忍者ブログ
★初めてお越しの方は、お手数ですが「はじめに」を必ずお読みください。★
[20]  [19]  [18]  [17]  [16]  [15]  [14]  [13]  [12]  [11]  [10
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

宍戸が寛いだ時にだけ見せる、変な癖とは…?


無くて七癖 (跡×宍)

「…おい。宍戸」
「…」
「聞いてるのか、宍戸」
「…」
ソファの隣に腰掛ける宍戸に声をかけるが、全く返事がない。
手にした文庫本に夢中のようだ。
「おい、宍戸。俺は知らねーからな」
耳を貸さない宍戸に、俺は通告する。
後で文句は言わせねえ。

ここは部室。
先日引退したばかりだが、後輩指導とかこつけて3年が居座るのは毎年のことだ。
例に違わず、俺たちも部室で寛いでいる。
さすがに下級生からコートを奪う訳にはいかないから、空くのを待っているのだ。
そんなわけで、もちろんここには俺と宍戸の二人だけではない。
ロッカーの前で着替え中の忍足と向日が、目を丸くしてこちらを見ている。
驚くのも無理ない。
だから忠告してやろうとしたのに、宍戸は耳を貸さない。
二人は間抜けな顔をして、宍戸の動きを目で追っている。
横目で盗み見た俺は思わず溜め息を漏らす。
明日から宍戸は、これをネタに存分にからかわれる事だろう。

宍戸は左手だけで器用にページをめくりながら、右手で俺の耳朶を弄んでいるのだ。
指先でつまんだり、人差し指と中指で挟んで引っ張ったり…。
時には耳全体を覆っていじり回すから、煩くてかなわねえ。
そう。無くて七癖とはよく言ったもんだが、これは宍戸が自宅で寛いでいる時だけに見せる癖だ。
本人曰く、特に冷えた耳朶が好みとの事…。
部活も引退し気が抜けたところで、俺の部屋で寛ぐ時と同じ並びで腰掛けたのがいけなかったのか。
宍戸は相当気が緩んでいるようだ。

小説が佳境にさしかかってきたのか、宍戸は益々のめり込むようにページをめくり、それに応じて腰掛けた姿勢も崩れていく。
これじゃあ家にいる時と変わらねーな…。
横目で見ると、例の二人は相変わらずさっきと同じポーズで固まっている。
…面白れぇ。
宍戸も、忍足も、向日も。
俺は宍戸を放っておくことにした。

宍戸は二人きりで過ごす時のように、段々俺に近づいてくる。
学校ではいつも俺にくってかかってくるが、実際コイツは相当の甘えたがりだ。
最初は一人分ほど空けて腰掛けていたが、そのうち両足ともソファに上げ、そして横向きに膝を抱えて座ったかと思うと、次第に俺の体に背中を預ける。
無理な体勢なのに、時折思い出したかのように俺の耳を弄ぶのには笑ってしまう。
そして俺も相当コイツには甘い。
こういう時は、つい好きなようにさせてしまう。
無意識に体の何処かしらを触れようとする姿が、いとおしいのだ。

一体何分経過しただろう。
やっと動き始めた忍足と向日は、それでも無言で宍戸の行動を目で追い続ける。
その口許には、はっきりと笑いを堪えているのが見てとれる。
そりゃーそうだろう。
いつもケンカ腰で俺に突っかかってくる宍戸が、こんな風に俺に甘えているなんて。
宍戸はついに、俺の膝を枕にソファの上に寝そべってしまったのだ。
しかも、しつこくその腕を上げ俺の耳もとへ伸ばす。
…腕、疲れるだろーよ。
呆れて声も出ない。

多分30分は経過しただろう。
俺は何も言わない。
忍足と向日も近くにあった椅子に腰掛け、じーっと宍戸の観察に勤しむ。
小説はいよいよ最終段階に入ったようだ。
ページが残り少ない。
そして、宍戸の癖も最終段階へ入ったようだ。
宍戸は寝そべった体をモゾモゾと起こすと、本から目を離さないまま、俺の横へピッタリ付いて腰掛け直す。
そして、体を捻りながら俺の左肩に手を置くと…。
「!!」
忍足と向日が息をのむのにも気付かず。
宍戸は俺の耳朶に噛み付いた。
そう、これが最終段階。終着点。
力いっぱい噛み付くのではなく、子猫がじゃれるように何度も甘噛みするのだ。
噛み付かれている俺には見えないが、コイツこれで本が読めてるのか?
毎度ながら不思議な行動だ。

