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しつこく「休息」シリーズ。
なかなか終わらない。あと1、2本で纏めたいものです…。

芽生え~休息4~(跡×宍)

「何とかは風邪ひかねーって…」
「俺は馬鹿じゃないってこった!」
小馬鹿にするように見下ろす跡部の言葉を遮って、宍戸は声を荒げる。
「なんだよ、機嫌悪いじゃねーか」
怒りっぽく見られる宍戸だが、理に適わないことを言われた時や不正に対しては譲らないだけで、無意味に不機嫌になり八つ当たりすることは滅多にない。
そんな宍戸が理由も分からずイライラしているものだから、みんな不思議に思ってはいたが、何て事はない体調が悪かったのかと跡部は納得する。
「俺様の風邪がうつったか?」
申し訳ないなんて気持ちは露ほどもないのだろう、ニヤニヤと笑うその表情。けれど宍戸は、腹を立てつつも言い返さなかった。
実のところ風邪では無いと、宍戸自身は踏んでいる。
恐らく「知恵熱」だ。
夕べ、このソファで跡部を膝枕しながら、宍戸はあーでもないこーでもないと考え続けた。そして、スッキリしたような表情の跡部を見送って帰宅してからも、ずーっと悩み続けたのだ。
ようするに、殆ど眠っていないのである。
「で?何だよ手前は。用が無いなら帰れ」
「お前が帰らなきゃ、鍵閉められねえだろうが」
そうだった、と。宍戸は舌を鳴らす。
「俺が閉めて帰るから、跡部は先に帰れよ」
「んなこと言って、その体で家帰れるのか?」
「風邪じゃねーんだ。帰れるに決まってる」
「ほう?風邪じゃねえなら何なんだ?」
「っ、」
どこまで分かって言ってるのか、自分の心を盗み見られてるんじゃないかと疑心暗鬼になる。けれど跡部は、本当に不思議そうに宍戸を見返す。
「何でもねえ。俺は暫く休んでから帰る」
「…そーかよ。じゃあ鍵預けたからな」
跡部は素っ気なく言うと宍戸に向かって鍵を投げた。
そして、そのまま部室を出て行く。バタン、と閉まる扉の音。
宍戸は拍子抜けしてしまう。
「ま、そりゃそうか」
何を期待していたのだか。
意外とがっかりしている自分に、がっかりだ。

何でこんなにも跡部が気になって仕方がないのか。
こんな訳が分からない気持ちでぐるぐるするのなら、あの時無理やりに跡部を休ませるんじゃなかったと後悔する。跡部だって馬鹿じゃない、自分の体くらい自分で分かっているはずなのだ。限界を感じたら自分で休息しただろう。なのに何で自分はあんなにも跡部の体調が気になって仕方なかったのか?
いつものソファに腰かけたまま、宍戸は気付けば頭を抱え込むようにして俯いていた。
「あー、また」
これじゃあ、眠れなかった昨夜と何も変わらない。
堂々巡りの自問自答を繰り返すうちに、気づけば跡部が部室を出てから40分が経過している。
「…バカみてェ」
跡部は、体調が良くない自分に鍵を預けてさっさと帰宅したというのに。
自分ばかりがこんな想いに囚われる。
「別に、待ってて欲しかった訳じゃねーけど…」
と言いながらも、やっぱり先ほど感じた落胆はそういう事なのだろうか?
「あー、くそっ!」
宍戸はそう吐き捨てて、勢いよく立ち上がる。
そして、足元に置いたテニスバッグを持ち上げれば、いつもは感じない重さに体を持っていかれる。
「っとと、」
思ったより重症みたいだ。こんな荷物、いつもなら荷物と意識することもないのに、今日はやけに重く感じる。
「やべーな。いい加減寝ないと俺の方が先にぶっ倒れる」
ふら付く足をぐっと踏ん張ると、一歩踏み出す。
すると今度は、激しい頭痛に襲われた。
「っわー…、痛て」
固く眼を閉じて足を止める。
ズキンズキンと脈打つ激しい痛みを、俯いたままやり過ごそうとする。けれど、その激痛はなかなか去っていかない。
「っく、」
宍戸は奥歯を固く食いしばる。
こんな事なら、さっき跡部に甘えれば良かったと、思わず泣きごとを言いたくなるような激痛だ。
鍵なんか預かってないで、家まで送ってくれないかと言えばよかった。きっといつものでっかい車で家まで送ってくれたことだろう。跡部はあの性格だからものすごい暴君に見られがちだが、意外と優しいところもあるのだ。間違っても苦しんでいる友人を見捨てたりする奴ではない。
「跡部、」
今更ながらにその名を呼んでみる。
不思議と、いつの間にか、その名を口にするだけでどこかホッとする自分がいる。
「あああ…、俺、やっぱり跡部の事好きなのかな」
この状況で、こんな事考えている場合ではないのに。
どうやって自宅へ帰り着くかを、考えなくてはいけないのに。
「そ、だ。保健室」
まだ、誰かがいるかもしれない。保健室にはいなくても職員室だったら。
いくら冬ではないといっても、こんな所で眠ったんじゃ今度こそ本格的に風邪をひいてしまう。
体が有り得ないくらい重い。
「くそっ、」
なけなしの力を振り絞って、ドアノブへ手を伸ばす。
すると宍戸の指先が触れる寸前に、その扉が大きく開かれた。
「遅い!」
「…へ?」
頼りなく震える膝を手のひらで押し支え、鉛のように重たい頭を上げれば、そこにはとっくに帰ったはずの跡部が仁王立ちで宍戸を見下ろしている。
「どこかでぶっ倒れてるんじゃねーかと戻ってみれば、案の定だな」
「…倒れてねえよ」
「ふん。時間の問題だろうが」
「んな事ねえ、よ」
さっきまでは跡部に送ってもらえばよかった、と思っていたはずなのに、本人を目の前にすると勝手に思ってもいない言葉が零れていく。
そんな自分に嫌気がさす。
素直じゃねえな、と思わず自嘲した宍戸は、そのまますぅ…と瞳を閉じる。
言葉とは裏腹に、その体は跡部の存在に安心しきったように力を失ってしまったのだ。
跡部は待ち構えていたようにその体を抱きとめる。
そして「重てェな」とぼやきつつも宍戸を抱き上げた。
「ったく、素直じゃねえよな…」
跡部はぽつりと呟くと、扉を施錠し部室を後にした。

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