!最後の挨拶残ってる…!」
「ごめん!」
本当にごめん!べつにショーを失敗させたい訳じゃないんだよ。むしろ逆で、俺がここに残ったら、それこそ大騒ぎになりそうな予感。
俺は、袖から目立たぬように舞台下に飛び降りた。
パイプ椅子は、舞台が見やすいように少し後ろから並べてあるから邪魔にはならない。何とかなりそうだ。
俺は、自慢のダッシュで駆け出す。
「神尾!」
すぐに気づいた跡部が、鋭い声で俺を呼んだ。
バカ!皆がこっちに注目するじゃないか!
舞台下を横切って体育館の端を走り、一番後ろの扉を目指す。そこから出ればプールの入口やら体育館倉庫の辺りに出られる。
しかし、女物の靴は走り難いな。女学生風でローファーだったからまだマシだけど、少しのヒールも慣れてないから転びそうになる。それにスカート、これって全然脚開かないな。
「神尾くん、危ないから走らないの!」
家庭科の先生が慌てて声を掛ける。
ごめん、先生。今だけ許して!ってか、先生がこんな事に賛成しなきゃ、こんな状況にはなってなかったと思うよ!後の祭りだけどな。
「神尾、てめェ、待ちやがれ!」
「わわっ」
流石に、普通の格好した跡部に本気で追いかけられたら、走りに自信がある俺でもちょっと逃げ切れる自信が無い。
仕方がない。ここは、在校生の知識を最大限に利用させてもらうぜ。
悪いな、跡部。

不動峰には体育倉庫が二つある。一つは現役の倉庫で少し大きめなんだけど、もう一つは部室棟の裏にある旧体育倉庫。
体育館からは少し遠くて、先生たちはもう使う気ないみたいなんだけど、生徒の間ではちょっと有名だ。
荷物を運び出して大掃除もしてあった所へ、何年か前に卒業した先輩が古いソファと小さなテーブルを持ち込んだ。一応鍵も、横にスライドさせる簡単なヤツだけど付いてる。
だから、扉が開かなきゃ使用中、開けば使用可と分かりやすい。
どうか、誰も使ってませんように…!
俺は、息を切らして扉を引く。
「…開いた!」
よし!早く入って、鍵を閉めちゃえ。
そうすれば、たとえ追いつかれても鍵さえ開けなきゃ捕まる事もない。まあ、あっちこっち走って巻いてやったしな。
万が一追いついたとしても、流石に扉を壊したりはしないだろう。
俺は、焦って震える手で鍵をスライドさせた。
あー、怖かった。これで、ようやく落ち着…。

「よお、随分遅かったじゃねえか」
「…?!」

肩を叩かれた。
あまりに驚いて、体が数十センチ飛び上がった気がする。
その手は振り返るまでもない、跡部のモノだ。
何で?何なの?軽くホラーだよ。
「ばーか。俺がここを知らないと思ったか?」
「…何で?」
跡部は、強引に俺を振り向かせる。そして、両肩に手を置いて俺の顔を覗きこんだ。
「俺様の下調べは完璧だぜ…って言いたいところだがな。実は、さっき体育館に案内してくれた生徒がな」
「…ここで一緒に休まない?的なお誘いを受けたと」
「正解。不動峰の女も結構積極的なのな?」
「…」
ああァ~俺ってば、自分から進んで二人きりになっちゃったよ。

