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今回は、超短編です。
幸福論1(跡×宍)
~猫宍シリーズ29~
窓の外を眺める背中は、いつも以上に小さく見える。
当たり前のように思い描いていたこれからの学園生活が目の前から消えた時、自分が何を思うのかなんて想像もつかず、俺は声を掛けられない。
垂れた尻尾は力無く、ぴくりとも揺れない。
俺は、こうやってもう何時間も、宍戸の虚ろな姿を見守るだけだ。
「宍戸、せっかく晴れてるんだ。外でテニスするか?」
「…ん、今はいいや」
テニスの誘いにすらこの有様だ。三度の飯よりもテニスを選ぶような宍戸がだ。
俺は、ようやく腰をあげて宍戸の傍へと歩み寄る。
泣いていたらどうしようかと内心危惧していたのだが、覗きこんだ瞳は濡れていない。ただ、途方に暮れた子供のようだ。
迷子になった子供が、その事実に気づくまでの一瞬の間。そんなぽかんとした印象を受ける。その事実に気づいて、火が付いたように泣きだすまでの一瞬の間。
触れたら、崩れるように泣き出してしまうだろうか?
「…宍戸」
そっと、細い肩に手を置く。
「跡部?」
仰ぎ見る宍戸は、崩れ落ちたりはしなかった。
「宍…」
「なあ、跡部」
俺の声を遮るように呼ぶ宍戸。
けれど、そのくせに俺を見てはいない。
まるで独り言を呟くように、聞いて貰う気など無いような素っ気なさ。
「よくさ、言うじゃないか。敷かれたレールを歩くだけじゃつまらないって」
「あ?ああ」
「あれってさ、贅沢だなって。…すべきことが無いって、こんなに怖いんだな」
「…宍戸?」
「居場所がなくなるって、こんなに不安なんだな。世界から取り残されちゃったみたいだ」
ショックだった。
宍戸に、居場所がないと言わせてしまった衝撃。
宍戸が俺を見つめない事の恐怖。
「宍戸」
椅子に腰掛ける背中から抱き締める。
頬に触れる耳は温かく、俺の息に擽ったそうに震えるのに、宍戸の心はどこか遠い所にあるようだ。
「どうした、跡部?」
どうしたは俺のセリフだ。
こんな宍戸見たくはない。
いつだって、無謀なまでにガムシャラなお前だったじゃないか。
傷だらけになっても、その目だけはギラギラ輝いて、死に物狂いでボールを追ってたじゃないか。
「宍戸。明日は出かけるからそのつもりでいろ」
「出かける?どこへ」
「軽井沢だ」
何をしに?と問う様な表情の宍戸をもう一度強く抱きしめ、俺は腕を解く。
そうと決めたら忙しい。
「跡部?」
「今日は少し遅くなる。お前はよく食べて先に休んで、体力を温存しとけ」
「…はあ?」
間の抜けた声を上げる宍戸を残し、俺は急ぎ足で部屋を出た。
■R-18作品、猫化・女体等のパラレルがオープンに並び、CPもかなり節操なく多岐にわたります。表題に「CP」や「R-18」など注意を明記しておりますので、必ずご確認の上18歳未満の方、苦手なCPのある方は避けてお読みください。また、お読みになる際は「自己責任」でお願い致します。気分を害する恐れがあります…!
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