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跡部様、誕生日おめでとうございます!
あなたに出会えて本当に幸せです。楽しいです!
まさか、自分がこんなにもテニスに、というか跡部様にハマるとは思ってもいませんでした(笑)。


さて、猫宍シリーズいよいよ完結です!
良かった。もう終わらないかと思ったよ…。
読んでくださった皆様、長い間お付き合い頂きありがとうございました。
今後は、機会があればちょこちょこ日常的な番外編を書いていきたいと思います。

幸福論3(跡×宍)
~猫宍シリーズ31~


ゆっくりと扉が開いた。俺は椅子に腰かけたまま、半身だけで振り返る。
「…宍戸」
部屋へやって来たのは、正装したジローだった。
「綺麗」
そう言って、ジローはふぇ…と泣きだす。
「おいおい。何泣いてるんだよ」
「そうだよ。ジローってば、泣いてる場合じゃないんだよ!」
滝は苦笑して、ジローの顔を乱暴に拭いてやる。
「チャペルまで、エスコートするんでしょ。しっかりしなきゃ」
「…んっ、大丈夫」
ジローは大きく頷くと、恭しく俺の腕を取った。
「ヴァージンロードは一緒に歩けないけど、教会までは一緒だよ」
「…本当に、本当なんだな」
余りの展開の早さに、まるで夢の中にでもいるみたいだ。
そんな俺に、滝とジローは目配せしてくすくすと笑う。
「今からそんなんじゃ、教会行ったらびっくりだよ。ね、滝?」
「そうそう、そりゃ凄いんだから」
楽しそうな声に、なんだかドキドキしてしまう。跡部の奴、また無茶しでかしたんじゃないかなァ。
「とりあえず、父親役の争奪戦はすごかったよ」
「…父親役?」
そうか。結婚式って、ヴァージンロードを父親と歩くんだっけ。

もう、楽しいドキドキよりも不安によるドキドキで、心臓が有り得ない速さで脈打つ。
しかもずるずるの長いドレスに、履きなれないヒールの靴。そんなのに苦戦しているうちに、あっという間にチャペルの入口だ。
滝は、最後の最後に、丁寧にヴェールを下ろした。
「可愛い耳が隠れちゃうのが残念だけどね」
「…うん。でも綺麗だよ。亮ちゃん」
「だから、男に綺麗もないだろって…」
俺の言葉に、ジローはくしゃっと笑顔を見せる。
「でも、綺麗なんだ」
「…ありがとよ」
ゆっくりと、扉が開く。

そこからはもう、本当にお祭り騒ぎだった。
チャペルの中は、人・人・人…!
「わーっ、宍戸綺麗っ!」
真っ先に声を上げたのは青学の菊丸だ。
「へェ、むちゃくちゃ似合ってるじゃないっすか」
そして越前。隣には海堂もいて、その他レギュラーの面々も顔を揃えている。
「ああ、宍戸。驚いた顔も可愛いね」
「ふ、不二?!」
傍らにカメラを構えてしゃがみこんでいるのは、不二だった。
「今日も撮影任されてるから、よろしくね」
「おいおい…」
青学の隣には、山吹の面々だ。
「…ふん。何も、ンな若いうちに嫁に行かなくたって」
「まあまあ、あっくん。悔しいのは分かるけどさぁ」
亜久津と千石だ。
あっ、亜久津の奴、こんな所で煙草出しやがって!
「…おい、」
「こら。こんな日くらい、淑やかにな?」
思わず注意しかけた俺に、優しい声が掛けられる。この声は。
「橘?!」
「そんな目くじら立てたら、せっかくの花嫁衣裳も台無しだ」
「お前、何で…」
橘は益々大人びて見えるタキシード姿で姿勢を正す。
「このたび、エスコート役を仰せつかった橘です」
「…父親役?」
「うーん。父…、まあいいか。そんな所だ」
苦笑しつつ、橘は俺の腕を取る。
「さあ、花婿が待ってるぞ」
長いヴァージンロードの先に、純白のタキシードに身を包んだ跡部が立っていた。
「…跡部」
異様な盛り上がりに苦笑して髪をかき上げる仕草が、何だかもう映画のワンシーンのようで。
きっと俺はここで感動するべきなんだろう。けど…。
「…純白のタキシードか。さすが跡部だ」
全身真っ白があんなに様になる男を俺は他に知らない。思わず変な所に関心してしまった。
「ま、まあその気持ちも分かるけどな」
橘はヴェール越しに俺の顔を覗き込み、くすっと笑う。
「行こうか」
「…おう」