「まあ、座れよ」
跡部はまるで自分の家のように、俺にソファを勧める。
ここで突っ立ってても仕方ないし、取りあえず言われるがまま腰を掛ける。
ここって、外見は旧体育倉庫ってだけあってボロいプレハブみたいな作りなんだけど、中は意外と綺麗なんだよな。
まあ、それだけひっきりなしに誰かが使ってるってことで…。やだな、何か生々しい想像しちまった。
「…手前はやっぱりバカだな」
「はあ?何だよ急に」
失礼だな。そりゃあ、レベルの高い氷帝の生徒に比べれば、多少…いやかなり頭悪いかもだけど。
「違げェよ。勉強のできる出来ないじゃねえ。こういう所でよ…」
跡部は俺の肩を突き飛ばした。
「…ちょ、何?!」
ソファに倒れこんだ俺の上から、跡部が覆いかぶさる。
「こんな密室で、平気で隣に座ってるんじゃねえよ」
「!」
そうだ。俺、跡部から逃げてたのに。
「こんなんだから、早く俺と付き合えって言ってるんだ」
「なっ、」
跡部の手が、するりと太股を滑る。
「こんな格好までさせられて、平気で人前に出てるんじゃねえよ」
「平気でじゃねーよ!仕方なく…」
「分かってる」
でも、と跡部は舌打ちする。
「跡部?」
「面白くねえんだよ。こんなに肌晒して、どんな目で見られてるか分かってるのか?」
「どんなって…」
そりゃ、面白がって笑われてるに決まってる。こんなピエロ役だから嫌だったんだよ。
俺が黙り込んだら、跡部は大きくため息をついた。
「ンな事じゃねえかと思った」
「…?」
何が?
「お前たちメンバーは、別にお笑いネタのために選ばれたんじゃねえよ。忍足に言わせれば『よう、こんだけ男好きするメンバー揃えよったな』って事らしい」
「は?」
「簡単に言えば、男にモテる男を集めたんだとよ」
「何だよ、それ!」
そんなの聞いたことない。それに、可愛いだけだったらもっと他にいるんだよ。まだ体つきが華奢で、声変わりも済んでなさそうなのが。
「言いたい事は分かるがな、どうやら男にモテるってのは基準が違うみてェだな。俺にはよく分からねえが」
「…忍足さんは分かるって?」
「あ?ああ。あいつはゲイだからな」
「…そうっすか」
もうどうでもイイや、そんな事。考えるだけで今後の学生生活が恐ろしくなる。
忍足さんの言う事が本当だろうが嘘だろうが、こうして跡部に押し倒されてるのは事実だ。
「だからよ、俺の知らない所で他の野郎に手を出される前に、俺のモノにしちまいたいんだよ。俺の名前が多少の牽制にはなるだろうからな」
「あのさ…」
もう、俺には分からない世界だよ。男が男に…とかそんなのはどうでも良くて、それ以前にさ、好きとか嫌いとか、抱くとか抱かれるとかさ。
俺、全然経験ないし。
「だからよ、俺のモノになれって」
「…そもそもさ、それが引っかかるんだよな。モノってなんだよ『モノ』って。何か駒みたいなさ、道具みたいなさぁ」
そうだ。何だか面白くなかったのはそこなんだよな。俺の事何だと思ってるんだよな?俺は人間で物じゃあない。
「ああ?何だ、拗ねてるだけなのか」
「はあ?!」
全っ然、話しズレてますけど。
「言い方が悪かったな。じゃあ、良く聞けよ?」
「あ、とっ…」
近い近い近い!
整った顔が目の前まで迫ってくる。
ホントにさ、腹が立つくらい男前だよな。何か1ミリの狂いもありませんって感じじゃん?って、そんな事はどうでもよくって!
「ほら、暴れるな」
「暴れるさ!マジどけ、って…!」
「あーあー、俺が悪かったからよ」
「ちょと!」
跡部の大きな手のひらが、俺の頬を包んだ。
ダメだ。ダメだって!お願いだから言うなってば!

「神尾、お前が好きだ。付き合ってくれ」

ああ…、もう。ずドキューン☆って。
ファッションショーの決めポーズじゃねえけど、射ぬかれちゃったのはよっぽど俺の方なんだ。
だって、こんな男前に追いかけられちゃったら、なァ?
「神尾?」
跡部が不思議そうな顔して覗き込む。
すげえよな、絶対振られるとは思ってないんだ。ま、結局その通りなんだけどね…。
「おい、神」

あー、もう!

「俺も好き。跡部が好き」

くそっ!
俺の返事に、跡部は満足そうに頷いた。
そして俺は、ファーストキスを奪われる。

「もう二度と、こんな格好俺以外の人間に見せるなよ?」
「あ、んンっ、」
ついさっき、生まれて初めてのキスをしたばかりなのに、跡部はもう俺の体に手を伸ばし、覗いた素肌に悪戯する。だから俺は、満足に返事だって出来やしない。
「こんな短いスカート、良く穿けたな?客席から見上げたら結構際どかったぞ?」
「…え?」
そうなんだ。角度が付くとそんなに変わるもんなんだな。良かった、いつもはトランクスのところ今日はビキニにしといて。さすがにタイトスカートにトランクスは無理かと思って、わざわざ買ったんだよ。
「…いっその事、トランクスだったら興醒めして良かったんだ。それがこんなの穿いてるから、変に想像力掻き立てられるんだ」
そう言って、跡部は忍ばせた指先で下着のゴムを弾いた。
いつの間に、そんな所まで手を突っ込んで…!
「やべェな、何でこんな…」
「え?」
「エロい。今日中に食っとかないと、他の奴に手出しされるな」
「食うって!」
「いいだろ?俺の事好きなら」
「あのなァ」
物事には順序とか準備とかな、あのな。
…ちっとも待つ気なんて無いのな。

