10年目の諦め その後（忍×岳） 2008/10/12 (Sun)

数日早いですが、忍足誕生日おめでとうＳＳです。

うちの千石と忍足は、だんだん黒くなってきてる気がします。
そんな訳で、少々黒い忍足の短編。

10年目の諦め　その後（忍×岳）

「ま、何だその。俺の誕生日やし？」
「…ま、まあそうだな」
「そうなんや！」
「…ス、ストップ！」
「え～何で？」
とうとう押し倒されて、岳人は腕を突っ張る。
「何で？何でって聞く訳？！」
「聞くやろ。恋人同士やねんで？俺、誕生日やねんで？ほなら、なあ？」
「わーっ！」
近づく唇を、手のひらで押し返す。
「っく、何が気に入らんのや！」
「わーっ！ハズいんだよ！」
「…何を今更」
正直、忍足は限界だった。
こんなに長い間（とは言っても高々1か月だが）、最後のラインを超えないことは珍しい。
体が目的とは言わないが、まだまだ若い牡がそんなに我慢出来ないのなんて、同性ならば分かりそうなものなのに。
「ちょ…」
しつこく逃げ道を探す岳人を呆れたように見下ろすと、忍足は、寝転がる小さな頭を上から押さえつける。
「いでっ！」
浮かしていた後頭部が、ガンっと音をたてフローリングに落ちた。
「何すんだよ！」
「…岳人、うるさい」
「なっ、」

大人びた表情で微笑む忍足。
浮かれた雰囲気に乗って、おどけて見せる忍足。
そんな、みんなが知っている忍足は、ここにはいない。
今の忍足は、子供のように唇を歪めて舌打ちする。

「…忍足？」
「俺、ほんまは無茶苦茶我儘やで？」
「そ、なの？」
「せや。見せてないだけや」
「はあ…」
「だから、諦め？」
そう言った忍足は、もう止まらなかった。
さっきまでのやり取りが、忍足にとってはほんのじゃれ合いだったことに岳人は気付く。

「…岳人」
「っあ…」
口づけは激しく、全てを吸いつくすようだ。
くちゅ、と音を立て、何度も何度も角度を変えては口腔を探る。
「ん、っフゥ…っ」
「苦しいか？」
「ん、っちょ、いい加減」
「やめないで」
「ああっ！」
大胆に。
大きな手のひらが岳人の中心を包み込む。
固いデニムの生地ごと、ゆっくりと揉む。
「…だめ」
「お前、むっちゃエロい顔しとる…。嬉しい誤算や」
「バカ！」
岳人は勝手に想像していた。きっと忍足はスマートでノーブルなSEXをするだろうって。
こちらはこちらで大誤算だ。
「いっつもお前の言うこと聞く思うたら大間違いや。悪いけど、今回は好きにさせてもらうわ」
「や、ああっ」
忍足は、乱暴に岳人の衣服を剥ぎ取った。
そして、あらわになった素肌に舌舐めずりし、胸で色づく尖りにしゃぶり付く。
「あ！」
痛い位に吸いついて、もう我慢が出来ないと歯を当てる。
「侑、士っ」
「エエ声や。ますます煽られる」
組み敷いた岳人の震える花芯を、忍足は指先で弾く。
「ハぁっ、ん…！」
忍足の愉しげな嗤いが、岳人の喘ぎを呑みこんだ。

　　＊＊＊

「…怖」
扉の前で、宍戸は背筋を震わす。
「ったく、毎度このパターンかよ。なら呼ぶなよ」
漏れ聞こえる忍足の嗤いに、跡部は動じない。
「え？お前驚かねえの？」
「別に。そんなんじゃねえかとは思ってた。忍足は普段猫被り過ぎだ」
「えー、知らなかった。岳人の奴知ってたのかよ」
「知らねェだろ。だからこんな事になってる」
「…災難」
宍戸は同情するように呟くと、手にした袋をドアノブに下げる。
そして、無理やり組み敷かれる音を聞かない振りして、アパートを後にした。

　　＊＊＊

「…あ、そうや。あいつら呼んどったんや」
煙草を買いに行こうとドアを開けたところで、忍足は漸く思い出す。
そこに残されていたのは、忍足が好んで飲むワイン。そして1枚のメモ。
「ハッピーバースデイ、忍足。…岳人を壊すなよ、…か」
付け足された一文は、焦ったような宍戸の文字だ。
「あー…、たぶん。壊しゃせえへんけど」
まあ、似たようなものか？とほくそ笑み、忍足は年中置きっぱなしのビーチサンダルを突っ掛けて出る。
「少し、セーブせなあかんかなぁ」
扉の向こうの自分のベッドで、死んだように眠る岳人を思う。
「でもなァ、可愛いんやもん」
忍足は楽しそうに、手にした小銭を手のひらで弄んだ。