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「休息」の続編。もう1、2話続くかもです。


意識~休息2~(跡宍)

余計なことをいろいろと考えていたせいか、目覚めは何だかイマイチだった。
まだ昨日の不思議な空気から抜け出せないで、むず痒くて手のひらを掻き毟りたい感じだ。足の裏を何度も床に蹴りつけたい感じだ。何かがハッキリしなくてイライラする。
宍戸は、正体不明の焦燥感に部室の扉を荒々しく開いた。
「っ、何や驚くやろ?そないに勢いよく開けたら」
着替え途中の忍足が呆れたような表情で振り向く。
「珍しいな。宍戸が朝練ぎりぎりで来るなんて」
もう外へ出ようという岳人は、手にしたラケットですれ違いざまに宍戸の頭を小突いた。
「ちょっと、寝坊してな」
「でも、良かったです。休みかと思っちゃいました」
鳳はちょっと苦笑いで「お先に」と扉を開けた。
「昨日の帰り、あんな雰囲気やったろ?大ゲンカしたんやないかって、鳳心配してたみたいやで?」
ジャージをはおった忍足も鳳の背中を追うように部室を出ようとする。
「なあ、跡部は?」
「もうとっくやで?準レギュのコートに行っとる。すぐ戻るやろ?」
「そっか。来てるのか、アイツ」
短くなった前髪を掻き揚げて、宍戸は吐き捨てるように言った。
「…しつこいようやけどな、喧嘩とか勘弁やで?この時期に」
「わーってる。そんなんじゃねーよ」
俺ってどんな見られ方してるんだよと、ぼやく様な宍戸の口調に、忍足は小さく笑っただけで部室を後にした。

一つのことが気になると、他の事は全く手つかずになってしまう。悪い癖だ。
まずはこの鞄の中身を渡さないことには、ユニフォームに着替えることもできない。こんなんで朝練出たって、上の空で怪我をするのが落ちだ。
宍戸は、大きなバッグを床に下ろすと勢いよくファスナーを開けて中身を漁る。
こんなものを片手に引っ掴んで家を出たものだから、母親が心配そうな顔で振り返ってたっけ。宍戸は何も言わずに出てきたことに少し後ろめたくなる。
「薬なんて、もう何年も飲んでないもんな」
擦り傷はしょっちゅうだが、風邪薬なんて手にすることのない宍戸だ。
「ったく、早く戻れっつーの」
宍戸は頭を掻き毟った。