スカートをたくし上げて、無理に開かせた脚の間に跡部は顔を埋めた。
「や、め!」
だったら全部脱がされた方がマシってくらい恥ずかしい。
「神尾…」
「ア、    ン…そんな」
俺の中心を鼻の先で撫で上げる。
やめろよ、そんな事されたら…。
「興奮してるな」
「…言うなって!」
今度は唇で優しく食むように、俺の形を確かめて行く。
そうしながらも、跡部の手のひらは俺の太股を撫で続けた。
「すべすべだ」
「あっ、」
内股に指先を滑らすから、くすぐったくて身体が跳ね上がった。
「…参ったな。期待以上で俺が我慢きかなそうだ」
「あとべ?」
「どんなに声出しても良いから、自分の唇は絶対に噛むなよ。噛むなら俺の体にしろ」
「…え?」
そう言って、跡部は俺の下着を剥いだ。
「や!」
そして、改めて顔を埋める。
「そんな!」
直接、舐められる。
「む、りっ!」
誰かに直に触られるなんて勿論初めてで、体がビリって震えた。
どうしよう、凄く気持ちいい。
「あンっ」
跡部の唇が、完全に勃ち上がった俺のモノを咥えて扱き上げる。
「あ、ァー、もウ」
腰が揺れるのを止められない。どうしよう、どうしよう!このままじゃ。
「…いいからイけよ」
「あ、跡部ェっ!」
名前を叫びながら、俺はイッてしまった。

跡部は驚きもせずに、俺の放ったものを嚥下する。そして一部を自分の手のひらに吐き出した。
「な、んで。こんな…」
普通じゃないよ。普通出来ないだろ?そんな、飲む、なんて。
ましてや跡部は男が好きな訳でもないのに。
「バーカ。好きになったのが偶然男だったってだけで、好きな相手のなら飲みたいだろ?」
…いやァ。俺は自信無いけど。
「まあ、そんな事は後でゆっくり教えてやるから、今はこっちな?」
そう言った跡部の手が俺の尻を撫で上げたかと思ったら、最奥を濡れた指先が触れる。
「ちょ、何?!」
「ここを使うんだ」
「え?」
ここって、尻の…。
「無理!」
俺は驚いて起き上がろうとする。でも、当然跡部が逃がしてくれない。
「大丈夫だ、痛くしねえよ」
「いや、痛いとかじゃなくって。…痛いのも嫌だけど。そうじゃなくって!」
「じゃあ何だ?男同士はココ使うしかねえだろ?」
「そ、んな!」
手を払おうとしたら、跡部がむっとした顔をする。
「ここまで来て、今更『嫌』か?」
「じゃなくって!」
「だから何だよ!」
跡部、分かってくれよ。そんなのお前にさせられないよ。
「そんなとこ…汚いよ。跡部が、汚れる」
「神尾…?」
跡部は一瞬、きょとんとした目をして動きを止めた。
「跡部?」
「…ハハ」
そして、笑い出す。
「ど、どうした?跡部」
跡部は一頻り笑い続けた。
「あ、とべ?」
そして漸く落ち着くと、眼尻に浮かんだ滴を拭う。何もそんなに笑わなくても…。
「神尾、お前はやっぱり俺が思った通りの人間だ」
「はあ…」
意味が分からなくて生返事をすると、跡部は優しく俺の頬にキスをする。
「思った通り、最高に可愛いよ」
「跡部」
恥ずかしい奴。
「だから、な?」
「…ん」
跡部の指が、俺の秘所に忍び込む。

初めての体は、やっぱり跡部を受け入れない。
「痛っ、やあっ!」
「…もう、少しだから」
指までは良かったんだ。少しずつ慣れて気持ちイイ場所も見つけてくれて。やっと身体が緩んだと思ったのに。
跡部の圧倒的な大きさに、俺の体は悲鳴を上げる。
「む、り…。痛い、跡部、イタ」
「神尾、唇噛むな」
そんな事言ったって。痛くて、痛くて、どうにか気を逸らさなきゃ。
「俺の肩噛んでろ」
「っひ」
強引に顎を掴まれる。そのまま跡部の肩に顔を押し付けられた。
「どれだけ噛んでもいいから、このまま」
「あ、ンっ」
揺れる腰に痛みが走ったけど、俺は跡部の背中に手を回した。
跡部が、物凄く俺の中に入りたがってるのが分かるから。
「行くぞ」
「っ」
跡部の肩に額を押し付ける。
「っく」
「…あああ!」
中途半端だった幹が、最後まで押し込まれようとしてる。
「神尾」
「ア、ゥくっ、ああ!」
身体がミシミシと押しつぶされるよな、半分に裂かれるような。
「全、部、入っちまえば、楽になる」
「あ、あ」
なら、早く来ちゃって。全部俺に入っちゃって。
「神尾っ」
一際激しく突かれた。
「くっ、ううううゥ!」
口の中に、跡部の血の味が広がった。