「ぎゃははっ!宍戸最高!」
「ははは!たまらんわぁ、亮ちゃん!」
とうとう我慢がならないというように、二人が宍戸を指さして笑い出した。
「!!」
宍戸はビクッと体を震わせ、俺の耳元で動きを止める。
「跡部~。こりゃー可愛くて仕方ないやろ?」
笑いすぎて涙を拭いながら聞く忍足に、俺は答える。
「ああ、最高に可愛いぜ」
「ぎゃー!跡部が惚気てるー!」
指差し笑いながら叫ぶ向日。
「あ~!面白いもん見せてもろたわ!」
忍足はとうとう椅子から転げ落ちて腹を抱えている。
「ひーっ!笑いすぎで腹が痛い!」
部室の床に転げ回る二人。
しばらく呆然とその姿を眺めていた宍戸は、ようやく事態を把握したようだ。
油の切れたロボットのようにゆっくり俺を振り返る。
「跡部!!」
顔を真っ赤にして叫ぶ宍戸。
「俺はちゃんと止めたぜ?お前が聞かなかっただけで」
ニヤッと笑いながら答えると、宍戸は一層頬を染める。
というより首まで紅い。
「何で!もっとちゃんと止めねーんだよ!ソファから落とせばいいだろ!」
「アーン?知らねーよ。自業自得だろ?」
「!!」
恥ずかしさのあまり、声も出ないようだ。
握り締めた拳をプルプルと震わせる。
「えーやん。そんなに恥ずかしがらんでも~」
「そーだよ宍戸。赤ちゃんみたいで可愛かったぜ!」
二人の言葉が追い討ちをかける。
「うるさい!!」
とうとう大声で叫んだ宍戸は、ソファで丸まり不貞寝を決め込む。
俺の膝を枕に。
その仕草は益々二人を喜ばせるだけだった。
「ぎゃはは!可愛いーよ宍戸!」
「あー、俺もうあかんわ~」

いつまでも続く二人の笑い声。
俺の膝枕で丸まる宍戸は、グスンと鼻を鳴らす。
悔しいのか、恥ずかしいのか。
自分でもショックでよく分からないようだ。
俺はくしゃくしゃになった宍戸の髪をゆっくり撫でる。
「拗ねるなよ。可愛いから自慢したかっただけだ」
「…馬鹿やろー」
口は悪くても、膝にすがりつく腕が俺に甘えている。
まったく、可愛い奴だ。

PR
この記事にコメントする
color
name
subject
mail
url
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
はじめに
ようこそお越し下さいました!「ハコニワ‘07」はテニスの王子様、跡宍メインのテキストサイトです。妄想力に任せて好き勝手書き散らしている自己満足サイトですので、下記の点にご注意くださいませ。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
これらに関する苦情の拍手コメントはスルーさせて頂きますのでご了承ください。
■連絡事項などがありましたら拍手ボタンからお願い致します。
■当サイト文書の無断転載はご遠慮ください。
■当サイトはリンク・アンリンクフリーです。管理人PC音痴の為バナーのご用意はございませんので、貴方様に全てを委ねます(面目ない…)。        
   
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
通販申込
現在、通販は行っておりません。申し訳ございません

・その頬は桜色に染まる(跡宍)400円
・社会科準備室(跡宍)500円


※詳しい内容は「カテゴリー」の「発行物」からご確認ください。

◆通販フォームはこちら◆
拍手ボタン
カウンター
お世話様です!サーチ様
ブログ内検索
プロフィール
HN:
戸坂名きゆ実
性別:
女性
自己紹介:
私、戸坂名は大のパソコン音痴でございます。こ洒落た事が出来ない代わりに、ひたすら作品数を増やそうと精進する日々です。宜しくお付き合いください。
忍者ブログ [PR]

photo byAnghel. 
◎ Template by hanamaru.