「お前、何でこんな所に居やがる。練習はどうした」
5分も経ったころだろうか。一人きりの部室に跡部が戻り、不愉快そうな声で言う。
「お前、おせーよ」
「バカか。手前とは違うんだ。とっくに一仕事終えてるんだよ。お前こそ遅いんだよ。何だそのふざけた格好は」
「あ?すぐ着替えるよ」
制服姿のままの宍戸は、少し不貞腐れたように吐き捨てる。
「そうかよ。ならさっさと着替えて表に出ろ。あんまり遅かったら走らせるからな」
手にしたファイルを机の上に放り投げると、跡部はさっさと部室を出ようとする。
「待てよ」
「ああ?」
呼び止める声に、跡部はイラっとした表情で振り返る。
「何だよ。俺様は忙しいんだ」
「わーってるよ!これ!」
「何だよ?」
当たり散らすように大きな足音を立てて歩み寄った宍戸は、背中に隠していた物を押し付ける。
「お前、どうせ飲んでないだろう?」
手のひらに突っ込まれたのはカプセルタイプの風邪薬。
「…いらねえよ」
「ふざけんな。そんな顔色して、飯も食ってないだろ」
「うるせえよ」
図星をさされた跡部は面白くなさそうに顔をゆがめるが、宍戸はお構いなしだ。途中で買ったサンドイッチとペットボトルも次々と押し付ける。
「早く食って、薬飲んどけよ!朝飲めば夜まで効く薬だからよ」
「…いらねえって」
「いいから飲め!」
宍戸は舌打ちすると、跡部の手から滑り落ちそうなサンドイッチを奪い、ビリビリと包装を破った。そして卵サンドを掴むと跡部の口元に差し出す。
「早く!」
「うるせえなぁ」
そこまでされると拒否する方が面倒臭い。跡部は諦めたように突きつけられたサンドイッチを手に取ると、一口食らい付いた。
こんな庶民の食べ物なんて、と言ってやりたいところだが、正直味は殆ど分からない。熱のせいか味覚が馬鹿になっている。
夕べ不覚にも宍戸の膝を枕に仮眠を摂って、幾分気分はよくなったが、やはりその場凌ぎに過ぎず、帰宅してデスクに積まれた書類に目を通す頃には再び体の節々が痛み始めた。
当然執事もその事に気付いているだろうが、跡部の意見が全ての彼は、跡部が学校へ行くと言い張れば止めることも出来なかったのだ。もちろん出された朝食も手つかずだった。
「熱、測ってないのか?」
ようやく大人しくサンドイッチを食べ始めた跡部に、宍戸は小さく声をかける。
「…測ったって、やることは変わらねえからな。時間の無駄だ」
「バカが。そんな訳ねーだろうが」
「…」
宍戸は痛々しく眉間に皺を寄せる。
跡部には「痛い」「苦しい」と言うことすら許されないのかと、宍戸のイライラがまた大きくなる。夕べからずっとそうだった。跡部の乗った車を見送ったときからずっと、言いようのない感情が胸の隅っこで渦巻いている。面白いテレビを見てても、コマーシャルになればフッと我に返るように、時々に跡部の寝顔が頭を過った。
ベッドに入ってからも、明日の練習は…と考える間に、跡部の寝息を思い出す。
そんなだったから、今朝は珍しく寝坊したのだ。
「辛くねえの?」
「このくらいの熱大したことない」
「違げーよ。熱もそうだけど、ほら。体がダルイとかお前全然言わないじゃん」
「…言って治るか?」
「そりゃ、治らねえけど」
それはそうなのだが、なんだかムカつく。
「言えよ」
「はあ?何で」
「何か、俺が嫌だから」
「バカか。お前の気持ちなんか知ったことかよ」
跡部はようやく一切れのサンドイッチを食べ終えると、残ったもう一切れを宍戸に押し付けて薬の箱に手を伸ばす。個数を確認するとカプセルを口に含み、ペットボトルに手を伸ばす。そして大きく仰いで薬を水で流しこんだ。
唇の端をジャージの袖口で拭いながら、跡部は少し苦しそうな顔をする。大き目のカプセルが上手く飲み込めなかったようだ。
「…なんだよ」
そんな姿を睨むように見守る宍戸に、跡部は顔を歪めた。
「別に」
宍戸はそう答えて、ようやく着替えを始めようと自分のロッカーへと歩み寄る。
夕べからずっと気がかりだったことが取りあえず解決して、やっと練習をしようという気分になる。
跡部が残したサンドイッチをたった二口で食べつくすと、宍戸はスッキリしたような表情で制服を脱ぎ始める。
そんな背中を跡部は、呆れたように見つめる。
「お前、何なんだよ昨日から」
「ああ?」
跡部の質問に、宍戸は振り返る。
自分の気がかりが片付いたら、もうすべてを忘れたように宍戸はきょとんとした表情だ。
「何で、そんなに俺に構う?今までそんな事なかっただろう?」
「何で、って。別にお前が具合悪いのに気づいたからだよ。今までは気付かなかったから何もしなかった。それだけだ」
「何で、今回は気付いた?」
「…何でって。んなの知らねえよ」
宍戸は困ったように、また着替えを始める。
そんな宍戸の態度に、跡部はムッとしたように口をつぐむ。
そして、少し考えてから、今度は愉しそうに嗤って言った。
「お前、俺のことが好きで仕方ねーんだろ?」
「はあ!?」
からかう様な口調に、宍戸は慌てて振り返る。
「違うのか?」
「ふざけんなっ!」
低い怒鳴り声に、跡部は軽く片足を引き身構える。
こんなやり取りから殴り合いになるのはしょっちゅうだ。
「宍戸?」
けれど、宍戸は殴りかかってこない。それどころか、急に顔を真っ赤にしてラケットを掴むと横を走りすぎて行く。
「宍戸!」
慌てて振り向いても、もう部室の扉は閉ざされている。
「軽いジョークだってのに」
思ってもみなかった宍戸の反応に、跡部は呆然とつぶやいて傍にあった椅子に腰かける。
「何なんだよ、宍戸のヤツ…」
薬を飲んだのに返って熱が上がったみたいに、その頬は赤く染まっていた。

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