全部入ってしまえば楽だって、跡部の言葉は本当だった。
「あ、んン、あと、べ…」
「イイのか?」
「いい、の…」
跡部が動く度に俺の中心は大きく膨らむ。跡部の腹に擦られて、もうぐっしょりと濡れてるのが分かる。
「悪いな、少し腫れてるみたいだ」
そう言って、跡部は結合部を指でなぞる。
「あ、はあァっ!」
バカ。ただでも敏感な所。
「…すげえ、益々締め付けたぜ?」
「言うなっ、て…もう」
俺は、恥ずかしくて顔を反らした。
そして、目に入ったのは跡部の肩についた歯型。
「あ、ごめん跡部…」
「ああ。いいんだ、そんなに痛くねえし」
「…ごめん」
俺は、まだ乾いていない傷に舌を伸ばす。少しでも気休めになるなら。
ぴちゃ、と音を立てて、その傷口を舐め上げる。さっきと同じ血の香りが広がった。
「ば、か」
跡部が顔を顰める。
「え?」
ちょっと、嘘?!
「煽るなよ」
跡部の砲身が、もう一回り大きくなったように感じる。
それは無理、さすがに。
「俺、壊れちゃうよ!」
「…だから煽るなって!もう、手前は黙っとけ」
跡部は切羽詰まったような言い方で、俺の体を乱暴に抱きしめ直した。
「ああっ!」
さっきよりも激しいグラインド。
俺は思わず目を瞑った。瞼の裏が白く弾ける。

目覚めたら、もう夕方だった。小さな曇りガラスの向こうがオレンジがかってる。
「起きたか?」
「あ、跡部」
ソファの端に腰かけてた跡部が立ち上がり、俺の傍にしゃがみこむ。
「無理させたからな。ゆっくり寝られたなら良かった」
「あ、うん。凄く眠った気がする」
初めてで、散々痛がった割に今が辛くないのは、跡部のテクニックのおかげだろうか?何だか少し腹が立たないでもないんだけど。それより…。
俺、何か大切なこと忘れてないか?
「そうだ、さっき伊武が来たぜ。文化祭は無事終わったようだ」
「あああ!」
そうだよ。俺、文化祭の出し物の途中だったんだって!
「何だよ今更。まさか忘れてたのか?」
「…うう、忘れてた。みんなに怒られる」
だって、ショーをほっぽり出して来たのも然ることながら、部活の当番にも顔出す予定だったのに。
「安心しろ。今日の事は俺から詫びを入れておいた」
「え?誰に?」
跡部にしちゃあ気が利くじゃん、なんて。
嫌だなァ。そんなイイことじゃない気がするぞ。
「誰って、全校の生徒と教職員に決まってるだろ」
「わあああああァ!」
ビンゴ!嫌な予感的中だよ。
「神尾は俺との大事な時間を過ごすために少し抜けさせてもらったとな。ついでに、俺の神尾に手出ししたら、ただじゃおかねえぞと」
「ばかーっ!」
「は?何でだ」
「バカったら、ばか!」
「何なんだ、お前は」
跡部の馬鹿、阿呆!どこにそんな事公言する奴がいるよ?!
「おい。何か不満でもあるのか」
跡部は偉そうな口調で言うくせに、俺の髪を撫でる手は遠慮がちだ。
「もう、ばか…」
そんな顔されたら、これ以上怒れないじゃん。
「神尾?」
跡部は、ふくれっ面の俺をあやす様に、額に小さくキスをする。
「もう、何でもない」
上手いよなぁ。計算してやってるのかな?それとも自然に?
何にしても、俺の方こそ跡部に絆されてるよ。
俺はお返しに、跡部の手を取りその指先にキスをした。
そしてもう一度目を瞑る。
どうせ、ここまでサボったんだ。もう少し寝てやる。
「神尾?」
跡部の囁く声が、耳に心地よかった。
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ようこそお越し下さいました!「ハコニワ‘07」はテニスの王子様、跡宍メインのテキストサイトです。妄想力に任せて好き勝手書き散らしている自己満足サイトですので、下記の点にご注意くださいませ。
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