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少し早いですが、神尾の誕生日を祝して!

誕生日ネタの短編です。

スローモーション(千×神)

「宿題はー?」
「まだー。千石さんは?」
「俺もまだ。でも南がいるし」
「ひでーや。写すの?」
「そ。神尾くんは?」
「えー?やるよ、自分で。深司の奴ぜったい写させてくんないし」
そんな感じする、と笑った千石は天に向かって大きく伸びをする。
見えるはずの星は一つだって見えやしない。
真っ暗なはずの時間でも、お台場となれば話は別だ。アミューズメントパークの集まり、人々の群れ。溢れかえる光は煌々として、時間を忘れさせる。
カップルは手すりにもたれるように犇めき合って並び、愛を囁き合っている?目の前のレインボーブリッジなんて、まるでお飾りのように彼らの目には入っていないのだろう。
神尾は動物園を思い出した。

「さすがに、中学生がこんな時間まではいないか」
「そうかな?」
千石の声に廻りを見回すが、意外と小さな子どもがデッキを走りまわっている。けれど、その後を荷物を持った母親と思しき女性が続く。
「ね?親子ならいるけど」
「確かにね。でも千石さんは中学生には見えないよ?」
声を潜めて言う神尾に、千石はクスっと笑った。

少し歩けば肩がぶつかるほどの数の人、その誰もが知らない今日の二人きりの外出。
地元の繁華街じゃ補導されるかもしれないそんな時間に、千石は悪戯を楽しむ様に人波を縫う。
「こっちこっち」
千石は神尾の手を取った。
駆け出す背中は年齢の割に大人びていて、まるで知らない人みたいで、神尾は少し不安になる。

駅に向かって渡る人と、逆の方向に横断歩道を進む。
賑やかなコンビニの脇を走りぬけ、さっきよりも静かな車道を信号無視して越える。
幾つか連なったポールの間をおざなりに繋ぐ鎖をまたげば、そこは公園のようだった。
「昼間はね、結構お弁当広げてる人もいるんだけどね」
足元の芝生はひっそりと二人のスニーカーを撫でる。
「海?」
「角度的にレインボーブリッジ見えないし、店がある訳でもないから夜は人が少ないんだ。まあ、木影のベンチとかは分からないけど」
「…ああ」
千石の言葉に納得するように頷きながらも、神尾は落ち着かなそうにあたりを窺う。
「編集の仕事してる従兄が前に連れてきてくれたんだ。結構撮影に使うんだって。こっちだよ」
「ん」
握り直す千石の手はひんやりとしていて、神尾は、緊張したみたいに湿った自分の手のひらが恥ずかしい。

急に開けたその場所は、人の気配が全く無い。
温い風が強く向い吹き、神尾の毛先を揺らす。
水面の向こうには遠くのビルの赤い光が見えるだけで、空には飛行機の灯が定期的に点滅する。波の音よりも風の音が強くて、遮る物なく全身に受ければ立っているだけでも至難の業だ。
「ちょ、思ったより強いな」
千石は驚いたように呟くと、そのまま暗闇に向かって歩く。
ゆったりと半円を描くように据えられた手すりは、景色を邪魔しない程度の格子だから、羽織ったパーカーは夜の空気を包んで膨らんだ。
「おいで」
そう言って手を引かれ、神尾は小さく頷いて続く。舞い上がる毛先を空いた手で抑えれば、波の塩気でべた付く気がした。

「バカみたいに賑やかな所より良いでしょ?涼しくて気持ちいい」
「そうだね」
千石は、神尾の手を離してまたさっきのように伸びをした。ぶつかる人々もいないからその両腕を思い切り広げる。
「どうしたの?何だか静かじゃない?」
肩のストレッチをしてリラックスしたような千石は、隣で口数が少なくなった神尾を見下ろす。
「そ、かな?そんな事ないよ」
咄嗟に作ったような返事に、千石は苦笑する。
「神尾くん、へんな所で察しがイイよね?いつもはてんで子供っぽいのに」
「え?」

近づいた手が、躊躇いもなく背中に回る。
強く引かれたと同時に激しい風が襲って、神尾は眼を閉じた。
顔にかかる髪を抑えて、千石は顔を寄せる。
そのまま、口づけた。
重なるだけの優しい唇は、今までに知らない柔らかさだ。
「誕生日、おめでとう」
今日は、8月26日だった。

「神尾くん。もう風止んだから、眼開ければ?」
「千石さん…!」
「何?」
「…うー」
感謝すべきは、真っ赤な顔が分からないくらい街頭が少ない事。
「嫌じゃ、なかったろ?」
「うー…」
「誕生日だよ?お台場だよ?夜景だよ?途中から分かってたくせに」
「うるさい」
「ふーん。素直じゃないと、」
「!?」
今度は両手首を拘束される。慌てて後ずさる前に、強引に抱きこまれた。
「ね?もう一回」
強請るような声に薄く瞳を開けば、覆いかぶさる千石の顔が思ったよりも真剣で。
「ん…」
神尾は力を抜いて、体を預ける。

俺たちも、動物園の仲間入りか。
神尾の含み笑いも、濃厚な口づけに飲み込まれた。

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