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大学生 千×神。
短文です。


甘えたがりの魚(千×神)

「千石さん。それ、いつまでかかるの?」
「んー…?」
「『んー?』じゃなくって。何時までかかるのって聞いてるの」
「うーん、どうだろね」
「はっきりしないなァ」
「何で?」
「千石さん。『釣った魚に餌をやらない』ってこういう事なのかな?」
「…どうしたの?今日はやけに絡むじゃない?」
千石は、開いていたノートパソコンをパタンと閉じる。卒論をまとめていたのだが、神尾はそれが面白くないようだ。
千石のアパートはいつの間にか二人の部屋となり、自分は部屋着で寛ぎながらさっき買ってきた雑誌に読み耽ってるくせに。
「珍しいね。いつもは漫画読んでるの邪魔すると怒るくせに」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
付き合いが長くなれば成る程、互いの存在が空気のように思える事が多くなってくる。それは生きるのに必要不可欠って意味よりも、在るのが当たり前すぎて存在を忘れてしまうっていう意味でだ。
そんな時、糸を手繰り寄せるようにして歩み寄るのは、決まって千石の方なのだが。そう言えばしばらく…。
「どんな餌が欲しいの?」
クスっと、分からない位小さく笑って、千石は尋ねる。
「…」
そんな余裕の笑みにチッと舌を打ちながらも、神尾は手にした雑誌を伏せて膝で歩み寄る。
そして、フローリングに脚を投げ出して座る千石によじ登った。
「…これ」
ぱくり。
憎たらしく口角を上げるその唇に齧り付く。そのまま、はぐはぐと自分の唇で、まるで咀嚼するように。
そして、唐突に離れる。
「随分、情熱的な魚だ」
勝ち誇ったようなその笑みが、腹立たしい。神尾は面白くなさそうに唇を尖らせた。
「それじゃあ、腹いっぱい食べさせたげる」
「…腹八分目ぐらいでいいんだけど」
そんな、神尾の声は聞かないふりで。
「もう勘弁してってくらい、食べさせてあげるから」
心も、体も。

甘えたがりの魚は、大きく両腕を広げる。

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