歩き出す両脇から、拍手やら歓声が上がる。
もちろん本当の結婚式ならそんな事ご法度なんだろうけど、俺達の式って感じがしてすっごく楽しい。
ドレスなんか着ちゃってさ、まるで仮装行列みたいで冷やかされるかと思ったのに、本当にみんなが心から祝ってくれてるのが分かる。
「宍戸さん!おめでとう」
「…神尾」
泣き出しそうな声の祝福に、俺の目頭まで熱くなる。
神尾ってば、今にも涙が溢れそうで、俺が拭いてやりたい気分だよ。
「神尾の奴、すごくこの前のこと気にしててな。だから尚更、幸せそうな宍戸が見れてホッとしてるんだ」
「橘…」
バカだな、あいつ。そんなの全然気にしなくていいのに。
だから俺、そっと橘の腕からすり抜けて、神尾に駆け寄った。
「ちょ、宍戸?!」
後でドレスを捌いてくれてた滝が驚いたように声を上げる。
「悪い!ちょっとだけ」
目の前に立てば、神尾の奴、驚いて目がまん丸だ。
「神尾、お前にはすごく感謝してる」
覚悟の決まらなかった俺が一歩前進出来たのは、他でもない神尾のおかげなんだ。
俺は、その頭を軽く撫でた。
「…宍戸さん」
やべ。とうとう泣き出しちゃった。
「もう、神尾。しっかりしてよ…」
隣の伊武が呆れ顔でハンカチを差し出す。
「悪ィ、伊武頼んだ!」
俺は神尾を託して背を向ける。
「任せといてください」
いつも無表情の伊武が、ほんの少し微笑んだ気がした。
ヴァージンロードに戻ると、橘が笑顔で出迎えてくれる。
「有難うな、宍戸」
俺は笑顔で返し、改めて歩き出す。

「宍戸さんっ、サイコー綺麗っす!」
「ハハ、切原」
大きな声を出すもんだから、柳に引っ叩かれてる。
「宍戸…」
わ、わァ…。真田、男泣きっすか。ちょっとビビるな。
青学に山吹に不動峰。そして立海。
俺のこの姿を知っている奴らが、みんな集まってくれている。
昨日の今日だぜ?ホント、跡部も無茶言うよな。
でも、本当に本当に嬉しい。
そして、最後に顔を揃えるのは、氷帝のメンバーだ。
「…し、ししど、さんっ!」
「長太郎…」
もうズタボロじゃねえか。泣き過ぎで目が腫れて、鼻の頭も真っ赤だ。
「…鳳、見苦しい」
「日吉、酷いよ!」
ったく、あいつらは相変わらずだな。
「宍戸っ」
岳人が満面の笑みで手を振る。俺も思わず小さく手を振り返す。
良かった。最後に見たのが辛そうな泣き顔だったから、凄く心配だったんだ。やっぱり岳人はこ憎たらしいくらいの笑顔が最高だよ。
「亮ちゃん…!」
入口までエスコートしてくれたジローはもうボロボロに涙してて、さっき滝に持たされたハンドタオルが絞れそうな勢いだ。
「ばーか。泣き過ぎ」
俺は通りすがりにデコピンしてやった。
「痛っ!」
ハハっ、ジローの奴頭抱えてやがる。今のは会心の一撃だったな。
「宍戸、綺麗にしてもろて、まぁ」
「…手前は、オバサンか」
忍足やつ、親戚のおばさんみたいなもの言いだ。ったく、カッコイイくせに時々オカン属性なんだよな。
「さあ、宍戸。お待ちかねだ」
そう言いって、橘が足を止める。
「俺が言うのもなんだが…。宍戸、幸せに」
そっと、背中を押された。
「宍戸」
「…跡部」
跡部が、俺の腕を取る。

