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久しぶりの更新です。

ちょっと忙しくしている間に、ますます寒くなりましたね。
そんな訳で、真冬の二人のお話。
今回もラブいです。

真冬の熱い熱い部屋(跡×宍)

「跡部ー、ここやったのか?」
俺は、居間に向かって大声で尋ねる。
このマンションに越して来て3回目の大掃除だけど、俺は、跡部がこの巨大な本棚を掃除している所を見た事がない。それでも其れなりに片付いているのは、きっと俺が知らない内に整理しているからなんだろうが。
「その本棚は後でやるからいい」
「あ、そう?」
間髪入れずの即答に、俺はかえって気になってしまう。
だってよ、何だか見られたくないって感じの言い方だぜ?

「宍戸、遅くなったから夕飯何か頼むか?」
「あー、そうだな」
見上げた時計はもう8時近い。これから買い出しして作るとなったら、食事にあり付けるのはいつになるか分からない。
「俺、あれ食べたいな」
「あれって、何だ?」
俺の答に、跡部は思案する顔つきで書斎に入ってくる。
「大通り沿いにある、イタリアンレストランの持ち帰りピザ」
「…ああ、あそこか」
古めかしい店構えながらも、なかなか本格的なピザを作る名店だ。食にうるさい跡部も、珍しく文句を言わず食べていたのを思い出す。
「そう。食べたくねえ?」
「…それは構わないが。あそこ何時までだ?」
「ラストオーダーが9時だけど」
俺たちは同時に互いの姿を見遣る。
比べた姿は、跡部の方が何倍も小奇麗な格好をしていた。俺はいかにも大掃除中です!という風情だ。
「…跡部、行ける?」
上目使いの質問に、跡部は大きくため息をついた。
「ったく、仕方ねえな」
そう言って、跡部はデスクに置かれた財布を手に取る。
「やった!サンキュ~」

コートの背中がドアの向こうに消える。
扉が閉まりきるのを確認すると、俺は早速書斎の本棚を漁り始めた。
あの跡部が自分で掃除すると言い出すだなんて、きっと何か重要な秘密があるに違いないんだ。
「…しっかし小難しい本ばっかだなぁ」
英語ならまだしも、何語だか分らない本も多々あり、挙句日本語なのに読めないというこの虚しさはどうすりゃいいのか…。
「あいつ、本当に読んでるのかよ」
分厚い1冊を取り上げれば、確かにページをめくった癖が付いていた。
「すげェな、おい」
俺は、改めて感心してしまう。
跡部はあんな言動だし、天才肌に見られる事が多いが、実は思った以上に努力家だ。高校、大学へと上がるにつれてそんな本質が分かる様になってきたけど、成人してからの努力はまた凄いものだった。ひたすら貪欲に知識を吸収していく。
「俺も見習わなきゃ、だけどな…」
なかなか、職場の環境に慣れてしまうと、その状況に甘んじてしまうものである。結局俺は、この年までこれといった勉強をするでもなく来てしまった。
「…あれ?」
辞典の横に並んだ新書の並び。数冊を抜き取り眺めていると、その奥にもう一並び本が見える。奥行きのある本棚で奥と手前に本を並べるのはよくある事だが、それはどうやら…。
「本じゃねえな。よっ、と」
俺は手前の新書を全て下ろすと、奥に並んだファイルに手を掛ける。厚みが5センチほどある、背表紙の黒いファイルがズラーっと並んでいる。
「…まさか、アダルトDVDでもあるまいし」
岳人やジローならまだしも、跡部のそんな姿は想像がつかない。一人こそこそアダルト鑑賞だなんて。
「でも、隠してますって感じだよな」
俺は後ろめたさを感じつつも、その一冊を抜き取った。好奇心には勝てない。
「…ん?」
表紙を捲れば、そこには。
「あーとーべー!!」

「おい、帰ったぞ」
居間にいない俺を探す跡部の声がする。
「宍戸?何だ、まだここに居たのか」
「あーとーべー…」
俺は、散乱したファイルの中に埋もれるように座り込み、跡部を振り返る。
端から確認したファイルは、見事に、全部!俺の写真だった。
そりゃもう、自分でも覚えてない位の昔から。
一番古いのは、恐らく中2くらいのものだろう。あそこまで髪を伸ばしたのはあれきりだったからな。
「何だ。見つけちまったのか」
「何だ、じゃねーよ!何なんだよ、この写真の山!」
「俺のコレクションだよ」
「な、な…!?」
何をしらっと言ってるんだ!
「誰が撮ったんだよ!」
中には跡部と納まっている写真もある。自分で撮ったとは言い逃れができない写真がたくさんあるのだ。
俺はいつ、誰に、こんな姿を撮られたんだ!?
「俺が撮ったんじゃ目立って仕方ないからな。イベント事は家の者に撮らせたが、まあ大体はあいつらだ」
「…あいつら?」
「ああ。樺地、忍足、滝、向日。ジローはカメラ持ったまま寝ちまうから話にならなかったが」
「マジかよ!?」
こんな昔から?そんなの、どう言い訳して…。
呆然と見上げたら、跡部は小さく笑った。
「そんな子供の頃じゃ、適当な理由つけとけば協力してくれるものさ。いい小遣い稼ぎだったろうしな」
「…お前ね、仲間を雇うなよ」
まったく呆れてしまう。
けれど、よくよく思い出せば。
「ああ…。そう言えば高校の頃、忍足が割りの良いバイトがあるって喜んでたっけな」
俺にも紹介しろよって言ったら「気難しい雇い主やから、宍戸とは合わないかもしれへん」って言ってたような。
「そうか。お前があの時の『気難しい雇い主』か…」
「…忍足泣かす」
俺の言葉に、跡部が引き攣った笑みを漏らした。

「それにしても、凄い枚数だな」
「ああ。俺のライフワークだからな。このファイリングだけは誰にも譲れない」
「最近の写真もあるじゃねえか。こんな、寝てるのとか…マジやめろって」
一緒に暮らしてるんだから散々見てるだろうに、何でわざわざ。
溜息をついて跡部を睨んだら、その瞳は優しく微笑んだ。
「まったく自分でも笑っちまうけどな、俺は相当欲張りみたいだ」
「跡部…」
伸ばされた指先が、そっと俺の頬に触れる。
「こんな近くに居るのに、それでもこうして写真にも閉じ込めたい」
冬の夜空の下、俺が大好きなピザを買って来てくれた跡部の手はすっかり冷え切ってしまった。
「バカが…」
本当は、ふざけた事してるんじゃねえ!って、アルバムを処分しちまおうかと思ってた。俺の許可無く撮られた写真の数々は、けっこう際どいのも混ざってて、ページを捲るのが恥ずかしいくらいなんだ。
でも、そんな顔されたら何も言えないじゃねえか。
手のひらが、優しく2回俺の頬を撫でる。
くすぐったくて目を閉じたら、跡部が微笑む吐息が聴こえた。
「ピザ、冷める前に食べちまおうぜ?せっかく急いで買ってきたんだ」
抱き寄せる手が、俺の髪をかきまぜる。
「…ああ」
俺は、跡部に体を預けた。

まったく。真冬だってのに、全身が火照って仕方がない。

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