神父役は樺地が買って出てくれたみたいだ。
「その健やかなるときも、病めるときも…」
樺地の落ち着いた声が心地よく響く。先ほどまで賑やかだったチャペルが、厳かな空気に包まれる。
「喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも…」
跡部は真っ直ぐ前を見つめている。
「これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け…」
すっげー緊張してきて樺地の口元見つめてたら、その唇が優しく微笑んだ。
「…その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
跡部の落ち着いた声が響く。
「…誓います」
俺の声は、凄く震えてた。むちゃくちゃ緊張して。
跡部は、樺地に差し出されたリングピローから、マリッジリングを手にする。
いつの間に、こんなもの用意してたんだよ…。
どうしていいか分からない俺に跡部はクスっと笑うと、そっと左手を持ち上げ手袋を取ってくれる。
俺は、されるがままだ。
そしてゆっくりと、薬指にリングが嵌められる。
よく、サイズ分かったよなぁ。俺だって自分のサイズ知らないのに。
「…宍戸さん」
ボーっと自分の指を眺めてたら、樺地に小さく声を掛けられる。
「あ、」
そっか。指輪交換だもんな。
俺は、慣れない手つきでもう一つのリングを摘まみ上げる。もう、緊張してるし手袋で滑るしで、なかなか上手くいかない。
「…ったく、手前は本当に不器用だな」
「う、うるさい」
揶揄う跡部の囁きが、物凄く優しくて。
何だか久し振りに、ハンパなくときめいてしまう。初めて手をつないだ時みたいな、そんな舞い上がり方だ。
俺は、やっとの思いで跡部の薬指に指輪を通した。
そして最後に、跡部が俺の顔を覆ったベールに手をかける。
「宍戸…」
ゆっくりと、視界が開けていく。
「…あとべ」
瞳が合ったら、跡部が目を細めて本当に幸せそうに微笑むんだ。
「…っ」
気づいたら、ぼろぼろって涙が零れてた。
「ったく、お前は」
「…だって、」
だって、凄く嬉しいんだ。こんなに幸せなんだよ、跡部。
式の途中なのに、みんな見てるのに、涙が止まらなくなってしまった。
「…ほら」
強く抱き寄せられる。
「跡部っ」
そして、両手で頬を包まれて、上を向かされ。
そのまま、覆いかぶさるみたいにキスされた。
「ンっ、」
誓いのキスだなんて、そんな神聖なものじゃない。
熱い舌が唇を割った。絡めるように吸い上げられる。
そして、角度を変えるその一瞬、跡部は小さく囁いた。

「…居場所が無いなんて言わせねえ。ここがお前の場所だ」

「ん」
俺は、思い切り抱きついた。しっかり腕を回して広い背中に縋りつく。
幸せにして、跡部。
幸せになろう?跡部。
こんな姿の俺を愛してくれて、本当にありがとう。
「よっ、お二人さん!お幸せに!」
皆の拍手が聞こえる。囃し立てる声や、高い口笛。
ありがとう、みんな。俺、すっげー幸せモンだ。

「よーし、揃ってるな」
式の余韻も消えないうちに、跡部はフラワーシャワーのなごりを手で払いつつ、一段高い鐘楼の台座に上った。
そして、皆を見回す。
「折角こうして集まったんだ。楽しまなきゃ損だよな?宍戸」
「…は?」
良く晴れた空の下、見上げた跡部は逆光の中ニヤリと笑った気がした。
俺は呆けてしまう。
結婚式って、こうして集まって貰うには十分なイベントだと思うけど、まだ何かしようっていう訳?
「宍戸、これなーんだ!」
「ジロー?」
隣に擦り寄ったジローが背中から出した物は…。
「…ラケット!」
「そ。これだけのメンバーが揃ったんだよ、やらなきゃ損、損!」
ひょいとジローの後から顔をのぞかせた菊丸も、そう言ってラケットを取り出す。
「そういう事だ」
て、手塚まで…!
「よーし。始めるぜ!名づけて『跡部ウェディング杯』」
「ネーミングセンス最悪や!」
「うるせェ、忍足!」
文句を垂れる忍足に蹴りを入れつつ、跡部は台座から飛び降りた。
「って訳だからよ。宍戸、思い切り暴れてこい」
「…よっしゃ!」
俺は、差し出されたラケットを手に、コートに向かう。
「ちょ、宍戸!ドレスは脱がなきゃ!」
「あ、そか」
慌てて追いかけてきた滝に連れ戻される。
「着替えたらすぐ来い、始めてるぜ」
跡部はそう言って頬に口づけた。
「オッケー!」
俺もキスで返す。

普通さ、どんな物語だって、魔法って最後には解けるもんだろ?
でも、俺にはその日はやって来ないかもしれない。ずーっと耳と尻尾が付いたまんまかもしれない。
それでもさ、それも悪くないかもしれないって思えるようになったんだ。
たくさんの仲間に、大好きなテニス。
そして何より、愛する跡部との生活。
十分幸せだろ?

俺は駈け出してから、手にしたままのブーケに気づく。
あ、そだ。
これって、あれだよな。よく後ろ向きで投げて、それを受け取った奴が次に幸せになるっていう。
「よーし…」
俺は足を止めて、ブーケを両手でしっかりと持つ。
「幸せのお裾分けだ!」
そして、思い切り後ろに投げ飛ばした。
「わっ、狙ってたのに!」
「ちょ…、宍戸強く投げ過ぎ!」
皆のあわてたような声に、俺は思わず噴き出してしまった。

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ようこそお越し下さいました!「ハコニワ‘07」はテニスの王子様、跡宍メインのテキストサイトです。妄想力に任せて好き勝手書き散らしている自己満足サイトですので、下記の点にご注意くださいませ。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
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